今月も熱っぽいやら目が利かなくなるやらで、全く読めない日が多かった。
こうなると内容が易しいかどうかとかは関係がない。
光瀬龍・福島正実・高橋泰邦・今日泊亜蘭・眉村卓『SF未来戦記 全艦発進せよ!』は、表紙だけ見ると好戦的な本にも見えるが、書き手が若い時に戦禍に遭った世代ばかりなので、戦争の虚しさ、やりきれなさ、厭戦気分がしたたり落ちるような本になっている。
佐野洋『小説 三億円事件』講談社文庫・1984年
《事実は小説よりも奇なり? 小説は現実よりも面白いか?――十六年前に発生して日本中の話題をさらい、今なお未解決の、かの「三億円事件」をヒント・素材にして、推理作家がさまざまの視点からリアリティーのある五つの「小説・物語」として構成した、異色かつ出色の連作ミステリー集。》
収録作品=系図・三億円事件/三億円犯人会見記/三億円犯人の情婦/三億円犯人の兆戦/三億円犯人の秘密
赤川次郎『毒(ポイズン)』集英社文庫・1984年
《わずか一滴で致死量に達し、しかも、検出不可能という完全犯罪を約束する毒の小ビン……。愛人をうとましく思う週刊誌記者から刑事、女性タレント、首相暗殺を企てる過激派へと“毒”は人々の手を転々とする。人々の深奥に潜む殺意を横糸に軽妙な恋のかけひきを縦糸にからませたオムニバス長編ミステリー。
解説・氷室冴子》
毒 ポイズン - Wikipedia
ヤンソン『ムーミンパパ海へいく』講談社文庫・1980年
《かわいいムーミントロールとやさしい、ママ、おしゃまなミイにすてきな仲間たち。毎日が平和すぎてものたりないムーミンパパは、ある日一家と海をわたり小島の灯台守になります。海はやさしく、ある時はきびしく一家に接し、パパはそんな海を調べるのにたいへんです。機知とユーモあふれるムーミン童話。》
西村京太郎『寝台特急「北陸」殺人事件』講談社ノベルス・1984年
《古都・金沢で失踪した親友の行方を追って、上野発二一時五〇分のブルートレインに乗り込んだOLの理沙は、車内で何者かに後頭部を一撃された。他の車両にいた旧友・井崎徹も刺殺され、理沙に嫌疑がかけられた。親友と真犯人を追う理沙の身にふりかかってくる危機。十津川警部の名推理で暴かれた意外な犯人の素顔!》
《著者のことば
北陸という土地と言葉には、相反する二つのイメージがつきまとう。明るい海岸線の景色と、陰惨な北の空と日本海の景色である。
どちらも、北陸なのだ。この作品で、三人の若い女性が、北陸に旅しながら、幸福と不幸、生と死に直面する。北陸の二面性そのもののように。その案内状は、寝台特急「北陸」である。》
齊藤貴子『ラファエル前派の世界』東京書籍・2005年
《ホルマン・ハント,ロセッティ,ミレイら英国絵画史の華・ラファエル前派とは何だったのか。諸作品の成立事情,画家とモデル,社会背景などを豊富な図版を付して平易に語る。》
立木康介編著『精神分析の名著―フロイトから土居健郎まで』中公新書・2012年
《フロイト『夢解釈』(一九〇〇年)の刊行から一世紀あまり。この間、精神分析は何を問い、いかに思考してきたのか。フロイトをはじめ、クライン、ビオン、ハルトマン、コフート、ラカンなど代表的な精神分析家一六名による二一編の名著によって、精神分析の誕生と発展、理論と技法の創造・再創造の軌跡をたどる。国際精神分析協会派とラカン派の双方から我が国で活躍する分析家・臨床家が結集して生み出した画期的な一冊。》
佐野洋『銀色の爪』集英社文庫・1985年
《〈あっ、八重子だ!?〉元新聞記者の間垣は一瞬、自らの目を疑った。彼女とは、五年前にしばらく付き合ったことがあるが、資産家の養女となった後、自殺したはずだ。そのことは新聞記事にもなっていたが……。彼女の死の謎を追う間垣の前に、驚くべき事実が次々に明かされてゆく。巧妙なストーリーで読者を魅了する長編推理。 解説・清水谷 宏》
清水一行『投機地帯』集英社文庫・1978年
《悪名高い学生高利貸しの残党という汚名を背負った黒沢弘彰は、手形のパクリ屋と組んで証券担保の金融業を表看板に、相手を根こそぎ食い潰す“幻販売業”を始めた。投機株といわれている吉原製鋼所に狙いを定め、緻密な計画を進めたが吉原社長殺害という予期せぬ事件が起こった。虚々実々、非情で峻烈な裏投機の実体と、一匹狼対企業の闘いを描いた異色経済推理。 解説・宮野 澄》
玄侑宗久『禅的生活』ちくま新書・2003年
《生きにくい世の中である。不況、雇用不安などの外圧もさることながら、個人の内部に深く根差した、生きるための目標、足場の固め方までもが見えにくくなっている。だけど、しょせん人はこの身と心で生きてゆくしかない。それならいっそ、ものの見方をがらりと変えて、もっと楽に生きるための思考法を身につけてしまおう。作家にして禅僧である著者が、禅語をもとにその世界観をひもときながら、「今」「ここ」を充実させるための様々な智慧を、坐禅なしに伝授してしまおうという画期的にしてフラチな人生指南&禅入門の一冊。》(「BOOK」データベースより)
幸田文『さざなみの日記』講談社文芸文庫・2007年
《「明るく晴れている海だって始終さざ波はあるもの、それだから海はきらきらと光っている。」――手習いの師匠を営む母と年頃の娘、そのひっそりと平凡な女所帯の哀歓を、洗練された東京言葉の文体で、ユーモアをまじえて描きあげた小説集。明治の文豪幸田露伴の娘として、父の最晩年の日常を綴った文章で世に出た著者が、一旦の断筆宣言ののち、父の思い出から離れて、初めて本格的に取り組んだ記念碑的作品。》
サタミシュウ『かわいい躾』角川文庫・2012年
《26歳の高校教師・美樹は担任することになった生徒の澄美を見て嫌な予感を覚える。かつて童貞高校生だった頃に特殊な性の手ほどきをしてくれた志保先生と同じ“匂い”を澄美が持っていたからだ。絶対に手を出してはいけないと思いつつも志保先生によって育まれた美樹の性癖は徐々に覚醒する。ついには澄美に接近するが、彼女は美樹の想像を遙かに超える女だった…。シリーズ史上“最強”ともいえる奴隷が登場する第7弾。》(「BOOK」データベースより)
都筑道夫『魔海風雲録』中公文庫・1979年
《山大名紅面夜叉と卒塔婆弾正、真田の若君大助と家臣の三好清海入道、望月六郎、それに若き忍者猿飛佐助、非情の密偵霧隠才蔵、漂泊の異人穴山岩千代、石田三成の血をひく女海賊、ポルトガルの奴隷商人などが謎を秘めた鏡を追って血を流す――豊臣・徳川の転換期の木曽谷と大海原を舞台に描く奇想天外、まさに異色の伝奇大ロマン。》
日野啓三『鉄の時代』文藝春秋・1979年
収録作品=黒い穴/階段/空室/廃園/鉄の時代/河口/雲の柱/井戸/軌道/断層/共生/骨肉/逆光
ハンス・エーリッヒ・ノサック『盗まれたメロディー』白水社・1974年
光瀬龍・福島正実・高橋泰邦・今日泊亜蘭・眉村卓『SF未来戦記 全艦発進せよ!』徳間書店・1978年
収録作品
戦士たち/あかつきの谷間/機動部隊を撃滅せよ/白兵戦/トロイ作戦/月面基地をほうむれ!/三陸沖異状あり/敵の手にわたすな/ネグロスの丘/もう一つの夜明け(光瀬龍)
空の記憶/蘇る過去/決定的瞬間(福島正美)
出撃十五分前/海底基地――SOS/書かれざる戦記/発狂した水爆艦(高橋泰邦)
幻兵団/確率空中戦/御国の四方を――/みどりの星(今日泊亜蘭)
敵は地球だ/虚空の花/最初の戦闘/最後の火星基地/怨霊地帯/防衛戦闘員/最終作戦/敵と味方と(眉村卓)
柄谷行人・中上健次『小林秀雄をこえて』河出書房新社・1979年
星新一『おかしな先祖』講談社文庫・1974年
《戸をあけると、ルパン三世、雪ダルマや宇宙人。変なのばかりが飛び出してくる「戸棚の男」。かみつかれたものなら何にでも、変身につぐ変身をかさねる自主性のない男の悲喜劇「オオカミそのほか」。アダムとイヴが、とつぜん現代に出現する「おかしな先祖」など。残酷なまでにさえかえった10の星新一SF落語。》
収録作品=心残り/とんとん拍子/戸棚の男/四で割って/ほれられた男/オオカミそのほか/倒れていた二人/ふーん現象/所有者/おかしな先祖
ピエール・ゲール編著『〈セリ・ポエティク3〉ルネ・シャール』思潮社・1969年
植村和秀『昭和の思想』講談社選書メチエ・2010年
《「戦前=戦後」だけでなく、昭和はつねに「二つの貌」を持っていた。皇国史観から安保・学生運動まで、相反する気分が対立しつつ同居する昭和の奇妙な精神風土の本質を、丸山眞男・平泉澄・西田幾多郎・蓑田胸喜らの思想を元に解読する。》(「BOOK」データベースより)
いとうせいこう『鼻に挟み撃ち 他三編』集英社・2014年
《耳を澄まし、鼻を利かせるとあらわれる、マスクの下の、もう一つの秘密。いとうせいこうにしか書けない、可笑しくて哀しい、人生4つ分のふしぎ。第150回芥川賞候補作となった表題作の他、不思議な読後感を残す3つの傑作短編を収録。》(「BOOK」データベースより)
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Kokaji (The swordsmith) and Kuzu
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