今月もなぜか後半から何も読めなくなった。
外見的に懐かしいのは、カッパ・ノベルスの西村京太郎作品を辰巳四郎が装幀していた頃の『日本一周「旅号」殺人事件』や、角川文庫の映画のスチール写真を使った『小説 吉田茂』、徳間文庫の笹沢左保(絵は中原脩)等。
戸川昌子はほとんど読まずに来てしまって、最近見かけると片端から買っているのだが、どれも奇想に妙な凄みがあって、再評価が進んでほしいところ。
光瀬龍『明治残侠探偵帖』徳間文庫・1983年
《時は明治24年春、所は新政府の御用商人大川商会当主の大邸宅。まさにこの邸において舞踏会の宴たけなわであった。突加、客の1人が殺され、時価300万円のダイヤが消えた。ところが捜査は難航をきわめ、犯人像すら特定できない。かくして、さっそう登場したのが洋行帰りの客警視・新宮寺清之輔。無頼の秘密探偵・捨吉の協力を得て容疑者を捕えたが、取調中、その男は躍り込んだ壮漢に斬殺されてしまった!?》
西村京太郎『日本一周「旅号」殺人事件』カッパ・ノベルス・1982年
《十日聞で日本を一周するミステリー・トレイン「旅号」が、三百人の客を乗せて東京駅を出発した。だが、博多・西鹿児島・京都と立ち寄る先で、6号車の乗客ばかり三人が相次いで不審な死をとげる。国鉄と地元署の捜査も空しく、有力な証拠は挙がらない。警視庁の日下刑事も、京都からひそかに「旅号」に乗る。彼は、上司の三上刑事部長から、“これ以上「旅号」から死者を出すな”という厳命を受けていたが……、しかし、北へ向かう「旅号」を待ち受ける第四の事件が札幌で! 満員の乗客を恐怖におとしいれた巨大な陰謀とは!? ただいま絶好調の著者が全力投球で書き下ろした、第一級トラベル・ミステリー決定版。》
《子供のころから、鉄道を利用して日本を一周したいという夢を特っていた。それも、いろいろな列車を乗り継いでではなく、特別仕立ての列車での日本一周である。
先に、国鉄が10日間で日本一周列車を走らせたとき、発表当日に切符が売り切れたと間いて、私とおなじ夢を特つ人が意外に多いことを知った。
私はいま、時間がとれず、特別列車があっても乗ることができない。そこで、推理作家としての夢をのせて日本一周列車を走らせたい。恐怖とサスペンスの夢をのせて、いま、日本一周「旅号」は発車する――。
「著者のことば」》
《“鉄道ミステリーの新世界”を構築した西村作品
紀行作字 宮脇俊三
鉄道ミステリーといえば「時刻表」を使ったトリックが主流であった。けれども、ダイヤ改正のたびに、列車の神別や時刻は整理され合理化され、「急行を追い技く鈍行列車」などの愉快な列車は姿を消して、トリックが作りにくくなってきた。
これでは鉄道ミステリーはつまらなくなってしまうが、と危惧を抱いていたところ、西村京太郎氏が登場した。
氏が着目するのは時刻表のみではない。それは車両、施設、さらには巨大にして複雑な日本国有鉄道の組織・制度にまでおよぶ。比類のない帽の広さと深さを備えた鉄道ミステリーの新世界が構築されるに至ったのも当然であろう。》
シュトルム『たるの中から生まれた話』福武文庫・1990年
《どうぞ雨をふらせてくださいと、美しい雨姫さまのもとへ雨ごいに向かう少年と少女を抒情的に描いた「雨姫」、けちんぼの老人と猫とをめぐる怪奇な物語「ブーレマンの家」等、19世紀ドイツを代表する作家シュトルムが描いた珠玉の短編童話4編。》
収録作品=雨姫/ブーレマンの家/のろわれた鏡/バラとからす
中島河太郎編『犯人よ、お前の名は?―新青年傑作選集Ⅰ・推理編1』角川文庫・1977年
《この〈「新青年」傑作選集Ⅰ~Ⅴ〉は、大正から昭和にかけて時代の最先端にあった風俗小説雑誌「新青年」に掲載した作品から、傑作五十篇を選び、全五巻に編集しました。
読者の方々には、第Ⅰ巻から第Ⅲ巻の推理編で、当時の名探偵たちの粋な推理を昧わっていただきます。そして第Ⅳ巻の怪奇編では読者をゾッとさせる妖気の世界に誘い、第Ⅴ巻のユーモア・幻想・冒険編で奇想天外な世界に遊んでいただけるよう配慮してあります。
永遠に古くなることのない傑作ばかりを集めたファッショナブルなこの〈「新青年」傑作選〉で、あなたは時のたつのも忘れてしまうでしょう。》
収録作品=永遠の女囚(木々高太郎)/家常茶飯(佐藤春夫)/変化する陳述(石浜金作)/月世界の女(高木彬光)/彼が殺したか(浜尾四郎)/印度林檎(角田喜久雄)/蔵の中(横溝正史)/烙印(大下宇陀児)
陳舜臣『割れる―陶展文の推理』角川文庫・1978年
《香港から林宝媛という若い女性が神戸港に到着した。彼女の来日の目的は、アメリカで行方不明になり日本に滞在しているとうわさされる実業家の兄を捜すことだった。そして、中華料理店“桃源亭”のあるじ、陶展文の家に寄宿する。
そんな時――神戸の一流ホテルの一室で、中国人の撲殺死体が発見された。その部屋は、何と、捜し求めていた兄の投宿先だった。行方をくらました兄への容疑は深まっていったが……。
陶展文が見事な推理で解き明かす本格長編推理。》
橋本陽介『ナラトロジー入門―プロップからジュネットまでの物語論』水声社・2014年
《プロップ,トドロフ,バルト,ジュネットは,どのように物語を分析したのか?
ロシア・フォルマリズムから、ヤコブソン、ソシュール、バンヴェニストの言語学を経由してナラトロジーに至るまでの系譜をたどりながら、バルトやジュネットなどの理論を体系的に考察する。文学研究の世界に多大な影響を与えつづける「ナラトロジー(物語論)」について,古今東西の文学作品を例にしながら平易に詳述した実践的な入門書。》
武田雅哉『楊貴妃になりたかった男たち―〈衣服の妖怪〉の文化誌』講談社選書メチエ・2007年
《男は女に 女は男に
中国人の奇妙な情熱
ヘンテコな服装は妖怪である。世が乱れ礼が失われた証拠である。だが周恩来も女装した。美少年もむくつけき大男も、中国の歴史は女装に身も心も捧げた男たちで満ちている。悠久の大陸を横断する奇妙な妖怪=服妖に見る、知られざる中国の素顔。》
獅子文六『ちんちん電車』河出文庫・2006年
《「私は、東京の乗物の中で、都電が一番好きである」。『てんやわんや』『自由学校』で知られる昭和のベストセラー作家が、失われゆく路面電車への愛惜を軽妙に綴っていく。車窓に流れる在りし日の東京、子どもの頃の記憶、旨いもの…。読み進んでいくうち、次第に時間がゆったり流れていく傑作エッセイ。》
山田正紀『孔雀王』角川文庫・1981年
《女とみまがうような長い睫に、澄んだ瞳――仲間だちから“孔雀”と呼ばれる男、佐伯鉄夫、29歳。暴力団を相手の現金強奪を生業としている。
きょうの獲物は大きかった。だが、鉄夫を待ちうけていた男たちの銃が、いっせいに火を吹いたとき、彼はフッとこの世から消えていた。
――そこは、あらゆるもの、植物や水、鉱物さえもが、自らの意志をもっている不思議な世界だった。
はるか未来、30世紀の異質な世界に投げこまれた鉄夫の奇想天外な大冒険。
あらたな意欲をもって描く長編冒険SFの傑作。》
遠藤周作『闇のよぶ声』角川文庫・1971年
《神経科医の会沢を訪れた稲川圭子の婚約者の樹生は最近、いい知れぬ不安にとりつかれている。三人いる従兄が皆幸福な家庭を捨て失踪しているのだ。結婚生活に自信のもてない樹生は圭子に婚約解消を申し出た。――会沢が事件を解いていくうちに浮んだ戦争の傷あとと怨念とは? 心理的探偵法を用いた作者唯一の長篇推理小説。》
森村誠一『初恋物語』角川文庫・1985年
《平野汎、高校三年生。すべてが平均的で可もなし不可もなし。絵に書いたような平々凡々たる味気ない生活だ。そんな彼に一大変化が訪れた。謎の美少女・聖子との出会い。奇怪な連続殺人事件。残忍な暴走族との対決。汎は今迄の平凡な生活を捨て、危機に陥った聖子を救うため、愛犬エスと共に敢然と悪に立ち向った!! 息つくひまもないスリリングな展開と意外な結末。森村誠一が初めて挑む、SF風サスペンス推理。書下し文庫。 解説 赤川次郎》
戸川猪佐武『小説 吉田茂』角川文庫・1983年
《日本が日本でなかった時、ひとりの男が下した断固たる決断が、今日の経済的繁栄を日本にもたらした。
混迷のさなか、最善の選択を迫られる指導者の孤独と苦悩、そしていらだち、宰相吉田茂の個性を中心に、その困難であった役割を政治の現実のひだのなかで描く。
世界第二の経済大国として、国際政治の場で、いま再び困難な選択を迫られる日本。今日求められる指導者の資質とはなにか。その決断いかにあるべきかを具体的に語る。》
西村京太郎『消えたドライバー』角川文庫・1983年
《このところ太陽テレビのイブニングショーの視聴率は下降線をたどっていた。その人気挽回策として、太陽テレビは一大キャンペーンを行った。一等賞品は300万円のスポーツカー。全国から83万通の応募があり、抽選の結果、世田谷の山田一郎氏が当選した。だがその住所には山田一郎という人は存在しなかった。当選者はどこに?
一方西伊豆で老人のパラパラ死体がみつかった。その後、第二、第三の殺人が……。無関係にみえる二つの事件の背後には意外な犯人が!? サスペンス推理の傑作。》
収録作品=消えたドライバー/死を呼ぶトランク/九時三十分の殺人
草野唯雄『京都大文字送り火殺人事件』徳間文庫・1988年
《大文字焼きで賑わう京都。警視庁顧問の私立探偵・尾高一幸も、この夏の風物詩を楽しみにきていた。午後八時、大文字山に親火が放たれた後、尾高の目前で突然火床が爆発。他の山でも続いて二カ所が爆発し、市会議員の上倉、婦人団体会長の宮島、松明保存会副会長の吉富ら二十余名が死傷した。その三日前、文化財保護課に、差出人のない一通の封書が届いていた。「ミヤコニ チノアメ フル」と――。長篇本格推理。》
笹沢左保『四月の危険な石』徳間文庫・1989年
《愛人宅から帰った二本柳竜次は風呂から出て寝室へ入ったとたん、何者かに後頭部を一撃されて、気を失った。意識が戻ると、妻が刺殺されていた!? 動転した竜次は、愛人を呼び出し、現場から逃げだすが、横浜の連れ込み旅館に宿をとったところ、謎の男が訪ねてきて奇妙な取引を迫ったのだ。
500カラット、時価15億円のダイヤをめぐる連続殺人を、意想外のトリックとドンデン返しで描く長篇サスペンス!》
戸川昌子『美しき獲物たち』徳間文庫・1983年
《三崎和子は法領大学英文科2年生。ある日曜日の午後、法学部の米人教授・ロートレの研究室に採点を手伝いにいくが、そこで彼女は巨大セックスの持主・ロートレの暴行を受け、記憶喪失に陥る。和子は外人への憧れのために研究室に入ったのか、それとも教授失脚の狙いが背後にあったのか!? “私的トラブル処理屋”狩須と大学側弁護士高崎が虚々実々の駆引を展開する。
官能シーンを織リまぜた異色長篇推理!》
テッド・ニールド『超大陸―100億年の地球史』青土社・2008年
《神話から科学へ。そして壮大な時空の旅
大海に沈んだ 「失われた大陸」 の神話から、世界の大陸が一つになった 「超大陸」 の科学へ。アメリカ科学界で相手にされなかった 「大陸移動説」 が定説となり、超大陸が5億年ごとに出現と消滅を繰り返すことが明らかになるまでの経緯を克明にたどるとともに、生命さえ存在しなかった過去から、人類が消滅しているだろう未来まで、科学的想像力というタイムマシンに乗って旅する、壮大にして精緻な科学エンタテインメント。》
オラシオ・キローガ『野性の蜜―キローガ短編集成』国書刊行会・2012年
《ラテンアメリカ随一の短編の名手、魔術的レアリスムの先駆者と評される鬼才キローガの傑作小説集。代表作『羽根まくら』をはじめ、幻想小説、恐怖小説、密林小説等々、ポオ、チェーホフ、キップリングの衣鉢を継ぐ、生と死、リアリティと幻影が渾然一体と化した、完璧精緻な短編30篇を収録。うち8割は本邦初訳。》
半村良『かかし長屋―浅草人情物語』祥伝社ノン・ポシェット・1996年
《「昔とはすっかり縁が切れたようじゃな」証源寺の住職忍専は、勘助を見つめて言った。住人がかかしのようなボロを着ているところから〈かかし長屋〉。忍専が後見人となっているその長屋の住人・勘助は昔、夜風の伝造と名乗る大盗賊だったが、清々しい長屋の人々に囲まれ、扇職人として更生したのだった。だがそんな矢先、昔の盗賊仲間・手妻の半助が現われた――。》
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=4396325118
【書評】『かかし長屋』半村良 - 横丁カフェ|WEB本の雑誌
東海林さだお『ゴハンの丸かじり』文春文庫・2006年
《人間には“ゴハンをよそうヨロコビ”があるのだ、と釜飯屋でしゃもじを手にしながら実感したショージ君。あるときは特別扱いされているソーメンに苦言を呈し、鳥わさに本来ついていたはずの「び」に思いをはせる。回転寿司はお見合い、鰤大根は一心同体の夫婦である、の名言も続出する丸かじりシリーズ20巻目。》
東海林さだお『ホットドッグの丸かじり』文春文庫・2008年
《山で食べる塩むすび、縁日の焼きそば、そして風が吹きわたる野球場で食べるホットドッグの美味しさ…食べ物の適材適所に思いを馳せつつ、肉まんや桃缶の正しい食べ方を遂行し、人柄もよく成績優秀な人参君がなぜ出世できないのか悩む。今日も大忙しのショージ君、ついに豚肉料理店で豚攻めに遭うことに。》
黒井千次『漂う―古い土地 新しい場所』毎日新聞社・2013年
《老境に入ったベテラン作家が、自身ゆかりの土地を訪ねながら来し方をふり返り、自らの人生と対話する。懐かしさと希望に充ちた珠玉のエッセー。》
阿刀田高『雨降りお月さん』中公文庫・1989年
《馴染んでいるようで、意味不明でもある「雨降りお月さん」の歌。人生にはこういうことがよくあるのでは…。見えるようで見えない人の心、わかるようでわからない世の出来事。時を経て、はじめて解する遥か彼方の言葉、思い。書斎の窓に映る暈をかぶったお月さんのように、すべてがかすみ、妖しくみえる。にがく、恐しく、どこかおかしいエッセイ群に、新しい試みのオシャレな恋の小説一篇をプラスする。 文庫オリジナル版》
水坂早希/原作・colors『魔法少女アイ』二次元ドリームノベルズ・2002年
《雪に閉ざされた山間にある、全寮制の名門「雪沢女学園」。そこに強大な「ゆらぎ」の気配を見出したアイは生徒して潜入する。学園で出会った記憶操作の魔法が効かない少女…鈴宮凪紗との交流を通して調査を進めていくアイだったが、強大なゆらぎの前になすすべもなく敗れ去り、陵辱の魔手に囚われてしまう。(以下略)》(「BOOK」データベースより)
小森陽一『ことばの力 平和の力―近代日本文学と日本国憲法』かもがわ出版・2006年
《日本語は真実を語りうるか!?
樋口一葉、夏目漱石、宮沢賢治、大江健三郎の文学作品を通して、「ことばを生きる個人の倫理」と「ととばをあやつる国家の道徳」の相克を明らかにし、日本国憲法の意味を問う。》
陳舜臣『ものがたり 史記』朝日文庫・1983年
《二千年余の昔、悲劇の歴史家司馬遷が遺した『史記』。中国人はこの書のなかに、人間のあらゆる典型と、出来事のパターンとが述べ尽されていると信じてきた。最古の正史にして唯一の全史であるその深淵な世界を、わかりやすく語り直す、「ものがたり」第二弾。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=天道、是か非か/覇者への道/呉か越か/茫蠡は生きる/泪羅に消えた/三寸の舌/掘出し物/困った母親/夜明け前の暗い道/我が天下/大崩壊/力は山を抜き/大風起こりて/歴史を書く
陳舜臣『ものがたり 唐代伝奇』朝日文庫・1983年
《唐の時代に創作されてのち、多くの人々に愛され続けてきた悲劇、活劇、怪奇譚の数々。「枕中記」「杜子春」ほか、日本人にも馴染みの深い伝奇をふくむ、選りすぐりの十七篇。中国古典をわかりやすく、より面白く語り直す、「ものがたり」三部作完結。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=無双伝/枕中記/焦封伝/白猿伝/郭翰と織女/柳毅伝/離魂記/長恨歌伝/崑崙奴/日本人韓志和/杜子春/謝小娥伝/南柯太守伝/古鏡記/東城老父伝/三夢記/李娃伝
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Sting - We'll Be Together
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