ジャネット・デイリー『フォックスファイア』、ステファニー・ジェイムズ『冷めない愛』は内容は全然興味のないロマンス小説。サンリオ文庫だったので外見の懐かしさで買ってしまった。
稲垣足穂・梅原正紀編著『終末期の密教―人間の全体的回復と解放の論理』は70年代の公害企業主呪殺祈祷僧団の当事者による実録が読める。
ジャネット・デイリー『フォックスファイア』サンリオ文庫・1985年
《都会を離れ、ジョアンナは、伯父リースのいるオザーク高原にやってきた。迎えを断り、ひとリキャビンヘ向かうが、道に迷ってしまう。暑さといらだちで、じりじりしているジョアンナの前に、ラバがとび出してきた。危ういところで事故は免れたものの、腹立ちまぎれにジョアンナは、その相手に侮蔑の言葉を授けつけた。
驚いたことに、その男が翌日、伯父のキャビンを訪ねてきた。リンク――自然の中で育った野性の魅力をもつ男。かれに反発しながら、次第に惹かれていくショアンナ。伯父リースの恋を成就させるために、ふたりは手を結ぶが……。
リンクとジョアンナの若い恋、そしてリースとレイチェルの大人の恋。ふたつのカップルの恋を対照的にえがきながら、さまざまな愛の形を示してみせるジャネット・デイリーのロマンス第5弾。》
入江相政『日日是好日』中公文庫・1978年
《牛込から目白まであるく
本郷からお茶の水を経て神田から牛込まであるく
正月には往来で羽子をつき、凧を揚げることができた東京の道
雨が降ればぬかって汁粉みたいになり、冬の朝はまっ白に霜が置いた、あの生きていた道――日本の道
地震のこと、うま酒のこと、音楽超党派、月天心、手紙のすすめ等々、側近生活五十年からにじみ出る、軽妙と重徳兼備の侍従長エッセイの粋。》
立川武蔵『日本仏教の思想』講談社現代新書・1995年
《この世界は「空」か、「真実の姿」か? 日本仏教は何を求め、伝来仏教の何を捨てたか? 最澄、空海、法然、道元、日蓮ら知のスーパースターたちの思索を辿り、日本仏教の核心に迫る。》
仲屋むげん堂企画室『アジア雑貨仕入旅』同時代ライブラリー・1990年
《ようこそ,むげん堂へ! 私たちは世の人が雑貨とよぶ夢のカケラの数々を商っております。安売りはぼくらの誓いを合言葉に、オモシロものを求めてインド、ネパール、香港、バングラデシュ……東南アジアを東奔西走するわが仕入部隊の冒険と涙の物語を初公開。ぜひご愛読のほどを。》
種村季弘編『ドラキュラ ドラキュラ―吸血鬼小説集』河出文庫・1986年
《ロマン派からボッブ文学にいたるまで脈脈と受け継がれた“血”の系譜……十九世紀のヨーロッパに一躍吸血鬼ブームを巻き起こしたポリドリの『吸血鬼』を筆頭に、メリメ、ジュール・ヴェルヌ、コナン・ドイルからジェラシム・ルカ、H・C・アルトマンまで、文学史上にユニークな歯跡を残す吸血鬼小説を、稀代の吸血鬼愛好家種村季弘が精選した名品珍品揃いのミニアチュール・アンソロジー。》
収録作品=吸血鬼(ジャン・ミストレル)/グスラ(抄)(プロスペル・メリメ)/吸血鬼(ジョン・ポリドリ)/吸血鬼の女(E・Th・A・ホフマン)/カルパチアの城(ジュール・ヴェルヌ)/吸血鳥(マルセル・シュオッブ)/サセックスの吸血鬼(コナン・ドイル)/吸血鬼(ルイージ・カプアーナ)/吸血鬼を救いにいこう(ベレン)/受身の吸血鬼(ジェラシム・ルカ)/ドラキュラドラキュラ(H・C・アルトマン)
小林久三『「二人の義経」殺人事件』ケイブンシャ文庫・1992年
《後世、義経として語り継がれている人物は、実はふたりいたのではないか? ひとりは源九郎義経であり、もうひとりは伊賀の国司・山本義経。ふたりは同じ源頼朝の家人として同時期に実在している。後世の史家はこのふたりの義経を混同しているのではないか?
――その研究成果をめぐる嫉妬と確執が連続殺人事件の発端となる表題作ほか、五篇を収録した傑作推理集。》
収録作品=「二人の義経」殺人事件/磐梯高原・幻の殺意/汚れた「ローマの休日」/冷雨の牙/雨は死の匂い/空に浮かぶ柩
ステファニー・ジェイムズ『冷めない愛』サンリオ文庫・1985年
《アメリカ中西部の小さな町で図書館司書をしていたレイシーは、決まりきった型どおりの生活を捨て、自分の手で新しい人生をきりひらこうと、西海岸の自由な天地をめざして出発した。ひと夏過ごす予定のホテルで出会ったのがホルトだった。セクシーで魅力溢れるホルトとの関わりの中で、愛する歓びを知るレイシー。けれども彼女は、ただ男に仕えるだけの女になりたくなかった。自由な束縛されない生き方とホルトヘの愛という葛藤のあいだで、レイシーが選んだものは?
現代に生きる男と女の愛を描くステファニー・ジェイムズのロマンス第3弾。》
権田萬治『日本探偵作家論』講談社文庫・1977年(日本推理作家協会賞)
《旧探偵作家の業績を抜きにして、今日の推理小説を語ることは出来ない。戦前の厳しい政治弾圧をかい潜り、辛酸をなめながらも一筋の流れを涸らすことなく、推理小説興隆への道を拓いてきた先人作家18人、小酒井不木から横溝正史までの足跡をたどり、作品を論じた初の本格的評論集。昭和51年度日本推理作家協会賞。》
クリスティー『青列車の謎』講談社文庫・1976年
《ロンドンとリベイラを結ぶ特急、青列車の中でアメリカの大富豪の娘ケッタリング夫人が殺害され、名宝「ほのおの心臓」が盗まれた。ルビーの名玉をめぐる新たな犠牲者だ。重要関係者には、破産寸前のその夫、夫人の愛人、謎の侯爵などが浮んでいる。列車内の密室殺人の現場に乗り合わせたポアロが挙げる真犯人は?》
エラリイ・クイーン『エジプト十字架の秘密』ハヤカワ文庫・1978年
《ウェスト・ヴァージニアの片田舎で起きた凶悪な殺人事件はT字で彩られていた。T字路に立つT字型の道標に磔にされたT字型の首なし死体、そしてドアに描かれたTの血文字。古代宗教的狂信やヌーディスト村、中部ヨーロッパの迷信から生まれた復讐者などを背景に第二、第三の殺人が起き、そのつどエラリイの推理は二転三転する。本格派の巨匠が推理の鍵をすべて提供し読者に挑戦する、国名シリーズ中傑作の誉れ高い作品》
光瀬龍『アンドロメダ・シティ』ハヤカワ文庫・1980年
《絶対的に非人間的な空間――宇宙。そこに乗り出していった人類が、いや一人一人の男たちが出会う非情な運命を、透徹した筆致で描ききる作家、光瀬龍。そして、光瀬龍の放った記念碑的名作「表われた都市の記録」を生む母体となった一連の作品群〈都市〉シリーズ完結篇、幻の名作といわれた「アンドロメダ・シティ」がついに登場する。全宇宙の運命、そして個の運命の交錯を詩情豊かに記した表題作他、「出帆旗、宜候」、「西キャナル市2703年」、「宇宙飛行士たち」などの宇宙小説、また、時代小説作家の力量を示す「化仏往生」などを収める。》
収録作品=アンドロメダ・シティ/出帆旗、宜候!/宇宙飛行士たち/西キャナル市2703年/化仏往生
野坂昭如『ゲリラの群れ』角川文庫・1970年
野坂昭如『とむらい師たち』講談社文庫・1973年
《人間、産むことはやめても、死ぬことはやめられぬ。死顔がもっている威厳と迫力に魅せられて葬儀産業に着手――万国博に対抗して葬博の実現に賭ける隠亡の息子ガンめん、葬儀のレジャー産業化に狂奔する葬儀演出家ジャッカンたちの奇行愚行の笑いと哀しみ。表題作「とむらい師たち」他、異色快作四篇を収録。》
収録作品=とむらい師たち/あゝ水銀大軟膏/四面凶妻/ベトナム姐ちゃん/うろろんころろん
常盤新平『アメリカンジャズエイジ』集英社文庫・1981年
《ジャズと禁酒法に彩どられた「すばらしいナンセンスの時代」1920年代の狂乱のアメリカ。暗黒の支配者アル・カポネや闇酒場に君臨した女王ラ・ギナン、60本のホームラン王ベーブ・ルース、大西洋横断の単独飛行に成功したリンドバーグ…など。象徴的人物をエピソードを通して描くアメリカの黄金時代。 解説・川本三郎》
平岡正明『山口百恵は菩薩である』講談社文庫・1983年
《山口百恵は少女時代の貧しさのデテールを一曲ごとに昇華し……ついに優雅な美しさに達した。その秘密は、なんの虚飾もなしに自分をみつめ、歌ってきたからである。……自分の煩悩にも鋭敏に反応するだろう、他人の煩悩を自分の悲劇にくり込んで山口百恵はさらに大きくなるだろう。すなわち菩薩である。》
大岡昇平『将門記』中公文庫・1975年
《天位を僭称し極悪人として糾弾された平将門。その波乱の生涯の心理と行動を精細に追究した「将門記」のほか、歴史小説に新境地を示した「天誅」「姉小路暗殺」「挙兵」「吉村寅太郎」「高杉晋作」「龍馬殺し」の六編を収める。》
真壁仁『みちのく山河行』法政大学出版局・1982年(毎日出版文化賞)
《峠を越え、消え残る小径を辿って東北の原風景をもとめる旅の風土記。苛酷な自然と歴史に耐えて伝統の手わざに生きる人々の営みに民俗の原郷を探るとともに、破滅と変貌にさらされた東北文化の危機的状況を鋭く抉る。》
稲垣足穂・梅原正紀編著『終末期の密教―人間の全体的回復と解放の論理』産報・1973年
《夾雑物を吸収しえなくなったとき、密教は、密教でなくなるともいえるのだ。自らが汚れ、傷つかないでいて、時代的課題と取り組めるわけがないではないか。》
フレッド・ホイル、ジェフリイ・ホイル『ネス湖の怪物』角川文庫・1977年
《スコットランド高地へ山歩きに出かけた地理学者のトム・コックランは、深夜すさまじい嵐に見舞われた。嵐のおさまった翌朝、ネス湖畔へ下りたトムは、そこで湖の水温を調査している青年、ジョンと知りあった。
ジョンは奇妙なことをトムに告げた。ネス湖の湖底の水温が最近、異常に上昇しているというのだ。トムはジョンの調査を手伝うことにした。
ある日、湖面にボートを漕ぎ出した二人の目の前に、謎の怪獣ネッシーが突然現われた! ネッシーの出現とともに、またあの猛烈な嵐が襲ってきた。そして、さらに驚くべきものを二人は見た。湖面を転げまわる大きな火の玉だ!――いったいネス湖にどんな異変が起きようとしているのか……。》
収録作品=ネス湖の怪物/分子人間
野坂昭如『夏わかば』文春文庫・1974年
《名作「火垂るの墓」と表裏一体をなす鮮烈なリリシズムの傑作と評される表題作「夏わかば」のほかに、“焼跡闇市派”の真骨頂を示す 「ぼくのお葬式」、「水の縁し」 「わが僞りの時」、「トテチテタ!」、「旅の終り」、「これはこの世の物語」、「俺はNOSAKAだ」という代表作のみを網羅した自選作品集。 解説・磯田光一》
泉鏡花『薄紅梅』中公文庫・1993年
《蜻蛉の舞う小春日和の卵塔場、年増の美女と初老の美女は三十年前に起きた若い女の哀しい身投げ事件に想いを馳せる…。二ヵ月後の死を予感しつつ書かれた絶筆「縷紅新草」のほか、最晩年に鏡花が到達した文体を如実に示す佳品「薄紅梅」「雪柳」を収める。》
福永武彦『忘却の河』新潮文庫・1969年
《過去に子供まで宿させた女を自殺に追いやり、自己を愛の亡骸にすぎないと信じる藤代は、病床にある妻が死に向っている時にも愛を呼びおこすことができない。中年夫婦の共有する愛の挫折と、その娘たちの直面している愛の不在とを対照させ、藤代家の人々が、それぞれ自らの生を悩み、それを超えようとする姿を描く。宗教のない日本人の愛と孤独への救いを追究した密度の高い作品。》
伴名練編『日本SFの臨界点[怪奇篇] ちまみれ家族』ハヤカワ文庫・2020年
《「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」と称された伴名練が、全身全霊で贈る傑作アンソロジー。日常的に血まみれになってしまう奇妙な家族のドタバタを描いた津原泰水の表題作、中島らもの怪物的なロックノベル「DECO-CHIN」、幻の第一世代SF作家・光波耀子の「黄金珊瑚」など、幻想・怪奇テーマの隠れた名作11本を精選。全作解題のほか、日本SF短篇史60年を現代の読者へと再接続する渾身の編者解説1万字超を併録。》
収録作品=DECO−CHIN(中島らも)/貂の女伯爵、万年城を攻略す(谷口裕貴)/雪女(石黒達昌)/怪奇フラクタル男(山本弘)/大阪ヌル計画(田中哲弥)/ぎゅうぎゅう(岡崎弘明)/地球に磔にされた男(中田永一)/黄金珊瑚(光波耀子)/ちまみれ家族(津原泰水)/笑う宇宙(中原涼)/A Boy Meets A Girl(森岡浩之)
中村元訳『ブッダのことば―スッタニパータ』岩波文庫・1984年
《数多い仏教書のうちで最も古い聖典。後世の仏典に見られる煩瑣な教理は少しもなく、人間として正しく生きる道が対話の中で具体的に語られる。初訳より26年、訳文はいっそう読み易くなり、積年の研究成果が訳注に盛られ、読解の助となるとともに、他仏典との関連、さらには比較文化論にも筆が及び興味はつきない。》
奥泉光『シューマンの指』講談社文庫・2012年
《音大のピアノ科を目指していた私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人が語るシューマンの音楽に傾倒していく。浪人が決まった春休みの夜、高校の音楽室で修人が演奏する「幻想曲」を偶然耳にした直後、プールで女子高生が殺された。その後、指を切断したはずの修人が海外でピアノを弾いていたという噂が……。》
最近のコメント