古本市に寄る機会が続けてできたもので、いくら読んでも積読が減らない。
松浦寿輝『黄昏客思』、皆川博子『辺境図書館』の両方に尊敬する先達として川村二郎の名が出てきたので、そちらもまた読みたくなったり。
装幀の懐かしさでジャケ買いしたのは今回は角川文庫の田辺聖子と大藪春彦くらいか。前者はまだ新刊で流通しているかもしれないが、装幀は変えられてしまっているはず。
井口時男『永山則夫の罪と罰―せめて二十歳のその日まで』『蓮田善明―戦争と文学』、伊藤浩子『たましずめ/夕波』は著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
千葉雅也『意味がない無意味』河出書房新社・2018年
《頭を空っぽにしなければ、行為できない……ベストセラー『動きすぎてはいけない』『勉強の哲学』で注目の哲学者が、「身体と行為」の本質へ迫る、待望の論集! 千葉雅也十年の成果。》
井口時男『永山則夫の罪と罰―せめて二十歳のその日まで』コールサック社・2017年
《永山は文字どおりに「文学のふるさと」を生きた少年として、いまその自覚と表現に到達したのだ、と思った。……永山の小説には、安吾のいう「文学のふるさと」があり、ただ「ふるさと」だけがあった。……人は、自分自身に問うしかないのだ。自分はいかなる条件によって護られていたのか、と。(「あとがき」より)》
吉増剛造『心に刺青をするように』藤原書店・2016年
《前衛吉増詩人が、〈言葉―イメージ―音〉の錯綜するさまざまな聲を全身で受けとめ、新しい詩的世界に果敢に挑戦!
沖縄、遠野、アイルランド、ソウル、ブラジルなどへの旅に、また小津安二郎、ベケット、キーツ、イリイチらとの出会いの中に折りたたまれた“声”を、写真と詩で渾身の力で浮かびあがらせた、類稀な作品集。
『機』誌2001年2月~08年1月、「triple ∞ vision」として写真とともに掲載した連載が、満を持して単行本化。》
アルノ・シュミット『ポカホンタスのいる湖景/移住者たち』水声社・2016年
《デーブリーン、グラス、クノー、カルヴィーノが賞賛した、現代ドイツ文学の鬼才の著作集、刊行開始!
ある夏の休暇、避暑地の湖で出会った男女4人の情景を、あまりに美しく、あまりに猥雑に描いたために「神の冒涜とポルノグラフィー」で訴えられた問題作、『ポカホンタスのいる湖景』。第2次大戦後、家を失ったドイツ人難民の辛苦と安息を求める旅を活写した『移住者たち』――現代的感覚にそった新たな散文形式「フォト・アルバム」で現代ドイツ文学を刷新した2編。自作解説のエッセイも収録。》
澤地久枝『家計簿の中の昭和』文春文庫・2009年
《何十年もの間、著者は毎日の金銭の出入りを記録し続けてきた。旧満州からの引揚げの決算、戦後初めてかけたパーマ代、安保の年の結婚費用、向田邦子と旅した世界旅行の代金、石油危機の買溜め品、そして終の棲家の建築費――。家計簿の中の数字を通して、昭和という時代を生き生きと描く珠玉のエッセイ集。 解説・関川夏央》
眉村卓『怪しい人びと』新潮文庫・1992年
《四方にドアはあるが、窓一つない奇妙な部屋に閉じ込められた男。自分しか知らないはずの暗証番号を、何回変えてもぴたりと当ててくる差出人不明の謎のハガキ。自分の〈家〉に嫌われ、〈家〉から様々な嫌がらせを受けている男……。怪異、幻想、悪夢、恐怖、孤独、敵意、苛立ち、ためらい。ありふれた日常生活の中に潜む非日常的情景を描く、奇妙な味の書下ろしショートショート32編。》
収録作品=仕返し/空腹/埋没/出て、帰る/衰弱/遅速/視線/独り/鉤/刑/喪失/踏切で/町並み/ためらい/占領/遠出/にこにこシール/光る硬貨/負荷/息子の部屋/雨の日/門前の車/暗証番号/ピアノ/本たち/ゼセット/妖気計/しあわせな日/晩飯の後/夜の波/階上と階下/嫌がらせ
大藪春彦『孤狼の掟』角川文庫・1980年
《自らの心に鋼鉄のような掟を秘めたワルの探偵・田島英雄。彼にはチャチな正義感などカケラもない。自分の掟を貫くためには、弱い者の生き血を啜っている連中の金を捲き上げて、骨までしゃぶってしまうくらいは朝飯前だ。が、なぜか今のところ彼の事務所は不景気だ……。
さて、そんな折、ようやくカモがやって来た。暴力団に手形をパクられたというのだ。まず田島は謝礼金をつり上げ、ポルシェに乗って調査に出たが…。アウトロー探偵、田島英雄の活躍する痛快アクション!!》
松浦寿輝『黄昏客思』文藝春秋・2015年
《己を人生の客となし、背後に時間はたゆたう。
怜悧な思索と生の官能とが反響しあう二十篇の随想。
人生の黄昏、わたしはこれから何をするのか、と自問する瞬間が訪れる。答えのない問いを「正しく問う」道標を探す香気高い随想集。》
佐野真由子『オールコックの江戸―初代英国公使が見た幕末日本』中公新書・2003年
《一九世紀半ば、江戸―ロンドン間の文書のやりとりに蒸気船で半年近くを要した時代、一人の外交官が担う責任は、今日とは比較にならないほど大きかった。そんな時代、日英関係の仕事は、初代駐日公使ラザフォード・オールコックの手に完全に託されていたといってよい。本書は、一八五九年から六二年まで、日本の外交にとって決定的に重要だった三年間の彼の思考と行動を、在外史料を駆使していきいきと描いた幕末物語である。》
猿谷要『物語 アメリカの歴史―超大国の行方』中公新書・1991年
《アメリカは民主主義の理念を具体的に政治に実現させた最初の国である。独立宣言(一七七六年)の中心・すべての人間は生まれながらにして平等である・は、今なお民主主義国家の道標として輝き続けているものの、人種間の問題や戦争など、建国から二百年余、その歴史は平坦ではなく、生々しい傷がまだ癒えることなくその跡をとどめている。この超大国の光と影を、戦後深いつながりをもって歩んできた日本との関係もまじえて描く。》
尾崎一雄『ある私小説家の憂鬱』新潮社・1970年
《作中人物の、仮名やイニシャルを用いたのが多少はあっても、それは実名を使ったのと変りはなく、すべて実在の人物である。こういうやり方をしたものが読者の一読にたえたなら、これもまた私の本懐である。》(「あとがき」より)
収録作品=ある私小説家の憂鬱/柿/口の滑り/槍と薙刀/あの児この児/先生を殴ろうとした話/三宅島の旧友/孫談議/小さい富士
尾崎一雄『單線の驛』講談社・1976年
《「梅白し単線の駅汽車発す」 著者は小田原在下曽我に居住し、日々、自然のなかに身をおき、山川草木を愛す。人生的自然哲学にうらうちされたその心情には、近代科学の進歩を越えて、未来を見はるかす確かなものがある。》
尾崎一雄『随想集 苺酒』新潮社・1982年
《愛する故郷下曽我の自然、敬慕する師友との別れ、青春放浪の体験を語る文学的自伝「私の履歴書」など、折々の事物に託して語る、巧まざる人生論。》
皆川博子『辺境図書館』講談社・2017年
《知れば知るほど
読めば読むほど
好きになる。
《この辺境図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからない――。
そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(辺境図書館・司書)》
小説の女王・皆川博子が耽溺した、完全保存版ブックガイド。(書き下ろし短編も収蔵)》
大藪春彦『殺しは俺の稼業』角川文庫・1980年
《息を秘め、闇にたたずむ黒い影――。不気味に光るのは、鋭い目と拳銃――。銃口は狙った獲物の胸に確実に合わされ、次に起きるのはにぶい発射音とうめき声…。今日も殺し屋がまたひとつ、依頼主からの仕事を片付ける――。
殺しの値段は法外な高値。仕事の依頼は電話一本でOK。全国のいかなる場所にもあらわれて目的を遂げ、何ひとつ証拠は残さない…。暗黒界からの使者・傭われ殺し屋たちの孤独で凄絶なロマンを描く、アクション・ハードボイルド。『男の墓標』(プロフェッショナルPartⅠ)姉妹編。》
収録作品=醜聞/拳銃稼業/独り狼/殺人請け負います/次は誰だ
田辺聖子『女の目くじら』角川文庫・1976年
《来し方行く末をじっくり思いきわめ、人生のきびしさを感得する旅の楽しみ。
又、町並みの激しい移ろいに比べ、町人の町・天下の台所として栄えてきた歴史が生き生きと息づく生まれ故郷大阪の今昔。
そして、友情から出発した結婚がもたらしたさまざまな感慨など。知的で柔軟でしたたかな女の目がとらえた身辺雑事を、しっとりとさりげなく綴った第一エッセー集。》
坪内祐三『一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」』文春文庫・2006年
《連合赤軍があさま山荘にたてこもり、宮の森シャンツェに3本の日の丸が揚がった年は、今太閤が列島改造を叫び、ニクソンが突如北京に赴いた年でもあった。高度成長期の生真面目さとエンタテインメント志向の萌芽が交錯する奇妙な季節。3億円事件を知らない世代に熱い時代の息吹を伝える、新感覚の文化評論。 解説・泉麻人》
田辺聖子『いっしょにお茶を』角川文庫・1984年
《宝塚歌劇、おしゃべり、コレクション、手紙、歴史、花、ポプリなど――ささやかな日々の暮らしの中での、女のたのしみ、いろいろ。夢とユーモアにあふれ、ロマンチックな香りがいっぱいの、モノ、コト、人。
一生でどれだけ多くの楽しみをみつけ、“ひとあじ”ちがう人生を送れるか。人生を楽しむ達人が提唱する、楽しく生きる術。》
井口時男『蓮田善明―戦争と文学』論創社・2019年
《蓮田善明(はすだ ぜんめい、1904~1945年)は『鴎外の方法』『本居宣長』『鴨長明』などの著書のある国文学者、文芸評論家で、『文藝文化』を創刊し日本浪曼派として活躍。三島由紀夫に大きな影響を与えたことで知られる。出征し敗戦時にジョホールバルで連隊長を射殺し、自決した。/三島との関係で知られる蓮田善明は、日本浪漫派のなかでも重要な役割を果たした。井口時男はこの蓮田善明を、自決に至る戦争との関わり、そして文学との関わりを中心に描き出す。戦争と文学を考える上でも大きな存在であり、三島や日本浪漫派、保田與重郎を含めて蓮田善明を論じる、初の本格論考。》
田宮俊作『田宮模型の仕事』文春文庫・2000年
《たかが模型、されど模型。戦車のプラモデルのために東西冷戦下のソ連大使館と直談判し、車の模型を作ろうと実物のポルシェを解体してしまう。そんな本気がタミヤを世界一の模型メーカーにした!自らリンゴ箱の上で模型の図面を描いた現社長が綴る涙と笑いの奮戦記。親本に新原稿を大幅追加した増補決定版。 解説・リチャード・クー》
牧野富太郎『牧野富太郎 なぜ花は匂うか』平凡社・2016年
《日本植物学の父と呼ばれた牧野富太郎。「私は植物の愛人」と軽口を飛ばしつつ研究人生を振り返る「植物と心中する男」などを精選。》
ペトラルカ『無知について』岩波文庫・2010年
《善良だが無知な人間、と同時代知識人に批判されたペトラルカ。アリストテレスこそが〈神〉、その自然哲学に暗いとは、と謗る敵陣を、人間主義・反権威主義で迎撃し、古典文献収集と言語研究の必要を説いた著者。雄弁の復権、プラトン再読などの基本構想を具体的包括的に述べたルネサンス人文主義最初の宣言書。晩年の主著。》
李鳳宇・四方田犬彦『民族でも国家でもなく―北朝鮮・ヘイトスピーチ・映画』平凡社・2015年
《ヘイトスピーチ、日本と朝鮮半島、ネットメディア等々。世界が不吉で不幸な方向へ滑り出していく時、われわれは何をすればよいのか。》
エラスムス『痴愚神礼讃』中公文庫・2014年
《痴愚女神の自慢話から無惨にも浮かび上がる人間の愚行と狂気。それは現代人にも無縁ではない。エラスムスの奇跡的な明晰さを新鮮なラテン語原典訳で堪能されたい。》
古井由吉『親』平凡社・1980年
《男と女。その愛と憎悪が交差する情念の世界と存在の根源を凝視する眼。静穏で豊かな筆致で描く人間の心理の深奥に揺れ動く怖れと光。日本文学大賞受賞作「栖」によって文学界に新しい道標を打ち樹てた著者が続いて世に問う――最新長篇》
黒井千次『流砂』講談社・2018年
《父は何者だったのか? 70代の息子と90代の父親。老いた息子は父の記した奇妙な報告書を見つけた。それは戦前、思想検事だった父親が、「思想犯の保護を巡って」自己の所信を開陳した報告書だった。息子は父の過去にあえて向き合い、己の来し方の輪郭を確かめようとしはじめる……。老いと記憶を巡る小説の冒険。自伝的長編小説。》
青木順三編訳『ハインリヒ・ベル短篇集』岩波文庫・1988年
《戦争という苛酷な運命にまきこまれた人々の人生と愛はいかに踏みにじられていったか。また、戦争は、人々の現在の生活や心の中にいかに深い傷跡を残すものか。第二次大戦の従軍体験をもとに、戦争とその後遺症を描いた初期短篇を中心とする20篇を精選(うち本邦初訳13篇)。諷刺とユーモアに満ちたハインリヒ・ベル(1917‐85)珠玉の短篇集。》
収録作品=旅人ヨ、スパルタノ地ニ赴カバ、彼ノ地ノ人ニ……/長い髪の仲間/あの頃オデッサで/ルネおばさん/橋の畔で/別れ/知らせ/×町での一夜/並木道での再会/闇の中で/ローエングリーンの死/商売は商売/ろうそくを聖母に/黒羊/フレットおじさん/笑い屋/正義の人ダニエル/ムルケの沈黙収集/首都日誌/廃棄係り
豊田有恒『悪魔の城』講談社文庫・1986年
《変身や分身への願望、コピー人間や冷凍人間の実現、ドリーム・ショップやプレイイング・アスレチック等々を背景に、鬼才が想像力の限りを尽して描くファンタスティック・ワールド・ストーリー。夢と笑いと恐怖とお色気がいっぱいの宝石箱。単行本未収録作品をふくむ傑作ショートショート二十編。》
収録作品=悪魔の城/男憑き/純血/恐妻/複製/愛人/テレパシー/夢/オレ/UFO/タイムマシン/闘争/免許/麻雀師範/祟り/飢餓訓練/暴走/起源/評論家/制裁
日野啓三『光』文藝春秋・1995年(読売文学賞)
《逆行性健忘症にかかった元宇宙飛行士は、中国人看護婦の助けを借りながら、過去を追求する。近未来を舞台に描く喪失と恢復の物語》
かんべむさし『言語破壊官』朝日新聞社・1980年
《ナンセンス、ドタバタ、パロディ、実験小説…と一作ごとに新たな地平を開拓するSF界の若き俊英の野心作九篇。》
収録作品=スリム大佐の回想/意地張月/言語破壊官/頼母子島/サテライトDJ/表通り/漫才死/スペオペかえるとび/試験の多い学校
岬兄悟『半身一体』ハヤカワ文庫・1992年
《ある朝、洗面台の鏡の前で髭を剃っていたぼくの身体右半分が、女になってしまった。顔だけじやない。頭のてっぺんから胴体まで、見事に右半分がけっこうはでめの見知らぬ若い女性になってしまったのだ。こうしてぼくらの奇妙な二重生活かはじまった……「半身一体」ほか、なぜか人々がもうひとつの世界にどんどんいってしまう「振り向けばユートピア」などありふれた日常と異世界との奇妙な接触を描く短篇の数々を収録。》
収録作品=筍族/振り向けばユートピア/黄金仙人/感電作用/分断生活/階層生活/迫りくる足音/半身一体/ちがうんじゃない?
火浦功『幸せの青い鳥』ハヤカワ文庫・1983年
《なにごともない、ありふれた朝、和泉恭平はトイレの中でいつもとおなじようにおなじことをしていた。ことが終わってふと、下をみると、そこには、なんと卵が。にわとりの卵より少し大きな、象牙色をした、まるで磨きあげたような卵。それが恭平が産み、その後、恭平の運命の歯車を大きく狂わせていく卵だった。――表題作「幸せの青い鳥」はか、凸凹スパイ・コンビが任務のため降りたった諜報網が縦横に張りめぐらされた恐るべき星をえがいた「悪意の惑星」など、新鋭が多彩なシチュエーションでバラエテイゆたかにえがく短篇6篇を収録する。》
収録作品=瘤弁慶二〇〇一/時を正す者/出すぎた奴/大きな顔をした男/悪意の惑星/幸せの青い鳥
久美沙織『あけめやみ とじめやみ』ハヤカワ文庫・1987年
《水上庵の巫女はまだ幼ない。妃の病いを癒してもらおうと辺境の地までたずねてきた年老いた木菟王イヨギは、疑った。はたして、この幼女に妻を救うことができるのだろうか。だが、子供でも巫女は巫女。しかも、最高位の〈聖なる眼の巫女〉である。妃を救うことは道にそむくこと、とはじめは拒絶していた巫女も、王の悲嘆にくれる姿を見て、治療をはじめたが……人を疑うことしか知らぬ老王が真の愛に目醒める「あけめやみ とじめやみ」、愛する相手に対して、ふと不安をいだきはじめる少女の微妙な心の動きをつたえる「紙の舟」など6篇を収録。》
収録作品=あけめやみとじめやみ/OUT OF DATA/紙の舟/きんぽうげ/サマー・ドレス/ドリーム・キャスター
鈴木いづみ『女と女の世の中』ハヤカワ文庫・1978年
《彼女はある日男の子を見かけた。しかしだれも本当にしない。男の人数は極端に減少し、しかも居住区に強制的に収容されているのだ。それでも、彼女が男の子を見かけたのは本当だった。自分でも気づかないつかのまの恋――そしてまた、すべてはあたり前の日々にもどり、女と女の世の中はつづく……。女性が支配する未来世界の少女をさりげなく描いた表題作ほか、軽妙な語り口の“悪魔との契約”ストーリイ「魔女見習い」、童話的な味わいでつづる「あまいお話」など、異色の女流作家の手になる異色のノスタルジックにしてもの悲しい九篇を収録!》
収録作品=魔女見習い/朝日のようにさわやかに/離婚裁判/あまいお話/悪魔になれない/わるい夢/静かな生活/悲しきカンガルー/女と女の世の中
長谷部恭男『増補新版 法とは何か―法思想史入門』河出ブックス・2015年
《人が生きていく上で法はどのような働きをするか。先人の思想の系譜を読み解き、法と共により善く生きる道を問う、法思想史入門の決定版。普遍的な道徳と個人の生き方が衝突する場での法解釈を増補。》
山中峯太郎『亜細亜の曙』少年倶楽部文庫・1975年
《○国に日本征服の企てありとの情報をキャッチした快男子本郷義昭は、敢然として敵の攻撃基地にのりこみ、大活躍をはじめた! 怪船の追撃! 世界をおびやかす恐怖鉄塔のメカニズム! 空中の大激戦! 背すじもこおる痛烈な場面、はっと息をのむ壮快な場面が、次々と展開する。》
エーリッヒ・フォン・デニケン『神々の帰還』廣済堂出版・1999年
《聖書等に描かれた「神」や「至高者」を「異星人の宇宙飛行士」に置き換えてみると、行動や過ちやパラドックスの一つ一つが納得できる。「堕天使たち」の正体も、彼らが性欲を満足させた理由も、洪水が引き起こされた動機も、「至高者」が二、三の人間と話したがったことも、「最後の審判の日」に対する恐れもなるほどとうなずける。つまり、人びとが最後の審判に対して潜在的な恐れを抱いているのは、「至高者」が戻ってくると約束したからなのだ。》(「BOOK」データベースより)
伊藤浩子『たましずめ/夕波』思潮社・2019年
《鎮魂と和解のディスクール
波に覆われた地母神の
辿った道もはるかに
月光にも病み
八年の
追いつけない空白よ
遠野の、東北の、血と乳の海と父と大地の、震える言葉、淡く光る記憶。三つのテクストの〈語り〉の螺旋が、喪失と〈和解〉、祈りと新たな〈物語〉を立ち昇らせる。鮎川信夫賞受賞から2年、渾身の新詩集。装幀=中島浩》
和泉桂『蜂蜜彼氏』幻冬舎ルチル文庫・2011年
《二十歳の大学生・叶沢直は図書館風カフェ「アンジェリカ」でアルバイトをしている。「アンジェリカ」の常連客で、その優雅な容姿からスタッフの間で「王子様」と呼ばれている青年が気になる直は、ある日、「王子様」の忘れ物を届けることに。瀬南光瑠と名乗った青年は二十八歳。前から直を気にかけていたという瀬南に、惹かれていく直だったが……!?》
義月粧子『馨る花嫁、無垢なる誓い』B-PRINCE文庫・2016年
《前国王の血を引くレイモンドは、クラレンス侯爵の花嫁になることを命じられる。新婚当初、侯爵はレイモンドには特に興味を示さなかったが、ある時、侯爵が彼の耳に触れると甘い馨りが放たれ…!? 男を誘惑するその馨りに興味をもった侯爵は、初心なレイモンドを翻弄し、官能を教え込む。だが、突然レイモンドに疑惑が発覚する。無実を証明できないまま追い詰められ、ついに侯爵の信頼も失い、彼は屋敷を追われることになるだが!?》
永井路子『王者の妻(上)』講談社文庫・1978年
《織田家のお弓衆頭の養女おねねが木下藤吉郎秀吉に嫁いだのは、永禄四年、十四歳の時であった。その秀吉が周囲の敵を倒し、天下を征服した時、おねねは今度は自分が新たなる敵に囲まれていると知った。秀吉の女性征服が始まったのである。それは又、秀吉の妻としてのおねねの愛の苦悩の始まりでもあった。》
永井路子『王者の妻(下)』講談社文庫・1978年
《大坂城の北政所となったおねねの前に、秀吉の新しい側室として現われてきたのは、信長の姪お茶々であった。美貌と若さを誇るお茶々は秀吉の寵愛をうけ、秀頼を出産する。そのとき、おねねの長い歳月の上に築いてきた自信は一度に崩れさってしまう……。戦国の世に生きる女の愛の葛藤を描く長篇歴史小説。》
永井路子『つわものの賦』文春文庫・1983年
《「ここで私は、大小いくつかの作品で扱ってきた鎌倉時代に対する一つの決算書を書いた」(あとがきより)鎌倉幕府の成立は日本史上まれにみる大きな変革であった。そこに隠された実相はいかなるものか。著者が長年にわたって温めてきた構想の下に、史書の裏にひそむ鎌倉武士たちの赤裸な姿をみごとに描出したユニークな傑作歴史読物。》
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