これも放置してあった8月分。大きく体調を崩し、半月ほどほぼ起き出せずにいた。その後、自力で入浴できるところまで復調したので、もうしばらく一人で生存できるだろう。
坂口安吾『安吾新日本地理』角川文庫・1974年
《戦後社会への旺盛な好奇心と、歴史への興味から試みられた、坂口安吾の日本探訪――。伊勢神宮で日本神話を考察し、大阪道頓堀でストリップを見、仙台で伊達政宗を論じ、長崎で切支丹殉教とチャンポンの関係を説く……。
日本人の生活と歴史に独自の照明を当てた、出色の文明論的ルポルタージュ!》
エリック・シーガル『ラブ・ストーリィ』角川文庫・1972年
《「ラブ・ストーリィ」は米国だけで現在1200万部を売りつくした驚異的な小説である。発売と同時にすでに古典的な扱いをうけ、大学の講義の中にとりあげられ論議の的となっている。主人公のオリバーとジェニーは今やアメリカのロミオとジュリエットになった。素朴でかざらない言葉で語られた哀しく甘いこの物語は、時代を越え、しかも最も現代的であるといえる。ここには現代の若者の言葉が満ちあふれ、その荒っぽい言葉が若者の甘く優しい感情をあますところなく語りつくしている。「ラプ・ストーリィ」はアメリカのある大学のキャンパスに起こった物語である。しかし、もっと厳密にいえば、これは人間の心に起こった問題なのだ。そして、すべての評論家が、この「ラブ・ストーリィ」を賞めたたえた。サンフランシスコ・エグザミナー誌は「すべての愛の物語に要求される面白、おかしさと、感動と驚きに満ちている」といい、ニューヨーク・タイムズは「喉もとになにかしこりができ、それがフットボールくらいの大きさのものになっていくように感じた」とその感銘を評した。》
小川哲『ユートロニカのこちら側』ハヤカワ文庫・2017年(ハヤカワSFコンテスト大賞)
《巨大情報企業による実験都市アガスティアリゾート。その街では個人情報――視覚や聴覚、位置情報等全て――を提供して得られる報酬で、平均以上の豊かな生活が保証される。しかし、誰もが羨む彼岸の理想郷から零れ落ちる人々もいた……。苦しみの此岸をさまよい、自由を求める男女が交錯する6つの物語。第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉受賞作、約束された未来の超克を謳うポスト・ディストピア文学。解説/入江哲朗》
武田徹『日本ノンフィクション史―ルポルタージュからアカデミック・ジャーナリズムまで』中公新書・2017年
《「非」フィクションとして出発したノンフィクション。本書は戦中の記録文学から、戦後の社会派ルポルタージュ、週刊誌ジャーナリズム、『世界ノンフィクション全集』を経て、七〇年代に沢木耕太郎の登場で自立した日本のノンフィクション史を通観。八〇年代以降、全盛期の雑誌ジャーナリズムを支えた職業ライターに代わるアカデミシャンの活躍をも追って、「物語るジャーナリズム」のゆくえと可能性をさぐる。》
高木彬光『五人の探偵たち』光文社文庫・1991年
《高木彬光の生み出した五人の名探偵、神津恭介、大前田英策、百谷泉一郎、近松茂道、そして、霧島三郎。五人五様の推理の冴えを競う。推理ファン必読の作品集。
――東大法医学教室の助教授・神津恭介のもとに奇怪な事件が持ち込まれた。七年前に父親が失踪し、最近部屋に血の雨が降るという。しかも血には血液型がなかった!(「幽霊の血」)》
収録作品=幽霊の血/暗黒街の帝王/遺言書/殺人へのよろめき/復讐保険
島田一男『伊豆半島殺人ロケ』光文社文庫・1987年
《関東芸術スタジオのチーフ・プロデューサー車田は、ミュージカル「尼将軍政子の恋」を企画した。車田は、北条政子の足跡を辿ろうと、役者、演出家、脚本家らを引き連れて総勢8名のロケ・ハンを組んで伊豆半島を回っていた。途中大沢温泉で、「静御前」役の瀬尾早美が突然消え、全裸死体で発見された。そして、第二、第三の殺人が……!》
宮澤伊織『裏世界ピクニック2―果ての浜辺のリゾートナイト』ハヤカワ文庫・2017年
《季節は夏。この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界で、女子大生の紙越空魚と仁科鳥子は互いの仲を深めながらも探検を続けていく。「きさらぎ駅」に迷い込んだ米軍の救出作戦、沖縄リゾートの裏側にある果ての浜辺の夜、猫の忍者に狙われるカラテ使いの後輩女子――そして、裏世界で姿を消した鳥子の大切な人、閏間冴月の謎。未知の怪異とこじれた人間模様が交錯する、大好評のネットロア×異世界探検サバイバル、第2弾!》
小川国夫『血と幻』小沢書店・1979年
《乾いた砂に滴る、ひと雫の葡萄の汁は、恵みだった……。旧約の荒れた土壌を覆う、汚鬼の潜む幻想の闇、感情の荒野に射し込める言葉の光。血と暴力と愛が蔓のように絡みあいながら築く、情念の形而上学世界。》
収録作品=十二族/キリガミロイ/マンドラキ/光と闇/血と幻/塵に
水野一晴『自然のしくみがわかる地理学入門』角川ソフィア文庫・2021年
《高層ビルは新宿に密集する、北海道と本州は生息する動物が異なる、高尾山の植物種数はフィンランドより多い……身近に潜むこれらの謎を解くキーワード、それは「氷河」! 50カ国以上を調査で飛び回ってきた著者が、山を滑り落ち、砂漠を歩き抜き、森をさまよったからこそ見えてきた地球の不思議の数々。身の回りの疑問を出発点に自然のダイナミズムに触れる、あなたも街に、山に、川に、世界に出たくなる、地理学からの招待状。》
ブリア‐サヴァラン『美味礼讃(上)』岩波文庫・1967年
《ブリア‐サヴァラン(1855‐1826)という人は世にも名だたる食通だったが、これがまた、ただの美食家とはわけが違う。あらゆる学問芸術に通ぜざるなく、その上、詩も作曲も、時には粋な小唄の一つも歌おうという、こういう人物が学殖蘊蓄を傾けて語る “料理の芸術”と言えば、この名著の内容をほぼ御想像いただけるだろう。(全2冊)》
ブリア‐サヴァラン『美味礼讃(下)』岩波文庫・1967年
《原題『味覚の生理学』でわかるように、この書は単なる料理術や料理法の本でもなければ通人のひとりよがりのうまいもの論でもなく、食こそ精神生活の根源であることを実証的に説いて、食味の楽しみを罪とする禁欲主義から人々を解き放った人間哲学の書である。とはいえこの下巻にも思わず唾を飲む料理の数々がたっぷりと……。》
笹沢左保『闇の性』ノン・ポシェット・1985年
《観光開発会社の若き部長、花形秀一郎は、あくことのない漁色家である。
愛人の一人、水谷佐和子に無理難題を吹きかけられ、困惑した花形は、親友の弁護士長谷部に調停を依頼したがヽ話合いの途中、佐和子が突然失踪した。半年後、彼女は死体となって発見され、花形は有力容疑者となる。
一方、花形は離婚したい一心で妻を虐待するが、妻は絶対離婚に応じない。殺人事件、離婚の難題に悩み、花形はしだいに罠に落ちこんでゆく……。》
収録作品=完全犯罪/白蟻/「白蟻」序/海峡天地会
村上春樹『螢・納屋を焼く・その他の短編』新潮社・1984年
《闇の中に消えてゆく螢。心の内に焼け落ちる納屋。ユーモアとリリシズムの交錯する青春の出逢い。爽やかな感性と想像力の奏でるメルヘン。新文学の可能性を告げる新作。》
収録作品=螢/納屋を焼く/踊る小人/めくらやなぎと眠る女/三つのドイツ幻想
筒井康隆『偽文士日碌』角川文庫・2016年
《気付いたら、芝居やテレビで、俳優として文士を演じることが多くなった。茂吉、鴎外、漱石、チェーホフのトリゴーリン。ならば現実にも文士のパロディをやってやろうではないか。髭、庄屋造りの家、着流し。はじめてみるとこの文士という衣装はなかなかよろしい。威張ったり我儘を言ったり酔っ払ったりしても、さほど不自然ではない。珍重される。リアルなのにマジカルな、6年にわたる超作家的日常を具に綴った日記文学。》
グレッグ・ベア『宇宙大作戦コロナ』ハヤカワ文庫・1988年
《緊急通信を受け、〈エンタープライズ〉号はブラックボックス星雲にあるヴァルカン人科学者トゥ・プリラの観測ステーションヘ向かった。人工冬眠中の三十人の科学者が有害な放射線で致命的な損傷を受けたというのだ。〈エンタープライズ〉号搭載の転送事故修復装置をもってすれば、科学者たちの損傷を回復させることができるかもしれない。しかしステーションでは、〈エンタープライズ〉号の乗員が思いもおよばない、奇怪きわまる出来事が進行していたのだった……自らもトレッキーを任じる、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞作家が描くスター・トレックの世界!》
高橋哲雄『ミステリーの社会学―近代的気晴らしの条件』中公新書・1989年
《イギリスの本格派、アメリカのハード・ボイルド、日本の「変格」あるいは社会派という具合に、ミステリーは、特定の地域と時代に深く関わりながら存在してきた。 作者も読者も中産階級に依存するこの分野は、19世紀に誕生して以来、どんな社会層に支えられ、どのように現実の犯罪傾向への対応を示してきたのか。 本書は、古典的ミステリーを中心に、その成長と変質とを、社会との関連の上に捉えようとする文芸社会学の試みである。》
子安宣邦『方法としての江戸―日本思想史と批判的視座』ぺりかん社・2000年
《闇斎の朱子学から津田の儒教批判まで、宣長の国学から賢治の童話世界まで歴史を抑圧した言説(ディスコース)と歴史に抑圧された(ディスコース)から近代を問う『子安思想史』の理論的冒険の書。》
佐伯順子『遊女の文化史―ハレの女たち』中公新書・1987年
《遊女とはかつて・性・を・聖なるもの・として生き、神々とともに遊んだ女たちであった。本書は従来の遊女史の枠を越え、万葉集、謡曲、梁塵秘抄から御伽草子、近松、西鶴、荷風、吉行淳之介に至るまで、文学に現われた遊女像の系譜を辿りつつ、文化を育んだ・遊び・の姿を明らかにする。ホイジンガの遊戯論に示唆され、比較文学の手法を駆使して試みられた遊女論であるとともに、新しい文化論、女性論への展望を拓く意欲作。》
山田正紀『戦争獣戦争(上)』創元SF文庫・2021年
《1994年冬、北朝鮮・寧辺の核処理施設の査察に訪れた国連職員が目撃したのは、使用済み核燃料の沈むプールの中で泳ぐ二体の奇妙な生物だった──それは戦争によって生まれるエントロピーを糧に成長する四次元生命体〈戦争獣〉。生態系ならぬ死態系に潜む死命(シノチ)の最優勢種である彼らを操ることができるのは、異人(ホカヒビト)という戦いに生きる種族のみだった。奔放な想像力が生み出す傑作長編。》
山田正紀『戦争獣戦争(下)』創元SF文庫・2021年
《第二次世界大戦、朝鮮戦争、そしてヴェトナム戦争……絶滅戦へと変質してしまった相次ぐ戦争と虐殺は、人間の文明が必然として生み出したものなのか。最終・究極戦争を目標とする異人(ホカヒビト)でありながら、そのあり方に疑問を持ち、戦争の“浄化”に向けて動こうとする者たち。彼らは敵対し合う二体の戦争獣を制し、国家と人類が向かう先を正すことが出来るのか。巨匠渾身のハードSF。》
小林信彦『私の東京地図』ちくま文庫・2017年
《下町に生まれ、和菓子屋の十代目を継ぐべき人間だったが、空襲で焼けだされ、山の手に移り住んだ。それからずっと東京の街を見てきたが、なじみの映画館やレストラン、洋服屋はかなり姿を消し、どんどん変わってゆく。昔の東京はもはや映像や写真の中にしかない。記憶の中にある風景を思い浮かべ、重ね合わせながら歩く。東京の今と昔が交錯するエッセイ集。》
キプリング『プークが丘の妖精パック』光文社古典新訳文庫・2007年
《ダンとユーナの兄妹は、丘の上で遊んでいるうちに偶然、妖精のパックを呼び起こしてしまう。パックは魔法で子供たちの前に歴史上の人物を呼び出し、真の物語を語らせる。伝説の剣、騎士たちの冒険、ローマの百人隊長……。兄妹は知らず知らず古き歴史の深遠に触れるのだった。》
東浩紀『ゲンロン戦記―「知の観客」をつくる』中公新書ラクレ・2020年
《「数」の論理と資本主義が支配するこの残酷な世界で、人間が自由であることは可能なのか? 「観客」「誤配」という言葉で武装し、大資本の罠、ネット万能主義、敵/味方の分断にあらがう、東浩紀の渾身の思想。難解な哲学を明快に論じ、ネット社会の未来を夢見た時代の寵児は、2010年、新たな知的空間の構築を目指して「ゲンロン」を立ち上げ、戦端を開く。ゲンロンカフェ開業、思想誌『ゲンロン』刊行、動画配信プラットフォーム開設……いっけん華々しい戦績の裏にあったのは、仲間の離反、資金のショート、組織の腐敗、計画の頓挫など、予期せぬ失敗の連続だった。ゲンロン10年をつづるスリル満点の物語。》
ワイルド『サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇』新潮文庫・1953年
《月の妖しく美しい夜、ユダヤ王ヘロデの王宮に死を賭したサロメの乱舞。血のしたたるの生首の唇に女の淫蕩の血はたぎる……。怪奇と幻想と恐怖とで世紀末文学を代表する『サロメ』。夫の情婦といわれる女が臆面もなく舞踏会に姿を現すが、はたして夫人は? 皮肉の才気に富んだ風俗喜劇『ウィンダミア卿夫人の扇』。ほかにワイルド劇の頂点を示す『まじめが肝心』を併録。》
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