『布目から雫』は中村堯子(1945 - )の第4句集。
著者は「銀化」第一同人。
冬の虹皿に切り身の血が残り
はくれんに腐るはくれん引つかかり
袋ごと果実は腐り聖五月
夏もまた白骨色の館の灯
萩刈りて文字なきごときこのしづけさ
波の皮膚みな引き攣つてゐて寒し
師のことば塩味鱒のバター焼き
ねぢあやめ朝には知らぬ昼がきて
マントひるがへし幅広昆布買ふ
菫より俯く時計修理人
どくだみを刈る香交遊録のなか
カーテンに鳥透くそれだけで秋思
干し蒲団襲ひにきたる松の影
枯葎からだで割つて母を恋ふ
秋場所の終るスポンジケーキかな
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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