『新撰21』のサンプル抜粋5回目ですよ。
だんだん年長になってきて、今回は昭和51年(1976年)生まれが2人、昭和50年(1975年)生まれが1人。
13人目は豊里友行である。
先日、句集『バーコードの森』を送っていただいた沖縄のフォトジャーナリスト兼俳人で、現在は「海程」に投句。社会性や風土とがっぷり組み合って斬新なメタファーに結晶させる、句柄も行動も熱い人という印象。
豊里氏の句集については豈weeklyでまとめて引いたので、興味のある方はそちらもどうぞ。
基地背負う牛の背朝日煙り行く 豊里友行
逃げ水がテロも戦も孕んでいる
轟音の鼠となり空齧るフェンス
月も太陽(ティダ)も魚鱗の響(とよ)み島暦
青バナナむけば炎の鮫になる
14人目は今年の角川俳句賞受賞者、「澤」同人の相子智恵。
単に堅実な写生というだけの人ではなく、厚みも押しもユーモアもあり、気取らない陽性な作風。「澤」らしいシニカルな都市風俗写生の要素もある。
代表句《一滴の我一瀑を落ちにけり》は「澤」の伊豆吟行会という大舞台で出来てしまった句らしい。滝を見ていると吸い込まれそうになるという身体感覚の裏づけもあってスッと伝わり、「我」が一瞬のうちに宇宙的大奔流の一員と化す。読者まで一緒に引き込まれそうな喜ばしくも豪快な句。
プリンやや匙に抵抗して春日 相子智恵
太郎冠者寒さを言へり次郎冠者に
初雀来てをり君も来ればよし
冷やかや携帯電話耳照らす
夢ヶ丘希望ヶ丘や冴返る
15人目、五十嵐義知。
有馬朗人主宰の「天為」に所属。
『新撰21』の中では数少ない土着性とモノの写生の作家で、そこからゆくゆくは飯田龍太的に勁く澄んだ抽象性の領域にまで達しそうな気配がある。
棒杙のあたりに凍つる流れあり 五十嵐義知
雪解けにゆがむ盥を洗ひけり
六つ目の大陸に着く絵双六
山の端の光の帯や酉の市
大根の乾ききらざる軒端かな
【参考ブログ リンク】
海馬 みなとの詩歌ブログ
『新撰21』鑑賞: 豊里友行
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/774/
『新撰21』鑑賞: 相子智恵
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/776/
『新撰21』鑑賞: 五十嵐義知
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/777/
GO!LEAFS!GO!ぶろーぐ
豊里友行 相子智恵 五十嵐義知
http://dzv00444.dtiblog.com/blog-entry-2476.html
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