「鬣」(代表:林桂、編集:水野真由美)第58号(2015年2月)から。
第14回鬣TATEGAMI俳句賞発表あり(石牟礼道子『石牟礼道子全句集 泣きなが原』、小宮山遠『句集 林棲記』)。
特集は《大野林火を読む》と《追悼・中島敏之》。
夏果ての城は斜めに苔むすや 堀込 学
重き頭ずんずん運ぶ枯野かな 吉野わとすん
県道ではねられている季語を見た 外山一機
カマンベールチーズ、それはとっても古い季語だよ
大空(おほぞら)のいちにち青(あを)き花林檎(はなりんご) 林 桂
「白茅」(代表:中田剛)第11号(2016年冬)から。
招待作家作品に松岡ひでたか、渡辺松男。
特別作品に上田信治、木村定生、長嶺千晶、山田耕司。
照れば小石どれも淑気のめだまかな 渡辺松男
夜更けては葱抜きにゆくすさびかな 中田 剛
水鳥や音叉しづかに鳴りやまず 坂内文應
絨毯を靴下の足歩みくる 上田信治
オルガンの装飾古し日脚伸ぶ 木村定生
麗らかや砂丘の山に名のなきを 山田耕司
「篠」(主宰・発行:岡田史乃)Vol.176(2016年4月)から。
七草を袋に入れてあらはれる 岡田史乃
春寒し谷戸に楮の匂ひして 辻村麻乃
「翔臨」(編集発行:竹中宏)第85号(2016年2月)から。
菜の花や幽霊船ごと沖の凪 竹中 宏
炎天の翳が薫るか天皇史
光の箸とどけやガラス皿の枇杷
くさはらの彼方此方の秋深し 中田 剛
鳥渡るザルツブルグの塩の粒 土井一子
大試験美青年順に遣唐使 小笠原信
模型空母へ冬蝶の影迫り来る 伍藤暉之
フェレットが踊り場とほる望の夜 上羽美津子
心臓の深さ水餅沈めけり 小林千史
2016年1月あざみエージェント
『WATER WAX』は野間幸恵の第3句集。
序文:筑網耕平、あとがき:柳本々々。
句は横書きで1,2句ずつ組まれている。本文120頁。
音感やタランチュラが澄んでいる
寸法や開くもように桜鯛
昆虫の仕組み夜明けの音がする
犀がいる日曜日から出られない
紅茶とは誰もいない庭である
八つ橋はまだ億劫を遊んでいるか
白ワインこぼす天文学のよう
竹藪の浮力や会議中なのに
脱兎なら刺繍のように愛されて
美しい縫い目のように先住民
ふらすこがいまわのきわを滴れり
あんなにも竹伐る音を昼という
空港はフラフープから出来ている
あめふらし地下鉄の話をしよう
石英はローマ字に似て暗い昼
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
「里」(編集:中山奈々、副編集:小鳥遊栄樹、同人会長:仲寒蝉、発行:島田牙城)2015年11月号から。
遅刊のため2016年4月現在、これが最新号。
村山槐多炎帝や我が身をやぶるオベリスク 九里順子(特別作品)
「猛犬に注意」は呪符ぞ秋の昼 谷口智行
冬ざれや細身の魚肉ソーセージ ローストビーフ
一時間ごとの舌打ちおでん酒 喪字男
寝返りの途中の空や逝く秋の 島田牙城
歳晩や麦酒の缶を踏み潰す 媚庵
のし餅の重さに耐へる机かな 上田信治
冬麗の木よはりつめし傷に似て 青本瑞樹
石蕗の花機械動けばその音の 佐藤文香
母訪うて海に初雪そのすがた 田中惣一郎
跫のつたはりて来るカンナかな 堀下 翔
「鷹」(発行:小川軽舟)2016年4月号から。
第10回五人会賞発表あり。
銀食器光り挨拶春めきぬ 小川軽舟
蒲鉾も源平競ふ梅見かな
空映す駅舎の鏡春浅し 岸 孝信
らーめんにバター一塊受験終ふ 黒澤あき緒
クリスマスソング捨傘束ねられ 髙柳克弘
はくれんが散るさやうならさやうなら 市川 葉
初旅や大き時計の下に寝て 永島靖子
干潟より生れし神なり田に祀り 竹岡一郎
「陸」(発行:中村和弘)2016年4月号から。
第14回陸賞発表あり。
木乃伊(みいら)の陰(ほと)覆いし布に黄沙染む 中村和弘
隕石孔地球にあまた桜咲く
斑鳩の宮に大きな落し角
しあはせの貌の鮟鱇吊し切り 小菅白藤
俗謡の路地を抜け出て手套嵌む 稲村茂樹
ティシュ配りの石になりたる寒暮かな 岩崎嘉子
冬の猿レタスサンドが薄すぎる 瀬間陽子
赤き魚ほぐし地吹雪腹で聞く 佐々木貴子
「紫」(発行:山﨑十生)2016年4月号から。
第63回紫賞発表あり。
凍星に身体髪膚占めらるる 山﨑十生
雲を研ぐ坑儒の丘の冬木立 若林波留美
張合いは隙間風あってのことかしら 岡 純子
セーターをくぐり抜けると森がある 鳥海美智子
「澤」(発行:小澤實、編集:望月とし江)2016年4月号から。
トーストの薄焦春の立ちにけり 小澤 實
海峡の水の揺れをるわらびかな
十年後人類ありや蕗の薹
花冷や鏡の中の貌づくり 高橋睦郎(季語練習帖)
ワイングラスに大吟醸や女正月 髙取恒子
わし摑みに牡蠣をのせたりお好み焼き 美倉かんな
インフルエンザ接種子は踏張るも引きずらる 高橋まり子
料理記事切り抜く父やどてら着て 川上弘美
汝が古日記に吾知らぬハートマーク 榮 猿丸
葉牡丹やアラブの女児の目の澄める シシオ澤ガイ
寒柝の音の過ぎ行くラブホテル 林 雅樹
跪き子の鼻拭くや桃の花 相子智恵
息白く国籍を訊く手には銃 堀田季何
浮遊霊ぽこぽこ居りぬ日向ぼこ 山口珠央
不発弾処理十八屯や年終る 東徳門百合子
死神が侘助生ける午前二時 浅蜊
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