『新撰21』からの抜粋紹介第3回は俳壇周知のスター2人と、花鳥諷詠客観写生の人というブロックになる(なおこの抜粋紹介シリーズは、もともと某SNS内で俳句には普段なじみがないが興味は持ってくれそうな知人たちに向けてアップした記事をほぼそのまま移築しているので、俳句に詳しい人には今更なことも結構書いてあります)。
7人目、神野紗希は21人中、一般の知名度では一番ではないか。
NHK-BS『俳句王国』の司会は平成16年からというからもう5年になる(あの番組、1時間の番組を1時間で収録するという、つまり無編集のほとんど生放送のような作りをしているらしい。胆の小さい人間には務まりそうにない)。
俳句甲子園を経て、第1回芝不器男俳句新人賞坪内稔典奨励賞。現在お茶の水女子大博士課程で新興俳句系を中心に近現代俳句を研究中。今回の座談会を見て私も初めて知ったが、有名な《起立礼着席青葉風過ぎた》は俳句甲子園の最優秀賞ではなく、最優秀を取ったのは《カンバスの余白八月十五日》の方だったとのこと。現在はより陰影や俳諧味の深まった作風を展開中。
目を閉じてまつげの冷たさに気づく 神野紗希
ブラインド閉ざさん光まみれの蜂
冬蜘蛛の呼吸その巣に行き渡る
明け方の雪を裸足で見ていたる
涼しさのこの木まだまだ大きくなる
8人目の中本真人は作句信条に「花鳥諷詠・客観写生・多作多捨」と掲げている(いわゆる若手作家の中では稀少なのかそれとも案外まだいるのか)。三村純也に師事。「山茶花」同人。どうでもいいことながら、この方の名前、縦書きにすると字面が左右対称になり、意味上もど真ん中の本物という字ばかりで出来ている。本名だろうか。
高山れおなさん曰く「花鳥諷詠の良さというのは、じつは馬鹿っぽさ」「知性を払いのけられる知性を感じました」。ということで写生ならではのユーモアが持ち味。
子の頭撫でてなまはげ帰りゆく 中本真人
なまはげの指の結婚指輪かな
遠足を離れて教師煙草吸ふ
払ひたる手の甲に蠅当りけり
類焼の道路標識焦げにけり
9人目は“俳句の王子様”、既に俳壇の中心人物の一人高柳克弘。
藤田湘子に師事。若くして俳句研究賞を受賞し、湘子没後、大結社「鷹」を継いだ小川軽舟の下で編集長に就任。『凛然たる青春』で俳人協会評論新人賞。今年第1句集『未踏』を上梓。80年浜松生まれとあるので、このキャリアでまだ29歳。湘子の師が水原秋桜子。有季定型の中での若々しく清新な抒情という特質は、この高柳克弘にまで脈々と受け継がれている。
ことごとく未踏なりけり冬の星 高柳克弘
木犀や同棲二年目の畳
桜貝たくさん落ちてゐて要らず
つまみたる夏蝶トランプの厚さ
サイダーや草になじめる椅子の脚
【参考ブログ リンク】
海馬 みなとの詩歌ブログ
『新撰21』ウェブ上の反応
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/766/
『新撰21』鑑賞: 神野紗希
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/765/
『新撰21』鑑賞: 中本真人
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/767/
『新撰21』鑑賞: 高柳克弘
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/768/
GO!LEAFS!GO!ぶろーぐ
神野沙紀 中本真人
http://dzv00444.dtiblog.com/blog-entry-2471.html
高柳克弘
http://dzv00444.dtiblog.com/blog-entry-2475.html
週間俳句
神野紗希の一句 広がってゆくということ ……村田篠
http://weekly-haiku.blogspot.com/2009/12/21_5983.html
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