『新撰21』の抜粋紹介、16人目は矢野玲奈。
外国暮らしの長かった人らしく、10代でヒップホップダンスやフラメンコ、20代で活花に接し、俳句を始めたのは父に誘われ、花火大会の夜に訪問したマンションで句会に巻き込まれてからとのことという。
星野高士、星野椿の指導を受け「玉藻」に投句、去年から星野高士の紹介で有馬朗人の「天為」にも投句。星野椿の母が星野立子、祖父が高浜虚子となるので、師系的には伝統系。《今日の日はおとぎの国の暖かさ》等の素直な明るさが、様々な作者が並んだ中で際立つ。
モナリザの微笑の先の水羊羹 矢野玲奈
クリスマスツリーばかりの街にゐる
ぎちぎちと革手袋の祈りかな
スケートのはればれしたる刃音かな
秋風に富士のだんだん見えてきし
17人目、中村安伸。ここから個人的にも親しい人が出てくる。豈weeklyの編集でお世話になっています。
超結社句会「もののふの会」、「海程」投句を経て「豈」同人。履歴を詳しくうかがったことはなかったが祖父の影響で10歳の頃というので、俳句を始めるのは早かったらしい。
身近にすぎて却って真価がわかりにくかったが、言葉で無意識の領域に迫ろうとする絢爛たるシュール句が並び、伝統芸能の素養、パロディ句、前衛短歌的美意識等が入り混じってかなり面白い。
殺さないでください夜どおし桜ちる 中村安伸
春風や模様のちがう妻二人
京寒し金閣薪にくべてなお
鳥帰る東京液化そして気化
どの窓も地獄や春の帆を映し
18人目、田中亜美。現俳の勉強会などでよく顔を合わせていて、身近にすぎて却って真価がわかりにくかった人その二である。金子兜太に師事し、海程新人賞、現代俳句新人賞受賞。
短歌的な、女性の透き通るようなさびしさを、現代ドイツ詩(特にパウル・ツェラン)研究者ならではのレトリックで俳句にしたてている(要するに俳句外の要素で組み上げている)という印象を個人的には持っていたのだが、今回の百句を見ると一皮剥けて相当に深化した様子。《雪・躰・雪・躰・雪 跪く》のイメージのモンタージュ的重層と一字空白を置いてのエクスタシー的崩落感が凄い。「エロスと知性の融合」(座談会での高山さんの発言)。
受胎とは瞼へ羽毛雪明かり 田中亜美
アルコール・ランプ白鳥貫けり
うるむのはやはらかき虚無かたつむり
父といふ飲み干せぬ水曼珠沙華
いつ逢へば河いつ逢へば天の川
【参考ブログ リンク】
海馬 みなとの詩歌ブログ
『新撰21』鑑賞: 矢野玲奈
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/778/
『新撰21』鑑賞: 中村安伸
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/780/
『新撰21』鑑賞: 田中亜美
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/781/
GO!LEAFS!GO!ぶろーぐ
矢野玲奈 中村安伸
http://dzv00444.dtiblog.com/blog-entry-2476.html
田中亜美
http://dzv00444.dtiblog.com/blog-entry-2477.html
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