中島みゆきにはさして興味がないのに古本の『愛が好きです』を見たら、当時熱心に見ていた新潮文庫の折り込みチラシやら、書店でただで配っていたPR誌の「波」やらを思い出してしまい、買って読んでしまった。
筒井康隆『笑うな』は全集購入後に一度売ってしまったものの買戻しだが、カバー袖の目録のフォントやレイアウトが当時のものと違うし、消費税導入後のバーコードが入ってしまっている。それ以前の版を見つけたらおそらくまた買い直す。
イーヴリン・ウォー『ポール・ペニフェザーの冒険』福武文庫・1991年
《オックスフォード大学の学生ポール・ペニフェザーは、酒を飲んでのドンチャン騒ぎに巻きこまれて放校処分を受けたことから、うさんくさい連中ばかりいる妙な私立学校に勤めたり、売春斡旋の嫌疑で刑務所送りになったりする破目になり、やがて……。イギリス流の苦いユーモアに彩られた波瀾万丈の物語。本邦初訳。》
柴田錬三郎『眠狂四郎殺法帖(上)』新潮文庫・1970年
《佐渡の金銀山の不正を探るために西丸老中・水野越前守の送り込んだ隠密が、次々に姿を消した。真相究明を依頼された眠狂四郎の前に立ちはだかる刺客たち――少林寺拳法の達人・陳孫の助けを借り、刺客をかわしながら狂四郎が探り出したのは、本丸老中・水野出羽守、加賀百万石、豪商・銭屋五兵衛らの、将軍家斉を操り人形にしようとする恐るべき陰謀であった……。》
柴田錬三郎『眠狂四郎殺法帖(下)』新潮文庫・1970年
《加賀の豪商・銭屋五兵衛の巨大な野望を打ち砕くため、北陸路に現われた眠狂四郎。入国を妨げるべく、狂四郎に挑みかかる加賀藩の剣士。そして、上杉、武田、源氏、平家ら忍法五派の秘術を尽した技競べ――。能登沖に沈められた佐渡船の砂金をめぐって、銭屋五兵衛、謎の忍者“影”と三つ巴の死闘を繰り広げる狂四郎。円月殺法の白刃が妖しく光るシリーズ第三作。》
陳舜臣『小説マルコ・ポーロ―中国冒険譚』文春文庫・1983年
《「東方見聞録」には、マルコ・ポーロは元朝でフビライの寵愛をうけ17年間重要な任務についたとある。だがその内容については一言も触れていない。そこで著者は推理する。マルコはフビライの隠密、いま風に言えば“元(げん)CIA”だったのではないかと……。13世紀後半の中国を舞台に“お庭番マルコの冒険”を活き活きと描く。解説・白石一郎》
長部日出雄『津軽空想旅行』津軽書房・1974年
《強く、深く、静かに津軽三味線の音色が私の血を騒がせる!
死者に近い土地、あすなろの土地津軽。その風土に限りない愛着を抱き、埋れたものを発掘しようとする直木賞作家の第一エッセイ集》
ジョーン・ヴィンジ『サンタクロース』集英社文庫・1985年
《妖精たちと北極の小さな村に住むサンタクロース。何百年もの間、子供たちに夢を贈っていたのだが、ある日、一人の妖精が失踪、サンタは行方を探しにソリに飛びのった……。
デブでお人好しのサンタと、いたずら妖精パッチが繰りひろげるユーモアとペーソス一杯の物語。SF各賞総なめの人気女流作家・ジョーン・ヴィンジが描く傑作ファンタジー!》
仲正昌樹『現代思想の名著30』ちくま新書・2017年
《近代的思考の限界を乗り越えるため、新たな思考の様式を獲得しようとした「現代思想」。それはフランスを中心に影響力を及ぼした構造主義から、そこにある近代の残滓を批判的に捉えたポスト構造主義へと発展していった。それらは、従来の「哲学」に限定されることなく、精神分析や言語学など様々な方法論によって展開された。さらに、その流れは、現代資本主義分析や脱近代的な方向での社会批判の潮流も生み出していく。幅広くかつ難解なものが多いといわれる現代思想の著作を一人の書き手が丁寧に解説したこれまでにはないブックガイド。》
筒井康隆『笑うな』新潮文庫・1980年
《タイム・マシンを発明して、直前に起った出来事を眺めるというユニークな発想の『笑うな』。夫の目前で妻を強姦する制服警官のニューロイックな心理『傷ついたのは誰の心』。空飛ぶ円盤と遭遇したSF作家の狼狽ぶりをシニカルに捉えた『ベムたちの消えた夜』。ほかに『赤いライオン』『猫と真珠湾』『血みどろウサギ』など、スラップスティックでブラックな味のショート・ショート34編。》
収録作品=笑うな/傷ついたのは誰の心/悪魔を呼ぶ連中/最初の混線/遠泳/客/自動ピアノ/正義/夫婦/帰宅/見学/特効薬/墜落/涙の対面/流行/セクション/廃墟/ある罪悪感/赤いライオン/猫と真珠湾/会いたい/接着剤/駝鳥/チョウ/血みどろウサギ/マイ・ホーム/ブルドック/トーチカ/座敷ぼっこ/タック健在なりや/産気/ハリウッド・ハリウッド/末世法華経/ベムたちの消えた夜
朝日新聞江南春行取材班『江南春行』徳間文庫・1985年
《江南――揚子江の南一帯の巨大な水郷群。ここを、雨に煙る清明の時節、河口から洞庭湖までさかのぼった。蘇州に寒山寺、汨羅に憂国の詩人屈原、曲水に書会の宴を張った王羲之、長沙に二千年の眠りからら醒めた軑侯夫人……と、旧きを偲びつつ、ラジカセ片手にサングラスの若者を寧波に、パーマ姿とラッパズボンのアベックを上海に……と、新しきを探る。悠久の歴史の中に現代の息吹きを伝える詩情豊かな中国紀行。》
ジェイムズ・P・ホーガン『ガニメデの優しい巨人』創元SF文庫・1981年
《木星最大の衛星ガニメデで発見された二千五百万年前の宇宙船。その正体をつきとめるべく総力をあげて調査中の木星探査隊に向かって,宇宙の一角から未確認物体が急速に接近してきた。隊員たちが緊張して見守るうち,ほんの五マイル先まで近づいたそれは,小型の飛行体をくり出して探査隊の宇宙船とドッキング。やがて中から姿を現わしたのは,二千五百万年前に出発し,相対論的時差のため現代のガニメデに戻ってきたガニメアンたちだった。前作「星を継ぐもの」の続編として数々の謎が明快に解明される!》
前田英樹『独学の精神』ちくま新書・2009年
《漢字が読めない、歴史を知らない、計算ができない…大学生の「基礎学力」のなさが言われて久しい。だが、「教育」に過剰なこの国の若者が「学力」を欠いているとは驚くべきことではないか。なぜ私たちはかくも「無教養」になったのか。本書は、現代の日本人が見失った「独学の精神」をめぐる思索である。「ほんとうに大事なことは何ひとつ教えることなどできない」「学ぶことは身ひとつで生きる自分が学ぶというあり方でしかなされえない」―こうした単純で大切な事実について、その当たり前の事実が行き着く先について、根っこから考え抜く。》
アルフレッド・ジャリ『馬的思考』サンリオSF文庫・1979年
《独創的な殺人を犯すことで「殺人趣味の会」から賞賛されるという黒いユーモア。溺死人は実はふつうの人間と全く別の生理と習性をもっていて資本をも産みだすのだ、という牽強付会な現代の神話。無銭飲食の黒人を使節団としてもてなすというさかしまのマキャベリスム。タイム・マシンの作り方を悪趣味なまでに緻密な綺想で描いた科学的予言――愚劣さと神性、幼児性と老練、正気と陶酔、日常用語と言葉遊びの間の往復運動をくりかえしながら、およそこの世でユビック(遍在的)なものならなんでも寄せ集めた本書は、ユビュ王を自称するジャリにふさわしく飽くなき欲望と魁偉な姿で際立っている。
時代の夜明けに覆えされたアイデアの玩具箱の惨状を呈するショート・ショートとエッセイの混合した収録作79篇は、すでに場当り的な効用性というものを抜けでて、役立たずを暴力的に推し進めて詩的幻想の書にまでなった来るべき百科辞典である。》
中島みゆき『愛が好きです』新潮文庫・1982年
《知りたくありませんか? ナウい別れ方、振られ方――。のぞいてみませんか? ちょっと悪女のやさしい心のうち――。幅広いファンを持つシンガーソングライター中島みゆきの世界が、この一冊に収められています。『わかれうた』『悪女』などの大ヒットをはじめとする詩のすべて、シャレたエッセイ、それにカラー・ボートレートも添えた、目で読む中島みゆきアルバムです。》
忌野清志郎『忌野旅日記』新潮文庫・1993年
《ステージ挟しと飛び跳ね、ソウルフルにシャウトする――。日本ロック界のボス・忌野清志郎が、旅の徒然に見聞きしたオカシなヤツらの笑えるウラ活をイマーノ言葉で語り尽くす。泉谷しげる、山下洋輔、桑田佳祐など、音楽業界の重鎮総登場。さらに、タイマーズ、細野晴臣、井上陽水、M G'S 、小林薫篇を加筆し、最新の活動までフォローしたロック・ギョーカイ交遊録エッセイ完全版。》
谷恒生『新マラッカ海峡』角川文庫・1986年
《火炎舞う地獄のマラッカ海峡から甦った不死身の超人、土岐雷介は日本に凄まじい“戦場”をもちこんできた!
標的は、日本有数の暴力団、関東山吹組だった。だが、背後に控える日本の政財界をあやつる黒幕の強大な私兵機関が闘いを挑んできた。
男の復讐を圧倒的な迫力で描く、アクションの巨編!》
饗庭孝男『故郷の廃家』新潮社・2005年
《土葬の習俗、渡来文化の影響。京都と若狭を結ぶ近江の地には、日本の「古層」が秘められている。七百年つづく旧家に生まれた著者が、家と人と土地の記憶を掘り起こす歴史随想。》
プーシキン『スペードの女王・ベールキン物語』岩波文庫・1967年
《工兵士官ゲルマンは、ペテルブルグの賭場で自分のひき当てたカルタの女王が、にたりと薄笑いしたと幻覚して錯乱
する――。幻想と現実との微妙な交錯をえがいた『スペードの女王』について、ドストイェーフスキイは「幻想的芸術の絶頂」だといって絶賛した。あわせて「その一発」「吹雪」など短篇5篇からなる『ベールキン物語』を収める。》
広瀬仁紀『議決・社長解任』講談社ノベルス・1983年
《ライバルを蹴落し、名門百貨店のトップについた末吉徹は、反対派を粛正、周囲を側近で固め強力な体制を敷くが、周辺にはスキャンダラスな噂が絶えない。美貌と才知で末吉を籠絡し、女帝として社内に君臨する館原瑠美。ブラックジャーナリズムの好餌となった名門百貨店は経営危機を招き、社内抗争もまた激化する……。》
志水辰夫『裂けて海峡』講談社ノベルス・1983年
《私が暴力団とのつまらぬいさかいで刑務所暮らしをしている間に、弟が船長をしていた第三双葉丸が沈んだ。乗組員は全員死亡。海上保安庁の捜索にもかかわらず、正確な遭難地点は不明、目撃者も出なかった。せめて事故原因だけでも明らかにしたい。調査を始めた私に正体不明の尾行者が……!? 意外な展開、息づまるサスペンス。》
西村寿行『監置零号』カッパ・ノベルス・1987年
《高沢法律事務所の居候弁護士・原田恭史は、“監置X号”という奇妙な略号のついた被告人の弁護を何度か手がけていた。容疑者が逮捕され黙秘を通すとそのような略号がつく。財産争いに絡む民事訴訟の依頼を受けて愛媛県の宇和島に来た原田は、被告人の調査を続けていたが、傷害事件に巻きこまれ、誤って人を殺してしまった。逮捕された原田は、警察の取調べに完全黙秘を通した。原田は、自ら“監置零号”と呼ばれるようになった。彼が黙秘を続けるのはなぜか!? 彼の背後に巨大な闇が……!? 法廷の裏側に隠された驚愕の事実を暴く敏腕弁護士・原田の苦闘を描いた、ハード・サスペンス小説の傑作!》
綾部恒雄『文化人類学15の理論』中公新書・1984年
《文化人類学の成果があらゆる分野で引用・利用されるようになったが、それが必ずしも正しい理解に基づいているとはいいがたいことが多い。本書は、モーガン以降の文化人類学理論の流れを進化論から機能主義をへて広義の構造主義への展開としてみる立場から15の学説に分けて、それぞれ背景・特質・展望を中心に分析、解説する。これから文化人類学を学ぶ人はもちろん、他分野の専門家にも十分役立つ、学説史の入門書である。》
新渡戸稲造『自警録―心のもちかた』講談社学術文庫・1982年
《とかく道徳の思想は高尚、その道理は遠大であろう。これに反し、われわれの最も意を注ぐべき心掛は平常毎日の言行――言行と言わんよりは心の待ち方、精神の態度である。平常の鍛練が成ればたまたま大大的の煩悶の襲い来る時にあたっても、解決が案外容易に出来る。ここにおいてわが輩は日々の心得、尋常平生の自戒をつづりて、自己の記憶を新たにするとともに同志の人々の考えに供したい。(序より)》
壺井栄『二十四の瞳』角川文庫・1961年
《壺井栄の著作中最も有名なこの作品は、昭和の歴史を背景に、大石先生とその十二人の教え子の約二十年の生活をえがいた物語である。瀬戸内海の小島ののどかな風物と人情をユーモラスに書きながら、作者は他の作品には見られぬ激しさで、戦争のもたらす不幸、貧しいものがいつもしいたげられていることへの怒りを訴えている。》
豊田穣『空母信濃の生涯』集英社文庫・1983年
《7万2千トン、史上最大の空母信濃は、僅か四発の雷撃に、なぜもろくも沈んだのか。大艦巨砲時代から航空機第一主義へ、時代の大きな流れの中で、信濃誕生をめぐって繰り広げられた海軍内部の相剋のドラマ。そして、ついに参戦することもなく沈没した信濃の悲劇を、ドキュメンタリー・タッチで活写した長篇戦記文学の金字塔。 解説・塩尻 和》
吉田秀和『音楽紀行』中公文庫・1993年
《一九五三年から五四年にかけての約一年、ハワイ、サンフランシスコを振り出しに、東廻りでアメリカとヨーロッパの諸都市を訪ね、転換期にあった音楽をつぶさに体験した時の鮮明な感懐を、その時代の息吹きとともに伝える。》
竹西寛子『続 ひとつとや』福武文庫・1990年
《日々の生活を慈しむ著者が、人と出会い、さまざまな自然の姿を目にし、古典文学の粋に触れて、歳時記を透かし織る珠玉の断章。》
赤瀬川原平選『全日本貧乏物語』福武文庫・1991年
《家で、行乞、借金、空腹、放浪、小銭稼ぎ、共同生活etc.貧乏はいうまでもなく辛いことである。だが、文章に書かれた貧乏は楽しい。その楽しさにひたっていると、それに勝るものはないと思ってしまう――。人々の心の奥に潜む、そこはかとない貧乏への憧憬の気持ちを、優しくくすぐる11人。》
馬場あき子『修羅と艶―能の深層美』講談社・1975年
《修羅なす内面の屈折と、表現としての艶の美の渾然たる融和。能の情念と美意識は人々を不思議な感動に誘う。地獄をもっとも身近にみつめていた中世という時代に深く垂鉛を下ろし、能の根源的魅力を現代に甦らせる。》
勝海舟/江藤淳・松浦玲編『氷川清話』講談社学術文庫・2000年
《幕藩体制瓦解の中、勝海舟は数々の難局に手腕を発揮、江戸城を無血開城に導いて次代を拓いた。晩年、海舟が赤坂氷川の自邸で、歯に衣着せず語った辛辣な人物評、痛烈な時局批判の数々は、彼の人間臭さや豪快さに溢れ、今なお興味が尽きない。本書は、従来の流布本を徹底的に検討し直し、疑問点を正し、未収録談を拾い上げ再編集した決定版。》
谷川渥『孤独な窃視者の夢想―日本近代文学のぞきからくり』月曜社・2021年
《覗き見る想像力ーー西洋美術の視覚的イメージに触発された日本近代文学の巨匠たちの作品から、〈見ること〉の諸相を、分析する。夏目漱石、高村光太郎、村山槐多、森鷗外、芥川龍之介、谷崎潤一郎、佐藤春夫、萩原朔太郎、江戸川乱歩、夢野久作、川端康成、横光利一などの作品から、文学を美学から照射する試み。》
豊田有恒『日本SF誕生―空想と科学の作家たち』勉誠出版・2019年
《日本のSFが若かったころ―
日本SFが、かつての空想科学小説というジャンルからアウフヘーベンして、あらたに確立したのは、1960年代の初頭からである。当時、日本の出版界では、ひとつのジンクスが語られていた。西部小説とSF小説を出版すると、その出版社は倒産するというものである。SF小説は、いわば未知の文学ジャンルだった。
多くの同志とともに、日本にSFを広めていく過程は、いわば一種の文学運動だった。これは、ひとつの文学ジャンルを確立するまでの、SF作家たちの苦闘と、哀愁と、歓喜の交友の物語である。
今、日本SFが根を下ろすまでの事情を、いわば遺言として書き残すことが、馬齢を重ねた同志としての使命かもしれないと考え、あえて語ることとした。もともと書誌学のようなものには疎いほうだから、年譜的な記録を残すつもりはない。いわばSF作家交遊録と言った体裁になるが、これまで書かれていない破天荒なエピソードなども紹介しながら、筆を進めていきたいと思う。筆を進めると、書いてしまった。今ならキーボードを叩くと書くべきだろうが、あれから半世紀以上、科学の進歩は、われわれSF作家の想像を超えるテンポで進行した。》
作田啓一『現実界の探偵―文学と犯罪』白水社・2012年
《人間を犯罪へと駆り立てる衝動とは何か? 池田小事件、秋葉原事件や探偵小説を題材に行為の瞬間に立ち現れる「真空状態」を析出。動機を規定する深層を抉り出す。》
岡田温司『映画と黙示録』みすず書房・2019年
《〈もしもこの世界に終わりがあるとしたら、それはいつごろどんな風にやってくるのだろうか。それを克明かつ想像力豊かに記したのが、紀元後一世紀の末に書かれたとされる『ヨハネの黙示録』である。西洋においてこの本は、今日に至るまで、宗教はもとより、思想や芸術のみならず、政治や社会全般にいたるまで計り知れない影響力をもってきた。(…)神が死んだとされる現代においても、黙示録的な想像力がとりわけ映画において脈々と生きつづけているとするなら、それは、映画というメディウム——「霊媒」という意味もある——そのものが、一種の世俗化された「宗教」に他ならないからである。映画とは、儀礼と物語と美学の三つが出会う場なのだ。〉
核による人類滅亡、宇宙戦争、他者としての宇宙人(異星人)の表象、救われる者と救われない者、9・11という虚実の転倒と終末映画、そして、コンピューターやロボット、AIに支配される社会…。ホラー、パニック、アクション、戦争、SF、ミステリー、フィルム・ノワールなど、約250作を取り上げ、原典があらわすイメージ・思想と今日の私たちとの影響関係を解き明かす、西洋美術史・思想史家の面目躍如たる一冊。
「起こりうること」「間近に迫っていること」にとらわれて生きる私たち人間は、黙示録的な世界の鑑賞を欲しているのだろうか?》
長山靖生『モダニズム・ミステリの時代―探偵小説が新感覚だった頃』河出書房新社・2019年
《1920年代、相前後して勃興・隆盛するモダニズム文学と探偵小説。怪奇、犯罪、科学といったテーマを軸に、相互に影響しあっていた熱い磁場を活写。戦間期文学の読み直しの可能性を問う。》
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