新井素子の『結婚物語』『新婚物語』(どちらも全3巻)は1987,8年に沢口靖子主演でテレビドラマ化されていて、手に入った古本では後者だけカバーが沢口靖子の写真になっている。
『結婚物語』と同じく、さべあのまがカバーイラストを描いた『新婚物語』もあるようなのだが、現物を見た覚えがない。
開高健『私の釣魚大全』文春文庫・1978年
《釣魚エッセイとして独自無類の本著。まずミミズより説きおこし、国内の河川大海はもとより遠く異国の湖沼までその足跡をのこす釣人・開高健の探求と釣果。釣魚を語って卓抜な文明批評とユニークな自然観をも展げ、その多彩な描写と、無垢なる愉しみにはまず類がない。1969年刊行の原本に大幅に加筆。図版を加え決定版となす。》
前田英樹『宮本武蔵 剣と思想』ちくま文庫・2009年
《宮本武蔵は、単なる剣術遣いではない。道具を使い切って生きる「実の道」という激しい理想を、現実に歩き通した唯一の人である。その思想は思想と呼ぶには端的でありすぎ、その兵法は兵法と呼ぶには生活の万般に侵入しすぎる。彼は呆れるほど平俗なものを、誰もが息をのむ高さにまでひとり悠々と導いた。本書は『五輪書』を丹念に読み解き、武蔵の剣術の精髄を具体的に説き明かす。》
コレット『シェリ』岩波文庫・1994年
《薔薇色のレースに彩られた寝室の中、女はベッドに横たわり、姿見に映る美しい青年の姿をみつめている―。五十歳を迎えようとする元高級娼婦と,シェリ(いとしい人)と呼ばれる親子ほども年の違う若者との息詰まるような恋。ジッドが「一か所として軟弱なところ、冗漫な文章、陳腐な表現もない」と賛嘆したコレット(1873-1954)の最高傑作。》
吉田健一『書架記』中公文庫・1982年
《手に馴染み慈しんだ数々の書物への想い――柔軟な感性と硬質な知性が織りなす〈書物〉本来の感触への案内状。読書家のための十四篇》
バルザック『知られざる傑作』岩波文庫・1928年
《「芸術の使命は自然を模写することではなくこれを表現することにある」という信念をいだいて一つの作品に十年の精進をささげた老画家が、限りなき理想と限りある人間の力量との隔絶に絶望し、ついに心血を注いだ画布を焼きすてて自殺する経路を描いた『知られざる傑作』を初め『人間喜劇』からえりすぐった6つの短編小説を収める。》
収録作品=沙漠の情熱/ことづけ/恐怖時代の一挿話/ざくろ屋敷/エル・ベルデゥゴ/知られざる傑作
広瀬仁紀『悪魔の貸付』双葉文庫・1986年
《“団地金融”をきっかけとして始まったサラリーマン金融は、巨大企業に成長し、一家心中、蒸発、強盗、殺人などの悲劇を表面化させた。一方、高収益を保障する有利な融資先として銀行のターゲットになっている。三協銀行新宿支店貸付係長の高須昭二は、ローンズ・ジャパンから10億円を年利10.5%で借りたい、という申し出に積極的に取り組んだ。》
吉行淳之介『珍獣戯話』角川文庫・1986年
《上野動物園のパンダばかりに人気が集中しているのはおもしろくない。パンダばかりが珍獣じゃない。とばかりに東奔西走。北に珍獣を訪ね、南に珍虫を探り、空に珍鳥を見上げ、海中に珍魚を求め、動物図鑑、世界動物百科、大図説世界の鳥類、南極取材記など万巻の書に埋もれ、百方に手をつくしてデータを得てこの本は成りました。含み笑いの心で、吉行淳之介の諧謔をお楽しみください!》
豊田有恒『くたばれ敬語』角川文庫・1986年
《「課長よう、話が違うじゃねえじゃんか……。こんなハチャハチャなことがあるかよ。きちんと仕事してるのにさあ」
新しい仕事をたのんだとたんに、部下から文句を言われた営業課長のおれ。残りの課員も、そうだそうだとシュプレヒコールをあげた。
最近の苔いもんは敬語の使いわけもできない。おれたち40代は、甘ったれた若僧だということで、相手の能力を低く見てしまいがちだが、そうとは限らない。そこで、おれはダサイおじんから美中年に大変身することにした…。
ストレスの多いきびし~い時代をイライラ、カッカして生きるあなたに贈る、パロディとドタバタの傑作ショート・ショート集。》
収録作品=くたばれ敬語/コンビナート/ビバ安全!/ドライブ/ビバ占領/月世界オリンピック―2164年―/太子の秘密/東京二十四時/完全無公害安全車/戦争は終った/ビバ受験生/二枚舌/かけもち/遊園地/スケープゴート万歳/無感動病/街にサンタが来なくなる/当世黄門様始末/ビバ郵便/迫害/処分/ビバ江川くん/3の惑星/解放/ジャンケンポン/デモ/ビバ外交官/いじめられっ子/サークル/マリファナ暗殺者/遭難船/清き一票/美食ファッション/任務
加賀乙彦『死刑囚の記録』中公新書・1980年
《一九五四年、松沢病院の医師として一人の殺人犯を診察したときが、著者の死刑囚とのはじめての出会いであった。東京拘置所の精神科医官となってから、数多くの死刑囚と面接し、彼らの悩みの相談相手になることになる。本書では著者がとくに親しくつきあった人たちをとりあげてその心理状況を記録する。極限状況におかれた人びとが一様に拘禁ノイローゼになっている苛酷な現実を描いて、死刑とは何かを問いかけ、また考える異色の記録。》
赤川次郎『幽霊から愛をこめて』集英社文庫コバルトシリーズ・1980年
《雪の夜、山水学園の女生徒が殺された! 現場は学校近くの林の中で、被害者は鋭い刃物でメッタ突きにされていた。犯行直前まで被害者といっしょにいた加藤昌美は、木立の中で白い幽霊の姿を見たとロ走るばかりだ。山水学園に転校してきた大宅令子は、たちまち親譲りの探偵本能を刺激された。彼女の父親は東京警視庁のベテラン警部なのだ。数日後、新宿のNデパートで第二の殺人が起こった!》
諸井誠『音楽の現代史』岩波新書・1986年
《十九世紀末以降、西洋古典音楽は調性の崩壊、民族的素材の見直しなどにより今世紀前半に多彩な発展をとげた。一九一○年代のバレエ音楽、二○―三○年代のオペラ、三○年代のバイオリン協奏曲など各時期の代表的作品の検討を通して、歴史の激動とともに音楽がどのように変容していったのかを明らかにし、戦後音楽への影響を考える。》
陳舜臣『六甲山房記』同時代ライブラリー・1990年
《作家陳舜臣の室名「六甲山房」。本書はその山房から届けられた、中国・アジアへの深い愛にみちた名随筆集である。桂平、泉州、祟安、酒泉、曲阜、そしてシラーズ、ハッカリ――中国・アジア各地への旅の回想は興味津々たる歴史の探訪へ我々を誘い、自在な詩文の渉猟は美しい楽曲となって心に訴える。思いがけない発見の旅。》
新井素子『眠たい瞳のお嬢さん 結婚物語(上)』角川文庫・1986年
《陽子さんは二十三歳、大学を卒業して現在は物書き業、家族は両親と祖母と妹の五人で東京近郊に住んでいる。陽子さんには大学時代からつきあっている恋人がいる。その名は正彦くん。彼はごく普通のサラリーマンで、両親は岡山在住、従って東京で一人暮らし。二人で結婚の意志を確認しあったところまでは、まあ順調。でもそのあと結婚までには、二人が想像もつかなかったような、ながーい、ながーい道のりが待っていた。
フィクションかノンフィクションか。虚実入れ混ぜて描く新井素子風結婚物語。ファン必読の書。オリジナル文庫。》
新井素子『正彦くんのお引っ越し 結婚物語(中)』角川文庫・1986年
《陽子さんと正彦くんの当人同士の結婚の意志は固いものの、実際の結婚への道は限りなくけわしく、遠い。1月に二人だけの婚約、3月の正彦くんが原家(陽子さんの家)を訪問、5月に陽子さんが大島家(正彦くんの家)を訪問、そして11月にやっと正式な婚約。これだけでほとんど一年。やっと式場捜し、新居選びが始まったが、マンションの一階に住むかどうかの話が関東ローム層の話になり、あげくのはてに結婚してもいないのに離婚するとかなってしまって…。
結婚している人、これから結婚する人、また予定もない人、すべての青少年に贈る、新井素子の実録風体験的小説。オリジナル文庫。》
新井素子『大忙しの二日間 結婚物語(下)』角川文庫・1986年
《正彦くんと陽子さん。二人の結婚は、もう永遠に実現できないと思われるほどの苦難につぐ苦難、混乱につぐ混乱の連続だった。でもやっと式の日取りも3月24日と決まり一安心。だが結婚式直前になって、肝心の新婚旅行のことを忘れていたことに気づき、また一波乱。生まれつき人の良いのんびり屋のお二人のこと、これからどうなりますやら……。
結婚することがいかに大変なことか、天下の大事業かをユーモラスに描く、体験的結婚騒動記。オリジナル文庫》
川本三郎『ハリウッドの神話学』中公文庫・1987年
《エリザベス・テーラー、モンゴメリー・クリフト、キャサリン・ヘプバーン、エロール・フリン、ジョン・ヒューストン、サミュエル・ゴールドウィンなど。一九五〇年代、六〇年代に活躍したスター、映画人たちの、スキャンダラスな人間模様を、愛情こめて素描する、ハリウッド映画人列伝。》
粟津則雄『美の近代』岩波新書・1986年
《十九世紀末、ゴーギャン、ゴッホ、マラルメ、ランボオといった画家、詩人たちは、近代の特質とそれがはらむ矛盾に気づきながら、独特の活動を展開した。彼らが現実と想像の間でいかなるドラマを演じ、精神の危機を乗り越えていったのかを、絵画、詩、音楽など多様な側面においてとらえ、美意識をめぐる「近代性」の諸相を明らかにする。》
寺田透『人間喜劇の老嬢たち―バルザック一面』岩波新書・1984年
《バルザック壮年期の一連の作品には、なぜか独身者が数多く登場する。地方生活を舞台にくりひろげられるドラマの中の老嬢たちを通して、十九世紀フランス社会の現実が鮮やかに浮び上ってくる。当代きっての読み手によって、読者は、人間喜劇という巨大な社会の一隅に導かれ、小説の本当の面白さをたっぷりと味わうことになるだろう。》
池内紀『悪魔の話』講談社現代新書・1991年
《現われる時間は夜、好きな色は黒。人に禍いと死をもたらし、宇宙をも破壊しつくすすさまじい力……。世界の半分を支配する闇の帝王たちが物語るものはなにか? その誕生から性格、分類、材質まで、「悪魔」の観念が生みだした華麗な精神絵巻をよむ。》
高島俊男『中国の大盗賊―天下を狙った男たち』講談社現代新書・1989年
《中国史は魅力的な大盗賊にみちている。人望だけで天下を盗んだ漢の高祖劉邦、大明帝国をつくった乞食坊主朱元璋など――。広大な中国の大地を駆けめぐり、知謀と腕力で金を、都を、天下を狙った男たちの物語。
「盗賊」だらけの中国史――昔、中国に「盗賊」というものがいた。いつでもいたし、どこにでもいた。日本のどろぼうとはちょっとちがう。中国の「盗賊」は必ず集団である。これが力をたのんで村や町を襲い、食糧や金や女を奪う。へんぴな田舎のほうでコソコソやっているようなのは、めんどうだから当局もほうっておく。ところがそのうちに大きくなって、都市を一つ占拠して居坐ったりすると、なかなか手がつけられなくなる。さらに大きくなって、一地方、日本のいくつかの県をあわせたくらいの地域を支配したなんてのは史上いくらでも例がある。しまいには国都を狙い、天下を狙う。実際に天下を取ってしまったというのも、また例にとぼしくないのである。――本書より》
鈴木晶『バレエの魔力』講談社現代新書・2000年
《意外な面白エピソード。語りつがれる名作名演。何をどう見たらいいのか、入門ガイドの決定版。
魂を揺さぷる力――バレエの魔力の源泉は、人間の身体のもつ、ほとんど無限とも思えるほどの表現力である。踊る身体は、素晴らしい造形美を現出させるだけでなく、このうえなく人間臭いドラマを演じることも、また、深遠な哲学的思想を表現することもできる。身体表現は時として、文学をも、音楽をも、絵画をも、凌駕する。踊り手が人間から離れ、限りなく神に近づいて、見る者に宗教体験に近いものを与えてくれることもある。踊る身体は目を楽しませるだけでなく、魂を揺さぶる力をもっているのだ。だがもちろんそれは、バレエ以外のダンスにもいえることだ。では、他のダンスにはなくてバレエだけにそなわっている魔力とは何なのか。それをこれから語ろうというのである。――本書より》
扇田昭彦『日本の現代演劇』岩波新書・1995年
《様々な異議申立てが噴出した一九六○年代に台頭した小劇場運動は、日本の現代演劇を一変させた。実験精神に富み、日本的独自性を追求した唐十郎、鈴木忠志ら第一世代を中心に、つかこうへい、野田秀樹ら後続世代を描いて、新しい感性が織りなすドラマを、同時代の現実と感触の中で浮彫りにする。鮮明に浮上する戦後日本文化の特徴的断面。》
井上宗和『ワインものがたり―おいしく飲むための七章』角川文庫・1986年
《ワインはいろいろな楽しみかたができる。もちろん、味を愛でるのが一番だが、その産地やシャトーにしろ、そのラベルにしろ、そのヴィンテージにしろ、それはワインの興趣を深めてくれる。さらに、ワインにかかわる歴史や、文学や、美術など、その話題はつきることをしらない。ワインは最も人とかかわりの深い、最も文化的な酒である。知識は人生を高めるという、ワインを知ることは、ワインの味覚を高めることにほかならない。さあ、知識を広めて、大いにワインを楽しもう。》
武田徹『現代日本を読む―ノンフィクションの名作・問題作』中公新書・2020年
《「非」フィクションとして出発した一方、ニュースのように事実を伝えるだけでもないノンフィクション。本書では、水俣病を世に知らしめた『苦海浄土』、ベストセラー『日本人とユダヤ人』に始まり、『テロルの決算』や『捏造の科学者』、大震災や核密約を扱った作品など、一九七〇年代から現在に至る名作・問題作を精選。小説とも報道とも異なる視点から同時代を活写した作品群を通して現代日本の姿を浮き彫りにする。》
徳永恂『現代思想の断層―「神なき時代」の模索』岩波新書・2009年
《神は死んだ――ニーチェの宣告は、ユダヤ・キリスト教文化を基層としてきた西欧思想に大きな深い「断層」をもたらした。「神の力」から解き放たれ、戦争と暴力の絶えない二〇世紀に、思想家たちは自らの思想をどのように模索したか。ウェーバー、フロイト、ベンヤミン、アドルノ、ハイデガーらの、未完に終った主著から読み解く。》
新井素子『新婚旅行は命がけ 新婚物語1』角川文庫・1988年
《あの陽子さんと正彦くん。ふつうでは考えられないような、なが~いなが~い困難と苦難のすえ、やっとめでたく結婚しました。で、結婚につきものなのが新婚旅行。ふつうですと、甘~く楽しいものと相場が決まっていますが、なにしろあの二人です。とてもとてもそんな風には…。
お待たせいたしました。嘘かホントかいつも話題になるお二人の、新婚物語が始まります。》
新井素子『引っ越し貧乏 新婚物語2』角川文庫・1988年
《混乱につぐ混乱。トラブルにつぐトラブルの末、正彦くんと陽子さんはやっとめでたくゴールイン。普通ならめでたし、めでたしとなるところですが、この二人の場合は、これからが大変。特に陽子さん。一応小説家。創造力が豊かなせいもあって、悩みも普通の人とはちょっとちがう。ネコを飼うことが家を買う問題に飛躍したりして、困難はまだまだ続きそう――結婚生活って、本当にこんなに波瀾万丈なの!? 待望の第二弾。オリジナル文庫。》
新井素子『傍若無人な冷蔵庫 新婚物語3』角川文庫・1988年
《下北沢から練馬へと引っ越した正彦くんと陽子さん。新居でもう一度、あま~い新婚生活を考えていたお二人さん。ところが、変な冷蔵庫はあるし、猫のファージはまたまた問題をおこすし、災難は当分続きそう…。
さてさて、こんなお二人さん、無事に結婚一周年をむかえられますことやら!? 毎度おさわがせカップルがおくる『新婚物語』――とりあえずおしまいです。》
吉田裕『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』中公新書・2017年(アジア・太平洋賞特別賞、新書大賞)
《310万人に及ぶ日本人犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高い餓死率、30万人を超えた海没死、戦場での自殺と「処置」、特攻、体力が劣悪化した補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた現実を描く。》
山田正紀『物体X』ハヤカワ文庫・1986年
《フリーライターの美奈子が同乗する漁船は濃霧のソ連海域で遭難する。美奈子ら数名の生存者はソ連軍基地のある海獺島に難をのがれるが、人影の絶えたその島では、人間の脳を自在に操る恐るべき怪物が猛威をふるっていた! 表題作ほか“女が書けない”SF作家Yの悲しみが11代めの子孫に凝縮遺伝して生まれたスーパー痴漢、怪盗カタツムリ。彼の象徴と暗喩に満ちた冒険を描く「暗い大陸」医療コンピュータに管理された未来社会を描く「見えない人間」など、50年代、60年代、70年代のSF作品、SF映画をイメージして書かれた中篇三篇を収録。》
最近のコメント