これも不調で放置してあった2025年5月分。
古い角川文庫の西村寿行作品のカバーは地がジーンズ柄のものと無地になったものがあり、ジーンズ柄バージョンが何冊か手に入った。
東山魁夷『ドイツ・オーストリア―東山魁夷小画集』新潮文庫・1984年
《ライン沿いの古い街並み、水に映る鐘楼や森、窓辺の花、そして山上にそびえ立つ古城……。世界的な風景画家・東山画伯を支えるもう一つの故郷、ドイツ・オーストリア。その魅力の虜となって描き上げた作品群、港町リューベックの「窓明り」、フライブルクの「晩鐘」、ローテンブルクの「赤い屋根」、ザルツブルクの「雪の城」など、本制作32点とスケッチ39点を収録した画集。(東山魁夷小画集全六冊)》
東山魁夷『中国への旅―東山魁夷小画集』新潮文庫・1984年
《東山画伯は、奈良の唐招提寺を開いた唐の高僧鑑真和上に捧げる障壁画を描くことに、十年にわたり精魂をかたむけた。まず、第一期で日本の風景を描いた画伯は、第二期の制作をめざして、鑑真和上の故郷中国を写生する旅に出た。悠久な大陸風景、画伯がはじめて墨一色で描いた桂林、黄山の山水、彩色で描いたエキゾチックな西域地方の風物など75点を収録する画集。(東山魁夷小画集全六冊)》
エウリーピデース『ヒッポリュトス―パイドラーの恋』岩波文庫・1959年
《継子ヒッポリュトスヘの許されぬ恋に悩むパイドラー。やがてその恋は、彼女を取り巻く人々を破滅へと導いてゆく。後世の劇作に大きな影響を与えたエウリービデースの代表作。》
島田一男『黒い霧の港―公安調査官5』徳間文庫・1988年
《国際都市ヨコハマ――そこには汚れたカネを求めてアウトローたちが集まる。その黒い港を背景に頻発する船舶密売事件。船・密輸品そして船員もろとも売り飛ばしてしまう国際シンジケートが深く静かに動き出した。公安調査官・加下千里は、組織に潜入すべく、うだつのあがらぬ失業中の二等航海士に変装する。帰らざる船の秘密を暴くため港を徘徊していると……。表題作ほか三篇の公安調査官シリーズ。》
収録作品=東京魔女街/黒い霧の港/金髪の密使/炎の女王
阿刀田高『三角のあたま』角川文庫・1994年
《恋愛論から社会情勢まで幅広く、つれづれなるままに、作者が身辺のよしなし事を軽やかな筆致で綴った、大人の辛口エッセイ。スパイスとユーモアの絶妙の効き具合を、ご堪能あれ! 「悪意あり」「死後のランキング」「美女優遇制度」「男というもの」「文学部は駄目よ」~目次より~ (解説 松本侑子)》
大佛次郎『角兵衛獅子―鞍馬天狗傑作選1』文藝春秋・2007年
《拙者の名は……鞍馬天狗。わかったかな
幕末の京都を舞台に、暗殺刺殺を日常茶飯とする新撰組を敵に回した、勤皇の闘士・鞍馬天狗。杉作少年初登場の本篇でも怪傑ぶりを発揮》
大佛次郎『山嶽党奇談―鞍馬天狗傑作選2』文藝春秋・2007年
《正面に新撰組、背後には山嶽党。危うし、鞍馬天狗!
幕末の京都に出没する殺人集団・山嶽党。参加を求められるが、その残忍な手口を憎む鞍馬天狗は、断固拒否。そのたま狙われる身に》
大佛次郎『鬼面の老女 ほか―鞍馬天狗傑作選3』文藝春秋・2007年
《目元もすずしい覆面の快男児・鞍馬天狗はきょうもゆく
殺気だつ幕末の京都に神出鬼没、ときに新選組と白刃を交え、徒党を組まず、つねに弱い者の味方として正義を貫くヒーローの活躍を描く》
収録作品=鬼面の老女/銀煙管/女郎蜘蛛/女人地獄/影法師/刺青/鬘下地/香りの秘密/雪の雲母坂
速水御舟『速水御舟随筆集 梯子を登り返す勇気』平凡社ライブラリー・2024年
《四十年の生涯の中で数々の作品を生み出し、日本画の新たな可能性を切り拓いた画家・速水御舟。「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い」その言葉からは、「型」に甘んじることなく挑戦を続け真の美を追求した画家の真摯な姿が浮かび上がる。岸田劉生、安田靫彦ら、御舟を知る人々の随筆も収録。芸術を究める道の険しさと愉しさを豊かな言葉で紡いだ、瑞々しい随筆集。》
エウリーピデース『バッカイ―バッコスに憑かれた女たち』岩波文庫・2013年
《「それ行けバッカイ、行けバッカイ」。木ヅタの冠、皮の衣、からだに蛇を巻きつけて、女たちは家を飛び出し山野を疾走する。「小賢しいことは知恵ではない」――陶酔と理性、自然と人智のはざまで、優しく恐ろしい神ディオニューソスと人間の直接対決がはじまる。ギリシャ三大悲劇詩人エウリーピデースの最後の悲劇。》
ソポクレース『アンティゴネー』岩波文庫・2014年
《「私は憎しみを共にするのではなく、愛を共にするよう生まれついているのです」――祖国に攻め寄せて倒れた兄の埋葬を、叔父王の命に背き独り行うアンティゴネー。王女は亡国の叛逆者か、気高き愛の具現者か。『オイディプース王』『コローノスのオイディプース』と連鎖する悲劇の終幕は、人間の運命と葛藤の彼岸を目指す。新訳。》
ヘンリー・ジョーンズ『第二期 世界秘密文学選書2 ヘンリー氏の好色日記』浪速書房・1963年
(著者名はカバー背表紙では「ヘンリー・ジェームス」、カバー表紙では「ヘンリー・ジエムス」となっているが本体・序文では「ヘンリー・ジョーンズ」。)
ヴェルレーヌ『ヴェルレーヌ詩集』新潮文庫・1950年
《典型的なデカダンスの詩人ヴェルレーヌは、市民意識の高揚する激動のパリに生き、霊肉の相剋に苦しみ敗残の姿をさらしながら、独特の音楽的手法を駆使した斬新な詩的世界を確立した。本書には、明快な表現と優雅な感覚に富む第一詩集『土星の子の歌』、短かった幸福な日の形見草『やさしい歌』ほか『艶かしきうたげ』『無言の恋歌』など、詩人の永遠の魂の歌を網羅した。》
西村寿行『幻の白い犬を見た』角川文庫・1978年
《それは、あっという間の出来事だった。未亡人の山東まさの車が、真一文字に濁流渦巻く天竜川にダイビングしたのだ。だがその瞬間、目撃者は車の前を走る白い犬を見たような気がした。彼女はその犬を轢き殺そうとして後を追ったように見えたのだ。
だが事故現場には、犬の足跡もブレーキを踏んだ跡もない。自殺か、他殺か、それとも過失か? そして白い犬の正体とは? 謎の背景には、数世代前の山東家の恐るべき因縁が秘められていた……。
スリルとサスペンス溢れる全7篇を収録。》
収録作品=四人の相続人/追いつめられて/青い魔境/牙/封鎖された街/盗聴/幻の白い犬を見た
倉橋由美子『蛇・愛の陰画』講談社文芸文庫・2009年
《午睡中、大蛇が口から入りこみ、腹中に居すわられてしまった男。彼を〈被害者〉に見たて、運動に利用しようとする組織。卓抜な発想と辛辣な批評精神で、当時の世相を切りとった「蛇」。性と悪の問題に真正面から挑んだ「蠍たち」――。一九六〇年、「パルタイ」で衝撃的なデビューを果たした著者の、その後の五年間の初期作品七篇を精選。イメージの氾濫する〈反リアリズム〉の鮮やかさを示す一冊。》
収録作品=貝のなか/蛇/巨刹/輪廻/蠍たち/愛の陰画/宇宙人
由水常雄『鏡の魔術』中公文庫・1991年
《鏡は本来、呪力を具えた神器であり、富と権力を象徴する宝物であった。古代の金属鏡に始まる鏡の歴史を、豊富な図版によって分り易く紹介しながら、文学、美術、建築等において重要な要素として扱われてきた鏡の妖しく不思議な魅力を探る。》
島田一男『鉄道公安官』徳間文庫・1984年
《鉄道公安官海堂次郎がスリ団摘発に乗り込んだ上り急行『出雲』で事件が発生した。大阪からの乗客・東都工業大学助教授大久保秋郎が、東京―熱海関で寝台車から姿を消してしまったのだ。
大久保はガソリンのG組織に関する研究結果を大手企業三洋石油へ高額で売り渡していた。海堂の捜査が進むうちに、大久保の妻とその愛人が殺害され、大久保も水死体で発見された。真犯人は意外にも……。》
吉田秀和『バッハ』河出文庫・2019年
《バッハを聴くと、何がわかるか――をさまざまに追求した究極の一冊。ミサ曲、受難曲、管弦楽曲、ピアノ、無伴奏チェロ…。リヒター、ヴァルヒャ、グールド、リヒテル、マイスキー、ビルスマ…。「私がバッハについて書けるのはここまで。私は口をつぐんでバッハを聴く。」(吉田秀和) 解説=小池昌代》
西村寿行『魔界』角川文庫・1980年
《そのとき、ブレーキの軋みと、若い男の叫びと、衝突音が同時に起こった。“はねてしまった…!”道路に倒れている男は動かない。が、彼は辺りに誰もいないことに気付いた…。
車体の傷から轢き逃げの発覚を恐れた彼は、車を修理に出した。が、あとで、車の損傷部分をカメラに納めて帰った男がいることを知らされた。そして、その男の正体が、会社の陰険な部下であることを知ったとき、彼は心にどす黒い殺意が噴き上げてくるのを覚えた! (「黒い血の果て」)
ある日の出来事をきっかけに、平穏な日常から恐ろしい魔界に落ち込む、入間の恐怖と戦慄を描くブラック・ロマンの世界。全5篇収録!》
収録作品=黒い血の果て/異常者/忍びよる闇/百年の追跡/残像
山本浩貴『現代美術史―欧米、日本、トランスナショナル』中公新書・2019年
《20世紀以降、芸術概念は溶解し、定義や可能性を拡張した新しい潮流が続々と生まれている。アーティストは、差別や貧困のような現実、震災などの破局的出来事とどう格闘しているのか。美術は現代をいかに映し、何を投げかけたか。本書は難解と思われがちな現代美術を、特に第二次世界大戦後の社会との関わりから解説、意義づける。世界中の多くの作家による立体、映像、パフォーマンスなど様々な作品で紡ぐ、現代アート入門。》
斎藤栄『山陰殺人行』徳間文庫・1984年
《古都鎌倉に住む高校生浅尾浩二は、自宅で何者かに襲われたショックで記憶を失った。母親の明代もまた故郷の鳥取に出かけた折りに立ち寄った大砂丘で謎の凶弾に狙われ殺害された。
平和な母子家庭を襲った悲劇――敏腕女性探偵一条さゆりは、明代に高額の生命保険金をかけた男女を有力な容疑者として追及するが、事件は連続殺人事件へと発展して真犯人は意外にも……。本格長篇推理。》
ロバート・シルヴァーバーグ『生と死の支配者』ハヤカワ文庫・1979年
《23世紀、人口爆発に悩む地球政府は〈ポピーク〉と呼ばれる世界人口の平均化を施行する組織を設立した。その役目は、人口過密地域から過疎地域へ人々を強制移住させること。そして、適者生存の法則に反する人間を安楽死させることだった! 折しも死刑執行人として人々に怖れ憎まれていた〈ポピーク〉の長官が暗殺された。後任には急遽副長官のウォルトンが抜擢されたがやがて彼は、前長官が密かに画策していた驚くべき陰謀の渦中に、いやおうなく巻きこまれていった……。俊英シルヴァーバーグが、病める現代の持つさまざまな問題を鋭く暴き、未来社会に投影した問題の書!》
ロバート・シルヴァーバーグ『いまひとたびの生』ハヤカワ文庫・1977年
《とどまることを知らぬ科学の発達は、ついに驚くべき奇跡を現実化した。人間の人格=魂を完全に記録し、それを他の人間の脳の内部に蘇らせる技術が完成されたのだ! その結果、残された魂をもとに、死者は再び第2、第3の人生を生きることが可能となり、また自分の脳に移植した魂の全能力全知識を活用できることから、寄生される人間も宿主となることには積極的だったのだが……。仏教的輪廻が、文字通りこの世に現出した遙かな未来世界を背景に、才筆シルヴァーバーグが真に不可思議な冒険ヘと読者を誘い、しかも生と死の前で苦悩する人間の姿を鮮かに浮彫りにした快心作!》
四方田犬彦『映像要理』朝日出版社・1984年
《女性とは心理の非-真理の名称。禁じられたものの侵犯として性的想像力を組織する映像から修辞を剥ぐ。》
グレゴリー・ベイトソン『大衆プロパガンダ映画の誕生―ドイツ映画ヒトラー青年クヴェックスの分析』御茶の水書房・1986年
《文化装置の解読。ナチスとはどのような人びとか!? 1933年に製作された劇映画『ヒトラー青年クヴェックス』の分析を通し、ナチスを再生産するプロパガンダの構造を解明する。文化人類学、精神分析等の方法を縦横に駆使した、文化のエピステモロジー。訳者による解説「『ヒトラー青年』をどう見るか」(平井正)「精神のエコロジスト」(宇波彰)を付す。》
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