眉村卓『仕事ください』(竹書房文庫)は『奇妙な妻』(ハヤカワ文庫、角川文庫)に数篇足した内容。こうした復刊ものを見るたびに、なぜほぼ例外なく児童文学、絵本、マンガ、ライトノベルのような装幀にされてしまうのかと思う。
ジョルジュ・プーレ『詩と円環』審美文庫・1973年
《中世的論理の体系の中では、すべては原点である神から発し、被造物である人間とものとは、その原点から整合的に説明され、それぞれが占めるべき確固たる位置を保有していた。これは図像的には中心を神に置く無数の同心円で示される。ところが、中世的信仰の崩壊とルネッサンスとが、この整合的な不動の宇宙を破壊したとき、宇宙の整合性は失われ、人間は自由とともに不安を、身から離れぬ陰のように持たざるを得なくなった。近代人は自身の実存を支える砦として、説得力のある形而上学を求めた。すぐれた近代詩人たちは想像力と言語を駆使して、それぞれの宮殿を構築する。要約すれば“生きがい”の創設である。ただし、神の座だけは不在であった。ジョルジュ・プーレは卓越した構想力と感性を操って、詩人たちの内的世界を探求する。》
ル・コルビュジエ『ユルバニスム』鹿島出版会・1967年
《レスプリヌーボー叢書の一巻。
ル・コルビュジエの都市計画理念の原点であり、本書で展開される思想は、年月を経た今日も依然として有効であり続けている。》
小林秀雄『作家の顔』新潮文庫・1961年
《書かれたものの内側には、必ず作者の人間があるという信念のもとに、著者の心眼に映じた作家の相貌を浮彫りにし、併せて文学の本質とその魅力を生き生きと伝える。青春の日に出会ったランボオ、敬愛する志賀直哉、菊池寛、個人的に深い交渉のあった富永太郎、中原中也、さらには中野重治、林房雄、島木健作、川端康成、三好達治等々、批評家小林秀雄の年輪を示す27編。》
中村紘子 他35名『私の猫ものがたり』集英社文庫・1985年
《かけがえのない人生の友、“いとしの描”たちにあてた各界36人の猫との交際術と猫へのラブレター!
中村紘子 小泉喜美子 水森亜土 犬養智子 堀内美紀 下重暁子 白石冬美 森ミドリ 小坂恭子 檀ふみ 熊井明子 長嶺ヤス子 塩田丸男 谷山浩子 荒木一郎 山本コウタロー 所ジョージ 来生たかお 羽仁未央 ホワイティング 高橋洋子 清川妙 遙くらら モレシャン 吉原幸子 長田弘 南伸坊 赤塚不二夫 伊藤比呂美 小沢昭一 大地真央 原田治 岸田衿子 川本三郎 タモリ 岸本加世子》
吉行淳之介『不作法のすすめ』角川文庫・1973年
《粋とは、不作法とは、紳士とは何か? 文壇きっての紳士が、アソビを通して人生のヨロコビと苦さを、しゃれたセンスで語る“面白半分”なエピソード。たとえば、痴語すなわちワイ談は、ムツカシイ人間関係をスムーズにする音楽であり、また、かの典雅なる“吉原大学”こそ、著者のナツカシイ青春を投影した、キビシイ人生修業の場であった…。ベストセラー『軽薄のすすめ』につづいて現代の若ものたちにおくる実践的レンアイ学入門。》
吉行淳之介『怪談のすすめ』角川文庫・1976年
《“現代の怪談”とはなにか?
ユーレイやオバケは過去のものとなった。けれども今の時代にも、コワイ話はいろいろある。そしていちばんオソロシイのは、やはり人間である。
超能力・宇宙人・変身・整形・性病・コールガール・ラブホテル・同性愛・ノゾキetc.怪奇談風の事件をユーモラスに語る、36話のエピソード集。
夏の夜におくるベストセラー・エッセイ「すすめシリーズ」の第4弾。》
吉本隆明『像としての都市―吉本隆明・都市論集』弓立社・1989年
《吉本隆明は’69年と’86年の二度、集中的に都市論を発表した。この十数年は、東京が世界都市に急浮上してきた時代でもあった。ハイ・イメージ都市論から東京論、東京下町を愛好するエッセイまでを集成して、この大変貌に対応した吉本都市論を提示する。 》(「BOOK」データベースより)
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集1』創元推理文庫・1974年
《二十世紀最後の怪奇小説作家H・P・ラヴクラフト。その全貌を明らかにする待望の全集――本巻には、不気味な魚影がうごめく禁忌の町を舞台に〈ダゴン秘密教団〉にまつわる怪異を描く『インスマウスの影』をはじめ、デラポーア家に伝わるおぞましい血の秘密が戦慄を呼ぶ『壁のなかの鼠』やブラック・ユーモア風の『死体安置所にて』など全四編を収録。》
収録作品=インスマウスの影/闇に囁くもの/壁のなかの鼠/死体安置所にて
伊丹十三『日本世間噺大系』文藝春秋・1976年
《キミは知ってるかね。
気をつけてみるとね まだまだ 世の中には面白い話がいっぱい転がってると思うわけよ だからね 知りたがり屋の鬼才・伊丹さんがもう夢中で蒐集してみたのが この本なのよ》
蓮實重彦『ゴダール革命〔増補決定版〕』ちくま学芸文庫・2023年
《いつ炸裂するかわからない時限爆弾として映画があるとするならば、ジャン=リュック・ゴダールの作品はいかなる条件のもとにそうであるのか、あるいはそうでないのか。映画批評的/映画史的差異を捉えた者だけに現れる問題が存在する──。最初の長編『勝手にしやがれ』から遺作『イメージの本』まで、稀代の映画作家が置かれ続けた孤独。撮ることと観ることとのいまだ決着のつかない闘争の場に対峙してきた著者は、「映画はもはやゴダールなど必要としていない」と断じる勇気を持てと訴える。新たなる孤独の創造のために。ゴダールへのインタヴューなどを再録増補した決定版論集。 解説 堀潤之》
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集4』創元推理文庫・1985年
《二十世紀最後の怪奇小説作家H・P・ラヴクラフト。その全貌を明らかにする待望の全集――本巻には、ヒマラヤすら圧する未知の大山脈が連なる南極大陸は禁断の地を舞台に、著者独自の科学志向を結実させた超大作「狂気の山脈にて」をはじめ、中期の傑作「宇宙からの色」「ピックマンのモデル」や初期の作品「眠りの壁の彼方」など全七編を収録した。》
収録作品=狂気の山脈にて/宇宙からの色/ピックマンのモデル/冷気/眠りの壁の彼方/故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実/彼方より
眉村卓/日下三蔵編『仕事ください』竹書房文庫・2022年
《仕事仕事仕事ください……。意のままになる奴隷を求めた男の前に現れた“奴”は仕事を求め続ける……。表題作ほか、不思議で哀切なる猫SF「ピーや」、恋人との会話がどんどん食い違ってゆく「信じていたい」、戦争の傷痕を異様な迫力で描く「酔えば戦場」などに加え、名作『燃える傾斜』の原型となった「文明考」などの初期未収録作三篇を所収。読めば世界がずれてくる。ぶれてくる。気づいたとき、あなたはすでに別世界。現実と幻想の狭間に迷い込む傑作短篇集。まずは一篇、踏み出してみませんか? 》
収録作品=奇妙な妻/ピーや/人類が大変/さむい/針/セールスマン/サルがいる/犬/隣りの子/世界は生きているの?/機械/くり返し/ふくれてくる/やめたくなった/蝶/できすぎた子/むかで/酔えば戦場/風が吹きます/交替の季節/仕事ください/信じていたい/その夜/歴史函数/文明考/『奇妙な妻』あとがき/変化楽しや?
高橋睦郎『読みなおし日本文学史―歌の漂泊』岩波新書・1998年
《古えには神聖にして神のものとされていた歌。その歌が、先進大陸文化の詩の到来によってその座をおわれた時、歌のさすらいは始まった。歌が放浪漂泊する中で、物語・連歌・俳諧・能・歌舞伎等々を生みだしてゆく歴史、それが日本の文学史だ。気鋭の詩人が、一つの生命の流れとして文学史を大胆に捉えなおす。想像力豊かな読みの冒険。》
ウィリアム・ゴールディング『ピンチャー・マーティン』集英社文庫・1984年
《貪欲で、自己中心的な、知的合理主義者である英国海軍士官ピンチャー・マーティン。彼は今、大西洋にうかぶ孤岩にしがみつき、ロビンソン・クルーソーよろしく生きながらえようとあがいている。生死のはざまに明滅する幻覚の数々…。一体彼の身に何か起こったのか? 極限状況下におかれた人間の意識を描いた表題作「ピンチャー・マーティン」に、大人のための寓話「蠍の神様」を併録。》
収録作品=ピンチャー・マーティン/蠍の神様
大江健三郎『燃えあがる緑の木 第一部 「救い主」が殴られるまで』新潮文庫・1998年
《百年近く生きたお祖母ちゃんの死とともに、その魂を受け継ぎ、「救い主」とみなされた新しいギー兄さんは、森に残る伝承の世界を次々と蘇らせた。だが彼の癒しの業は村人達から偽物と糾弾される。女性へと「転換」した両性具有の私は彼を支え、その一部始終を書き綴っていく……。常に現代文学の最前線を拓く作者が、故郷四国の村を舞台に魂救済の根本問題を描き尽くした長編三部作。》
大江健三郎『燃えあがる緑の木 第二部 揺れ動く(ヴァシレーション)』新潮文庫・1998年
《村人やジャーナリズムの攻撃がつづく一方、教会では、活気あふれる伊能三兄弟や、改悛したかつての糾弾者など、賛同者が次第に増えていった。一同が展望を語り合う喜びに満ちたひととき、イェーツの詩句が響き渡る。そして再び起きた奇蹟――。しかしギー兄さんの父「総領事」が突然の死を遂げ、新築なった礼拝堂で葬儀が行われた。
魂の壮大な葛藤劇、いよいよ佳境に!》
大江健三郎『燃えあがる緑の木 第三部 大いなる日に』新潮文庫・1998年
《教会を離れた私が性の遍歴から帰還すると、襲撃を受け障害者となったギー兄さんは、遥かに大きな存在となっていた。しかし、戦闘力を増す農場派と巡礼団の対立が深まり、巨大化と外的緊張の中で分裂の危機を迎える教会のメンバーに、ギー兄さんは最後の告白を行った。そしてその夜「緑の木]が燃えあがる!
「神」に極限まで近づき、なお新たな道を求めるライフワーク、完結編。》
ネリー・ザックス『ネリー・ザックス詩集』未知谷・2008年
《初期から後期まで網羅的に抽出した220余篇が、ノーベル文学賞受賞詩人“ネリー・ザックス”の全体像を浮かび上がらせる――
声高に何かを訴えるのではなく、むしろ世界を聞き取ろうとする姿勢を開いた詩人の心がおのずから作品の時空に共鳴している、それが彼女の詩に独特な、繊細な抒情の質を与えているのではないか。その心のひびきに触れること、ネリー・ザックスの詩を読むひとつは、そこにある。(「後記」より)》
陳舜臣『秘本三国志(一)』文春文庫・1982年
《群雄並び立つ乱世を描く中国古典「三国志」を語るに、著者に優る人なし──世は前漢、後漢あわせて四百年、遂にその巨木も朽ちて、まさに倒れんとする時代。相続く天変地異、疫病の流行は悪政の報いか……黄巾の乱をきっかけに、まずは、曹操、孫堅、劉備、関羽など天下制覇を夢みる梟雄、智将の登場。壮大な戦国ドラマの幕開き。》
陳舜臣『秘本三国志(二)』文春文庫・1982年
《中原に戦雲たれこめ天下まさに麻の如く乱れて、後漢の王朝はもはや崩壊同然。覇権を握った董卓の恐怖政治は猛威をふるい、遂に洛陽に火を放つ。蜂起した諸侯たちは虎視眈々中原を狙う! この時期の天下争いのトップは袁紹と袁術の兄弟であるが、黄巾軍三十万を手にした曹操が擡頭し、勢力分野に微妙な変動がおこりつつあった。》
陳舜臣『秘本三国志(三)』文春文庫・1982年
《群雄割拠の時代が続く──三国志の物語は、後漢末から隋の統一に至るまでの約四百年続いた分裂の時代の初期を舞台とする。なぜ分裂したのか? なぜ早く再統一できないのか? 英雄たちはいったいどんな気持でいたのか……さて権謀術数をめぐらす袁紹、袁術、曹操、呂布、公孫瓚、劉備、天下取りゲームに雄将の野望が滾る!》
陳舜臣『秘本三国志(四)』文春文庫・1982年
《いまや天下取りは、曹操と袁紹にしぼられた。曹操のもとに亡命していた劉備は「二人で組んで天下を狙おう」との曹操の提言で、敵陣攪乱のため袁紹軍に走るが……さあ、いよいよ諸葛孔明の登場! 劉備の陣営は、関羽、張飛ら豪傑を揃えてはいるが、権謀術数の士に欠けていた。劉備は“三顧の礼”をもって智将・孔明を参謀に迎えた。》
陳舜臣『秘本三国志(五)』文春文庫・1982年
《「曹操討つべし。曹操おそるるに足らず」と劉備の名軍師・諸葛孔明は孫権を説き、赤壁の戦いは、見事に孫権軍が勝利を得た。劉備は蜀を狙い、魏は曹操、呉は孫権と乱世は三将鼎立の時代にはいるが、天下統一をめざす曹操は、二雄を争わせんと謀略をめぐらし、遂に孫権軍の手によって劉備の片腕“ひげの関羽”の首を刎ねさせた!》
陳舜臣『秘本三国志(六)』文春文庫・1982年
《曹操、関羽、張飛、劉備と、おなじみの英雄豪傑たちは死んだ──動乱の世は、魏、呉、蜀の三国鼎立で、一応の小康を保ってはいるが、“泣いて馬謖を斬った”蜀の智将・諸葛孔明も、ついに仲秋の五丈原で陣没し、“死せる孔明、生ける仲達を走らす”と後世の語り草を生む。陳史観によるこの異色の『三国志』も本巻をもって完結。》
西村京太郎『名探偵に乾杯』講談社文庫・1983年
《遂に四人の名探偵のうち、ポアロが死んだ。その追悼会が、明智の花幻の島の別荘で開かれる。招かれたのはクイーン、メグレの他に、ポアロの親友ヘイスティングズ。そこヘポアロ二世と自称する若者が現われた。彼はポアロゆずりの才智を示すべく、突発した殺人事件に首を突っこんだが――。クリスティ女史の「カーテン」を巧みに利したパロディ。》
水上勉『破鞋―雪門玄松の生涯』岩波書店・1986年
《雪門玄松、明治の一禅僧。富山県高岡国泰寺の管長をつとめ、若き日の西田幾多郎、鈴木大拙らがその下に参禅した高僧だが、その生涯は謎に充ちている。管長の座を捨て在家禅を唱導、さらに奇怪な還俗ののち、若狭の孤村で乞食僧として没した。この破天荒な僧の実像に迫り、仏教の心を現代に問う水上文学の結晶。》(「BOOK」データベースより)
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