冬季うつが出て、連日病的に眠くて仕方がない。ひどい日は本当に呼吸するのがやっと。今月はろくに読めなかった。頭が働かないのでBLばかりやたらに増えた(市内のまんが専門古書店が閉店を決めてしまい、そこの半額セールでやたらBL本を入手してしまったせいもある)。
伊藤浩子『未知への逸脱のために』、鈴木一平『灰と家』はそれぞれ著者から献本を受けました。記して感謝します。どちらも詩集だが、後者は五七五になっている部分も多数含むので、余力があれば別にブログに上げたいところ。
加納一朗『夕焼けの少年』ソノラマ文庫・1975年
《少年は夕焼けを見ていた。少年は振り向きもせずに、そっと近づいた登志子に話しかけた。《とてもきれいだね》驚いて登志子はいった。《あなた、うしろに目があるみたい》 隣の家に引っ越して来て新しくクラスメートになった亘は、それからも度々、不思議な力を発揮して登志子を驚かせた。
友情と冒険の世界を描く、加納一朗の傑作ジュニアSF。》
加納一朗『イチコロ島SOS』ソノラマ文庫・1976年
《ノッポとチビの弱虫兄弟・青井是馬と荒馬は、クイズに当選して、めでたくイチコロ島無料招待旅行に出発した。だが、彼らを待ちうけていたのは、青い空でも、豪華なホテルでも、おいしい食事でもなかった。いんちきクイズでおびきよせたいけにえを相手に、殺しの腕を競おうともくろむ、万国殺し屋協会会員の10人の殺し屋どもだったのだ。》
モーリス・ルブラン『奇巌城』創元推理文庫・1965年
《ル・アーブルの海岸にそびえ立つ無気味な古城、その中に千古の歴史と伝説を秘めて眠る巨万の財宝! フランス大革命の際断頭台の露と消えた王妃マリー・アントワネットが書き残した紙片の謎は、とめどもなく拡がって、アルセーヌ・リュパンと17歳の天才少年との暗号解読の競争が始まる。ひとり数役を演じる神出鬼没の痛快なリュパンの活躍は、読者を唸らせずにはおかぬサスペンスにあふれている。リュパン・シリーズ中、一、二をあらそう代表作である。》
モーリス・ルブラン『特捜班ヴィクトール』創元推理文庫・1973年
《リュパンが逮捕される。神出鬼没、天下無敵の怪盗紳士が豚箱入りとは。警察部長どころかわれら満天下のリュパン・ファンが啞然とさせられる。その殊勲者ヴィクトール刑事とは、はたして何者か? 謎につつまれた国防債権の盗難事件を発端として展開される波瀾万丈の大絵巻のなかで浮きつ沈みつする美女、こそ泥、えせ貴族たち……それを押しのけ、ヴィクトールは遂にめざすリュパンをしとめる。しとめることはしとめたが……リュパンはどこに行ったのか、美女を擁して?》
森本あき『恋の手ほどき、おまかせください』ダリア文庫・2011年
《天然で楽天家のお坊ちゃま・望央は、一族の決定で、またいとこの桃と一緒に成人のお披露目パーティーをすることになる。その日のためだけに紳士淑女を養成する学校に通うことにした望央は、学校見学のときに出会った、厳しいけれどさわやかな風を纏う、王子然とした講師・宝来に心惹かれる。彼の個人授業を希望した望央だが、誤ってエッチなコースを選んでしまい…!? 育成ラブ❤》
渡部直己『小説技術論』河出書房新社・2015年
《『日本小説技術史』の著者が現代文学にその方法を応用した小説技術の実践編。移人称小説論、自由伝聞話法、対偶技法、隠喩論などを現代作家を対象に展開する執筆者・読者にとって必読の一冊。》
中沢新一『熊楠の星の時間』講談社選書メチエ・2016年
《著者中沢新一氏は、長年にわたり南方熊楠についての考察を深め、多くの論考を発表してきました。1990年代に刊行された『森のバロック』(読売文学賞)、『南方熊楠コレクション』(全五巻)などが、その代表作です。また、「宗教学・人類学・民俗学を綜合して「対称性人類学」で新たな思想を展開しています。また独自のフィールドワークによる「アースダイバー」(『アースダイバー』、『大阪アースダイバー』、『週刊現代』連載中の「アースダイバー 神社編」)新しい知見と感性を切り開く可能性をもっています」(南方熊楠顕彰会の受賞理由を短縮しまとめた)。
2016年の第26回南方熊楠賞が授与されます。
21世紀に入ってから、著者はますます熊楠の重要性を認め、彼の思想の可能性を掘り起こし、発展させるために、2014年には「南方熊楠の新次元」と題する4回の講演・対談を主催しました(明治大学野生の科学研究所)。
本書は、その時の講演「アクティビスト熊楠」「明恵と熊楠」(改題「熊楠の華厳」)に加えて、熊楠の心の構造を探った「熊楠のシントム」、海のエコロジーを探究する「海辺の森のバロック」、本書の全体像を提示する「熊楠の星の時間」を収録した、新熊楠論です。
思想家・中沢新一が提示する、熊楠哲学の放つ強力な火花に驚愕し、目を開かれることになるでしょう。未来を切り開く一冊です。》
佐久間文子『「文藝」戦後文学史』河出書房新社・2016年
《1933年、改造社で創刊された「文藝」は、言論統制による改造社解散後、河出書房に引き継がれた。空襲で社屋が焼かれてもなお雑誌の刊行は続き、そして戦後へ―戦後派作家たちが隆盛するなか、60年代に入ると文藝賞を創設した編集長・坂本一亀は戦後派を総括。そこで“戦後”という主題は終焉したかに思えたが…現在まで続く“戦争”の感触を掲載作品と関係者の証言から峻烈に描き出す。》(「BOOK」データベースより)
T・S・エリオット『キャッツ』ちくま文庫・1995年
《世界中で大評判の超ロングラン・ミュージカル「キャッツ」の原作を新訳で贈る。
あまのじゃく猫におちゃめ猫、猫の魔術師に猫の犯罪王……。色とりどりの猫たちがくり広げる、奇想天外な猫詩集。
ノーベル賞を受けた、20世紀最大の詩人エリオットが、1939年、51歳のときに出版したこの詩集は、エリオットの猫観察記ならぬ猫交友録とでもいえるもの。
ニコラス・ベントリーのカラーさしえ14枚入り。》
笠井潔『サイキック戦争』講談社ノベルス・1986年
《彼の〈力〉ゆえに潰滅した連合革命軍。父母、祖父母二代にわたる惨劇。呪われた血を封印すべく、竜王翔は、信州の山深く籠る。しかし、姉の不可解な失踪は、彼を戦火のヴェトナムへ、人類の未来を賭けた大謀略の渦中へと誘う。――あなたは炎の竜に君臨する王者。謎の女性の言葉は一体、何を意味するのか……。》
久野四郎『砂上の影』ハヤカワ文庫・1975年
収録作品=砂上の影/溶暗/夢判断/五分前/ワム/悪酔い/結婚エージェント/グルルンガ・ジダ/上流社会/見える理由は…/再会/くり返し/オー・マイパパ/旅行案内/獏くらえ/いなかった男/事故多発者
峰桐皇『だれにも運命は奪えない(上)―浪漫神示』講談社X文庫・2007年
《相思相愛のはずの恋人の氷楯から、なぜか突然に一方的な別れを宣告されてしまった十和。
もう一度氷楯に会うため、十和は大学助教授の蒲生や雷神・阿遅鉏らの助けを借りて京都へ向かう。
そこで明らかになったのは、数千年の時を遡る氷楯と十和、そして経津主の宿命の物語だった……。
イケメン陰陽師とピュアな大学生のオカルティック・ラブストーリー、急展開の行方は?》
峰桐皇『だれにも運命は奪えない(下)―浪漫神示』講談社X文庫・2007年
《発端は1月の京都。経津主神との邂逅により、重大な「秘密」を抱え込んでしまった十和は、恋人の氷楯にも真実を話せないまま苦しい日々を送っていた。そんな十和を心配して、氷楯は占事を行う。そして、彼が出した結論は……。
「十和。残念だが、ここで別れよう」
氷楯や式神たちとの幸せな日常を、十和は取り戻すことができるのか? 衝撃のシリーズ第5弾!》
崎谷はるひ『誘眠ドロップ』ガッシュ文庫・2011年
《平凡な高校生・梶尾空滋の幼馴染み兼同居人は、人気アイドルの藤代光樹。“クールでミステリアスな美少年”と有名な光樹だが、その実態は生活能力皆無で、空滋がいないと寝食もままならない超あまったれ。危なげな光樹のため、空滋は恋心をひた隠し、世話を続けている。空滋のそばでしか安眠できない光樹とベッドを共にしながら情欲をこらえることにも慣れた。可愛い幼馴染みをずっと守っていく覚悟だったが、ある日、光樹に思いがけないスキャンダルが――!?》
かんべむさし『38万人の仰天』朝日新聞社・1982年
貞包英之『消費は誘惑する 遊廓・白米・変化朝顔―一八、一九世紀日本の消費の歴史社会学』青土社・2015年
《家制度、貨幣経済、食文化から恋愛、情報の流通まで、江戸時代から明治時代にかけてさまざまな分野で社会の改革は進んだ。その背後には「消費」という人びとの価値観も快楽のあり方をも変える大きな力が働いていたのだ。気鋭の社会学者の斬新かつ鮮裂な消費社会論。》(「BOOK」データベースより)
伊藤浩子『未知への逸脱のために』思潮社・2016年
《喪失をこえて
やがておとずれる一切を予感し
くろかみは償いはじめる
(「日々の痕跡」)
「すべてを読み終わってもう一度、ここに帰ってきたとき、この詩人が再帰ということをイエスの復活にも似た事柄として受け止めていることに気づくだろう」(神山睦美)。
「女という無限の意味を発生させる装置――まさに「MOTHER MACHINE」――について、なお伊藤浩子という稀な才能を追尾してみなければならぬ」(野村喜和夫)。
声なき声、形なき言葉が、孤独や沈黙の闇をくぐりぬけ、いまあらたな存在として再帰する。詩と散文のあわいで無限に枝分かれしつづける20篇。装幀=中島浩》
松岡裕太『華道家は蜜を欲しがる』ルビー文庫・2005年
《父親がリストラされ、バイト探しを始めた高校生の純平は、ひょんなことから美貌の天才華道家・伊織のアシスタントをすることに。伊織の家で働き始めた純平だったが、その仕事とは、なんと伊織の『創作意欲』をかきたてるための、とんでもなくミダラな××!! けれど感じさせられ喘がされるうち、伊織を好きになっちゃって…!?
「芸術に必要なのは、情熱と欲望と、お前だよ」。キチクで情熱的な華道家に、身体も心もトロトロに溶かされる、蜜も滴るラブストーリー!!》
福嶋亮大『厄介な遺産―日本近代文学と演劇的想像力』青土社・2016年
《文学史に隠された遺産=亡霊をあざやかによみがえらせる野心的試み
日本文学の核心は「観客」のモダニズム/谷崎はいかに漱石の遺産を相続したか/クィアの演劇的表現/キャラクター小説の源流は「近世」にあり/「批評家」馬琴の画期性/自然主義の「前史」をたどる/ポストモダニズムと新古典主義/伝統をどう評価するか/演劇と小説の相克/旅と情念処理……。》
雪代鞠絵『新妻❤ふわふわ日記』幻冬舎ルチル文庫・2008年
《1ヵ月前まで家事を全くしたことのなかった17歳の「新妻」真尋は、優しい年上の「夫」で大学准教授の橘祐一郎と幸せな新婚生活を送っていた。1日1回と決められている夜のお務めも、真尋なりに頑張っているけれど……。そんな幸せなある日、真尋は家に遊びに来た学生・光理に口説かれてしまう。戸惑う真尋に追い討ちをかけるように、祐一郎の浮気が発覚するが!? 》
ジョルジョ・アガンベン『スタシス―政治的パラダイムとしての内戦』青土社・2016年
《イタリア現代思想の旗手によるライフワーク「ホモ・サケル」シリーズ最新作。
西洋古典のなかから、従来の政治学の枠組みでは捉えきれない「スタシス(内戦)」の概念を大胆に抽出する。
9.11以後のテロ戦争から、昨年のパリ襲撃事件、日本の国会前デモまで、いまの国内外の政治情勢を考察するうえでも必読の一冊。》
鈴木一平『灰と家』いぬのせなか座・2016年
《散文と韻文、日記と俳句、音と語——互いがまったくの異種でありながら、自らに残されていなかったはずのポテンシャルを形成しあう、環境=レイアウトの制作。
繰り返される試行錯誤の見開きが、事物や生物、死後の私による制作の持続を担う、新たな言語を探索する。》
エッサ・デ・ケイロース『縛り首の丘』白水Uブックス・2000年
《罠とも知らず愛する女のもとへ馬を駆る若き騎士ドン・ルイ。途中、刑場の丘のかたわらを通りすぎるが、その時、縛り首の死体が彼に話しかける。「俺を連れていけ、何かの役に立つはずだ」。ユーモアと辛辣な皮肉を交えた魔術的リアリズムの世界。傑作『大官(マンダリン)を殺せ』を併せて収録。》
西村京太郎『南紀殺人ルート』講談社ノベルス・1986年
《国鉄和歌山駅前のホテルで弁護士が、続いて串本の海中展望塔で会社社長が殺される。浮かびあがる黒い過去! 連続殺人は悪徳詐欺四人グループへの復讐か? 第三の殺人の報は伊勢線無人駅から届いた。時刻表のアリバイに守られた犯人、捨身の反撃に出た最後の一人……そして十津川警部の息詰まる戦いが始まった。》
《著者のことば
この作品は、講談社で出す殺人ルートシリーズの二作目である。二作目に、南紀を選んだのは、南紀という言葉や、地方に、強く惹かれるものがあるからである。
海岸線は、変化に富み、陽光が輝やき、観光客があふれている。ここには、さまざまなものがある。海があり、山があり、温泉があり、そして、殺人も。》
竹河聖『不思議学園の幽霊騒ぎ』徳間文庫・1987年
《なぜか昔から七不思議の多い東京・瑞星学園。そこの二年生、早乙女美津子はある日突然、園内で行方不明になる。仲間のはるる、裕子、幸恵は園内を捜しまくるが影も形もない。おまけに彼女の机やロッカーまでも消え失せて……。一体この学園どうなってんの? 頭にきた三人組は何としても美津子を救おうと作戦をたてるが……。》
高将にぐん『鬼に嫁げば』プリズム文庫・2011年
《村一番の美人を、山で暮らす鬼の花嫁として差し出すよう要求された村人たちは、旅の途中の剣士である紅葉に、花嫁の代わりとして鬼のもとへ行き、その鬼を殺してほしいと頼む。鬼のせいで忌まわしい過去のある紅葉は、村人の依頼をふたつ返事で引き受けた。純白の花嫁衣装に身を包み、シンと名乗る鬼のもとへ嫁いだ紅葉だが、なかなか相手を殺せなくて――。》
高将にぐん『ハルカせんせいと絵本の中の王子』ダリア文庫・2013年
《『王子様は約束しました。1000日の間に必ず運命の相手を見つけると。』幼稚園教諭の晴夏が大学時代に課題で作った絵本は、未完成のまま実家の納戸の中…だったはずが! 絵本の中の王子が見つけた運命の相手は晴夏だった! 煌めく薔薇のような笑顔で、自分を創り出した晴夏へ愛を紡ぐ王子。しかし、晴夏が王子のために完成させた絵本の結末に、王子は傷付き、さよならを告げ――。》
高将にぐん『1、2の3で恋をする』ダリア文庫・2013年
《強引マイペースな天才科学者・猫実と、平凡なサラリーマンのサトシは高校時代からの腐れ縁。そんな友人を前に、サトシが乙女みたいにドキドキと恋に落ちていく理由は、猫実が開発した惚れ薬を飲まされたから。実験体として一緒にいるうち、お互いに見たことない相手の一面を知っていき、友人だった関係が変化していく。そんな時、副作用でサトシの恋心が急激に変化してしまい――!?。》
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