以前から何度か吟行企画に参加している「ゲームさんぽ」ですが、今月、新作2本がニコニコ動画とYouTubeの両方で公開されました。
出演は堀田季何、阪西敦子、関悦史。
『Fallout4』と『ELDEN RING』の世界を、動画を見せてもらいつつ吟行しています。
『Fallout4』
『ELDEN RING』
以前から何度か吟行企画に参加している「ゲームさんぽ」ですが、今月、新作2本がニコニコ動画とYouTubeの両方で公開されました。
出演は堀田季何、阪西敦子、関悦史。
『Fallout4』と『ELDEN RING』の世界を、動画を見せてもらいつつ吟行しています。
『Fallout4』
『ELDEN RING』
『まぼろしの雨』は飯田晴(1954 - )の第3句集。
著者は「雲」主宰、「墨 BOKU」同人。
街若し芝居のあとに月の出て
野の神もわれも草餅なら二つ
三日月の白さを帰る枯野人
傷あとに糸の手ざはり去年今年
葉桜の東京が透きとほる傘
牛肉に脂の重さ初しぐれ
冷房の部屋かなしみに似てゐたり
山蕎麦というて茸のぬめりけり
水取の八方けものらの呼吸
まつくろな山は菌をふやしをり
ゆくさきに伊勢うどんあり秋の雲
夕ざくら鏡花の町にしだれけり
月浴びに行かう舟ある処まで
月のバスをりをり人をこぼしけり
地にひらくものに遺跡や鳥帰る
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
『砂柱』は石山ヨシエ(1948 - )の第3句集。帯文:鳥居真里子。
著者は「門」同人。
みじろがぬ蜥蜴の舌のよく動く
白昼の風なほ硬し白木蓮
卵巣を神へ返しぬみどりの夜
砂を這ふ浜昼顔もわたくしも
約束のやうに手渡すラ・フランス
無風なる砂丘を歩む初明り
みづうみは原始のあをさ夏鶯
コロナ禍を首振りとほす扇風機
ひとところ茅花野と化す砂丘かな
赤鱏のおのれに倦みてひるがへる
雪激し戦場もかく雪降るか
少年消ゆ噴水の音変はりけり
ひしひしと千の睡蓮せり上がる
棒立ちに釣瓶落しの砂丘かな
サングラス砂丘たちまち月面に
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
9月分。眉村卓の古本がまとめて出てきたので保存状態によって買い直した。
後藤明生『思い川』講談社文庫・1978年
《川を遡ることは時間を遡ることで、団地のそばの川の風物は遙かな異国となった生れ故郷の川の記憶に重なり、思いがけない過去とのめぐり合いがまた現在の再認識を生む。現代に生きることの苦さをかみしめつつも、細部を浮きぽりにする日常の語りの中にふしぎな安らぎの感情をみなぎらせる情緒あふれる連作小説集。》
収録作品=父への手紙/釈王寺/父の夢/思い川
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…14』一迅社文庫アイリス・2024年
《悪役令嬢カタリナの破滅の運命を無事回避!ーーしたはずが、ゲーム続編の舞台である魔法省に就職していた私。闇の魔法を暴走させそうになったことで思い悩んでいたある日、闇の魔法に関係すると思われる事件が再び発生! 続編の攻略対象である上司サイラスの故郷へ出向くことになるけれど、彼に思いを寄せる美女が同行!? ヒロインのマリアを取り巻く状況も変化して……。
大人気破滅回避ラブコメディ★第14弾!!》
阿刀田高『新約聖書を知っていますか』新潮文庫・1996年
《新約聖書の冒頭で、マリアの夫ヨセフの系図を長々と述べているのはなぜでしょう。処女懐胎が本当ならば、そんなことはイエスの血筋と無関係のはずです。ところで、聖書の中に何人のマリアが登場するか知っていますか? ではヨハネは? そして、イエスの“復活”の真相は? 永遠のベストセラー『新約聖書』の数々の謎に、ミステリーの名手が迫ります。初級者のための新約聖書入門。》
阿刀田高『左巻きの時計』新潮社・1983年
《人生なんて一寸先は闇だもの楽しくやらなきゃソンですよ
恋愛のエアポケット、人生のブラックホール――この世のどこやかしこ口を開けている落し穴の数々を、微笑・苦笑・失笑のうちに描く甘辛ジョーク集!》
岩井宏實『暮しの中の妖怪たち』河出文庫・1990年
《現代は妖怪の時代である。この情報化された社会にあって、人びとはなぜ摩訶不思議な異形の存在を求めるのであろうか。人がこの世に生きてくるには、たえず自然と対決し、その脅威にさらされてきた。そのなかで、人知を超えた働きを感じ、怪異なるものを認めてきたのであった。こうしてかたちづくられてきた妖怪の姿を各地の伝承にたずねて、これらの性格を明らかにし、現代における意義を探る。》
H・G・ウエルズ『ドクター・モローの島』角川文庫・1967年
《(原題 モロー博士の島)
乗っていた船が遭難し、ひとり漂流していたプレンデイックは、小さな帆船に拾われた。帆船はモロー博士の依頼で、数頭の猛獣を南海の孤島へ送るところだった。
彼は積荷とともにその島へ降ろされた。密林に覆われた絶海の孤島、モロー博士はここで、ある“実験”を人知れず行なっているのだという。だがそれが何の実験なのか、博士は決して語ろうとしなかった。
立ち入り禁止の実験室からは、毎日すさまじい猛獣の悲鳴が聞こえてくる。そしてある日、プレンデイックは密林で奇怪な生き物を見た! あれは何なのか、人か獣か? この島ではいったい何が行なわれているのか――文豪ウエルズの傑作SF。他に二篇を収録。》
収録作品=モロー博士の島/妖星/イービョルニスの島
小林泰三『天体の回転について』ハヤカワ文庫・2010年
《科学とは無縁の世界で育った青年はある日、月世界を目指して天空へと伸びる「天橋立」に向かう。そこで待っていたものは、とびきり可愛い謎の少女だった――無垢な青年が抱く、宇宙への憧れとみずみずしい初恋を描いた表題作のほか、ロボット三原則の盲点が引き起こす悲劇を描いた「灰色の車輪」、宇宙論とクトゥルフ神話が驚愕の融合を果たす「時空争奪」 など、ヴァラエティに富んだ全8篇収録の傑作ハードSF短篇集。》
収録作品=天体の回転について/灰色の車輪/あの日/性交体験者/銀の舟/三〇〇万/盗まれた昨日/時空争奪
眉村卓『おしゃべり迷路』角川文庫・1981年
《さぁさぁ今から始まりまするのは、愉快・痛快・奇々怪々。変で不思議でケッタイな話。
イジキタナク食べる話
ウサンクサイとはどういう意味?
ロマンチックな徹夜のお話
ひとつの話が始まれば、あっちへ翔んだり、こっちへ跳ねたり、どこで終わるか予想もできない……。どう転んでも、貴重で乏しいあなたの読書時間を楽しませずにはおかない!
さあ、あなたもクマゴローこと眉村卓の、真面目で不真面目な、そして知的センス溢れるおしゃべりに耳を傾けてみましょう。》
眉村卓『影の影』ハヤカワ文庫・1977年
《ラジオのディスク・ジョッキー、テレビ出演と幅広い活躍をつづける眉村卓が、現代文明への鋭い洞察と、劇的な構成で人間性回復とアイロニーを綴った珠玉の表題作ほか、きのうの晩までは、たしかに正常だったはずなのに、突如世界人口の六割までがテレパシー、テレポーテーション、テレキネシスなどの超能力をもちはじめる「最初の一日」地軸の傾斜度が変わり、津波は陸を洗い、地球は一片の陸地もあまさず海に沈むだろうと――宇宙救助協会が恐るべき地球破滅を警告する「破局」など、眉村SFの軌跡を精選収録して贈る本格傑作短篇八篇。》
収録作品=泣いたらあかん/影の影/最初の一日/破局/悪夢の果て/暗い渦/決算の夜/終りとはじまり
眉村卓『枯れた時間』ハヤカワ文庫・1977年
《黄昏の中に沈みゆく大学構内に、十数年ぶりにたたずんだ中田隆一は、いつしか汗を流し這いずりまわった柔道部時代の記憶のなかへと包み込まれていった……。自分が上級生に痛めつけられた一、二年の頃。そして、超人的な技を持ちながら滅多にそれを使おうとしなかった変わり者野間平造の意外な顚末もあざやかに思い出していた……虚実をないまぜて綴った珠玉の表題作ほか、「万国博がやってくる」「すべり込んだ男」「悪夢の日」など14篇を収録。独自の未来社会を構築そこで苦悩し、絶望し、闘う人々を描きつづける眉村卓が放つ初期傑作短篇集!》
収録作品=浜近くの町で/夜のたのしみ/われらの未来/お別れ/不満処理します/枯れた時間/コピーライター/公子/すべり込んだ男/機械/悪夢の日/いたちごっこ/中年/万国博がやってくる
収録作品=テキュニット/ぼくの場合/よじのぼる/緋と銀のバラード/サロンは終った
眉村卓『ぼくたちのポケット』角川文庫・1980年
《今、君の服にはいくつポケットがついている? 五つ? 六つ? 七つ? そしてそこに何が入っているのかな? ごくあたりまえの財布、タバコ、万年筆……ちょっと人には言えないラブレターや辞表まで……? そして、君はもう忘れてしまったかも知れないけれど、こんな小物たちも、それぞれに秘かな物語を持っているのだ。
さあ、ポケットの中のものを取り出して、ちょっとこの本のページをめくってみよう。ほら、小物たちのささやきが聞こえてくるよ……。
眉村卓の軽妙なエッセイ&ショートショート。》
収録作品=鉛筆削りコンクール/ボールペン騒動/ぼくのペン/悪い癖/悪運/財布の山/古いガマグチ/借りた鍵/定期時間旅行券/何でも免許証/総合カード/金色のパスポート/万能手帳/落とし主/Kのハンコ/ふたつの写真の話/マッチおくれ/ジャクソン氏/シガレットケースの底に/広告文/サングラスのむこう/扇子の風/臨時講師/登山とお守り/センチな話/万能切符/半券コレクター/最終レース/松山さん/パチンコ玉/夢のような話/白紙のカード/明細書のブルース/あるラブレター/辞表/占いの流行/旅は道づれ/会社の歴史/フィンガーカメラ/ポケットのウィスキー/タグレバさんのくすり/決闘/発明物語/怪物の夢/ガイドと客たち/未来・現在・過去/テレビのニュース/おいしいもの/刺激/利き味大会/合成食品/偶然にも/必然的に/もしも……だったら/昔の予言/能力について
眉村卓『あの真珠色の朝を…』角川文庫・1974年
《われわれは、すでに深夜にしか生きられない種族なのだろうか――。
“深夜族”と呼ばれることに秘かな満足を覚えていたシナリオライターの岩上。だがその生活もすでに2年。ある日突然、〈あの真珠色に明けてゆく朝〉に渇望を感じた。失われた朝を取り戻そうとしたとき、その人間の生活に何が起こるか……。
管理された現代の都市文化の中で、必死にもがく人間遠を描いた眉村卓のSF傑作集、他に8編収録。》
収録作品=あの真珠色の朝を…/魔力/真昼の断層/狂った夜明け/錯視症/ブルー・ブラック/工場/マリオネット
眉村卓『奇妙な妻』角川文庫・1978年
《〈大変だ、会社が倒産した。結婚したばかりなのにどうしよう…〉だが妻は、一部始終を知っても何故か平然としている。それどころか、一日働いて一か月分の給料をくれるところを知っていると言いだした。
〈そんな寝言みたいな話があるものか〉そう思いながらも、夫は教えられた場所にやってきたが、そこには傾いた木造の建物があるだけだ。彼は腹立ちまぎれに玄関のドアを開けた。が、その時から彼の悪夢は始まった。何と三十世紀の戦争に駆り出されたのだ!
奇想天外・奇々怪々のSFショート・ショート全21篇を収録。》
収録作品=奇妙な妻/ピーや/人類が大変/さむい/針/セールスマン/サルがいる/犬/隣りの子/世界は生きているの?/くり返し/ふくれてくる/やめたくなった/蝶/できすぎた子/むかで/酔えば戦場/風が吹きます/交替の季節/仕事ください/信じていたい
収録作品=準B級市民/還らざる空/表と裏/紋章と白服/ゲン/惑星総長/時のオデュセウス/ある出帆
眉村卓『モーレツ教師』角川文庫・1981年
《国語、数学、英語、歴史……欣也の新しい家庭教師は、恐るべき知識を持っていた。そして教え方も、常識を越えて徹底していた。
喜ぶのは教育ママの母親。だが、欣也はクラブ活動も制限され、毎日が地獄と化してゆく。そんなある日、欣也は、その家庭教師が、実はとんでもない怪物であることを知ってしまった!
受験を前にした一高校生の恐怖の体験を描く、異色スリラー!
他に、SF活劇小説の「現われて去るもの」、著者精選のショート・ショートを収録。》
収録作品=役立たず/ランナー/なつかしい列車/雪/仕事/アンドロイド/旅のおわり/女ごころ/父と息子/スーパーマン/黄色い時間/暗示忠誠法/目前の事実/終りがはじまり/モーレツ教師/現われて去るもの
H・G・ウエルズ『解放された世界』サンリオSF文庫・1978年
《原子エネルギーが開発され、産業に使用されるにつれて、旧来の石炭、石油など無価値とされるようになった。やがてやってくる大量解雇、世界経済の混乱。その結果、地球上いたるところに紛争が発生する。そして世界戦争への突入である。パリ、ベルリン、ロンドン、モスクワ、東京、シカゴなどに原子爆弾が投下され、次々と焔の中に崩壊していく。
交戦国はようやく戦争の無意味を悟り、世界国家を設立するに至るのである。
本書は、近代主権国家を否定し、国連段階をも踏み越えた「世界頭脳」の形成による単一世界政府の実現というウエルズの熱っぽい政治的信条がうかがえるとともに、1914年時点においてすでに原子エネルギーの創造性とともに、破滅の危険性をも洞察しえたものとしてSF史上不朽の名作とされている。》
三浦浩『さらば静かなる時』角川文庫・1981年
《第二次世界大戦末期、崩壊するナチスドイツが、将来に備えて残した重大な秘密。それは、戦後の国際社会の大きな変動期には必ず浮上する。
そして、いままた――。
英国に留学する、元海軍中尉の史学教授・松田は、あるパーティで、西ドイツの海軍武官と知り合った。男は終戦時の松田のシンガポールでの行動に執拗に興味を示した。この出合いが謎をきわめた事件のはじまりだった……。
ロンドン、パリ、京都を舞台に雄大なスケールで展開する長編国際小説。》
眉村卓『閉ざされた時間割』角川文庫・1977年
《この奇妙で恐るべき事件は、中学二年生の良平が珍しく勉強にうち込もうとしている夜に始まった。
はじめ良平は、ベランダに映る無気味な人影を見た。そして翌日、彼のノートにはメモした覚えのないことが書き込まれているのを発見。次には何故か夢遊病のように学内をふらつく先生と生徒を目撃……。いったい何が起きたのか? そして魔の手はついに、ガールフレンドや、良平の家族にものぴてきた!
人間の乗っ取りを企む借体生物との闘いを描くスリルあふれる眉村卓の傑作SFジュブナイル! 表題作ほか「押しかけ教師」等3篇収録。》
収録作品=閉ざされた時間割/少女/月こそわが故郷/押しかけ教師
五木寛之『ワルシャワの燕たち』集英社文庫・1993年
《1990年秋。沢木誠一郎はテレビリポーターだった恋人の鬼頭裕子を追ってワルシャワヘ飛んだ。裕子は再会を喜びながらも、東京には帰らないといい、ポーランド人青年との事業計画に燃えている。失意の沢木は、酒とギャンブルとジャズに溺れ、深夜のワルシャワを彷徨する。希望と幻滅、失われた青春。時代の歯車が音を立てて回るワルシャワを舞台に描く追真のドキュメント・ロマン。》
谷崎潤一郎『お艶殺し』中公文庫・1993年
《駿河屋の一人娘お艶と奉公人新助は雪の夜駈落ちした。幸せを求めた道行きだった筈が…気ままな新生活を愉しむ女と破滅への意識の中で悪を重ねてゆく男。「殺人とはこれほど楽な仕事か」――。文学とは何か、芸術とは何かを探求した「金色の死」併載。》
四方田犬彦『世界の凋落を見つめて クロニクル2011-2020』集英社新書・2021年
《東日本大震災・原発事故の2011年からコロナ禍の2020年まで、日本と世界が変容し、混乱した「激動の10年」に書き続けられた時事コラム集成。この間、著者はニューヨーク、ロンドン、パリ、北京、ソウル、香港、台北、キューバ、イスタンブール、リオデジャネイロ、サハラ以南のアフリカ諸国、そして緊急事態宣言下の東京など、様々な場所と視点から世界の変貌=凋落の風景を見つめた。私たちの生きる世界は、そして私たち人間は、どのように変わったのか。全99本のコラムが「激動の10年」を記録する。》
篠田一士『読書の楽しみ』構想社・1978年
《音楽少年であった幼年期から文学へ移りゆく中学・高校・大学時代――戦中・戦後の激動期に青春をすごした著者が若き日の体験をもとに語る読書のよろこび!》
連城三紀彦『黄昏のベルリン』講談社文庫・1991年
《四十余年の時の流れに塗り込められた驚異の秘密の謎解きに、一人の“日本人”が巻き込まれた! ――リオデジャネイロ、ニューヨーク、東京、パリ、そしてベルリンと、世界の大都市を結んで展開する国際的謀略事件が、一転また一転、意外極まる結末へ。壮大かつ緻密な仕掛けの、長編ミステリー・ロマン。》
西村京太郎『特急「白山」六時間〇二分』カドカワノベルズ・1989年
《長田は35歳。中央商事でエリートコースを歩いていたが、突然、金沢支店への転勤を命令された。明らかに左遷だ。理由はあった。木元加代子という30歳近い銀座のホステスだ。最初は蜜月時代が続いたが、最近仲がこじれ、いやがらせをするようになった。長田は、飛行機、列車、タクシーを使った大がかりな犯罪計画を考えたが――。
連続して起こる殺人事件。だが容疑者にはいつも鉄壁のアリバイが。小心な犯人達を操る黒い影の大いなる狂気とは何か!? トラベル・ミステリー。》
投稿情報: 01:05 カテゴリー: このひと月くらいに読んだ本の書影 | 個別ページ | コメント (0)
これも放置してあった8月分。大きく体調を崩し、半月ほどほぼ起き出せずにいた。その後、自力で入浴できるところまで復調したので、もうしばらく一人で生存できるだろう。
坂口安吾『安吾新日本地理』角川文庫・1974年
《戦後社会への旺盛な好奇心と、歴史への興味から試みられた、坂口安吾の日本探訪――。伊勢神宮で日本神話を考察し、大阪道頓堀でストリップを見、仙台で伊達政宗を論じ、長崎で切支丹殉教とチャンポンの関係を説く……。
日本人の生活と歴史に独自の照明を当てた、出色の文明論的ルポルタージュ!》
エリック・シーガル『ラブ・ストーリィ』角川文庫・1972年
《「ラブ・ストーリィ」は米国だけで現在1200万部を売りつくした驚異的な小説である。発売と同時にすでに古典的な扱いをうけ、大学の講義の中にとりあげられ論議の的となっている。主人公のオリバーとジェニーは今やアメリカのロミオとジュリエットになった。素朴でかざらない言葉で語られた哀しく甘いこの物語は、時代を越え、しかも最も現代的であるといえる。ここには現代の若者の言葉が満ちあふれ、その荒っぽい言葉が若者の甘く優しい感情をあますところなく語りつくしている。「ラプ・ストーリィ」はアメリカのある大学のキャンパスに起こった物語である。しかし、もっと厳密にいえば、これは人間の心に起こった問題なのだ。そして、すべての評論家が、この「ラブ・ストーリィ」を賞めたたえた。サンフランシスコ・エグザミナー誌は「すべての愛の物語に要求される面白、おかしさと、感動と驚きに満ちている」といい、ニューヨーク・タイムズは「喉もとになにかしこりができ、それがフットボールくらいの大きさのものになっていくように感じた」とその感銘を評した。》
小川哲『ユートロニカのこちら側』ハヤカワ文庫・2017年(ハヤカワSFコンテスト大賞)
《巨大情報企業による実験都市アガスティアリゾート。その街では個人情報――視覚や聴覚、位置情報等全て――を提供して得られる報酬で、平均以上の豊かな生活が保証される。しかし、誰もが羨む彼岸の理想郷から零れ落ちる人々もいた……。苦しみの此岸をさまよい、自由を求める男女が交錯する6つの物語。第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉受賞作、約束された未来の超克を謳うポスト・ディストピア文学。解説/入江哲朗》
武田徹『日本ノンフィクション史―ルポルタージュからアカデミック・ジャーナリズムまで』中公新書・2017年
《「非」フィクションとして出発したノンフィクション。本書は戦中の記録文学から、戦後の社会派ルポルタージュ、週刊誌ジャーナリズム、『世界ノンフィクション全集』を経て、七〇年代に沢木耕太郎の登場で自立した日本のノンフィクション史を通観。八〇年代以降、全盛期の雑誌ジャーナリズムを支えた職業ライターに代わるアカデミシャンの活躍をも追って、「物語るジャーナリズム」のゆくえと可能性をさぐる。》
高木彬光『五人の探偵たち』光文社文庫・1991年
《高木彬光の生み出した五人の名探偵、神津恭介、大前田英策、百谷泉一郎、近松茂道、そして、霧島三郎。五人五様の推理の冴えを競う。推理ファン必読の作品集。
――東大法医学教室の助教授・神津恭介のもとに奇怪な事件が持ち込まれた。七年前に父親が失踪し、最近部屋に血の雨が降るという。しかも血には血液型がなかった!(「幽霊の血」)》
収録作品=幽霊の血/暗黒街の帝王/遺言書/殺人へのよろめき/復讐保険
島田一男『伊豆半島殺人ロケ』光文社文庫・1987年
《関東芸術スタジオのチーフ・プロデューサー車田は、ミュージカル「尼将軍政子の恋」を企画した。車田は、北条政子の足跡を辿ろうと、役者、演出家、脚本家らを引き連れて総勢8名のロケ・ハンを組んで伊豆半島を回っていた。途中大沢温泉で、「静御前」役の瀬尾早美が突然消え、全裸死体で発見された。そして、第二、第三の殺人が……!》
宮澤伊織『裏世界ピクニック2―果ての浜辺のリゾートナイト』ハヤカワ文庫・2017年
《季節は夏。この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界で、女子大生の紙越空魚と仁科鳥子は互いの仲を深めながらも探検を続けていく。「きさらぎ駅」に迷い込んだ米軍の救出作戦、沖縄リゾートの裏側にある果ての浜辺の夜、猫の忍者に狙われるカラテ使いの後輩女子――そして、裏世界で姿を消した鳥子の大切な人、閏間冴月の謎。未知の怪異とこじれた人間模様が交錯する、大好評のネットロア×異世界探検サバイバル、第2弾!》
小川国夫『血と幻』小沢書店・1979年
《乾いた砂に滴る、ひと雫の葡萄の汁は、恵みだった……。旧約の荒れた土壌を覆う、汚鬼の潜む幻想の闇、感情の荒野に射し込める言葉の光。血と暴力と愛が蔓のように絡みあいながら築く、情念の形而上学世界。》
収録作品=十二族/キリガミロイ/マンドラキ/光と闇/血と幻/塵に
水野一晴『自然のしくみがわかる地理学入門』角川ソフィア文庫・2021年
《高層ビルは新宿に密集する、北海道と本州は生息する動物が異なる、高尾山の植物種数はフィンランドより多い……身近に潜むこれらの謎を解くキーワード、それは「氷河」! 50カ国以上を調査で飛び回ってきた著者が、山を滑り落ち、砂漠を歩き抜き、森をさまよったからこそ見えてきた地球の不思議の数々。身の回りの疑問を出発点に自然のダイナミズムに触れる、あなたも街に、山に、川に、世界に出たくなる、地理学からの招待状。》
ブリア‐サヴァラン『美味礼讃(上)』岩波文庫・1967年
《ブリア‐サヴァラン(1855‐1826)という人は世にも名だたる食通だったが、これがまた、ただの美食家とはわけが違う。あらゆる学問芸術に通ぜざるなく、その上、詩も作曲も、時には粋な小唄の一つも歌おうという、こういう人物が学殖蘊蓄を傾けて語る “料理の芸術”と言えば、この名著の内容をほぼ御想像いただけるだろう。(全2冊)》
ブリア‐サヴァラン『美味礼讃(下)』岩波文庫・1967年
《原題『味覚の生理学』でわかるように、この書は単なる料理術や料理法の本でもなければ通人のひとりよがりのうまいもの論でもなく、食こそ精神生活の根源であることを実証的に説いて、食味の楽しみを罪とする禁欲主義から人々を解き放った人間哲学の書である。とはいえこの下巻にも思わず唾を飲む料理の数々がたっぷりと……。》
笹沢左保『闇の性』ノン・ポシェット・1985年
《観光開発会社の若き部長、花形秀一郎は、あくことのない漁色家である。
愛人の一人、水谷佐和子に無理難題を吹きかけられ、困惑した花形は、親友の弁護士長谷部に調停を依頼したがヽ話合いの途中、佐和子が突然失踪した。半年後、彼女は死体となって発見され、花形は有力容疑者となる。
一方、花形は離婚したい一心で妻を虐待するが、妻は絶対離婚に応じない。殺人事件、離婚の難題に悩み、花形はしだいに罠に落ちこんでゆく……。》
収録作品=完全犯罪/白蟻/「白蟻」序/海峡天地会
村上春樹『螢・納屋を焼く・その他の短編』新潮社・1984年
《闇の中に消えてゆく螢。心の内に焼け落ちる納屋。ユーモアとリリシズムの交錯する青春の出逢い。爽やかな感性と想像力の奏でるメルヘン。新文学の可能性を告げる新作。》
収録作品=螢/納屋を焼く/踊る小人/めくらやなぎと眠る女/三つのドイツ幻想
筒井康隆『偽文士日碌』角川文庫・2016年
《気付いたら、芝居やテレビで、俳優として文士を演じることが多くなった。茂吉、鴎外、漱石、チェーホフのトリゴーリン。ならば現実にも文士のパロディをやってやろうではないか。髭、庄屋造りの家、着流し。はじめてみるとこの文士という衣装はなかなかよろしい。威張ったり我儘を言ったり酔っ払ったりしても、さほど不自然ではない。珍重される。リアルなのにマジカルな、6年にわたる超作家的日常を具に綴った日記文学。》
グレッグ・ベア『宇宙大作戦コロナ』ハヤカワ文庫・1988年
《緊急通信を受け、〈エンタープライズ〉号はブラックボックス星雲にあるヴァルカン人科学者トゥ・プリラの観測ステーションヘ向かった。人工冬眠中の三十人の科学者が有害な放射線で致命的な損傷を受けたというのだ。〈エンタープライズ〉号搭載の転送事故修復装置をもってすれば、科学者たちの損傷を回復させることができるかもしれない。しかしステーションでは、〈エンタープライズ〉号の乗員が思いもおよばない、奇怪きわまる出来事が進行していたのだった……自らもトレッキーを任じる、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞作家が描くスター・トレックの世界!》
高橋哲雄『ミステリーの社会学―近代的気晴らしの条件』中公新書・1989年
《イギリスの本格派、アメリカのハード・ボイルド、日本の「変格」あるいは社会派という具合に、ミステリーは、特定の地域と時代に深く関わりながら存在してきた。 作者も読者も中産階級に依存するこの分野は、19世紀に誕生して以来、どんな社会層に支えられ、どのように現実の犯罪傾向への対応を示してきたのか。 本書は、古典的ミステリーを中心に、その成長と変質とを、社会との関連の上に捉えようとする文芸社会学の試みである。》
子安宣邦『方法としての江戸―日本思想史と批判的視座』ぺりかん社・2000年
《闇斎の朱子学から津田の儒教批判まで、宣長の国学から賢治の童話世界まで歴史を抑圧した言説(ディスコース)と歴史に抑圧された(ディスコース)から近代を問う『子安思想史』の理論的冒険の書。》
佐伯順子『遊女の文化史―ハレの女たち』中公新書・1987年
《遊女とはかつて・性・を・聖なるもの・として生き、神々とともに遊んだ女たちであった。本書は従来の遊女史の枠を越え、万葉集、謡曲、梁塵秘抄から御伽草子、近松、西鶴、荷風、吉行淳之介に至るまで、文学に現われた遊女像の系譜を辿りつつ、文化を育んだ・遊び・の姿を明らかにする。ホイジンガの遊戯論に示唆され、比較文学の手法を駆使して試みられた遊女論であるとともに、新しい文化論、女性論への展望を拓く意欲作。》
山田正紀『戦争獣戦争(上)』創元SF文庫・2021年
《1994年冬、北朝鮮・寧辺の核処理施設の査察に訪れた国連職員が目撃したのは、使用済み核燃料の沈むプールの中で泳ぐ二体の奇妙な生物だった──それは戦争によって生まれるエントロピーを糧に成長する四次元生命体〈戦争獣〉。生態系ならぬ死態系に潜む死命(シノチ)の最優勢種である彼らを操ることができるのは、異人(ホカヒビト)という戦いに生きる種族のみだった。奔放な想像力が生み出す傑作長編。》
山田正紀『戦争獣戦争(下)』創元SF文庫・2021年
《第二次世界大戦、朝鮮戦争、そしてヴェトナム戦争……絶滅戦へと変質してしまった相次ぐ戦争と虐殺は、人間の文明が必然として生み出したものなのか。最終・究極戦争を目標とする異人(ホカヒビト)でありながら、そのあり方に疑問を持ち、戦争の“浄化”に向けて動こうとする者たち。彼らは敵対し合う二体の戦争獣を制し、国家と人類が向かう先を正すことが出来るのか。巨匠渾身のハードSF。》
小林信彦『私の東京地図』ちくま文庫・2017年
《下町に生まれ、和菓子屋の十代目を継ぐべき人間だったが、空襲で焼けだされ、山の手に移り住んだ。それからずっと東京の街を見てきたが、なじみの映画館やレストラン、洋服屋はかなり姿を消し、どんどん変わってゆく。昔の東京はもはや映像や写真の中にしかない。記憶の中にある風景を思い浮かべ、重ね合わせながら歩く。東京の今と昔が交錯するエッセイ集。》
キプリング『プークが丘の妖精パック』光文社古典新訳文庫・2007年
《ダンとユーナの兄妹は、丘の上で遊んでいるうちに偶然、妖精のパックを呼び起こしてしまう。パックは魔法で子供たちの前に歴史上の人物を呼び出し、真の物語を語らせる。伝説の剣、騎士たちの冒険、ローマの百人隊長……。兄妹は知らず知らず古き歴史の深遠に触れるのだった。》
東浩紀『ゲンロン戦記―「知の観客」をつくる』中公新書ラクレ・2020年
《「数」の論理と資本主義が支配するこの残酷な世界で、人間が自由であることは可能なのか? 「観客」「誤配」という言葉で武装し、大資本の罠、ネット万能主義、敵/味方の分断にあらがう、東浩紀の渾身の思想。難解な哲学を明快に論じ、ネット社会の未来を夢見た時代の寵児は、2010年、新たな知的空間の構築を目指して「ゲンロン」を立ち上げ、戦端を開く。ゲンロンカフェ開業、思想誌『ゲンロン』刊行、動画配信プラットフォーム開設……いっけん華々しい戦績の裏にあったのは、仲間の離反、資金のショート、組織の腐敗、計画の頓挫など、予期せぬ失敗の連続だった。ゲンロン10年をつづるスリル満点の物語。》
ワイルド『サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇』新潮文庫・1953年
《月の妖しく美しい夜、ユダヤ王ヘロデの王宮に死を賭したサロメの乱舞。血のしたたるの生首の唇に女の淫蕩の血はたぎる……。怪奇と幻想と恐怖とで世紀末文学を代表する『サロメ』。夫の情婦といわれる女が臆面もなく舞踏会に姿を現すが、はたして夫人は? 皮肉の才気に富んだ風俗喜劇『ウィンダミア卿夫人の扇』。ほかにワイルド劇の頂点を示す『まじめが肝心』を併録。》
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『鑑真』は宮坂静生(1937 - )の第14句集。
著者は「岳」主宰。
落鮎の腸食べ友はホスピスへ
孫文をかくまひ日比谷枯木宿
猪罠(ししわな)がひらき満蒙忘れ得ず
霓(にじ)といふ兜太が贈りくるるもの
叩かれてバナナはみんなほとけさま
マスクメロンの深部に井筒俊彦ゐ
小諸まで雲を摑みに枯木宿
葱坊主妖怪を率(い)てガザへ発つ
逝きし子の柱の中にゐる小春
和上像
冬麗の普し瞼あたためむ
妻が採りし白根葵の種の量
マン・レイ展磯馴松(そなれまつ)の葉冷えてきし
幣(みてぐら)の礁に置かれ祭終ふ
北斎の眼 五句 より
白髪太夫北斎いつも血の眼
自分が何処の何者であるかは、先祖たちに起こった
厄災を我身内に負うことではないのか (古井由吉「遺稿」)
古井由吉よ踏切の立葵
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
放置してあった7月分。『虚航船団』は東逸子の装画による単行本で久々の再読。
角川文庫のネズビット『若草の祈り』やジンデル『高校生』は、新刊として流通していた頃に見た記憶も思い入れもないのだが、外見的な当時のテイストだけで買ってしまった。
筒井康隆『虚航船団』新潮社・1984年
《鬼才・筒井康隆が放つ世紀末へのメッセージ
爆笑の純文学
現実と危うく紙一重の超虚構小説――
笑いに満ちた黙示録的世界が現出する。
現代小説の諸問題にかかわる文壇用語SF用語36種の問題群は浅薄にも通俗にも軽薄にもグロテスクにもこの一篇にすべて含まれているのだパロディでも茶化す気でもない現代文学関係流行語展示見本市行ってみようか♪ゴー・都市・ドタバタ・私小説・革命・タイポグラフィ・歴史・宇宙・パフォーマンス・純文学・超能力・経済・SF・記号・スラプスティック・時間・政治・精神分析・エンターテインメント・未来・言語・戦争・ギャグ・文化・神話・パロディ・国家・物語・ナンセンス・世界・仕掛け・バブリング・狂気・スカトロジイ・隠喩・異化》
スーポー『流れのままに』白水社・1975年
《第一次大戦後の青年の心理を描いたスーポーの初期の小説群は、いまなおシュルレアリスムとの関連において再評価に値する。本書はそのなかでも代表作とみなされるもので、今日にも通じる危機意識と不安を、簡潔で詩的な文体によって鮮やかに定着させている。》
アラゴン『アニセまたはパノラマ』白水社・1975年
《その奔放自在な言葉の才、雄弁術と綺想の表現において、アラゴンほど傑出した存在はなかった。彼の最初の散文である本書は、アニセなる青年のあてどない放浪の過程を描きつつ、時間‐空間の脈絡や従来の小説の約束事を無視した文字通り驚異の「パノラマ」を構成する快作である。》
アンドレ・ジイド『贋金つくり(上)』岩波文庫・1962年
《ジイド(一八六九-一九五一)が贋金使用事件と少年のピストル自殺という二つの新聞記事に着想を得て、実験的手法で描いた作品。私生児の生れに劣等感を抱く青年や作者の分身とも思われる作家、少年を使って贋金を流す男、級友のいじめにより強いられて自殺する少年など、無数の人物が登場して錯綜した事件の網目模様を繰り広げる。(全二冊)》
アンドレ・ジイド『贋金つくり(下)』岩波文庫・1963年
《作者がみすがら《小説》と名づけることをはじめて認めた自信作で、同一事件を何人もの口から語らせ、多角的な照明をあてることによって読者のみがその事件の全貌を知るように仕組む。作者の一面的な主観が投影された、特定の主人公を中心に筋が展開する従来の小説の概念を破壊し、二十世紀の文学の流れを方向づけた記念碑的作品。(全二冊)》
山中恒『おれがあいつであいつがおれで』旺文社文庫・1982年
《おれの名前は斉藤一夫。つらも、スタイルも、頭のできも、あまり上等とはいえないが、れっきとしたオスガキだ。ここんとこをよくおぼえておいてほしい。そのれが、転校生の斉藤一美に体当たりをくらわしたとたん、なんと、おれと一美は、身体ごとそっくり入れかわってしまったのだ。》
つかこうへい『小説熱海殺人事件』角川文庫・1976年
《上司には慇懃、部下には横柄なくわえ煙草伝兵衛刑事。捜査に凄腕を見せる彼は、すこぶる評判がいい。だが、軽率にも、民百姓の悩める心を救うのが天命だと信じこんでいる。
ブス殺しの容疑者大山金太郎は、彼にとっては手強いやつだ。なにしろ、立派な犯人になるための“自白道”をしこまれているから。伝兵衛も〈ブス一人殺すのに、いちいち動機なんていらねえナ!?〉とゴマ塩頭をかきむしり、取り調べも荒っぽい。出もどりで、色気のない婦人警官のハナ子と新米刑事の留吉の助けをかりて、珍妙無類な捜査室での丁々発止。金太郎の“醜女殺しの汚名”は晴れるだろうか? 著者初めての書下ろし長編ユーモア小説。》
森敦『わが風土記』福武書店・1982年
《森敦初の全紀行集!
酒田、庄内平野、奈良、尾鷲、長崎など40年にわたる漂泊の地を再訪し、自然のたたずまい、古寺や仏像、残された伝説を求めて巡歴した雅趣ゆたかな全紀行28篇!》
エルザ・トリオレ『ルナ=パーク』河出書房新社・2011年
《残された7人の男との手紙の束。失踪した女主人ブランシュの謎に映画監督ジュスタンは次第に魅了されていく。彼女の月への夢とは何か……ルイ・アラゴンの妻トリオレの代表作。》
神吉拓郎『明日という日』文春文庫・1989年
《明日という日に仄かな期待を抱いて、誰もが今日という日を送りすごす。明日吹く風は吉か凶か――。さりげない会話の妙、簡潔でふかい叙述。人生半ば、さまざまの曲折をへた男と女たちの、ちいさな生の断片、歓喜・悲哀を、細部へゆきわたる静かな視線で捉え、この作家ならではの、独特の色調で仕上げた名品十七篇。解説・向井敏》
収録作品=鍵/病気/涅槃西風/めがね/蝙蝠/ボランティア/三次会/北海道空知郡美里/トラブル/露の街/剃刀の刃/海のいろ/癖/日曜日/セメントの花/日ざかり/巣立ち
イプセン『人形の家』新潮文庫・1953年
《小鳥のように愛され、平和な生活を送っている弁護士の妻ノラには秘密があった。夫が病気の時、父親の署名を偽造して借金をしたのだ。秘密を知った夫は社会的に葬られることを恐れ、ノラをののしる。事件は解決し、夫は再びノラの意を迎えようとするが、人形のように生きるより人間としていきたいと願うノラは三人の子供も捨てて家を出る。近代劇確立の礎石といわれる社会劇の傑作。》
ケッセル『昼顔』新潮文庫・1952年
《医者の妻として夫を深く愛しながら、昼下りの売春宿で男たちに荒々しく抱かれることに喜びを覚えるセヴリーヌ――。貞淑な妻と、「昼顔」という名の売春婦とに自己を引き裂かれ、恐怖と倒錯した快感との間で揺れ動く女性の心理を克明に描いて、恐るべき破局に至る。精神と肉体の離反の悲劇を浮彫りにし、発表当時、その描写が轟々たる論争を巻き起したケッセルの代表作。》
中村哲『アフガニスタンの診療所から』ちくま文庫・2005年
《幾度も戦乱の地となり、貧困、内乱、難民、人口・環境問題、宗教対立等に悩むアフガニスタンとパキスタンで、ハンセン病治療に全力を尽くす中村医師。氏と支援団体による現地に根ざした実践から、真の国際協力のあり方が見えてくる。 解説 阿部謹也》
増田義郎『インカ帝国探検記』中公文庫・1975年
《わずか百数十人のスペイン人に滅ぼされた太陽と黄金の国・インカ! 膨大なスペイン語資料と実地踏査によってその壮麗きわまる悲劇を躍動的に再構成した異色のインカ帝国史。》
火浦功『ニワトリはいつもハダシ』角川文庫・1988年
《超がつくほど遅筆の作家・壬生マコトは、本日も原稿書かずにファミコンで遊んでいます。それを見た逆上編集者・沖田裕二は、マコトをホテルに缶詰めにしちゃいました。
どっこい、ホテルで仕事をするほど壬生マコトはまっとうではない。
脱出! 窓辺に立てば、こぶこぶのロープが垂れてくる。ところが、身をのりだしたマコトの顔を踏みつけるヤツがいた。窓からの侵入者! なりは黒づくめ。そいでもって、金ピカのリボルバー。そして、なっ、なんと肩にはニワトリが――。
いよいよ始まる、笑いと涙の大迫力小説。》
スコット・フィッツジェラルド『マイ・ロスト・シティー』中公文庫・1984年
《二〇年代アメリカの栄光と悲惨をその一身に浴びて生き、そして死んだ華麗なる作家S・フィッツジェラルドのきらびやかな宝石にも似た名作がいま最も注目の作家・村上春樹によって僕らの時代の言葉となった。》
収録作品=残り火/氷の宮殿/哀しみの孔雀/失われた三時間/アルコールの中で/マイ・ロスト・シティー
池澤夏樹『ハワイイ紀行【完全版】』新潮文庫・2000年
《通常、ハワイと呼ばれる太平洋上の島々。しかし島本来の言葉では、ハワイイと発音される。「南国の楽園」として知られる島々の、本当の素顔とは? キラウエア火口を覗き、タロ芋畑を見に行き、ポイを食べる。サーフィンやフラの由来を探り、航海技術の謎を探る……綿密な取材で綴る、旅の詳細なレポート。文庫化にあたり、新たに2章を追加した。ハワイイを深く知りたい人必読!》
堤清二『堤清二=辻井喬対談集』トレヴィル・1988年
《混乱と激動の今、来たるべき21世紀に向けて私達は何を為すべきなのか
今や国際的規模において、斬新で意欲的なマネジメントを展開する企業家にして詩人、作家である堤清二=辻井喬が、文学、政治、哲学、建築など、多岐にわたる各分野の第一人者と未来社会を点検する、現代人必読の最新対談集。》
渡辺淳一『ふたりの余白』中公文庫・1981年
《男と女の間には、永遠に理解しえない空白があるのだろうか――冷徹な作家の眼で日常の底にひそむ男女の心の襞を抉り底知れぬ愛の魅惑と魔性を明かす現代の男と女の神話》
辻真先『迷犬ルパンの挑戦』カッパ・ノベルス・1986年
《警視庁捜査一課のドジ刑事・朝日正義とGFの川澄ラン、迷大ルパンらの一行は、今回はカーフェリーで南九州観光とシャレこんだ。朝日の従姉妹の結婚式に招待されたのだ。
1万3000トンの日向行フェリーに乗った一行は、船旅を楽しむ暇もなく、シージャックに遭遇! ランの機転とルパンの実力(?)で、犯人は取り押えたが……日向港に上陸すると、次々に怪事件に巻き込まれ……!?
ご存じ、朝日刑事とルパンの珍コンビが、南九州の観光地を舞台に大騒動をひき起こし、難事件に挑む!
大好評ユーモア・ミステリー「迷大ルパン」シリーズ書下ろし第六弾!》
紀田順一郎『神保町の怪人』創元推理文庫・2023年
《空前の古書ブームが到来する中、百貨店の古書販売催事で知り合った詩集の収集家・大沢について、不穏な噂を耳にした古書愛好家の喜多。その後大沢が現れた入札会で、稀覯書が消えるという怪事件が起き……。古書収集の極意は「殺意」と豪語するコレクターの闇を描く「展覧会の客」ほか、古書の交換会やパソコンによる文献整理など、昔と今が交錯する神保町を活写した三話を収録。》
E・ネズビット『若草の祈り』角川文庫・1971年
《蒸気機関車の走るむかし、電気のない田舎家のようす、石板でお勉強する子供たち、ペチコートや編み上げぐつをはいている女の子たちの喜びと悲しみは、年代を越えて私たちの心をうつものがあります。ネズビットは、ときどき物語をはなれて、直接読者によびかけることばをつかいますが、それがまたこの作品の特色でもあり、魅力でもありましょう。》(訳者あとがきより)
ポール・ジンデル『高校生』角川文庫・1974年
《リズとショーンは学校中の誰もが認める仲だった。マギーはリズの美貌と活発な性格とにいつも圧倒されていた。そのマギーにもボーイフレンドができた。ショーンほどかっこよくはないけれど、誠実そうなデニスという少年だ。二組のカップルはそれぞれうまくいっていた。何回目かのダブルデイトの日、マギーとデニスは夜の渚で不器用な初めてのキスを交した。リズとショーンはもっと進んでいたが、リズはどうしてもすべてを許すことができなかった。ショーンはいらだち、罵倒した。リズの心は引き裂かれた。そして恐ろしい予感におびえるのだった――死、セックス、友情。二組の高校生カップルの体験を通して鮮やかに描く青春の苦悩と喜び。》
亀田俊和『観応の擾乱―室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い』中公新書・2017年
《観応の擾乱は、征夷大将軍・足利尊氏と、幕政を主導していた弟の直義との対立から起きた全国規模の内乱である。室町幕府中枢が分裂したため、諸将の立場も真っ二つに分かれた。さらに権力奪取を目論む南朝も蠢き、情勢は二転三転する。本書は、戦乱前夜の動きも踏まえて一三五〇年から五二年にかけての内乱を読み解く。一族、執事をも巻き込んだ争いは、日本の中世に何をもたらしたのか。その全貌を描き出す。》
フィリップ・キュルヴァル『愛しき人類』サンリオSF文庫・1980年(アポロ賞)
《20年前、マルコム(旧ヨーロッパ共同体)は突然国境を閉鎖した。そして通過不可能な防護柵をめぐらした。政治亡命者、スパイ、密貿易商人、逃亡犯など、国境を犯す者は全て殺されるか発狂した。夢を空間に投影する能力をもった夢現数の司祭レオ・ドリームは、その裏をかいて奇計を成功させた。救出を訴える謎めいたメッセージをガラス壜に入れて海中に投じたのである。ペイヴォイド(旧発展途上国運盟)の人々は15年後にそれを受け取った。そして、かつてマルコムで働いて、恋人がみごもっていたにもかかわらず追放されたベルガセンを密使として潜入させることにした。こうして彼は雪のアルプスを越えて一度も犯されたことのない国境を突破しようとしていた。そこには何があるのか? そして彼はスパイとして捕えられることになるのか? それとも救世主として迎えられることになるのだろうか?
アポロ賞に輝く、フランスSFが誇る衝撃作。》
森村誠一『凶水系』角川文庫・1977年
《川遊びに夢中の腕白な少年たちの一人が浅瀬に漂着した異物に気がついた。恐る恐る皆でその物体を確かめに近づいた瞬間、彼等は悲鳴をあげて逃げだした。
熊谷市内を流れる荒川の河原で男の変死体が発見された。被害者は、上流にかかる八高線の鉄橋で、通過中の列車から何者かに突き落とされたことが判明。数日後、今度は高崎のマンションで、中年の不動産業者が謎の墜落死を遂げた。やがて、この二つの事件に関連のある有力な容疑者が捜査線上に浮かび上がった。だがその時すでに遅く、容疑者は忽然と姿を消してしまっていた……。
著者が久ぴさに放つ最新の本格長編推理小説!》
投稿情報: 21:09 カテゴリー: このひと月くらいに読んだ本の書影 | 個別ページ | コメント (0)
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