土浦で30年以上、つまり私が高校生の頃から営業していた古本屋「まんがらんど」が2016年12月10日で閉店してしまった。その名のとおりマンガが中心の店だったので、私は上得意というほどではなかったが、寂びれた市街で立寄る先がまた消え、喪失感がある。
在庫処分のため、次第に値を下げつつ1ヶ月くらい閉店セールをやっていたので、BLやラノベがほとんどだが、立寄る度にだいぶ買い込んだ。
残った品は古紙として処分されてしまうということだったし、最後の頃は9割引になっていたので、ジャケ絵だけ見て適当に籠に放りこんでいった。9割引というのは10,000円分買っても1,000円にしかならないということである。指が千切れそうな重量を買っても数百円にしかならない事態に頭がついていかず、感覚が狂ったままだった。古本購入がそのまま店の供養のようでもある。
そして買い込んでしまうと読まなければならないので、またBL本が無闇に増えだした。何をやっているのか(もっともそのおかげで、普段ならば手を出さなかったはずの昆虫擬人化BL、樋口美沙緒『愛の本能に従え!』などまで読んでしまって結構面白かったのだが)。
今回、装幀で懐かしいのは角川文庫と文春文庫の小松左京作品。
眉村卓の新刊『終幕のゆくえ』も読めたが、市内の本屋(一応あるにはある)には最早文庫・新書の新刊すらろくに入らないので、都内に出たときに買った。
なお、以下の本のうち、伴とし子『卑弥呼の真実に迫る―京都府丹後に謎解きの鍵!』、福島晶子『写真集 Family』、西村勝『詩集 シチリアの少女』、ジェフリー・アングルス『わたしの日付変更線』は著者または関係者から献本をいただきました。記して感謝します。ジェフリーさんは一度トークイベントを一緒にやっているのだが、送っていただけると思わなかった。
相変わらず冬眠状態で眠い(追記。誤記のお知らせいただいた方、ありがとうございました。スキャナーの読み取りエラーが残って「田村優子賞」になってしまっていたのを「田村俊子賞」に直しました)。
石川喬司『エーゲ海の殺人』旺文社文庫・1986年
《船室に投げ込まれる“呪いの手紙”、身辺をうろつく正体不明の黒メガネの男、同席の憎らしいアベックヘの殺意……。音楽家タムラが、エーゲ海遊覧船から娘へあてた手紙は、次第に緻密なアベック殺人計画を明らかにしていく。だが、犯行決行の前日に書かれたイスタンブールからの手紙は、娘の手許には届かなかった。その後、彼は行方不明になって…。エラリー・クイーン誌絶賛の表題作はか7短編とショートショート収録。》
収録作品=カマルグの白い馬/次号予告/パリの密室/エーゲ海の殺人/エープリルフール/あべこべ浦島/日曜日は赤/だんちのじけん/同窓会/いい一日/お話し中/冷たい眠り/翔んでる男/パパの贈り物/セイジンの日/最後のタコ/死後/スージーの大予言/三四郎池の少女/闇からの声/エリート社員集団蒸発
保坂和志『試行錯誤に漂う』みすず書房・2016年
《「私がこの“試行錯誤”ということを最初に思ったのは、パブロ・カザルスの、バッハの『無伴奏チェロ組曲』を弾いているときに聞こえる、弦の上を指が動いてこすれる音と弓が弦に触れる瞬間の音楽になる一瞬間の音だった。どちらもノイズということだが、私はこれを最高級の蓄音機でSPレコードを再生してもらって聴くと、奏者と楽器が自分がいまいるまったく同じこの空間にいると感じられるほどリアルという以上に物質的で、その音からブルースが聞こえた。
弦の上を指が動いてこすれる音や弓が弦に触れる瞬間の音はだからノイズではない。その音が弦楽器を弦楽器たらしめ、チェロをチェロたらしめる。カザルスが弾いた音の中にブルースの響きまであったのではなく、そのこすれる音の中にカザルスの演奏がありブルースもあった。弦楽器が譜面=記号で再現可能な行儀のいい音の範囲を出るときに、奏者の指も体もそこにあらわれ、肉声もあらわれる。(…)
表現や演奏が実行される前に、まずその人がいる。その人は体を持って存在し、その体は向き不向きによっていろいろな表現の形式の試行錯誤の厚みに向かって開かれている」
(本書「弦に指がこすれる音」より)
「私」をほどいていく小説家の思考=言葉。
芸術の真髄へといざなう21世紀の風姿花伝。》
ミシェル・セール『作家、学者、哲学者は世界を旅する』水声社・2016年
《〈哲学〉における幹–細胞を見いだす――。
21世紀になり新たに勃興したモノやノン・ヒューマンを巡るさまざまな思索や、人類学の存在論的転回(オントロジカル・ターン)とも深く絡み合いながら、諸学問の歴史にまつわる知見の膨大な蓄積を背景に、セールの思想の画期的な新展開が、ここに語られる。》
伴とし子『卑弥呼の真実に迫る―京都府丹後に謎解きの鍵!』明窓出版・2016年
《京都府丹後にある籠(この)神社は、古い元伊勢の地として知られ、天橋立伝説、浦嶋伝説など数々の伝説や伝承が残る場所。「籠(かご)神社」とも読むことができる籠神社は、童謡「かごめかごめ」の中に、神社に関わる謎が秘められていたということが、近年研究者の間で話題となった。
誰もが知る有名な神社に伊勢神宮があるが、元伊勢という別名がつく籠神社に1200年もの間「他見許さず」として眠り続けている国宝がある。それは、「日本最古の系図」。
唯一国宝に指定されているこの系図を読み解くことで、『古事記』『日本書紀』で見つけられなかった重要情報を得ることができる。それは、古代社会において、優秀な活躍をし、先進国を支えた海人族の存在。まさに隠された古代史を秘めた系図なのだ。
さらに、この系図には、「日女命(ひめのみこと)」という名が記されており、『魏志倭人伝』に登場する「卑弥呼」や「トヨ」を連想させる名までが記されているのだ・・・。
このことは、長年続く邪馬台国論争に新たな局面をもたらすに違いない。卑弥呼はどこにいたのか。大丹波王国の日女命が女王卑弥呼か。混迷する古代史の謎を解く鍵がここにある。
心躍る歴史ロマン、古代史の再構築が、今、ここから始まろうとしている。》
ヴォルテール『ヴォルテール回想録』中公クラシックス・2016年
《フリードリッヒ大王との愛憎半ばする交友関係を軸にマリア・テレジア、リシュリュー、ポンパドゥール夫人等当代代表的人物を活写する壮大な一代記〈解説〉中条省平》
本阿弥清『〈もの派〉の起源―石子順造・李禹煥・グループ“幻触”がはたした役割』水声社・2016年
《〈幻触〉とは何か?
斎藤義重や高松次郎の影響で誕生したとされる〈もの派〉。
だがそこには、美術批評家の石子順造とともに静岡で活躍するグループ〈幻触〉の存在があった。
〈もの派〉以上に〈もの派〉的な、独自の作品を作っていた〈幻触〉の活動を詳らかにし、〈もの派〉の真実に迫る!
60年代美術史の真実!》
柊平ハルモ『幾千の好きと嫌いを繰り返し~身代わり花嫁の恋~』シャレードパール文庫・2007年
《「俺と一緒に暮らしてほしい」――十五歳の時、母をモデルにデザインされたウェディングドレスを着てステージモデルを務めた縁で、若くして世界で成功を収めているデザイナーの弦馬に引き取られ、育てられた和依。次第に彼への恋心を自覚していくものの、弦馬が酔っぱらって仕掛けてくる抱擁もキスも、本当は亡くなった母に向けられるべきものと知っている和依は気持ちを抑えてきた。しかし、二十歳の誕生日についに一線を越えかけるという出来事が起こり…。》
福島晶子『写真集 Family』コールサック社・2016年
《写真家にして俳人、福島晶子の50年間の集大成!代表作「バスタイム」では、赤塚不二夫やたこ八郎など昭和の個性派スター達の貴重な素顔を現代に伝える。写真に取り合わせた俳句の英訳付き。》
角田喜久雄『黒岳の魔人』中公文庫・1983年
《黄金をよぶ名笛「かわせみ」を追って、甲斐の黒岳に巣食う魔人と闘う勇敢な少年剣士小助と三平の痛快絵物語》
いおかいつき『リーチ』シャレード文庫・2008年
《漫画家の一本木陸人は、名うての代打ち・真木荘介の噂を聞き、次作取材のため『鳳』という雀荘で一番いい男との情報を頼りに真木を探すことに。はたして、真木は想像以上に目を惹く容姿と実力で、陸人の創作意欲を掻きたてる人物だった。しかし、当の本人は取材に非協力的で、連日雀荘に通うもののいっこうに仕事は進まない。それでも真木を諦めきれない陸人に、彼が出した条件は、「質問に俺が一つ答えるたびに、お前を触らせろ」というもので――》
収録作品=緑の木蔭の中で/夾竹桃と星と/杉木立 村里日記 その一/萩すすき 村里日記 その二/落葉の創作 村里日記 その三/野尻
ナボコフ『偉業』光文社古典新訳文庫・2016年
《ロシア育ちの多感で夢見がちな少年マルティンは、両親の離婚とともに母に連れられクリミアへと移る。その後、革命を避けるようにアルプスへ、そしてケンブリッジで大学生活を送るのだが……。うねるような息の長いナボコフ独特の文章を忠実に再現、「自伝的青春小説」が新しく蘇る。》
森本あき『さらわれた花嫁と恋愛結婚!?』ラヴァーズ文庫・2009年
《「暇なお金持ちの退屈しのぎ。見初められたお前は幸運か不運か?」平凡で地味なサラリーマン、中林鳩羽は、会社の部長命令でお見合いをすることになる。しかし、そのお見合いは、鳩羽に目をつけた金持ちによって、巧みに仕組まれた罠だった。お見合い会場で拉致され、監禁された鳩羽は、VIPが集まるオークションにかけられることに! 嫌がる鳩羽の前に現れた、調教師だという美しい男は、これからの調教で鳩羽が快楽の虜にならなければ、逃してやると駆け引きを持ちかけてくるが……。》
池波正太郎『散歩のとき何か食べたくなって』新潮文庫・1981年
《映画の試写を観終えて、銀座の〔資生堂パーラー〕に立ち寄り、はじめて洋食を口にした40年前を憶い出す。外神田界隈を歩いていて、ふと入った〔花ぶさ〕では、店の人の、長年変らぬ人情に感じ入る。時代小説の取材で三条木屋町を散策中、かねてきいていた〔松鮨〕に出くわす。洋食、鮨、蕎麦、どぜう鍋、馬刺から菓子にいたるまで、折々に見つけた店の味を書き留めた食味エッセイ。》
小松左京『神への長い道』角川文庫・1978年
《途方もない浪費と試行錯誤をくりかえしている人類に、行きつく先があるだろうか。
生きることに倦み、精神のやすらぎを求めていた一組の男女が、冷凍睡眠法により永く深い眠りについた。だが、56世紀になって再び眠りからさめた彼らに、果たして精神のやすらぎがあっただろうか?
どうにもならない精神的な袋小路に追いこまれた現代人の、宇宙空間的な“未来史”。表題作ほか、傑作本格ハードSF5篇収録。》
収録作品=宇宙鉱山/飢えた宇宙/宇宙に嫁ぐ/星殺し/再会/神への長い道
小松左京『青ひげと鬼』角川文庫・1980年
《自然界においては、雄の大部分は、交配さえ終われば、もう何の要もない。
その男の過去6人の妻たちは、みな妊娠中毒症を起こして死んだ。妻殺しの容疑で警察に調べられたこともある。しかし、ホテルのバーで知り合った7人めの女は「あなたの子を産むわ」と、侍っていた避妊薬をそのとき、ポイと捨ててしまった。
おれの子を孕むと死ぬ、という男の忠告もなんのその、しばらくして女は妊娠した。女は次第に生活の主導権をにぎり、ある種の危険な兆候をみせはじめた! 著者最高の傑作SF群。》
収録作品=木静かならんと欲すれど……/静寂の通路/海の視線/青ひげと鬼/愛の空間/失業保険/さらば幽霊/ムカシむかし……
小松左京『題未定』文春文庫・1980年
《〈読者各位――「題未定」は「題」ではありません。いつも作品の題には大変苦しみ、書き上げてからつけるのですが、この度は、締切りが来ても、どうにも適当な題が思いつけず、とうとう題未定のままに〉はじまるという前代未聞の幕開き。「日本沈没」の著者が、またもやどえらいことを企んで……さて何が? 長篇怪奇ユーモアSF》
山中恒『背後霊倶楽部』旺文社文庫・1989年
《主人公、花美詩織は、背が小さくて、おとなしく、まるで目立たない女の子だったが、ある日、その詩織に背後霊がつくようになってから様子は一変した。
詩織の通学する学園では、背後霊の目に見えない力によって、奇想天外な事件が次々に起こる。……奇想天外・痛快面白小説。》
南條範夫『幻の百万石』旺文社文庫・1984年
《「土佐、陸奥、薩摩、丹後、信濃、志摩」
兵馬が、くり返した。
「山内、伊達、島津、京極、真田、九鬼」
主馬が、くり返した。
まるでどこからか天来の妙案が飛んでくるのを、その呟きで招きよせようとするかのように、二人は何度もくり返した。………
「紋だ」
「うむ,家紋だ」 〈本文より〉
――越前宰相・結城秀康が家康から与えられた百万石のお墨附をめぐる時代推理はか六編を収録。》
収録作品=幻の百万石/太閤の養子/悲願二百六十年/最後に笑う禿鼠/逆心の証拠/眼を突く剣士/惨たり笠松城
小松左京『機械の花嫁』ケイブンシャ文庫・1983年
《ウーマン・リブが勝利を治めた地球。男たちは、安逸の日々を求めてやまない女性たちを見捨て、宇宙へ飛び立った。彼らが孤独な宇宙の果てで、失われてしまった“女らしさ”を見出したその対象とは……。表題作「機械の花嫁」ほか、巨匠がつづうロボット・アンドロイド・テーマの傑作SF作品集。》
収録作品=終りなき負債/Dシリーズ/SOS印の特製ワイン/宗国屋敷/機械の花嫁/サマジイ革命/ヴォミーサ
ロラン・バルト『喪の日記』みすず書房・2015年
《愛する母アンリエットの死から書き起こされた断章群。「この悲しみをエクリチュールに組みこむこと」バルトが遺した苦悩の刻跡にして懸命の物語。生誕100年。》(「BOOK」データベースより)
ジェフリー・アングルス『わたしの日付変更線』思潮社・2016年
《境域の日本語詩集!
というのも わたしは
どこにも属していない
過去にも 未来にも
ひょっとしたら 現在にも
(「日付変更線」)
「僕がいちばん惹かれ、羨ましく思うのは、「たがいに歩みよる分身同士」とも言うべきモチーフである」(柴田元幸)、「詩という土地で、ジェフリー・アングルスはようやく「一つ身」になる」(小池昌代)、「二つの異言語間にどんなエロティシズムが成立しうるかの実験といっていいだろう」(高橋睦郎)。気鋭のアメリカ人日本文学者による、境域の日本語詩集! 装幀=奥定泰之》
蓮實重彦『伯爵夫人』新潮社・2016年(三島由紀夫賞)
《帝大入試を間近に控えた二朗は、謎めいた伯爵夫人に誘われ、性の昂ぶりを憶えていく。そこに容赦なく挑発を重ねる、従妹の蓬子や和製ルイーズ・ブルックスら魅力的な女たち。しかし背後には、開戦の足音が迫りつつあるらしい――。蠱惑的な文章に乗せられ、いつしか読者は未知のエクスタシーへ。著者22年ぶりとなる衝撃の長編小説。》
エルネスト・グラッシ『形象の力―合理的言語の無力』白水社・2016年
《近代合理主義の論証言語に対する形象言語の優位と、古代雄弁術の復権を謳い、メタファによる世界再統合の道を探るフマニスム形象論。》
きたざわ尋子『視線のキスじゃものたりない』幻冬舎ルチル文庫・2007年
《佐々元雅は高校2年。絡まれていたところを助けてくれた森喬済は、雅の兄・棗がオーナーのマンションに入居する大学生だった。接触嫌悪症で無愛想な喬済に雅は懐く。そんなある日、隣室に引っ越してきた郡司が雅に親しげなのを見て、喬済はなぜか面白くない。雅が好きだから、と気づいた喬済は…!?初期作品待望の文庫化。書き下ろし短編も同時収録。》
森山侑紀『アイドルになんかなりたくない!』講談社X文庫・2011年
《「俺と左近、入れ替わろうか」
一本気で勝ち気な男子高校生・井上左近には大きな秘密があった。それは、母親が人気少女漫画家で、かつコスプレが大好き。その母親のせいでネット界の人気ナンバーワンの美少女アイドルにされていたのだ。男なのに美少女アイドルだなんて!?
そんなある日、名門東郷館学院で生活中の双子の弟・右近から入れ替わることを提案されて……!?》
森本あき『お嫁においで❤』ダリア文庫・2006年
《パン屋で修行中の羽村杏と、大手商社営業マンの山県柾は20年の付き合いになる幼馴染み。 二人は同い年の26歳だが、柾は二股・三股当たり前、来る者拒まず、去る者追わずのろくでなしで、彼女が途切れた事がない。 対する杏は、生まれてこの方一度も彼女ができた事がない。 実は、杏は密かに柾に恋心を抱いていたのだ。 そんな杏に、柾はある日「偽装結婚しよう」と言ってきて──!?》
前田栄『従順なカラダ 意固地な唇』ダリア文庫・2008年
《クセ者生徒会長に強引に押しきられ、本当は血が繋がらない上に、8年も没交渉だった作家の兄に講演を頼むことになってしまった高校生の瀬戸晶。その条件として、週末ごとに兄の家で資料整理をすることになるが、仕事そっちのけで甘やかされ、困惑することに。しかも「悪い遊びを教えるのが、兄の特権だろ?」と身体を重ねられ、幾度となく深い快楽に堕とされてしまい――。》
眉村卓『終幕のゆくえ』双葉文庫・2016年
《六七歳の柴田一郎は、独り暮らしの無聊を慰めるべく、自分史を書きはじめるのだが(「自分史」)。病院帰りに立ち寄ったビルの名店街で渡された腕時計のようなものは、自分がどのくらい嫌われているかわかるというアイテムだった(「嫌われ度メーター」)など、人生の黄昏時を迎えた者たちに訪れる奇妙であやしい出来事。全編書き下ろしで贈る、珠玉の二十の物語。》
収録作品=羨望の町/三〇秒間のシシフンジン/コキ/スガララ・スガラン/真昼の送電塔/自分史/いのちの水/N氏の姿/幻影の攻勢/お誘い/浅吉/嫌われ度メーター/予約/メモ帳/町へ行く前に/お告げ/長い待機/人形/あと一〇日/林翔一郎であります
西村勝『詩集 シチリアの少女』ふらんす堂・2016年
《◆第一詩集
海の旅は詩人を生んだ。
海洋の大きな揺籃に育まれてポツポツと詩の言葉が泡のように生まれた。
その泡はふたたび詩人の魂を通って醸成され詩想となる。
自己と向き合う、
みずみずしい抒情のきらめき……》
高橋たか子『神の海―マルグリット・マリ伝記』講談社・1998年
《神秘家の心の奥深くへ
太陽王ルイ14世親政下のフランス・ヴェルサイユ宮廷文化華やかなりし時代、御出現によって「心」を広めよという命を受け、神への愛に身も心も献げ尽くした聖女マルグリット・マリの生涯。
存在そのものの根底が神と直結していることを本能的に感知していた人たち(中略)が、自身の内を覗き込むと、海が見える、と、まず言っておこう。海というたとえがぴったりするような、なにか大きな波打つ空間とでもいったもの。根底から、波打ちながら大きなものが来ていて、その全体が自分という1つの存在を、一瞬また一瞬と絶えまなくここに在らしめている。
そのような遠い深い広いものを、筆者は神の海と名づけてみたい。――本文より》
樋口美沙緒『愛の本能に従え!』白泉社花丸文庫・2015年
《女であることが至上の一族に生まれ、最後の砦だった性の異形再生にも失敗したハイクラス種ナナフシ出身の歩は、卒業まで性交渉しないと約束させられ、一族を追われる形で星北学園に入学した。目立たないことが取り柄の自分は、誰にも必要とされないと途方に暮れていたそんなある日、ハイクラス種オオムラサキ出身の大和と寮で同室になることに。野性的な大和に憧れていた歩は胸を高鳴らせるが、大和とその従兄弟の寝取りゲームにまきこまれ、強引に体を開かれてしまう。すると、禁忌を破った歩に思いがけない変化が!?》
水戸泉『プライド』白泉社花丸文庫・2005年
《母親の再婚で家に居づらくなり、アパートを借りて働きながら高校に通う来。その少し影のある美貌は、本人の意思とは裏腹に男たちの欲望をかきたてずにはおかなかった。そんな来の前に突然現れた謎の青年・三田は、二億五千万円という大金で無理やり来をモデルとして「買い」、学校もバイトも辞めさせて独占してしまう。やがて三田のカメラの前で、来の危うい資質が花開き…。》
雪代鞠絵『可愛い下僕の育て方』白泉社花丸文庫・2006年
《清和学園高等部一年の佐倉みのりと、一学年上の生徒会副会長・鷹野克幸は暴君と下僕の関係だ。どんなにワガママを言われても、意地悪されても克幸には絶対服従の毎日を送るみのり。ある日、みのりは克幸の悪友である生徒会会長・久津見麗に恋してしまう。それを知った克幸は、地味でサエないメガネっ子のみのりが麗にふさわしい相手になれるよう、レッスンしてやると言うが、それはとってもHなもので…!?》
高橋たか子『骨の城』人文書院・1972年
《屈折した文体で、現実と非現実の狭間に独自の文学的空間を構築する新鋭作家の作品群。小宇宙を孕む硬質の文学!!》
収録作品=骨の城/化身/白夜/眼/きらめき/半音階的幻想/交わり/神秘の湖/リュミリア/乗車錯誤
吉川英治『黒田如水』新潮文庫・1959年
《戦国時代の末期、ようやく天下統一の曙光がさし始めた頃、姫路の土豪から身を起し、秀吉の側近に迎えられた黒田官兵衛孝高。本書は、彼がその量り知れない智嚢をもって秀吉に随身し、相共に天下とりの一歩を踏み出す中国征伐の前日までを描くが、文雅のたのしみを解し、深い人間愛に徹した知勇兼備の戦国武将を描いて「太閤記」と不離の関係をなす作品である。》
岬兄悟『洪水パラダイス』講談社・1988年
《「何を考えているのやら」困ったものだ。のストーリー。最新おもしろ傑作集。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=いけない不眠症/洪水パラダイス/「でんちゅう」に恋した少女/不条理パラサイト/ごっつん女/ターニング・ポイント/影みたい/仮面妻/娘の部屋
阿刀田高『恐怖同盟』新潮社・1987年
《恐怖は人間の最も古くからの感情だと言われている。真っ暗闇の中で野獣に襲われる恐ろしさを想像してみれば、容易に納得がいく。―頭をガンと殴られるような恐怖、気がつかないうちにじわりと効いてくる恐怖、ノドに刺さった小骨のようにしつこい恐怖、etc…悪夢と狂気のブラック・ワールドを描かせては当代随一の筆者が贈る連作恐怖小説集。「顔」「血」「鳥」「疣」「妖」「老」など10篇。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=顔/血/鳥/家/耳/疣/妖/雲/道/老
坂口安吾『白痴・二流の人』角川文庫・1970年
《「白痴」は昭和21年に発表、敗戦間近かの耐乏生活下独身の映画演出家が隣人の白痴女と奇妙な交際をする話で、極限の虚無と孤独を描き世人に多大な共感を与えた作品。「二流の人」は、秀れた知略を備えながら二流の武将に甘んじた黒田如水の悲劇を浮彫りした歴史小説である。他に「青鬼の輝を洗ふ女」等坂口文学の代表作を網羅。》
収録作品=木枯の酒倉から/風博士/紫大納言/真珠/二流の人/白痴/風と光と二十の私と/青鬼の褌を洗う女
富岡多恵子『植物祭』中公文庫・1975年(田村俊子賞)
《饒舌体といわれる独特のスタイルで乾いた抒情をさらりと軽く流しつつ女の内部にひそむ性愛を描きあげて最も成功した作品といわれる著者の初の長編小説。(田村俊子賞受賞作)》
酒井健『夜の哲学―バタイユから生の深淵へ』青土社・2016年
《サド、ニーチェ、ブランショ、ラカン、岡本太郎、そして――バタイユ
過剰なものや不可視なものを忌避して、人は社会を築いてきた。しかし、そうやって捨ててきた異様なもののなかにこそ哲学の根源がある。物質にあふれ、既存の道徳に守られ、確かな実体や輝かしい未来にばかり心をくだく現代に、究極的に欠けているもの。見えない闇の奥にこそ生の根源があると信じ探求しつづける、思想家の到達点。》
真船るのあ『おしかけ彼氏とウェディング』白泉社花丸文庫・2015年
《施設育ちの結志は、デザイナーを目指し奨学金で専門学校に通っている。生活費を稼ぐため日々バイトに追われているので友達もおらず、アパートで質素な生活を送っていた。そんな結志のもとに、突然「迎えに来たよ」と八年前に離れ離れになった同じ施設出身の泰惺が現れた。「これからはずーっと一緒だよ」と高級タワーマンションに連れて行かれ戸惑いつつ拒否すると、なんと隣に越してきた挙げ句、毎日食事の世話までしてくれて!?おしかけ彼氏とのハイパー溺愛ライフ❤》
橘かおる『ダブルブッキング―同居は甘い恋の罠―』白泉社花丸文庫・2011年
《切れ味鋭い介護士の博巳は、伝説の元ヤンキー。ある日電車で鼻血を出したエグゼクティブを助け……しかしそんなことは綺麗さっぱり忘れた頃、博巳はその男と望まぬ再会を果たした。引っ越し先が、ダブルブッキングだったのである!「豪邸があんだろ。帰れ」
「それはできない。自立の第一歩なのだ」
双方譲らず導き出された結論は、なんと一時同居。異人種間生活交流の行方は果たして……?
珍プレー好プレー満載、意外性抜群ラブ❤》
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