「連衆」は谷口慎也氏発行の個人誌で季刊。
これも頂き物。
墓参には近道ゐらぬ 晩年とは 松岡貞子 (「ゐ」は原文ママ)
天高しそしてわたしは何処の誰 津沢マサ子
森閑と虚空を見上げ夏逝けり
朝凪という乳いろの巨人抱く 渋川京子
海底に似たり薄暑の試着室
マグカップの中は快晴鳥わたる
モノクロの赤貧と蚊と原節子 もてきまり
煮凝が固まりませんポストモダン
以上4人は「招待作家」。
生れたての天牛の意志森を出づ 香野倫子
陶淵明桃すするときどんなかほ
寺町の正午を覆ふ黒揚羽 谷口慎也
永遠に厠は病みぬ竹の秋
―マイケル・ジャクソン逝く―
マイケルをさて如何にせん菊人形
陽炎を見るかげろふの駅にゐて
以上2人が「特別作品」。
チャペルより静止画像のような月 植原安治
以上「推薦10句」から。
以下は1頁2名ずつの欄から各人1句で抄出。
土用波あとからあとから人が来る 森さかえ
この指にとまれ芒になりに行く 三舩煕子
ロンドンは朝めし時よ浮いて来い 野村尚子
千年の留守を尋ねて墨香る 星野泉
病棟の迷路を抜けて夏が来る 井ノ上多実枝
人形と遠く見ている九月かな 大津桃子
衆目に涼しく耐へし阿修羅像 小倉斑女
脳髄の祭りのあとの毛が薄い 吉田艸民
伸びゆくや蛇の維新はどこまでも 普川洋
花ざくろ仆れし人の立ち上がる 柳田芽衣
落鮎を無理矢理食す風博士 わたなべ柊
影法師ふまれて怒りの声をだす 江崎豊子
背の谷を少し歪ませ秋の蝶 吉田健治
鶏頭の近づきすぎるレトリック 原恵
オブジェめく流木の威や出水あと 志方余詩子
煮凝りのような雑踏 抜けられない 秋吉良子
トルソーのごとき切株滝近し 西苓子
ひまわりにほほほと笑うおばあさん 古市輝夫
鳥渡る宇宙は広くて静かです 荒木優子
白菊がくすぐる死人の足の裏 真田豊明
磨いても転がしてみても望の月 小柳カツジ
発端は薬瓶なりあかね雲 鍬塚聰子
サーカス小屋消えて家族も消えました しいばるみ
しみじみと秋の陽残るみんな逝き 武明菜
曇天から死にかけの鳥つかみ出す 和泉幸次郎
三千世界にレディー・ガガの擠 情野千里 (「擠」は「臍」の誤植か)
トコトコトコ夜通し地下を走る花 笹田かなえ
ビルからいくつもの影ずり落ちて秋の暮 秋吉伸太郎
パソコンの中 藪からしまたは流星 大野満(みつる)
聴診器 今日の銀河は異常なし
噴水にみんな集まり みんな消え
最後の大野満氏は「新人・学生」と但し書きあり。
全員拾ったわけではありませんが、最後の方まで引きたい句の多い誌面でした。
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