『愛惜』は山中葛子(1937 - )の2013~2021年の9年間の作をまとめた句集。
著者は「海原」同人。
天牛(かみきり)の地べたに降りて細長き
刃物みな優しくなりぬ梅雨の月
皇后の帽子かたぶくアマリリス
旅路麦秋ふり向く身体を海という
鶏頭の笑いそびれて枯れわたる
ぎらぎらの句碑にとびつく蟇の恋
創刊号今にひらけばきらら虫
青ふくべ天から噂が降りてきた
老ふたり川霧一〇〇トンどう曳くか
台風の上陸ふっと暗黒舞踏
木の葉髪あるかなきかの段差踏む
ちぢむ肉体マスクの掛かりにくい耳
人類まあ夏白花のごときマスク
さざんか掃くあかるい死体だと思う
おわらぬコロナとても鮮血若冲忌
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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