9月分。眉村卓の古本がまとめて出てきたので保存状態によって買い直した。
後藤明生『思い川』講談社文庫・1978年
《川を遡ることは時間を遡ることで、団地のそばの川の風物は遙かな異国となった生れ故郷の川の記憶に重なり、思いがけない過去とのめぐり合いがまた現在の再認識を生む。現代に生きることの苦さをかみしめつつも、細部を浮きぽりにする日常の語りの中にふしぎな安らぎの感情をみなぎらせる情緒あふれる連作小説集。》
収録作品=父への手紙/釈王寺/父の夢/思い川
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…14』一迅社文庫アイリス・2024年
《悪役令嬢カタリナの破滅の運命を無事回避!ーーしたはずが、ゲーム続編の舞台である魔法省に就職していた私。闇の魔法を暴走させそうになったことで思い悩んでいたある日、闇の魔法に関係すると思われる事件が再び発生! 続編の攻略対象である上司サイラスの故郷へ出向くことになるけれど、彼に思いを寄せる美女が同行!? ヒロインのマリアを取り巻く状況も変化して……。
大人気破滅回避ラブコメディ★第14弾!!》
阿刀田高『新約聖書を知っていますか』新潮文庫・1996年
《新約聖書の冒頭で、マリアの夫ヨセフの系図を長々と述べているのはなぜでしょう。処女懐胎が本当ならば、そんなことはイエスの血筋と無関係のはずです。ところで、聖書の中に何人のマリアが登場するか知っていますか? ではヨハネは? そして、イエスの“復活”の真相は? 永遠のベストセラー『新約聖書』の数々の謎に、ミステリーの名手が迫ります。初級者のための新約聖書入門。》
阿刀田高『左巻きの時計』新潮社・1983年
《人生なんて一寸先は闇だもの楽しくやらなきゃソンですよ
恋愛のエアポケット、人生のブラックホール――この世のどこやかしこ口を開けている落し穴の数々を、微笑・苦笑・失笑のうちに描く甘辛ジョーク集!》
岩井宏實『暮しの中の妖怪たち』河出文庫・1990年
《現代は妖怪の時代である。この情報化された社会にあって、人びとはなぜ摩訶不思議な異形の存在を求めるのであろうか。人がこの世に生きてくるには、たえず自然と対決し、その脅威にさらされてきた。そのなかで、人知を超えた働きを感じ、怪異なるものを認めてきたのであった。こうしてかたちづくられてきた妖怪の姿を各地の伝承にたずねて、これらの性格を明らかにし、現代における意義を探る。》
H・G・ウエルズ『ドクター・モローの島』角川文庫・1967年
《(原題 モロー博士の島)
乗っていた船が遭難し、ひとり漂流していたプレンデイックは、小さな帆船に拾われた。帆船はモロー博士の依頼で、数頭の猛獣を南海の孤島へ送るところだった。
彼は積荷とともにその島へ降ろされた。密林に覆われた絶海の孤島、モロー博士はここで、ある“実験”を人知れず行なっているのだという。だがそれが何の実験なのか、博士は決して語ろうとしなかった。
立ち入り禁止の実験室からは、毎日すさまじい猛獣の悲鳴が聞こえてくる。そしてある日、プレンデイックは密林で奇怪な生き物を見た! あれは何なのか、人か獣か? この島ではいったい何が行なわれているのか――文豪ウエルズの傑作SF。他に二篇を収録。》
収録作品=モロー博士の島/妖星/イービョルニスの島
小林泰三『天体の回転について』ハヤカワ文庫・2010年
《科学とは無縁の世界で育った青年はある日、月世界を目指して天空へと伸びる「天橋立」に向かう。そこで待っていたものは、とびきり可愛い謎の少女だった――無垢な青年が抱く、宇宙への憧れとみずみずしい初恋を描いた表題作のほか、ロボット三原則の盲点が引き起こす悲劇を描いた「灰色の車輪」、宇宙論とクトゥルフ神話が驚愕の融合を果たす「時空争奪」 など、ヴァラエティに富んだ全8篇収録の傑作ハードSF短篇集。》
収録作品=天体の回転について/灰色の車輪/あの日/性交体験者/銀の舟/三〇〇万/盗まれた昨日/時空争奪
眉村卓『おしゃべり迷路』角川文庫・1981年
《さぁさぁ今から始まりまするのは、愉快・痛快・奇々怪々。変で不思議でケッタイな話。
イジキタナク食べる話
ウサンクサイとはどういう意味?
ロマンチックな徹夜のお話
ひとつの話が始まれば、あっちへ翔んだり、こっちへ跳ねたり、どこで終わるか予想もできない……。どう転んでも、貴重で乏しいあなたの読書時間を楽しませずにはおかない!
さあ、あなたもクマゴローこと眉村卓の、真面目で不真面目な、そして知的センス溢れるおしゃべりに耳を傾けてみましょう。》
眉村卓『影の影』ハヤカワ文庫・1977年
《ラジオのディスク・ジョッキー、テレビ出演と幅広い活躍をつづける眉村卓が、現代文明への鋭い洞察と、劇的な構成で人間性回復とアイロニーを綴った珠玉の表題作ほか、きのうの晩までは、たしかに正常だったはずなのに、突如世界人口の六割までがテレパシー、テレポーテーション、テレキネシスなどの超能力をもちはじめる「最初の一日」地軸の傾斜度が変わり、津波は陸を洗い、地球は一片の陸地もあまさず海に沈むだろうと――宇宙救助協会が恐るべき地球破滅を警告する「破局」など、眉村SFの軌跡を精選収録して贈る本格傑作短篇八篇。》
収録作品=泣いたらあかん/影の影/最初の一日/破局/悪夢の果て/暗い渦/決算の夜/終りとはじまり
眉村卓『枯れた時間』ハヤカワ文庫・1977年
《黄昏の中に沈みゆく大学構内に、十数年ぶりにたたずんだ中田隆一は、いつしか汗を流し這いずりまわった柔道部時代の記憶のなかへと包み込まれていった……。自分が上級生に痛めつけられた一、二年の頃。そして、超人的な技を持ちながら滅多にそれを使おうとしなかった変わり者野間平造の意外な顚末もあざやかに思い出していた……虚実をないまぜて綴った珠玉の表題作ほか、「万国博がやってくる」「すべり込んだ男」「悪夢の日」など14篇を収録。独自の未来社会を構築そこで苦悩し、絶望し、闘う人々を描きつづける眉村卓が放つ初期傑作短篇集!》
収録作品=浜近くの町で/夜のたのしみ/われらの未来/お別れ/不満処理します/枯れた時間/コピーライター/公子/すべり込んだ男/機械/悪夢の日/いたちごっこ/中年/万国博がやってくる
収録作品=テキュニット/ぼくの場合/よじのぼる/緋と銀のバラード/サロンは終った
眉村卓『ぼくたちのポケット』角川文庫・1980年
《今、君の服にはいくつポケットがついている? 五つ? 六つ? 七つ? そしてそこに何が入っているのかな? ごくあたりまえの財布、タバコ、万年筆……ちょっと人には言えないラブレターや辞表まで……? そして、君はもう忘れてしまったかも知れないけれど、こんな小物たちも、それぞれに秘かな物語を持っているのだ。
さあ、ポケットの中のものを取り出して、ちょっとこの本のページをめくってみよう。ほら、小物たちのささやきが聞こえてくるよ……。
眉村卓の軽妙なエッセイ&ショートショート。》
収録作品=鉛筆削りコンクール/ボールペン騒動/ぼくのペン/悪い癖/悪運/財布の山/古いガマグチ/借りた鍵/定期時間旅行券/何でも免許証/総合カード/金色のパスポート/万能手帳/落とし主/Kのハンコ/ふたつの写真の話/マッチおくれ/ジャクソン氏/シガレットケースの底に/広告文/サングラスのむこう/扇子の風/臨時講師/登山とお守り/センチな話/万能切符/半券コレクター/最終レース/松山さん/パチンコ玉/夢のような話/白紙のカード/明細書のブルース/あるラブレター/辞表/占いの流行/旅は道づれ/会社の歴史/フィンガーカメラ/ポケットのウィスキー/タグレバさんのくすり/決闘/発明物語/怪物の夢/ガイドと客たち/未来・現在・過去/テレビのニュース/おいしいもの/刺激/利き味大会/合成食品/偶然にも/必然的に/もしも……だったら/昔の予言/能力について
眉村卓『あの真珠色の朝を…』角川文庫・1974年
《われわれは、すでに深夜にしか生きられない種族なのだろうか――。
“深夜族”と呼ばれることに秘かな満足を覚えていたシナリオライターの岩上。だがその生活もすでに2年。ある日突然、〈あの真珠色に明けてゆく朝〉に渇望を感じた。失われた朝を取り戻そうとしたとき、その人間の生活に何が起こるか……。
管理された現代の都市文化の中で、必死にもがく人間遠を描いた眉村卓のSF傑作集、他に8編収録。》
収録作品=あの真珠色の朝を…/魔力/真昼の断層/狂った夜明け/錯視症/ブルー・ブラック/工場/マリオネット
眉村卓『奇妙な妻』角川文庫・1978年
《〈大変だ、会社が倒産した。結婚したばかりなのにどうしよう…〉だが妻は、一部始終を知っても何故か平然としている。それどころか、一日働いて一か月分の給料をくれるところを知っていると言いだした。
〈そんな寝言みたいな話があるものか〉そう思いながらも、夫は教えられた場所にやってきたが、そこには傾いた木造の建物があるだけだ。彼は腹立ちまぎれに玄関のドアを開けた。が、その時から彼の悪夢は始まった。何と三十世紀の戦争に駆り出されたのだ!
奇想天外・奇々怪々のSFショート・ショート全21篇を収録。》
収録作品=奇妙な妻/ピーや/人類が大変/さむい/針/セールスマン/サルがいる/犬/隣りの子/世界は生きているの?/くり返し/ふくれてくる/やめたくなった/蝶/できすぎた子/むかで/酔えば戦場/風が吹きます/交替の季節/仕事ください/信じていたい
収録作品=準B級市民/還らざる空/表と裏/紋章と白服/ゲン/惑星総長/時のオデュセウス/ある出帆
眉村卓『モーレツ教師』角川文庫・1981年
《国語、数学、英語、歴史……欣也の新しい家庭教師は、恐るべき知識を持っていた。そして教え方も、常識を越えて徹底していた。
喜ぶのは教育ママの母親。だが、欣也はクラブ活動も制限され、毎日が地獄と化してゆく。そんなある日、欣也は、その家庭教師が、実はとんでもない怪物であることを知ってしまった!
受験を前にした一高校生の恐怖の体験を描く、異色スリラー!
他に、SF活劇小説の「現われて去るもの」、著者精選のショート・ショートを収録。》
収録作品=役立たず/ランナー/なつかしい列車/雪/仕事/アンドロイド/旅のおわり/女ごころ/父と息子/スーパーマン/黄色い時間/暗示忠誠法/目前の事実/終りがはじまり/モーレツ教師/現われて去るもの
H・G・ウエルズ『解放された世界』サンリオSF文庫・1978年
《原子エネルギーが開発され、産業に使用されるにつれて、旧来の石炭、石油など無価値とされるようになった。やがてやってくる大量解雇、世界経済の混乱。その結果、地球上いたるところに紛争が発生する。そして世界戦争への突入である。パリ、ベルリン、ロンドン、モスクワ、東京、シカゴなどに原子爆弾が投下され、次々と焔の中に崩壊していく。
交戦国はようやく戦争の無意味を悟り、世界国家を設立するに至るのである。
本書は、近代主権国家を否定し、国連段階をも踏み越えた「世界頭脳」の形成による単一世界政府の実現というウエルズの熱っぽい政治的信条がうかがえるとともに、1914年時点においてすでに原子エネルギーの創造性とともに、破滅の危険性をも洞察しえたものとしてSF史上不朽の名作とされている。》
三浦浩『さらば静かなる時』角川文庫・1981年
《第二次世界大戦末期、崩壊するナチスドイツが、将来に備えて残した重大な秘密。それは、戦後の国際社会の大きな変動期には必ず浮上する。
そして、いままた――。
英国に留学する、元海軍中尉の史学教授・松田は、あるパーティで、西ドイツの海軍武官と知り合った。男は終戦時の松田のシンガポールでの行動に執拗に興味を示した。この出合いが謎をきわめた事件のはじまりだった……。
ロンドン、パリ、京都を舞台に雄大なスケールで展開する長編国際小説。》
眉村卓『閉ざされた時間割』角川文庫・1977年
《この奇妙で恐るべき事件は、中学二年生の良平が珍しく勉強にうち込もうとしている夜に始まった。
はじめ良平は、ベランダに映る無気味な人影を見た。そして翌日、彼のノートにはメモした覚えのないことが書き込まれているのを発見。次には何故か夢遊病のように学内をふらつく先生と生徒を目撃……。いったい何が起きたのか? そして魔の手はついに、ガールフレンドや、良平の家族にものぴてきた!
人間の乗っ取りを企む借体生物との闘いを描くスリルあふれる眉村卓の傑作SFジュブナイル! 表題作ほか「押しかけ教師」等3篇収録。》
収録作品=閉ざされた時間割/少女/月こそわが故郷/押しかけ教師
五木寛之『ワルシャワの燕たち』集英社文庫・1993年
《1990年秋。沢木誠一郎はテレビリポーターだった恋人の鬼頭裕子を追ってワルシャワヘ飛んだ。裕子は再会を喜びながらも、東京には帰らないといい、ポーランド人青年との事業計画に燃えている。失意の沢木は、酒とギャンブルとジャズに溺れ、深夜のワルシャワを彷徨する。希望と幻滅、失われた青春。時代の歯車が音を立てて回るワルシャワを舞台に描く追真のドキュメント・ロマン。》
谷崎潤一郎『お艶殺し』中公文庫・1993年
《駿河屋の一人娘お艶と奉公人新助は雪の夜駈落ちした。幸せを求めた道行きだった筈が…気ままな新生活を愉しむ女と破滅への意識の中で悪を重ねてゆく男。「殺人とはこれほど楽な仕事か」――。文学とは何か、芸術とは何かを探求した「金色の死」併載。》
四方田犬彦『世界の凋落を見つめて クロニクル2011-2020』集英社新書・2021年
《東日本大震災・原発事故の2011年からコロナ禍の2020年まで、日本と世界が変容し、混乱した「激動の10年」に書き続けられた時事コラム集成。この間、著者はニューヨーク、ロンドン、パリ、北京、ソウル、香港、台北、キューバ、イスタンブール、リオデジャネイロ、サハラ以南のアフリカ諸国、そして緊急事態宣言下の東京など、様々な場所と視点から世界の変貌=凋落の風景を見つめた。私たちの生きる世界は、そして私たち人間は、どのように変わったのか。全99本のコラムが「激動の10年」を記録する。》
篠田一士『読書の楽しみ』構想社・1978年
《音楽少年であった幼年期から文学へ移りゆく中学・高校・大学時代――戦中・戦後の激動期に青春をすごした著者が若き日の体験をもとに語る読書のよろこび!》
連城三紀彦『黄昏のベルリン』講談社文庫・1991年
《四十余年の時の流れに塗り込められた驚異の秘密の謎解きに、一人の“日本人”が巻き込まれた! ――リオデジャネイロ、ニューヨーク、東京、パリ、そしてベルリンと、世界の大都市を結んで展開する国際的謀略事件が、一転また一転、意外極まる結末へ。壮大かつ緻密な仕掛けの、長編ミステリー・ロマン。》
西村京太郎『特急「白山」六時間〇二分』カドカワノベルズ・1989年
《長田は35歳。中央商事でエリートコースを歩いていたが、突然、金沢支店への転勤を命令された。明らかに左遷だ。理由はあった。木元加代子という30歳近い銀座のホステスだ。最初は蜜月時代が続いたが、最近仲がこじれ、いやがらせをするようになった。長田は、飛行機、列車、タクシーを使った大がかりな犯罪計画を考えたが――。
連続して起こる殺人事件。だが容疑者にはいつも鉄壁のアリバイが。小心な犯人達を操る黒い影の大いなる狂気とは何か!? トラベル・ミステリー。》
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