不調で放置してあった2025年4月分。
草野唯雄それもノベルズ(新書判)の古本も最近なかなか見かけなくなった。
武満徹『時間の園丁』の装幀は宇佐美圭司。
伊藤俊治『20世紀イメージ考古学』朝日新聞社・1992年
《美術・建築デザイン・演劇・ダンス・映画・写真・音楽・科学・思想・文学・メディア……20世紀のアートはジャンルを超えて無数のネットワークを結んでいる。イメージの狩人たちの“血縁”関係を浮かび上がらせるスーパー芸術史事典。》
武満徹『時間の園丁』新潮社・1996年
《二十世紀音楽に偉大な足跡を残し、世界中の音楽愛好者に惜しまれつつ逝去した、作曲家・武満徹。その洗練の極みを尽くした美意識と峻厳な批評精神を余すことなく示した最後のテクストをまとめる。》
青柳いづみこ『ドビュッシー―想念のエクトプラズム』中公文庫・2008年
《神秘思想・同性愛・二重人格・近親相姦・オカルティズム……。印象主義という仮面の下に覗くデカダンスの黒い影。従来のドビュッシー観を覆し、その悪魔的な素顔に斬り込んだ、一線のピアニストによる画期的評伝。 解説・池上俊一》
阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』新潮文庫・1994年
《天地創造、アダムとエバ、カインとアベル、ノアの箱舟、バベルの塔。有名な創世記あたりはともかく、面倒なレビ記、申命記付近で挫折という方に福音です! 預言書を競馬になぞらえ、ヨブ記をミュージカルに仕立て、全体の構成をするめにたとえ――あらゆる意味で西欧の原点である「旧約聖書」を、枝葉末節は切り捨て、エッセンスのみを抽出して解説した、阿刀田式古典ダイジェストの決定版。》
清水一行『花の嵐―小説小佐野賢治(上)』光文社文庫・1999年
《戦時中、そして終戦直後の混乱期を抜群の商才で乗り切り、蓄財に成功した小佐野賢治に大きな飛躍の機会が訪れた。東急電鉄のオーナー五島慶太との出会いである。五島に勧められた箱根の強羅ホテルの買収、これが賢治にツキをもたらした。熱海、山中湖に所有のホテルが駐留米軍の休息所に指定され、膨大な家賃が支払われたのだ。賢治は次に運輸事業へ乗り出した。》
清水一行『花の嵐―小説小佐野賢治(下)』光文社文庫・1999年
《小佐野賢治の鋭い先見性と適確な経営方針、潤沢な資金力。彼の財力に依存し、人は経営状態の悪いボロ会社を押しつけたが、賢治はそれらの会社を後年必ず、優良企業に変身させた。そんな賢治の前に、彼の運命を大きく左右する男が現われた。新進政治家の田中角栄である。この男を、自分の手で一国の総理にしたいという夢。…一代の傑物の波瀾の生涯を描く大作。》
岡田暁生『音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉』中公新書・2009年
《音楽の聴き方は、誰に言われるまでもなく全く自由だ。しかし、誰かからの影響や何らかの傾向なしに聴くこともまた不可能である。それならば、自分はどんな聴き方をしているのかについて自覚的になってみようというのが、本書の狙いである。聴き方の「型」を知り、自分の感じたことを言葉にしてみるだけで、どれほど世界が広がって見えることか。規則なき規則を考えるためにはどうすればよいかの道筋を示す。》
黒岩重吾『夜の光芒』角川文庫・1986年
《澄子はクラブカミの売れっ子ホステスだ。夢は自分の店を持つことでそのために全てを傾けており、有力な客とは、実益を兼ねたプレイも楽しんでいた。そして資金開店もあと一歩の所迄たまった。
ある夜のことだ。かつての同僚が開くスナックをたずねた澄子は、そこで滝村という男を紹介された。彼は澄子の過去に影をおとす男に似たムードを漂わせていた――。
束の間の夜にまたたき生きてゆく女性達の人生を鋭く描く傑作作品集。》
収録作品=夜の光芒/新開地の女/蝶の巣/蒼ざめた虹/銀座の花瓶/蜜蜂の踊り
黒岩重吾『女の熱帯』角川文庫・1978年
《女が仕事を持つ時、何故さまざまな軋蝶が生じるのだろう。それは女の業なのだろうか――。
襟子の仕立ては評判がよい。経営する“洋裁店エリ”も順調に伸びている。しかし、繊維会社に勤める夫、山形はそんな襟子に不満だった。自分より収入が多いことが最大の原因だったが、夫婦はしっくりいっていなかった。
ある日、襟子は学生時代の恋人で、いまは広告会社の社長をしている宇津木と再会した。襟子の心は徴妙にゆれ動いた。一方、焦りを感じ、新しい事業をおこそうとしていた山形は、事故で急死した。しかもその裏には、一人の女の影が――。
仕事、夫、かつての恋人、そして…襟子の胸に去来するさまざまな想い。女の性と人生を描ききる力作長編。》
矢野徹『桃色の川は流れる』角川文庫・1981年
《私が今でも思い出すのは、平和で美しいムカシ惑星という名の星で、静かに流れていた桃色の川のことと、サンタクロースが生まれ変わったような不思議な犬、サンタのこと――真っ白な手足と顔に短い尻尾、真赤な鼻と黒い目をもつ可愛い犬。ところがサンタは、なんと未来予知能力を持っていた。
そしてそんなある日やってきた恐るべき事件。それは、我々とサンタの運命を大きく変えてしまった!
異星での人と大との感動的な交流を描いたSFメルヘン。表題作他9編収録。》
収録作品=時間をこえた男/盗まれた東京/カメレオン人間/トムトムとトモコ空港/地底からの使者/巨人クセノン/ロボット軍曹/フレンドシップ2/いたずら小僧/桃色の川は流れる
矢野徹『地球0年』ハヤカワ文庫・1973年
《197X年、偶発水爆戦争により米中ソ三大国は壊滅した。全世界を覆う惨憺たる状況の中、被害を関東地方のみに限られた日本では、国連の要請に従いアメリカ太平洋岸地帯への自衛隊派遣を決定する。治安維持と戦災者の救援――名目はいかにあれ、かつてアメリカに占領された日本が、今度は遂にアメリカを占領することとなったのだ! 大阪、福岡、清水、仙台の各港から出帆した陸上自衛隊の精鋭八千は、12日の航海の後カリフォルニア州ユーレカに上陸。有色人種に対する根強い偏見と憎悪、執拗な抵抗運動と闘いながら、危険きわまる任務を開始した……。ベテランが鮮烈に描く第三次大戦後の恐怖世界!》
平井和正『幻魔大戦4』角川文庫・1980年
《並みはずれた体力の田崎は獣のように吠えながら、木刀を振り降ろした。丈は微動だにせず、これを頭上で受けた。丈の額に筋を引いて鮮血が流れる。田崎は、素手の相手を撲殺した恐れに戦いた。その時、「それで気がすんだのか?」と丈が平然といった。
高校二年の超常能力者、東丈の周辺に変化が生じた。なぜか、彼の周りに人が群がり始めたのだ。やがて“GENKEN”と呼称される組織が結成され、全校的な規模に広がっていった。丈は、これを全人類的な愛の結束にまで高め、幻魔の侵略に対抗しようと考えていた。だがその時、強力な邪魔者が現われた。
好評の「幻魔大戦」シリーズ第4弾!》
草野唯雄『博多長崎殺人行』カドカワノベルズ・1986年
《橋の改修工事で発見された女のミイラ死体。遺留品は朽ち果てた一枚の名刺。「行方不明の母では…」名乗り出た洋子。身許は確定された。だが誰が、何のために母をこんなむごい姿にしたのか。警察は過去の事件に手をつかねて動かない。少ない手掛りを頼りに、洋子は独り犯人を探し始めた。母のかつての職場、知人を訪ねまわるうちに、犯人とおぼしき男の姿が浮かびあがってきたが――。歴史と風光明媚な街博多、長崎、天草を舞台に、復讐に燃え、真相を追う女。スリルとサスペンスで描く傑作ミステリー。》
中町信『高校野球殺人事件』徳間文庫・1989年
《高崎市内の川土手で、私立春野見高校の女生徒が扼殺死体で見つかった。翌々日、同校の女教師が不可解な遺書を残して自殺。さらには行方不明だった同校野球部監督が毒殺死体で発見される。春野見高は、野球部創設三年目にして甲子園出場という快挙をなし、県内に一躍その名を知られていた。警察は一連の事件の背景に、夏の甲子園大会の代表校選出を巡る陰謀が絡んでいるとみて捜査を進めるが……。長篇推理。》
笹沢左保『拳銃―家族たちの戦後史』文春文庫・1983年
《この“家族たちの戦後史”とサブタイトルのついた連作小説は飢餓・観衆・絶食・祭典・人質・姦淫・拳銃の七作で構成されています。昭和21年、30年、35年、39年、45年、46年、51年に、家庭を襲った混乱と事件を背景にして、日本人の多くが得たもの失ったものを、ミステリー仕立てで、鮮やかに鋭く捉えた傑作です。 解説・藤田昌司》
F・ ニェズナンスキイ『犯罪の大地―ソ連捜査検事の手記』中公文庫・1986年
《厭世自殺・痴情殺人・少年犯罪・売春・ユダヤ人問題に絡む殺人・マフィアと各種工場の地下経済・ノーメンクラツーラが支配する国家機関の汚職など天文学的数字に達する各種犯罪の実態、かならず突き当る捜査の壁、党の政策で揺れ動く無原則な裁判。亡命捜査検事がドキュメンタリー・タッチで描くソ連犯罪白書。》
森銑三・柴田宵曲『書物』岩波文庫・1997年
《生涯を近世の書物研究にささげた森銑三(1895‐1985)、柴田宵曲(1897‐1966)の両碩学が、書物、読書、出版について長年の蘊蓄を傾けた随想集。真っ向からこれらのテーマに切りこむ森銑三に対し、淡々とその楽しみを語る柴田宵曲と、文章は対照的であるが、その端ばしに「書物への愛」があふれている。(解説=中村真一郎)》
河合隼雄『子どもの宇宙』岩波新書・1987年
《ひとりひとりの子どもの内面に広大な宇宙が存在することを、大人はつい忘れがちである。臨床心理学者として長年心の問題に携わってきた著者が、登校拒否・家出など具体的な症例や児童文学を手がかりに、豊かな可能性にみちた子どもの心の世界を探究し、家出願望や秘密、老人や動物とのかかわりが心の成長に果す役割を明らかにする。》
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