12月はびっくりするくらい本が読めなかった。ほぼ2日で1冊ペースにまで落ちた。
多忙よりも不調である。
安部公房『人間そっくり』新潮文庫・1976年
《《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところに、火星人と自称する男がやってくる。はたしてたんなる気違いなのか、それとも火星人そっくりの人間なのか、あるいは人間そっくりの火星人なのか? 火星の土地を斡旋したり、男をモデルにした小説を書けとすすめたり、変転する男の弁舌にふりまわされ、脚本家はしだいに自分が何かわからなくなってゆく……。異色のSF長編。》
安部公房『飢餓同盟』新潮文庫・1970年
《眠った魚のように山あいに沈む町花園。この雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちは、革命のための秘密結社“飢餓同盟”のもとに団結し、権力への夢を地熟発電の開発に託すが、彼らの計画は町長やボスたちにすっかり横取りされてしまう。それ自体一つの巨大な病棟のような町で、渦巻き、もろくも崩壊していった彼らの野望を追いながら滑稽なまでの生の狂気を描く。》
大橋歩『トマトジュース』講談社文庫・1982年
《赤くはちきれそうなトマトは若い女の子のラヴマーク。ダレかに恋して心がチリチリキンキン痛んだら、この本はアナタの友達です。人気イラストレーター大橋歩が、恋のこと、結婚のこと、仕事のことナドナド……、ハートからハートへ語りかける新鮮でちょっぴり純情な第一エッセイ集。楽しいイラストもいっぱい。》
スウィフト『ガリヴァー旅行記』岩波文庫・1980年
《子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない。だが、おとなの目で原作を読むとき、そこにはおのずと別の世界が現出する。他をえぐり自らをえぐるスウィフト(1667‐1745)の筆鋒はほとんど諷刺の枠をつき破り、ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない。》
中薗英助『夜の培養者』徳間文庫・1981年
《微生物研究者が急死した。死の真因は何か? 科学記者の小檜山弘はそれに疑惑を持つが、死者の親友寺田の罠にはまり、隔離病舎に封じ込められる。そこは恐るべきペスト菌の研究所でもあった。
戦時下の満州で幻の細菌戦部隊として恐怖の伝説を残す第731部隊の要員――それが寺田の実体であったが、なぜか親友の遺志をつぎ、死を賭して研究の完成を急ぐ。
ペスト菌の恐怖と極限状況を描く実験作。》
海渡英祐『霧の旅路』徳間文庫・1988年
《伊原加奈子は失恋の痛みを胸に、勤め帰りにふと貿易センター・ビルに立寄った。そこで出会ったのが、暗い翳を漂わせる曾根啓治という男。彼女は、男が恋人殺人の容疑をかけられていることを知らされた。曾根と加奈子の運命的な出会いだった。二人は協力して、曾根の容疑を晴らすべく行動を開始。だが、二人が動き始めた途端、第二、第三の殺人事件が。緻密な人物描写と意外性で描く愛と不信のサスペンス。》
宮本常一『庶民の発見』講談社学術文庫・1987年
《日本の農山漁村は昔から貧しかった。そして古い時代からこの貧の問題の根本的な追究が欠けていたのではないか、と著者はいう。本書は、とくに戦中・戦後における嫁の座、私有財産、出稼ぎ、村の民主化、村里の教育、民話の伝承などを通して、その貧しい生活を克服するため、あらゆる工夫を試みながら精いっぱいに生きる庶民の姿を多角的に捉えたものである。庶民の内側からの目覚めを克明に記録した貴重な庶民の生活史といえよう。》
ウナミサクラ『ハレムの王国、はじめ(られ)ました』アズ文庫・2014年
《真面目だけが取柄の青年、尊人はいつものようにバイト先から帰る途中、突然眩しい光に包まれ……目覚めたところは砂漠にそびえる塔の中。なんとそこは虎族、狼族、蛇族、兎族、烏族という五つの獣を始祖とする一族がそれぞれ五大陸に暮らす五獣界。百年に一度、異世界の扉が開いて猿族の裁定者が召喚され、王を決める儀式が行われるのだという。裁定者である尊人は25日間のうちに五族の代表の中から結婚相手を選ばねばならず……。》
市村弘正・杉田敦『社会の喪失―現代日本をめぐる対話』中公新書・2005年
《高度成長、バブル経済を経るなかで、日本は貧困を駆逐し、「豊かな社会」を実現したかに見える。しかし一方で、さまざまな不安が日常を侵食し、“成功”という病が人々疲弊させるようになっている。本書は、現代日本のいくつかの断面を手がかりに、時代や社会のあり様について、根底から考え抜こうとした対話である。戦争をどう考えるか。いま私たちの社会から何が失われつつあるのか。危機のありかとその根深さを探る。》
山岸哲『マダガスカル自然紀行―進化の実験室』中公新書・1991年
《マダガスカルは六五〇〇万年ほど前、エピオルニスのような古い走鳥類などを乗せてアフリカ大陸からインド洋に向け漂流してしまったため、その後に大陸で新たに出現した動物は一部しか渡ってこられなかった。本書は、自然の聖域として動物の進化の研究に格好なこの島へ学術調査に出かけた鳥類学者による観察記録で、奇妙なくちばしをもつモズ類等の生態と島の自然環境、そこに生活する住民の姿を生き生きとした筆致で伝えてくれる。》
山内景樹『日本船員の大量転職―国際競争のなかのキャリア危機』中公新書・1992年
《第二次大戦後、壊滅的状態から復興した日本海運は、国家政策の支援を得て、たちまち世界有数の規模に到達した。技術開発による生産性向上により、数々の好不況を乗り切ってきた海運業界も、国際競争力の低下にともない、人件費の大幅な抑制を迫られた。本書は、一九八七―八九年の「緊急雇用対策」によって新天地を求めて転職していった人々へのインタヴューを中心として、戦後日本を支えた海の男たちの気概を伝えるルポである。》
小松和彦『神隠しと日本人』角川ソフィア文庫・2002年
《ある日、突然、人が日常世界から消え失せてしまう「神隠し」とは、何なのか。「神隠し」にあった人はどこへ行き、何を体験していたのか。どのような神霊が人を異界へいざなうのか。暗く悲惨な響きだけでなく、柔和で甘美な響きをもつ「神隠し」をめぐる民話や伝承を訪ね、多くの事例を分析。異界研究の第一人者が、迷信でも事実でもない、「神隠し」の謎と日本特有の「死の文化」を解き明かす!
解説・高橋克彦》
井上ひさし『笑談笑発―井上ひさし対談集』講談社文庫・1978年
《日本の土壌には育ちにくく、軽んじられてきた笑いの文学。だが、次元の高い笑いは既成の価値を転倒させ、逆の視点を提示する。そこには裸に剥かれた人間の本当の姿が現われてくる。笑いの創造に呻吟する実作者が、戯作・道化・ユーモア・パロディ……と、それぞれの分野に人を得て、語りつくした「笑い」の十夜話。》
山口昌男編著『二十世紀の知的冒険―山口昌男対談集』岩波書店・1980年
《1 二十世紀の知的青春――R・ヤコブソン/2 昨日の音楽、明日の音楽――S・シルヴァーマン/3 人間科学の新たな地平――C・レヴィ=ストロース/4 歴史学の新しいパラダイム――M・ド・セルトー/5 演劇と神話の多義空間――ヤン・コット/6 演劇の知的な力――R・フォーマン/7 詩・エロス・宇宙――オクタヴィオ・パス/8 祝祭としての音楽――A・チッコリーニ/9 記号論の冒険――D・シーガル/10 パフォーマンスの人類学――R・シェクナー/11 ラテン・アメリカの文学と知的伝統――バルガス・ジョサ/12 文化の〈アイデンティティ〉を求めて――G・スタイナー》
竹内実『北京―世界の都市の物語』文春文庫・1999年
《黄土が生んだ城壁都市、北京。その歴史は神代に始まる。人類の始祖のひとつ北京原人、理想の王・黄帝から、今日の城内を完成し、庭園を充実させた清の康煕、雍正、乾隆帝、そして毛沢東、鄧小平まで。この都における英雄たちの事跡をたどりつつ、紫禁城の構造、料理、演劇、庭園、胡同の生活と北京の魅力をあますところなく紹介する。》
江田絹子『津軽のおがさまたち―民間信仰の旅』北方新社・1977年
《土俗の神々を信じ、北国のきびしい風土に耐えて生きてきた、名もない津軽のおがさまたち》
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