おととい日本近代文学会春季大会を聴きに東大駒場キャンパスに行って、発表者の青木亮人さんらに会ってきたが、夜飲んでいるうちに地震があって山手線等が全部止まり、帰れなくなってしまった。
急遽、友人の家に泊めてもらったが、その友人が翌日早朝出勤。
せっかく都内にいるのだからどこかに寄ろうかと思ったが、早朝、一緒に出てきてしまったので、まだどこも開いていない。そこで山手線に三周半ほど乗り続け、中で本を読んで時間を潰したら、三冊読めた。家で寝て読んでいるよりも、体調次第では読みやすいかもしれない。その後マグリット展に行った。
知人の蔵書整理の手伝いはまだ続いている。相手の読書傾向に私とかぶるところがあり、引き取ると読んでしまうことから再読ものが増えてきた。
今回、坂口安吾『能面の秘密』角川文庫版の、カバー見返し部分に載っている内容紹介に、現在おおやけには使われない語彙が含まれていたが、76年当時の原文のまま引いた。
佐野洋『匂う肌』講談社文庫・1977年
《友人を羽田空港に見送っての帰りに会った正体不明の女との一夜の奇妙な体験をSF的手法で描いた表題作「匂う肌」ほか8編収録。各編、緻密な構成と破綻を見せぬ鉄壁のプロットから成り、作者の周到な計算は、知的娯楽としての推理小説の味わいを満喫させる。佐野洋の多彩かつ華麗な創作活動を示す好短編群。》
収録作品=ピンクチーフ/虚栄の仮面/匂いの状況/賭け/匂う肌/反対給付/死者からの葉書/内部の敵/手記代筆者
泡坂妻夫『ゆきなだれ』文春文庫・1988年
《老舗の和菓子屋に入り婿してから二十年余、女房に先立たれた男が昔、修業時代に愛した年上の女を偶然見つけた。彼女はかつて一度彼に身を任せたきりで、どこかへ去ってしまったのだ。そしていま長い歳月をへだててめぐり会った二人の周辺に謎めいた出来事が。男女の機微をミステリアスに描く八篇の佳品。 解説・武蔵野次郎》
収録作品=ゆきなだれ/厚化粧/迷路の出口/雛の弔い/闘柑/アトリエの情事/同行者/鳴神
筒井康隆『繁栄の昭和』文藝春秋・2014年
《屋敷に影のような人間たちがうごめき、女装した美少年が魔都・東京をさまよい、リア王役者は「君の瞳に恋してる」を歌い踊る。巨匠、8年ぶりの最新短篇集! 》(「BOOK」データベースより)
収録作品=繁栄の昭和/大盗庶幾/科学探偵帆村/リア王/一族散らし語り/役割演技/メタノワール/つばくろ会からまいりました/横領/コント二題/附・高清子とその時代
磯崎新『挽歌集―建築があった時代へ』白水社・2014年
《世界を舞台に多彩な文化人と交流し、都市文化を創造してきた建築界の知の巨人が、ルイス・カーンから丹下健三、ジャック・デリダ、吉本隆明まで、愛惜の50人への思いを綴る。》(「BOOK」データベースより)
海野弘『秘密結社の時代―鞍馬天狗で読み解く百年』河出ブックス・2010年
《動乱の時代、幕末を背景にした大佛次郎の小説やドキュメントには、秘密結社が現れる。なかでも鞍馬天狗シリーズは、幕末の結社の物語として読むことができる。サンカと鞍馬天狗の関係、結社がうごめく時代への突入、そして戦後、再び現れた結社。だがしかし、秘密結社も鞍馬天狗とともに消えていったのか…。「秘密結社」を切り口に、幕末と大佛の生きた現代を重ね合わせ、鞍馬天狗が駆けぬけた百年を、スリリングに読み解く。》(「BOOK」データベースより)
東海林さだお『ゴハンの丸かじり』文春文庫・2006年
《人間には“ゴハンをよそうヨロコビ”があるのだ、と釜飯屋でしゃもじを手にしながら実感したショージ君。あるときは特別扱いされているソーメンに苦言を呈し、鳥わさに本来ついていたはずの「び」に思いをはせる。回転寿司はお見合い、鰤大根は一心同体の夫婦である、の名言も続出する丸かじりシリーズ20巻目。》(「BOOK」データベースより)
シンシア・アスキス選、デズモンド・マッカーシーほか『恐怖の分身―ゴースト・ストーリー傑作選』ソノラマ文庫・1986年
《冷たい月の光がふたりを照らしていた。親友は自分の「罪」を告白している。だが、ぼくはその言葉も耳に入らなかった。なぜなら、地に映ったふたりの影から、第3の影が伸びてきたからだった。
恐るべき人格を扱った表題作から、マッケン、ブラックウッド、ハートレー、デ・ラ・メアなどの巨匠の作品、無名作家の短編まで、名アンソロジストとして知られるシンシア・アスキスが選んだ、珠玉のゴースト・ストリー9編。
幽霊――必ずしも恐ろしいものばかりではありません。》
収録作品=デズモンド・マッカーシー「恐怖の分身」/アーサー・マッケン「死者の港」/アルジャーナン・ブラックウッド「嫌悪の幻影」/イーニッド・バグノルド「好色な幽霊」/メアリ・ウェブ「執拗な幽霊」/チャールズ・ホイブリー「午前零時の鐘」/L・P・ハートレー「遠い国からの訪問者」/D・H・ローレンス「揺り木馬の啓示」/ウォルター・デ・ラ・メア「世捨て人」
F・W・クロフツ『マギル卿最後の旅』創元推理文庫・1981年
《ロンドンの富豪マギル卿は、息子の経営するベルファストの紡績工揚へ行くと称して邸を出たまま消息をたってしまった。北アイルランド警察が捜査したところ、血痕のついたマギル卿の帽子が見つかっただけで死体は発見されなかった。だがロンドン警視庁のフレンチ警部が捜査にのり出すと、果然、事件はその様相を一変することになった。息子の私邸の庭から、マギル卿の無惨な死体が発見されたのである。しかし容疑者と目される人物は、いずれも金城鉄壁のアリバイを持っている。フレンチは誰のアリバイを、いつ、いかなる方法で破るであろうか?》
四方田犬彦『台湾の歓び』岩波書店・2015年
《数多くの民族と言語を抱えながら、きわめて実験的な文学や、洗練された映画を産み出してやまない台湾。その文化・社会とはどのようなものか。台北、台南を拠点に街を歩き、詩人、映画人らと対話を重ね、夜を徹した媽祖巡礼へ参加し、その尽きせぬ魅力について縦横に語る。長期滞在を機に書き下ろす、初の台湾紀行。》(「BOOK」データベースより)
書評:台湾の歓び [著]四方田犬彦 - 原武史(明治学院大学教授・政治思想史) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
東海林さだお『ホットドッグの丸かじり』文春文庫・2008年
《山で食べる塩むすび、縁日の焼きそば、そして風が吹きわたる野球場で食べるホットドッグの美味しさ…食べ物の適材適所に思いを馳せつつ、肉まんや桃缶の正しい食べ方を遂行し、人柄もよく成績優秀な人参君がなぜ出世できないのか悩む。今日も大忙しのショージ君、ついに豚肉料理店で豚攻めに遭うことに。》(「BOOK」データベースより)
フェリックス・ガタリ『リトルネロ』みすず書房・2014年
《ドゥルーズいわく、「まるでフェリックスが戻ってきたような、あるいはむしろ、いつもここにいたかのようです」。死の直前に書きあげられた「さえずり機械」157の断章、カオスモーズな詩的自伝。》(「BOOK」データベースより)
大江健三郎『晩年様式集』講談社・2013年
《私は「3.11後」大きく動揺していたが、ようやく恢復して「晩年様式集(イン・レイト・スタイル)」という文章を書き始めた。すると妹と妻と娘が私の今までの小説に反論を送ってきて…。『群像』連載を単行本化。》(「TRC MARC」の商品解説)
神林長平『時間蝕』ハヤカワ文庫・1987年
《冷凍睡眠を使い、光速と比べられる宇宙船の速度を利用し、時間という盾に隠れて逃げづけてきた永久逃亡犯。そして彼を捕え、火星の永久警察へ連行しようとする永久刑事。二人の乗りこんだ民間宇宙船が救難信号を受信したことから、敵味方であるふたりは難破船の捜索に赴いたのだが……「渇眠」、酸性雨が降りつづく都市で起きた連続殺人事件の謎を連う「酸性雨」、ひとりひとりのパーソナル・コンピュータが人格の一部になっている未来世界を描く「兎の夢」など、星雲賞受賞作家・神社長平の才気をあますところなくつたえる中篇4篇を収録する。》
収録作品=渇眠/酸性雨/兎の夢/ここにいるよ
水戸泉『妖かし恋奇譚―黒龍と堕天使』ティアラ文庫・2010年
《巫女の夕那にいきなり求婚した、不思議な美少年エクス。夕那が想いを寄せる人は、穏やかで優しい養父・克也。飄々としたエクスに振り回されつつも、少しずつ彼に惹かれていく夕那。やがて二人は夕那を巡って対峙し、真の姿――黒龍と天使に! 人間としての意識が薄れ、暴走する妖しく淫らな欲望! 壮絶な夜の果て夕那が知った本当の恋の相手は!? 人気作家水戸泉が描く濃厚ラブ!》
矢島文夫『オリエントの夢文化―夢判断と夢神話』東洋書林・2007年
《洋の東西を問わず、夢は人々の考え方に深いかかわりを持っていた。夢を語ることは生活の一部であり、古くから伝えられた文献にもしばしば夢が扱われている。本書にはエジプト・メソポタミア・古代ユダヤ・シリア・アラブなど、古代から中世にいたるオリエントの夢に関する長短さまざまな論考九篇を収めた。ダンテの『神曲』にも影響を与えたイスラムのミーラージ文学や、夢を聴くルネサンス期の物語『ポリフィルスの夢』など、神話や奇想の文学を取り上げ語り明かすユニークな「夢の本」である。》(「BOOK」データベースより)
西尾維新『クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い』講談社文庫・2008年(メフィスト賞)
《絶海の孤島に隠れ棲む財閥令嬢が“科学・絵画・料理・占術・工学”、五人の「天才」女性を招待した瞬間、“孤島×密室×首なし死体”の連鎖がスタートする。工学の天才美少女、「青色サヴァン」こと玖渚友とその冴えない友人、「戯言遣い」いーちゃんは、「天才」の凶行を“証明終了”できるのか? 第23回メフィスト賞受賞作。》(「BOOK」データベースより)
講談社ノベルス版
小島信夫『小島信夫短篇集成1 小銃/馬』水声社・2014年
《第1巻には、少年期に書かれた「太陽が輝く」から、著者随一の怪作「馬」まで、“小説家・小島信夫”の誕生を告げる初期作品群を収録。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=太陽が輝く/春の日曜の一日/彼の思い出を盗んで/裸木/凧/鉄道事務所/死ぬと云うことは偉大なことなので/往還/公園/男と女と神様の話/よみがえる/汽車の中/佐野先生感傷日記/卒業式/ふぐりと原子ピストル
燕京大学部隊/小銃/大地/雨の山/吃音学院/丹心寮教員宿舎/星/殉教/城砦の人/微笑/護送者/馬
眉村卓『まぼろしのペンフレンド』角川文庫・1975年
《誰にでもよくある〈へんだな……?〉と思う一瞬。それが実は、あなたを知らず知らずのうちに、とんでもない事件に引きずり込む前兆であったりするのです。
ある日、中学一年生の明彦に突然舞い込んだ、見知らぬ女の子からの奇妙な手紙――そこには下手な文章で、“あなたのすべてを詳しく教えて”と書かれ、一万円を同封してあった。好奇心に駆られた彼は、それがこれから日本全国を恐怖のどん底に落しいれる事件の前ぶれとも知らずに、返事を出したのだった。
鬼才、眉村卓の描く、SFスリラーサスペンス、表題作他2篇収録。》
収録作品=まぼろしのペンフレンド/テスト/時間戦士
眉村卓『ポケットのABC』角川文庫・1982年
《「何だ、あれ」
ぼくは身体を乗り出して、新幹線の車窓のかなたをみつめた。集落の、とある家に、洗濯されて干してあるシャツの一枚ごとに、背番号のように文字が書かれていたのだ。読むと、……タスケテクレ……となる。が、ぎくりとした瞬間、文字は消えてしまった。さてその結末は……。
「タスケテクレ」より
奇妙な話、耳よりな話、恐ろしい話愉快な話、ふざけた話、迷走する話etc……。眉村卓の、SFショート・ショート満載。「ポケットのXYZ」の姉妹編。》
収録作品=ひとり遊び/お相手/AとBとCの話/どこかで聞いたような話/終電車/ロボットのたたかい/見えないたたかい/最高刑/深夜のできごと/復元映画/色即是空/テリカさん/進路指導/マイ・タイムマシン① 試用/マイ・タイムマシン② 講義(一)/マイ・タイムマシン③ 拾い物/マイ・タイムマシン④ 講義(二)/隣りの紳士/賭けの天才/彼女の手紙/速読術/タスケテクレ/ある日記/観察対象/最終テスト/実験開始/大秀才/スーパー・スター/イガロス・モンゴルベエ・ヤイト/Vさんのファンと/テスト機/特技/講義の相手/ノートの男/事情があります/友人を作る会/対面/アルバイト その1/アルバイト その2/アルバイト その3/アルバイト その4
中村真一郎『死の遍歴』集英社文庫・1977年
《新婚旅行の海辺の宿で知った親しい新劇女優の唐突な死、友人の自殺、妻の死のあと、私を襲った精神錯乱の深い闇。戦後二十数年のあわただしい歳月のなかにあらわれる死者たちの面影。過去と現在との自在な構図のなかに、戦後の時間と死者たちの時間を重ねあわせ、著者の積年の死のテーマを正面からみすえる。
解説・平闘篤頼》
梅原猛『飛鳥とは何か』集英社文庫・1986年
《大いなる変革をもとめた六世紀末から七世紀の大和国家。山間の僻地にすぎない飛鳥の地は、なぜ政治的拠点となりえたのか? また聖徳太子の定めた新都・小墾田宮は、いったい何処なのか? 生き生きとした政治力学の舞合――飛鳥の秘められた謎を追う表題作。歴史の裏に隠された非運の太子を描く「死の聖化」など三編を収録。 解説・上原和》
五木寛之『ゴキブリの歌』集英社文庫・1977年
《“ゴキブリぐらいのしぶとい生命力がないと、こんな恐ろしい世の中は生き残れそうもない”若き日の情熱を燃やし続け自由にしたたかに生きたいと希求する現代デラシネ派の旗手・五木寛之が「風に吹かれて」についで、若い世代におくるユーモアと叙情味にあふれた第2エッセイ集。 解説・山川健一》
矢島稔『昆虫ノート』新潮文庫・1983年
《止っているとまるで枯葉のコノハチョウ、雄一匹数万円の「黒いダイヤ」オオクワガタ、そして息をのむ脱皮のドラマ。華麗で神秘的な昆虫の世界にのめりこんでしまった著者は、クツワムシを聴いていて痴漢とまちがわれたり、スズメバチに剌されて何日も苦しんだり……。虫好きはもちろん、虫なんか見るのもイヤ、という人も興味をもつようになる昆虫学。苦心の傑作カラー写真100点。》
辻邦生『街そして形象―パリの手記Ⅲ』河出文庫・1984年
《辻邦生の最初のパパリ滞在は、一九五七年十月から一九六一年二月までで、その前後にフランス船による一ヶ月の航海をともなっている。『パリの手記』はこの全時期に書かれた日記である。
ピアニストが絶えずピアノをひくように「絶えず書く」ことを自らに課しながら、小説の可能性を求めて綴ったこの手記は作家・辻邦生が誕生するための、苦闘と歓喜の記録である。》
鮎川哲也『青いエチュード』河出文庫・1987年
《多彩で奇抜なトリック、人間味あふれる温かなユーモア、本格推理の第一人者の本領が全篇にみなぎる初期コレクション第2集。戦後の混沌と解放感が生き生きと息づく東京周辺を舞台に、若い男女の大胆不敵なアリバイ工作に挑む表題作の他に、ご存知・星影龍三や鬼貫警部らが推理する「黄色い悪魔」「白昼の悪魔」など、昭和30年代最初期の秀作を集成。ファン待望の文庫初収録・短篇傑作選!》
収録作品=山荘の一夜/黄色い悪魔/朝めしご用心/甌/白昼の悪魔/青いエチュード/五つの時計
井上ひさし『空き缶ユートピア』集英社文庫・1984年
《「老人による老人のための老人の有料老人ホーム」を目指し共同生活をはしめた八人の老人と老人候補。人情薄い時代の心あたたまるユートピア設立の話に、マスコミはとびついた。だが、これはマスコミ受けをねらった全くのお芝居。老人たちはもっと凄い事件を企んでいた……。ユーモアと風刺をきかせたドンデン返し。新しい共同体の夢を描いた意欲作。》
都筑道夫『二日酔い広場』集英社文庫・1984年
《“私の名前は久米五郎。かつて警視庁捜査一課の刑事だった。妻と娘を交通事故で失って、酒におぽれて退職。いまは甥の弁護士から仕事をもらって、ささやかな私立探偵事務所を開いている。私は優秀な刑事ではなかったし、優秀な私立探偵でもない。いつも後悔しては酒を飲み、二日酔いになっている。私にとっては、東京ぜんぶが二日酔い広場といっていいでしょう”――長編ハードボイルド・ミステリーの傑作! 解説・久米五郎》
東海林さだお『ブタの丸かじり』文春文庫・2000年(講談社エッセイ賞)
《二百円のカツカレーを食べにいく、宇都宮餃子フルコースの旅、うなぎの刺身に挑戦、腕が痛くなる松茸食べ放題、豚の尊顔を丸ごと食す。どうです? 尽きぬ日常の冒険。え、ショージ君だから? そんなことはありません。例えば卵かけゴハンの驚異的実験、即席ラーメン改造計画……。やっぱりショージ君だからでした。解説・みうらじゅん》
東海林さだお『昼メシの丸かじり』文春文庫・2005年
《せかされる視線を感じつつ、煮えたぎるけんちんうどんをすする、その時……ショージ君は昼メシを食べながら哲学した。またある時は、ポッテリ型の海老天と恋におちる。かくして、しらす干しに多数という無名性に埋もれて死んでいく哀れさを見出レ「チクワは疲れている」という名言と洞察が誕生したのである。 解説・室井滋》
西垣通『デジタル・ナルシス―情報科学パイオニアたちの欲望』岩波書店・1991年(サントリー学芸賞)
《機械=コンピュータは人類にとって第三の性か。情報化社会といわれる現代、―いったい誰が、いつ、どのようにして、そして何故、情報科学=コンピュータをつくりあげたのか。バベッジ、フォン・ノイマン、チューリング、シャノン、ウィーナー、ベイトソンの仕事を文化的・人間的な〈出来事〉として問い直し、サイバネティカル・コスモロジーの深層を照射する。情報工学の俊英による真にスリリングな現代文化論。》(「BOOK」データベースより)
岩波現代文庫版
野中ともよ・浅田彰・上野千鶴子・浦達也『プレイバック高校時代②』福武書店・1983年
《このシリーズは、各界の第一線で活躍されている、“人生の先輩”から高校生の皆さんへ贈るメッセージです。進路、勉強、スポーツ、友人、恋愛、家庭といった問題について、それぞれ高校時代をふりかえり、成功も挫折もそのままの感動的なエピソードの数々をとおして、青春の可能性を語り、人生の指針を共に考える、いま、もっともコンパクトな人生論です。》
倉橋由美子『ポポイ』新潮文庫・1991年
《時は21世紀、なお権勢を誇る元首相の邸宅に、一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった……。流麗な筆で描き出す、優雅で不気味な倉橋ワールド。》
森茉莉『恋人たちの森』新潮文庫・1975年
《愛される少年。愛する男。男同士を嫉妬しながら少年を母のように抱く少女。そして、恋人を美少年の魅力から取り戻そうとする黄昏の女の破滅的な情炎。類廃と純真の綾なす官能の世界を、言葉の贅を尽して描く表題作。愛する少年を奪われる前に殺し、自らも息絶えた男の鮮烈な最期。禁じられた恋の光輝と悲傷を雪の武蔵野に綴る『枯葉の寝床』など、鬼才のロマン全4編を収録。》
収録作品=ボッチチェリの扉/恋人たちの森/枯葉の寝床/日曜日には僕は行かない
小泉義之『ドゥルーズと狂気』河出ブックス・2014年
《ドゥルーズにとって核心的主題でありながら真正面から取りあげられてこなかった“狂気”―生命と病いを探求しつづけてきた哲学者がついに「心」=メンタルの思想と歴史に挑むべく、ドゥルーズの主要著作における“狂気”を読み解きながら、欧米と日本における「狂気の歴史」―精神医療/反精神医学運動の軌跡を総括して、分裂病をこえるサイコパスの彼方に高次の正気と高次の狂気を待望する。恐ろしく危ういドゥルーズを到来させつつ現在を根底から震撼させる絶後の名著。》(「BOOK」データベースより)
稲垣足穂『弥勒』河出文庫・1987年
《地上とは思い出ならずや―。自伝的現実を未来仏への宇宙的郷愁に昇華させた表題作ほか、自伝色濃い7篇を収録。 》(「BOOK」データベースより)
収録作品=美しき穉き婦人に始まる/地球/愚かなる母の記/横寺日記/幼きイエズスの春に/白昼見/弥勒
新装版
南木佳士『医学生』文春文庫・1998年
《新設問もない秋田大学医学部に、挫折と不安を抱えながら集まった医学生たち、和丸、京子、雄二、修三の四人は、解剖に外来実習に、失恋に妊娠に患者の死に悩み、あたふたしながらも、自分の生き方を探っていく。そして、彼らの十五年後――。自らの体験を振りかえりつつ、人生の実感を軽やかに爽やかに綴る永遠の青春小説!》
長尾伸一『複数世界の思想史』名古屋大学出版会・2015年
《人間知性の歴史のなかで、宗教・形而上学から科学まで様々な形をとって展開してきた 「世界の複数性」 論 ——。本書は、天文学的複数性論を軸にその水脈をつぶさにたどり、宇宙に関する知的考察を方向づけてきたこの世界観=「巨大仮説」 の意義を初めて明らかにする。自己中心性に根ざす単一性論が促進してきた 「近代」 を問い直す圧倒的な力作。》
小谷野敦『江藤淳と大江健三郎―戦後日本の政治と文学』筑摩書房・2015年
《批評家と小説家。保守と左翼。文壇への華麗なる登場から栄光と終焉までを描く。決定版ダブル伝記。》(「BOOK」データベースより)
佐野山寛太編『世紀末ビョーキ文明―ガジェット文明』新潮文庫・1984年
《見た目はチョコレートそっくりなのに実は消しゴム!? こんな本来の目的には無用の機能を備えたガジェット商品が世に蔓延している。ガジェットは善かれ悪しかれ現代消費社合の象徴だ。本書はその世紀末病気文明・ガジェットを分析し、消しゴムからトルコまでを満載している。機能と目的が二人三脚で走る時代が終り、既成の価値が失墜した今、ガジェットは僕らの時代のキーワードだ。》
宮部みゆき『返事はいらない』新潮文庫・1994年
《失恋からコンピュータ犯罪の片棒を担ぐにいたる微妙な女性心理の動きを描く表題作。『火車』の原型ともいえる「裏切らないで」。切なくあたたかい「ドルシネアにようこそ」など6編を収録。日々の生活と幻想が交錯する東京。街と人の姿を鮮やかに描き、爽やかでハートウォーミングな読後感を残す。宮部みゆきワールドを確立し、その魅力の全てが凝縮された山本賞受賞前夜の作品集。》
収録作品=返事はいらない/ドルシネアにようこそ/言わずにおいて/聞こえていますか/裏切らないで/私はついてない
赤江瀑『ニジンスキーの手』角川文庫・1974年
《幕がおりた時、場内には異様な沈黙がひろがり、やがて喝采が、熱したガスに火を点けたように爆発した。1963年春のパリ。有力紙は、アメリカの代表的現代舞踊団のソリスト弓村高の演技を絶賛し、ニジンスキーの再来との声は高まった。20世紀初頭天才の名をほしいままにし、晩年狂気におちいったロシアの舞踊家ニジンスキー……弓村は、彼と自分との間に、ある異常な、目に見えぬ憑きもののようなものの気配を感じた。
文壇デビューの表題作ほか三篇を収録、妖美華麗な世界に読者を誘う、蠱惑の作品集。》
収録作品=獣林寺妖変/ニジンスキーの手/禽獣の門/殺し蜜狂い蜜
野崎歓『こどもたちは知っている―永遠の少年少女のための文学案内』春秋社・2009年
《『カラマーゾフの兄弟』から『銀の匙』まで。無垢な魂と出会う文学読本。》(「BOOK」データベースより)
小室直樹『三島由紀夫が復活する』毎日ワンズ・2002年
《昭和45年11月25日、文豪・三島由紀夫は切腹し果てた。死の直前「現代日本の危機」を訴えた三島の、尽くし得なかった思いもこめ、その行動と不可解な絶叫の真実に迫る。毎日フォーラム1985年刊の再刊。》(「MARC」データベースより)
黒井千次『時代の果実』河出書房新社・2010年
《戦後の風景、文学を志した日々、回想の作家たち……。歳月とともに芳醇な香りを放つ人生の収穫期。感動のエッセイ。》(「BOOK」データベースより)
坂口安吾『能面の秘密』角川文庫・1976年
《「酔ってアンマをとるうちには変な心も起きやすいから、その壁にかかった鬼女の面をかぶってもらおう」
メクラのオツネは、客の大川から、いつものようにそう言われ、鬼女の面を顔につけてアンマを終えたが、その夜、旅館が火事となった。焼け跡から発見された大川の変死体。
過失死か、他殺か?
事件の謎は、ただ無気味な鬼女の面だけが知っていた。……
表題作ほか七篇を収録。鬼才安吾が、知的パズルの面白さを存分に駆使した、傑作推理小説集。》
収録作品=投手殺人事件/南京虫殺人事件/選挙殺人事件/山の神殺人/正午の殺人/影のない犯人/心霊殺人事件/能面の秘密
福永武彦『独身者』中公文庫・1982年
《太平洋戦争の末期、死と終末の予兆のさなかにあった若き青年男女の群像をえがき、精緻な福永文学の才幹をはやくも示す長篇小説の序章。》
福島正実『月に生きる』ハヤカワ文庫・1975年
収録作品=旅/翳/歯車/情報貴族/幻聴/倒錯/欲望の時代/兆し/ビジホン・ラブ/亡霊の時代/光彩噴水/雪ぞ降る/海ぼたる/複製/マスコット人形/ラダイト計画/黒い嵐/嫌がらせの世代/死に至る病/蟻地獄/重い…/月に生きる
筒井康隆『暗黒世界のオデッセイ』新潮文庫・1982年
《人口爆発、鉛中毒、人工冬眠――奇才が正確なデータにもとづいて、近未来の日本をクールに描いてみせた『2001年暗黒世界のオデッセイ』。正気と狂気、天才と狂人の間を行きつ戻りつする現代人の深層心理をユニークに分析してみせた『乱調人間大研究』。それに全漫画、『レオナルド・ダ・ヴィンチの半狂乱の生涯』『星新一諭』を加え、筒井康隆の驚異の世界をあますところなく伝える一冊。》
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Tugan Sokhiev dirige la Symphonie fantastique de Berlioz 2015
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