『巨人』は宗田安正(1930 - )の第4句集。附録としてこれまでの三句集『個室』『巨眼抄』『百塔』を収録した事実上の全句集となる。
むかし吾も斯かることせり蛇の衣
日輪の冷たく懸かる白牡丹
オフェーリアを蟇(ヒキ)とは誰も知らざりし
押入れのにほひさせくる揚羽蝶
落日のゆらゆら揚がる大夏野
七月八日
白髯の長老に遇ふ重信忌
午睡より覚めて消えゆく身の微光
昼寝より起ちて巨人として去れり
雁行のいまさしかかる非在の海
梟がカアと啼いても驚かず
元日の残りの時間が少くなる
手鞠突きやめると別世の誰か突く
午(ヒル)よりは黄泉からも来る探梅行
兄妹の血は交らはず鳥雲に
乞食(コツジキ)の最も似合ふ桃源郷
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。