このところ急に涼しくなったものの、暑い盛りではあったし、どうも今月もあまり本が読めた気はしないのだが、並べてみると冊数だけは40冊以上になっていて、どうなっているのだかと思う。素通りしているだけなのか。
ハルキ文庫の光瀬龍は、角川文庫、ハヤカワ文庫その他もろもろの日本SFが軒並み絶版になった90年代以降に落穂拾いのようにして復刊されていたものの一つなので、この辺になると装幀的にはあまり懐かしくもないのだが、それらも既に前世紀の刊行物となってしまっている。光陰矢のごとしと言ってしまえば当たり前だが、光瀬龍の宇宙年代記ものは、宇宙に出て行った人類が各所に廃墟だけ残して姿を消す、平家物語の壇ノ浦みたいな話が多いので尚のこと。
ジャック・フィニイ『夢の10セント銀貨』ハヤカワ文庫・1979年
《会社では上司にののしられ、家では妻に文句をいわれ……そんな毎日を送っていたベンの人生は、ポケットから出てきた一枚のコインを手にしたとたん一変した。なんとそれは、別世界への扉を開く魔法のコインだったのだ。新しい世界でのベンは有能な社員、おまけに妻はかつての初恋の女性。何もかもがすばらしいこの別世界で、ベンはこんどこそ幸運をつかめると思ったが……。人生の哀歓をユーモラスに綴るフィニイの会心作》
光瀬龍『宇宙塵版/派遣軍還る』ハヤカワ文庫・1981年
《対アルテア星群域戦に派遣された兵団が終戦をむかえ、ダリヤ0に還ってくる。空港区には、父の、夫の、恋人の還りを待つ人々の顔、顔、顔。やがて、天の一角から湧き出るように数編隊の宇宙船が現われた。一隻ずつ、ゆっくりとフラットに滑り込んだ船体からリフト・チューブが伸びる。そのリフトのドアが開いて……しかし、いつまでたっても誰も出てこない。 4000の兵団はどこに消えてしまったのか?――美貌の情報局長ケイ・リーミンの活躍を描き、日本のナンバー1SF同人誌〈宇宙塵〉掲載時に好評を博した光瀬龍の処女長篇、待望の文庫化!》
池田亀鑑・秋山虔校注『紫式部日記』岩波文庫・1964年
《紫式部が中宮彰子に仕えた期間のうち寛弘五(一○○八)年七月から約一年半にわたる日記と消息文から成る.道長邸の生活,彰子の出産,正月の節会など大小の見聞が,式部独特の鋭敏な感覚を通して記録されている.自他の人間を見すえてたじろぐことのなかった『源氏物語』の作者の複雑な内面生活をうかがい知るうえからも貴重な文献.》
森鴎外『阿部一族 他二篇』岩波文庫・2007年
《細川忠利公の死で後を追った忠臣が18名を数えたのに,なぜか阿部弥一右衛門の場合は──許されぬ殉死が招く一族の悲劇.武士道が支配する封建制下の日本社会で,人間はいかなる思想心情のもとに生き,また死んだか.初期歴史小説の代表作「興津弥五右衛門の遺書」「佐橋甚五郎」の2篇を併せて収録.解説=斎藤茂吉.改版》
NHKスペシャル 深海プロジェクト取材班+坂元志歩『ドキュメント 深海の超巨大イカを追え!』光文社新書・2013年
《二〇一二年夏、小笠原の海で、一〇年以上にわたってダイオウイカを追い続けてきた男たちが、奇跡を起こした。誰も成し得なかった撮影を可能にしたのは、いったい何だったのか?空をつかむ日々の連続で、気持ちをつなぎとめたものは何か。意中のものを手にしたとき、人は何を思うのか。プロデューサー、ディレクター、カメラマン、研究者への膨大な取材で明かされる、感動のストーリー!一六・八%の視聴率を記録した「NHKスペシャル世界初撮影!深海の超巨大イカ」の公式ドキュメント本。》(「BOOK」データベースより)
稲垣良典『トマス・アクィナス『神学大全』』講談社選書メチエ・2009年
《神とは何か。創造とは、悪とは、そして人間の幸福とは?キリスト教の根源にトマスは深い洞察で答える。斯界の第一人者が『神学大全』をアクチュアルな挑戦の書として読み直す。》(「BOOK」データベースより)
ミヒャエル・エンデ『エンデ全集16 芸術と政治をめぐる対話』岩波書店・2002年
《おなじみファンタジー作家エンデと、カリスマ的パフォーマンスで同時代を揺さぶりつづけたアクション彫刻家ボイス。芸術家の生む新しいイメージが人間を変えるというエンデと、社会こそ誰もが参加する「見えない彫刻」だと主張するボイスが、閉塞した現代の政治と文化を変革する芸術のあり方をめぐって論じ合う。二人の思想の原点が語られる力強い言葉のライブ。》(「BOOK」データベースより)
内田樹『レヴィナスと愛の現象学』文春文庫・2011年
《リトアニア生まれにして、ホロコースト・サヴァイヴァーであるフランス国籍のユダヤ人哲学者、エマニュエル・レヴィナス。研究者の立場からではなく、彼の「自称弟子」として、哲学史に卓絶する圧倒的なテキストをウチダが読み解く。あなたにも、難渋で知られる文章の向こうにレヴィナス先生の暖かな顔が見えてくる。》(「BOOK」データベースより)
渡辺一夫・鈴木力衛『増補 フランス文学案内』岩波文庫・1990年
《フランス文学は人間学であり、フランス文学史とは即ちこの人間学の連続講演に他ならぬという発想で本書は執筆され、三十年間にわたって幅広い読者にむかえられてきた。このたび二○世紀の部を増補改定してアップ・トゥ・デートな内容とし、併せて全面改版をほどこした。》
アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』ハヤカワ文庫・1981年
《ホームズに始まりホームズに帰るといわれるほど、いつの時代にも読者の熱烈な支持を獲得してゆく不朽の名探偵、シャーロック・ホームズ――1887年『緋色の研究』からスタートしたホームズ物語は以後の探偵小説の流れに決定的な影響をあたえつづけてきた。本書は、その痛快無比な冒険の魅力を伝えた第一短篇集である。名作の誉れ高い「ボヘミア国王の醜聞」「赤毛連盟」「まだらの紐」など12の珠玉篇を収める新訳決定版。》
大江健三郎『壊れものとしての人間―活字のむこうの暗闇』講談社文庫・1972年
《読書は真の経験たりうるか、それによって育てられた想像力は、現実世界への想像力たりうるのか?》……自らの内なる暗闇に深くおもりを降ろしコワレモノたる人間存在の根源を究めた画期的エッセイ。「核時代の『悪霊』、または連合赤軍事件とドストエフスキー経験」を著者による〈自注と付録〉とした。》
西村寿行『帰らざる復讐者』講談社文庫・1980年
《タクシー運転手の原田光政は過去の幻影におびえつつ、ある日何者かに惨殺された。娘の季美も犯された上に息絶えていた。息子の青年医師義之は激怒し、見えざる犯人への報復を誓う。季美の許婚者峰岸も同じ思いだった。彼らが凄絶な追跡の果てに到達した敵の巨大な正体は? 壮大なスケールのサスペンス・ドラマ。》
高橋克彦『広重殺人事件』講談社文庫・1992年
《広重は幕府に暗殺された? 若い浮世絵学者津田良平が“天童広重”発見をもとに立てた説は、ある画商を通して世に出た。だが津田は、愛妻冴子のあとを追って崖下に身を投げてしまう。彼の死に謎を感じた塔馬双太郎が、調べてたどりついた意外な哀しい真相とは? 深い感動の中で浮世絵推理三部作ついに完結!》
高橋克彦『歌麿殺贋事件』講談社文庫・1991年
《歌麿の「幻の傑作」が発見された? 美術界をゆるがすかもしれぬ事件に雑誌編集者の杉原は勇み立ち、研究家の塔馬双太郎の助力をたのむ。
しかし、それは巧妙な贋作だった。そして思いがけず、歌麿は謎の絵師写楽でありえたことまで証明されて……。
浮世絵ミステリの白眉といえる秀作。》
阿部和重『□』リトル・モア・2013年
《突如もたらされた奇妙で厄介なミッション。巻き込まれた男は、恐怖の先にどんな風景を見るのか。視覚、死角、刺客、詞客、始覚、四角…あらゆる「しかく」が襲いかかる地獄の四面楚歌。4つの季節で描く、作家初のホラーサスペンス。》(「BOOK」データベースより)
細江英公『なんでもやってみよう―私の写真史』窓社・2005年
《人間写真家・細江英公の「これまで」と「これから」。17歳から72歳まで半世紀にわたる活動を未来へ向けて書き記す。》(「BOOK」データベースより)
笠井潔『エディプスの市』ハヤカワ文庫・1994年
《「ユウが愛しているのはママだけで、ママが愛しているのはユウだけだった」ドーム都市〈エディプス〉に往む少年は、誰もがみな母親と二人だけで暮らす。ユウとママもそうだった。二人は夜になると全裸で抱きあって眠った。ユウもその生活に満足していたのだがある日少女アイに出逢ってから、ユウの中にママヘの憎しみが生まれた――未来社会の性の姿を鋭く描く表題作他18篇を収録。SFとミステリを横断する鬼才の全短篇》
収録作品=エディプスの市(まち)/エロティック・ルーレット/ウェスターマーク教団の女/ニルヴァーナの惑星/鸚鵡の罠/愛の生活/惑星イルの密室/地球を救った男/留守番電話/避暑地の出来事/夜の訪問者/流されて/黒いオルフェ/雨のしのび逢い/地球に落ちて来た男//培養実験/ゴーギャンの絵/修道僧のいる柱廊/雑踏のなかの物神
草上仁『無重力でも快適』ハヤカワ文庫・1989年
《宇宙飛行時における最大の問題は――トイレ。特に長期飛行の場合は大問題だ。しかし、わが森田衛生設備株式会社が誇る最新式無重力トイレがあれば、そんな 悩みは解消。無重力でも快適な生活が送れるはず、なのだが……。このわが社自慢の製品にクレームをつけてきた客がいる。どうやらセンサーの調整ミスみたいなのだが、大変なことになっているらしい。ヴィデオフォンの向こう側にいる不定期貨物船オーナーの罵詈雑言がその程度を示していた……無重力トイレをめぐる大騒動を描く「無重力でも快適」他、五篇を収めるSF短篇集。解説・星新一》
収録作品=無重力でも快適/クーラー売ります/太公望/ウィークスを探して/ヘイブン・オートメーション
赤川次郎『長い夜』桃園書房・1989年
《事業に失敗し、一家心中を決意した家族に、見知らぬ男から奇妙な申し出があった。不可解な死に方をした娘と孫が暮らしていた家に往んで、死の謎をさぐってくれたら、借金を全額、肩代りしようといってきたのだ。一家は再起を期して、その気味の悪い家に引越した。》
《赤川次郎 昭和23年、福岡県生れ。桐朋学園高校卒業後、日本機械学会事務局に勤務。そのかたわら創作に没頭し、昭和51年「幽霊列車」で第15回オール読物推理小説新入賞を受賞、作家デビューを飾った。昭和53年には「セーラー服と機関銃」が映画化され、その文庫本はミリオンセラーとなった。以後、続々とベストセラーを刊行、当代一の人気作家である。趣味は映画と音楽。代表作に“三毛猫シリーズ”など多数。》
高木彬光『仮面よ、さらば』カドカワノベルス・1988年
《わたしは村田和子。この2年半の間にわたしの身近で、奇怪な殺人事件が4度も起こったが、その都度、正体のはっきりしない墨野隴人が鮮やかに解決してくれた。いつしかわたしは彼に盲目的な恋心を抱くようになったが、上松三男という秘書の仲介なくしては、墨野に会えない。どうしても彼に会いたい。そして彼の秘密主義と「仮面」をはがしてやりたい! その矢先、警察でも手を焼くような難事件がまたしても突発が!! 墨野隴人は姿を現わすだろうか。20数年前に起きた、不敬罪による小学校長自殺事件に端を発した謎の連続殺人事件。高木彬光最後の長編ミステリー。》
《●作者のことば
この度、満四十年の作家生活を終えて、もっぱら静養の生活に入ることに相成りました。
ついては、この「墨野隴人シリーズ」は、本作をもって完結いたします。
思えば、十年前に脳梗塞で倒れてから、ひたすら療養の一途をおくらざるを得なくなりましたので、あるいは、このシリーズが完結するかどうかを危んでおりました。幸いに、今回、この難題を完結し終わりまして、ある種の感慨に耐え得ないものがございます。
略歴=一九二〇年青森生。神津恭介をはじめ幾多の名探偵を生む。『刺青殺人事件』『白昼の死角』他著作多数。》
光瀬龍『宇宙救助隊2180年―宇宙年代記全集1』ハルキ文庫・1999年
《惑星間航路の開設以来、《宇宙救助隊》によってどれだけ多くの宇宙船やその乗組員たちが難をまぬかれ、また命を助けられてきたことか。しかし伝説化さえしている彼らの姿を見た者は誰もなかった――暗く荒涼たる宇宙を舞台に活躍する者たちの姿を描く表題作をはじめ、無限の宇宙にひっそり息づく人々と文明の、苦闘と繁栄の歴史に刻まれたエピソードが、雄大かつ静謐に語られる〈宇宙年代記〉全十三篇。 (解説・日下三蔵)》
収録作品=シティ〇年/ソロモン一九四二年/晴の海一九七九年/墓碑銘二〇〇七年/氷霧二〇一五年/オホーツク二〇一七年/パイロット・ファーム二〇二九年/幹線水路二〇六一年/宇宙救助隊二一八〇年/標位星二一九七年/巡視船二二〇五年/流砂二二一〇年/落陽二二一七年
光瀬龍『辺境5320年―宇宙年代記全集2』ハルキ文庫・1999年
《第三次統合戦争後の混乱と荒廃の中にあった地球連邦に対し、経済提携を申し出てきた辺境の植民都市連合。支配権をめぐって常に緊張をはらんでいた両者の関係は、地球連邦による、都市連合の資産凍結通告によって一挙に波瀾の兆しを見せはじめるのだったが……(「辺境五三二〇年」より)。茫々たる時の流れと無辺の空間の中に紡ぎ出される、人類と宇宙の物語全十一篇を収録した〈宇宙年代記全集〉第二巻。 (解説・星敬)》
収録作品=市(シティ)二二二〇年/戦場二二四一年/スーラ二二九一年/エトルリア二四一一年/シンシア遊泳池二四五〇年/流星二五〇五年/西キャナル市二七〇三年/連邦三八一二年/カビリア四〇一六年/カナン五一〇〇年/辺境五三二〇年
田中克彦『ことばの自由をもとめて』福武文庫・1992年
《日本語の国際化の条件から民族呼称、教科書問題、方言、現代詩まで、ことばをめぐる諸相を縦横に論じ、規範主義や差別助長に陥りがちな日本人の文化意識・政治意識を浮き彫りにする。ことばに対する感応力を呼び起こす、刺激的な言語批評。 解説:伊藤比呂美》
吉野裕子『蛇―日本の蛇信仰』講談社学術文庫・1999年
《古代日本は蛇信仰のメッカであった。
縄文土器にも活力溢れる蛇の造形がたくさん見られる。
蛇に対する強烈な畏敬と物凄い嫌悪、この二元の緊張は注連縄・鏡餅・案山子など数多くの蛇の象徴物を生んだ。日本各地の祭祀と伝承に鋭利なメスを入れ、洗練と象徴の中にその跡を隠し永続する蛇信仰の実態を大胆かつ明晰に検証する意欲的論考である。》
山下昌也『日本一小さな大大名―たった五千石で、徳川将軍家と肩を並べた喜連川藩の江戸時代』グラフ社・2008年
《元禄期の藩主、四代昭氏は赤穂浪士のせいで十万石の夢が消えた?幕末の藩主、十二代縄氏は黄門様の遺言で藩主になった?石高はわずか五千石、なのに格は十万石で、参勤交代なし、諸役なしの特別待遇、おまけに「御所さま」と敬われた。下野喜連川―。この小藩のお殿さま、いったい何者か。》(「BOOK」データベースより)
E・シャルガフ『ヘラクレイトスの火―自然科学者の回想的文明批判』同時代ライブラリー・1990年
《われらの時代の最大の科学のドラマ―分子生物学の誕生と生化学の確立に深くかかわった科学者が自らの研究生活を回想し、現代科学文明を鋭く批判、そのあるべき姿を示す。世紀末ヴィーン、二つの世界大戦を含む激動の時代のベルリン、パリ、アメリカの諸都市の様相も活写され、「青春の文学」とまで評価された自叙伝の名著。》
笠原英彦『歴代天皇総覧―皇位はどう継承されたか』中公新書・2001年
《天皇は古代より連綿と代を重ねてきた。壬申の乱、承久の乱、南北朝動乱などの激動を乗り越え、その系譜は千年以上にわたって続いている。皇位の継承はどのように行われ、どう変質をとげたのか。摂政・関白、将軍、執権といった時の権力との関わりはいかなる推移をたどったのか。記紀に記される初代神武天皇から昭和天皇に至る百二十四代と北朝天皇五代すべての生涯と事績を丹念に叙述する。巻末に系図、年表、索引を付す。》
メアリアン・ウルフ『プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?』インターシフト・2008年(マーゴット・マレク賞)
《〈文字・読書は、脳を劇的に変える!〉
古代の文字を読む脳から 、ネットの文字を読む脳まで、
ディスレクシア(読字障害)から 、読書の達人まで、
脳科学 x 心理学 x 教育学 x 言語学 x 文学 x 考古学 をめぐり、解き明かす。》
海野和男『昆虫の世界へようこそ』ちくま新書・2004年
《ヒトと昆虫は全く異なる進化の道を歩んできた。ヒトを含めた脊椎動物は背骨で体を支える構造を発達させてきたのに対し、昆虫は外骨格で体を支える構造を進化させてきた。これにより昆虫たちは、小さな空間で生息することが可能になり、種分化を繰り返すことで地球を生命で満ち溢れた世界にできた…。昆虫の視点で撮影した大迫力のカラー写真で、小さな昆虫たちにまつわるドラマを再現する。めくるめく昆虫ワールドをご堪能あれ。》(「BOOK」データベースより)
小泉武夫『発酵レストラン』マガジンハウス・2005年
《世界中の発酵食を食べ歩いた小泉武夫が初めて明かす、垂涎・頬落・舌踊の発酵料理の決定版。》(「BOOK」データベースより)
丸田祥三『東京幻風景』実業之日本社・2014年
《「ご近所絶景」を探しに行こう!
私たちのすぐ近くに潜む、「幻かと見まがう風景」。それは、いつも歩いている道かもしれませんし、電車に小一時間乗って出かけた先かもしれません。ふだん、それに気づいていなかったものでも「そういう目」で見れば、たちまち不思議な風景に変わります。
本書に掲載されているのは、写真家・丸田祥三が見いだした、日常の別アングルです。「うちの近所にこんなものがあったのか!」と驚く方も多いと思いでしょう。そうした風景を、都心のものから郊外のものまで地図とあわせて掲載しているので、カメラ好き、お散歩好きの方には東京周辺のよきガイドブックにもなります。本書で視点を鍛えたら、カメラを持って歩いてみましょう。きっと、あなただけの「ご近所絶景」に出会えるはずです。》
上野輝彌・坂本一男『日本の魚―系図が明かす進化の謎』中公新書・2004年
《キンメダイはタイと名がついてもタイ科の魚ではなく、むしろギンメダイに近い。また、コバンザメやチョウザメは、サメといってもサメの仲間ではない。四億年前に誕生した魚類は多様な進化を遂げた。食用・観賞用としてなじみ深い魚もいれば、新発見の魚もいる。本書は、メダカとトビウオ、フグとマンボウのように、一見かけ離れていても実は非常に近縁な魚を対比し、かたちや生態を解説する。これであなたも魚博士に。》
養老孟司『脳という劇場―唯脳論・対話篇』青土社・1991年
《人が観ている世界は、脳という劇場で演じられる芝居にたとえられる。舞台装置の延長に芝居があるように、装置としての脳の延長に世界が存在する。脳のしくみを解くことは世界の謎を解くことだ。「時間は流れない」「美人亡国論」「人体博物館を作れ」など、問題発言続出のラディカルな対談集。》(「BOOK」データベースより)
中岡哲郎『近代技術の日本的展開―蘭癖大名から豊田喜一郎まで』朝日選書・2013年
《東から西へ、世界でものと人の移動に伴い繰り返された文明の移転は、18世紀、イギリスで産業革命に結実し、機械で商品を生産販売する時代を生んだ。同じころ鎖国下の日本では、西からの珍品貴宝を求める蘭癖大名らが技能者を巻き込み、反射望遠鏡、時計、大砲などが製品化されるほどに各地でネットワークを築いていた。開国後、殖産興業のスローガンの下、日本の技術者や在来職人は、外来技術と在来技術をうまく組み合わせて、製糸業、紡績業、軽工業、機械工業、製鉄、鉄道などの分野で独自の発展を生む。この間日本は、日清、日露、第一次世界大戦を経験し、勝つたびに領土拡張するも、最後の第二次世界大戦に大敗しすべてを失う。しかし10年後には高度経済成長が始まる。それはなぜか?技術の角度から考える。》(「BOOK」データベースより)
日影丈吉『ミステリー食事学』教養文庫・1981年
《ミステリと味覚探究は相通じる。ただ口に入ればよいというものではない。高じれば、案内記を漁ったり、自分で作ったりする。本書は、二つのジャンルに共通の翼にのって古今東西のエピソードをフルコースばりに盛り込んだものである。
著者は、江戸川乱歩が「奇妙な味」と激賞した処女作「かむなぎうた」以来、異色な推理作家としてつとに知られているが、著名な料理人を育ててきたフランス料理の大家という貌も持つ。この両面が、連想のおもむくまま発揮されるというのだから、どちらのファンにも見おとせないだろうし、文字通り「奇妙な味」が堪能できよう。》
筒井康隆『壊れかた指南』文春文庫・2012年
《タバコの煙で空中浮遊できるようになった男の悲劇。極端に口べたな編集者の驚くべき末路。無類の読書好きが集まって送る夢の生活。奇妙な味わいの短篇から、一瞬で終わるショートショート、とんでもない展開のスラップスティックまで。天才のあくなき実験精神とエンターテインメント精神が融合した全30篇。解説・福田和也》
収録作品=漫画の行方/遠蘇魯志耶/優待券をもった少年/犬の沈黙/出世の首/二階送り/空中喫煙者/鬼仏交替/虎の肩凝り/春の小川は/長恨/余部さん/恐怖合体/おれは悪魔だ/秘密/便秘の夢/土兎/取りに来い/便意を催す顔/狼三番叟/耽読者の家/店じまい/稲荷の紋三郎/逃げ道/御厨木工作業所/TANUKI/迷走録/建設博工法展示館/大人になれない/可奈志耶那
有吉佐和子『華岡青洲の妻』新潮文庫・1970年(女流文学賞)
《世界最初の全身麻酔による乳癌手術に成功し、漢方から蘭医学への過渡期に新時代を開いた紀州の外科医華岡青洲。その不朽の業績の陰には、麻酔剤「通仙散」を完成させるために進んで自らを人体実験に捧げた妻と母とがあった――美談の裏にくりひろげられる、青洲の愛を争う二人の女の激越な葛藤を、封建社会における「家」と女とのつながりの中で浮彫りにした女流文学賞受賞の力作。》
西村京太郎『天使の傷痕』講談社文庫・1976年(江戸川乱歩賞)
《武蔵野の雑木林でデート中の男女が殺人事件に遭遇した。瀕死の被害者は「テン」とつぶやいて息をひきとった。意味不明の「テン」とは何を指すのか。デート中、直接事件を目撃した田島は新聞記者らしい関心から周辺を洗う。「テン」とは天使と分ったが、事件の背景には意外な事実が隠れていた。第11回乱歩賞受賞。》
西村京太郎『悪への招待』講談社文庫・1983年
《父の自殺はウソで、実は殺されたのだと告げる手紙が、沢木を奇怪な事件に引き入れた。父の死因をさぐる沢木に正体不明グループがつきまとう。しかもその背後には、政治家や実業家の影が見えかくれし、敵の大きさを匂わせるのだった。そして次々しのびよる魔の手。
サスペンス小説の名手が、東京、岐阜、徳島を舞台に描く壮大なアクション長編。》
大江健三郎『さようなら、私の本よ!』講談社文庫・2009年
《国際的な作家である古義人と建築家の繁。この「おかしな二人組」は幼い頃から因縁があり、時を経て病院のベッドで再会を果たす。老人の愚行としてテロを画策する繁に巻き込まれていく古義人は、組織の青年達と精神の触れあいを深めながらも、「小さな老人」の家に軟禁されるのであった。二人の行き着く先には。》(「BOOK」データベースより)
書評:さようなら、私の本よ! 大江健三郎著 「小説への信」を失わぬ作家の叫び - 高橋源一郎(作家、明治学院大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
中村融・山岸真編『20世紀SF④ 1970年代―接続された女』河出文庫・2001年
《20世紀の英語圏SFを年代別に集大成したシリーズ第4巻は、新旧あらゆるタイプのSFが百花繚乱のごとく現れた、成熟の1970年代編!ティプトリーJrが超絶的技巧を駆使して描いた、SF史上屈指の傑作「接続された女」、ル・グィンの新訳、ビショップ、ラファティ、マーティンによる、いずれも名のみ高かった本邦初訳作品3篇ほか、充実の全11篇。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=接続された女(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)/デス博士の島その他の物語(ジーン・ウルフ)/変革のとき(ジョアンナ・ラス)/アカシア種子文書の著者をめぐる考察ほか、『動物言語学会誌』からの抜粋(アーシュラ・K・ル・グィン)/逆行の夏(ジョン・ヴァーリイ)/情けを分かつ者たちの館(マイクル・ビショップ)/限りなき夏(クリストファー・プリースト)/洞察鏡奇譚(バリントン・J・ベイリー)/空(R・A・ラファティ)/あの飛行船をつかまえろ(フリッツ・ライバー/七たび戒めん人を殺めるなかれと(ジョージ・R・R・マーティン)
穂村弘『短歌という爆弾―今すぐ歌人になりたいあなたのために』小学館・2000年
《冷たく無気味な世界のすみっこで、世界を覆す呪文を唱えよう。ロックシンガーのシャウトのように、君の短歌は世界の心臓を爆破する。都市を疾走する歌人、穂村弘が贈る、まったく新しいタイプのスーパー短歌入門。》(「BOOK」データベースより)
文庫版
三枝昂之『[討論]現代短歌の修辞学』ながらみ書房・1996年
横田順彌『時の幻影館―秘聞・七幻想探偵譚』双葉文庫・1992年
《時は明治の後期、文明開化も進み科学的思想も一般に受け入れられつつあった。しかしいかなる科学をもってしても、解釈のつかぬ怪事件が続出する。蛇の頭を待った女、謎の外来飛行物、半獣半人……これら難事件に挑戦するは若き科学小説家鵜沢龍岳、雑誌主筆の押川春浪、小説好きで少しおてんばな黒岩時子。人知を超えたミステリーは解明できるのか!?》
収録作品=蛇/縄/霧/馬/夢/空/心
ミッキー・スピレイン『復讐は俺の手に』ハヤカワ文庫・1977年
《戦友との再会を祝した酒は、一夜明けるとにがい死の媚薬と化した。私立探偵マイク・ハマーは戦友のウィーラーに誘われるままにホテルに泊りこんだが、目を醒ますと彼は死んでいたのだ。手にはマイクの拳銃を握りしめて……。
彼には自殺の動機も殺されるいわれも全くない。それをどこかの野郎がぶち殺してしまったのだ。こみ上げる怒りを抑えて友人の前日の行動を洗い始めたマイク――が、その彼の行手にも見えざる敵の消音ピストルの銃口が待ち構えていた! スリルとスピーディな展開を身上とするスピレイン・ハードボイルドの雄篇。》
嵐山光三郎『悪党芭蕉』新潮社・2006年(泉鏡花文学賞・読売文学賞)
《弟子は犯罪者、熾烈な派閥抗争、句作にこめられた危険な秘密…。“俳聖”松尾芭蕉のベールを剥ぐ力作。》(「BOOK」データベースより)
A・E・ヴァン・ヴォークト『宇宙船ビーグル号の冒険』創元推理文庫・1964年
《超光速の大型宇宙船ビーグル号は科学者を満載して無限の宇宙の探索に出発した。しかし、その行く手には人類の想像を絶するような恐るぺき怪物たちが宇宙船を乗っとらんとして待ち構えていた。銀河系の彼方の惑星にすむ一見、猫のような生物、宇宙空間のただ中に棲息する鳥人、彼らはその身の毛もよだつような外見の下に、原子力を駆使して重装備をした宇宙船をも破壊するだけの超能力を秘めていた。人類の科学の粋と怪物たちの魔力のような超能力が、壮大な宇宙を背景に、手に汗にぎる死闘を展開する!》
井上魅夜『化粧男子―男と女、人生を2倍楽しむ方法』太田出版・2012年
《25歳で“化粧”に目覚めたとある男子の半生記。》(「BOOK」データベースより)
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