先月後半さらに不調が深まり、何も読めなくなったままでいる。
佐藤文香詩集『渡す手』、枡野浩一・pha・佐藤文香編著『おやすみ短歌―三人がえらんで書いた安眠へさそってくれる百人一首』、高岡修『詩集 微笑販売機』、井上久美子『エッセイ集 SUGARITA』は著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
内田百閒『菊の雨』旺文社文庫・1982年
《本名内田榮造、またの名は内円百閒、またの名は百鬼園先生、またはフオン・ジヤリヷー、哈八入道、土手之都、志道山人、志保屋榮造。この七つの「またの名」が一堂に集まって,百間氏を司会者に座談会を開いた。なんとも奇妙奇天烈な「七体百鬼園」など、四十篇の随筆と創作「南山壽」を収めた百鬼園文集。》
中根千枝『未開の顔・文明の顔』角川文庫・1972年
《悠々たるガンジスの流れを前に、若い人類学者は何を考えたであろうか。未開とは、文明とは。それは人々の瞳の中の、長く深き文明の輝やきとかげりに象徴されるものなのであろうか。本書は四年間に渡ってインドの未開部族の間や、ヨーロッパで生活した体験をつづったユニークなエッセイであり、文明論である。》(帯文)
志賀重昂『日本風景論(上)』講談社学術文庫・1976年
《志賀重昂は、日本の山川を精力的に歩き回り、地理学上の見地から、この『日本風景論』を、詩情豊かな文章で書き上げた。科学的・実証的な論述でありながらも、日本文学の古典を豊富に引用し、樋畑雪洞・海老名明四の挿画とあいまって、日本の自然の美しさを述べた書物としては、今や古典的作品となっている。明治二十七年の初版刊行以来、熱狂的に世に迎えられた本書は、日本人の景観意識に重要な変革を与えた記念碑的作品である。》
志賀重昂『日本風景論(下)』講談社学術文庫・1976年
《志賀重昂は文久三年(一八六三年)、今の愛知県岡崎市に、岡崎藩士志賀重職の子として生まれた。明治十一年(一八七八年)東京大学予備門に入学したが、十三年に、札幌農学校に移り十七年卒業した。十九年、約十ヶ月の南洋航海を経験し、『南洋時事』を書いた。二十一年には、三宅雪嶺・杉浦重剛らと政教社を興し、雑誌『日本人』を発行して「国粋保存主義」を説いた。明治二十七年最も多くの人に読まれた、この『日本風景論』を刊行した。》
加賀乙彦『犯罪』河出文庫・1984年
《暗鬱な山里の寒村で、風光明媚な海辺の町で、因襲ね深い農家の片隅で、そして都会の真ん中で、ある日突然、人々の心に殺意が芽生える――平凡な日常生活に隠された現代人の魂の惨劇が、様ざまな人間模様を通して露わにされて行く……「加賀乙彦は、犯罪による人間の追究という新しい領域の最前衛に立つ作家である。その最新の成果がここにある」と、秋山駿氏に絶賛された迫真の犯罪小説集》
収録作品=大狐/池/冬の海/暗い雨/漁師卯吉の一生/ある歌人の遺書/嘔気/十五歳の日記
亀和田武『まだ地上的な天使』ハヤカワ文庫・1982年
《マンションの一室に、大草原が地平線まで何処までも続いている。それはドラッグによる幻覚を実体化するという特殊な能力をもった少年が作り出す、美化された故郷の情景。やがて、ドラッグに溺れた少年は、己れの背に天使のような翼を生み大空へと飛び立つ……表題作「まだ地上的な天使」をはじめ、太陽にあたると死んでしまう“ミッドナイト・ベイビーズ”の一人として生まれた少年が、正常人の恋人と共に命を賭け、切ない願いをかなえようとする物語「朝日のようにさわやかに」など、現実の影に潜むイメージを繊細な筆致で贈る傑作短篇集!》
収録作品=夢みるポケット・トランジスタ/朝日のようにさわやかに/モノクロームの記憶/まだ地上的な天使/悲しき街角/ザ・ビッグ・ウェーブ
五木寛之『裸の町』文春文庫・1980年
《MADRID⇒ODESSA⇒DONBASS⇒BERLIN⇒TOKYO 闇の戦争といわれるスペイン内戦の渦の中で共和国国有の大金塊が消えた。謎につつまれたその行方を追って、旧帝国海軍グループ、ナチ党の亡霊たちが東京に集結した。大金塊はどこへ? 圧殺された人民戦線の悲劇を背景に、国際組織との対決を描く壮大なサスペンスノベル――。解説・朝倉俊博》
スタニスワフ・レム『ロボット物語』ハヤカワ文庫・1982年
《宇宙にあまねくその名を知られる宇宙創造士クレアチウスが、ビスカラル王の逆鱗に触れて課せられた三つの難題とは……「ビスカラル王の財宝」はじめ、青瓢箪(=人間)に奪われてしまったエレクトリーナ姫の心の鍵を、捜し求める英雄豪傑たちの活躍を描く「自雷也エルグが青瓢箪を打ち負かす話」。難破して孤島にたどり着いたオートマタイに、エレクトロニクス・フレンドがささやくありかたい忠告――「自動馬太の朋友」など、東欧SF界の巨匠レムが伝統的なお伽噺の語り口を用いて、ユーモラスに描きあげた、ロボットの、ロボットによる、ロボットのためのお伽噺12篇!》
収録作品=三人の電騎士/ウラニウムの耳当/自雷也エルグが青瓢箪を打ち負かす話/ビスカラル王の財宝/二匹の妖怪/白い死/星雲が逃げ出すにいたったいきさつ/電竜と闘った電算機の話/治水帝の御意見番/自動馬太の朋友/乾坤王と賢者たち/殲滅王物語
ジョルジュ・シムノン『男の首』角川文庫・1963年
《二人の婦人を殺し、死刑の判決を受けたウルタンのもとへ、差出人不明の一通の手紙が届いた。それには脱獄の手筈が細かく記されていた。脱獄は見事に成功した。だがウルタンは自分に尾行がついていることを知らなかった。
それはメグレの仕組んだ大芝居だった。彼は真犯人が他にいるとにらみ、ウルタンを泳がせてみることにしたのだ。だが確実な証拠は何もない。もしこの賭に敗れれば、メグレは辞職せざるを得ない。
しかし思わぬ誤算があった。ウルタンが尾行をまいてしまったのだ。メグレは最大の危機に直面した。もはや時間もない……。》
赤川次郎『百年目の同窓会』徳間文庫・1988年
《私は鈴木芳子。家とトンネルで繋がった、ある精神病院の仲間――シャーロック・ホームズやダルタニアンたちと探偵業を営んでいる。ある日、日本女性が突然外国人名を名乗り出すという不思議な事件が起きた。ホームズ氏はそれら五人の名前が、百年前にロンドンで切り裂きジャックに殺された女性と一致するという――。「華麗なる探偵たち」でおなじみの第九号棟の仲間たちがまたまた活躍するユーモア・ミステリー。》
アガサ・クリスティー『象は忘れない』ハヤカワ文庫・1979年
《探偵作家のミセズ・オリヴァは、一番会いたくない人物ミセズ・バートンから無理難題を持ちかけられた。オリヴァが名づけ親になったシリヤという娘が今度バートンの息子と結婚することになった。ついては昔起ったシリヤの両親の死亡事件を再調査してくれまいかというのだ。父親が母親を殺したのか、それともその逆だったのか、未解決に終った事件だった。しかし警察も匙を投げた10数年も前の事件を今さら……。困り果てたオリヴァはその夜、友人のポアロのもとを訪れた。得意の「回想の殺人」を描いて、人間の運命を凝視する女史晩年の代表作。》
アガサ・クリスティー『親指のうずき』ハヤカワ文庫・1982年
《トミーとタペンスは冒険心旺盛な初老の夫婦。今は亡きエイダ叔母のいた養老院を訪れた時、タペンスは叔母の部屋に掛かっていた一幅の風景画に胸騒ぎを覚えた。絵の中の運河のそばの淋しい人家に見覚えがあったのだ。そして今、絵の所有者ランカスター夫人が失踪した! タペンスは、変に親指がずきずきして何か悪いことが起こりそうな予感に襲われる……おしどり探偵トミーとタペンスが縦横無尽に活躍する女史後期の佳作》
佐藤文香『渡す手』思潮社・2023年
《第1詩集
我々は
書き下し文のように
ひらかれた気分をしていた
(「森と酢漿」)》
枡野浩一・pha・佐藤文香編著『おやすみ短歌―三人がえらんで書いた安眠へさそってくれる百人一首』実生社・2023年
《人気歌人・作家・俳人がコラボし、安眠がテーマの短歌を百首集め、見開きで紹介する現代版「百人一首」。
短い文章付きなので、短歌の読み方がわからなくても楽しめます。
この本のページをパラパラとめくるうち、ここちよい眠りの世界に誘われることでしょう。》
高岡修『詩集 微笑販売機』ジャプラン・2023年
井上久美子『エッセイ集 SUGARITA』鬣の会・2023年
エドマンド・クーパー『アンドロイド』ハヤカワ文庫・1976年
《水爆戦争に備える政府の冷凍計画に従事していたマーカムは、ふとした事故から冷凍状態のまま150年の時を眠っていた。やがて意識を回復した彼の見たのは、妻にそっくりの超高度ロボット――アンドロイドのマリオンAだった。政治にいたるまでの一切の仕事が忠実なこれらのアンドロイドに委ねられている22世紀にあって、マリオンAはマーカムに人間的感情を教えられる。だが、それがいつかマーカムヘの恋心となったとき、アンドロイド万能の社会に反旗を翻す彼の前で、みずから彼女が選んだのはもっとも人間的行為――自殺だった。不朽のアンドロイド女性を生んだ名作登場!》
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