血圧は下がってきたが、よくわからない不調は続く。
今月もあまり読めず。
赤城弘『再起―自由民権・加波山事件志士原利八』(コールサック社)は版元から寄贈いただきました。記して感謝します。
唐木順三『続 あづまみちのく』中公文庫・1979年
《みちのくの地に輝ける平泉文化を開花させた清衡の謎を始め、中世の東国に生きた人々と文化の諸相を考察し、緻密な考証と史実の間に浮び出る「東国の心」をとらえた史論集。》
會津八一『渾斎随筆』中公文庫・1978年
《自作の短歌を通して、南都の風物を描きつつ、その歴史、美術、文学、言語についての蘊蓄を披瀝する珠玉十七篇。卓抜なるエッセイスト渾斎會津八一の面目を余すところなくつたえる随想集。》
會津八一『續 渾斎随筆』中公文庫・1980年
《戦後の日本文化の傾向に対する痛烈な警鐘、美術や和歌についての深い洞察、師友への細やかな感懐など、芸文の世界に至高の境地をきわめた渾斎秋艸道人の精神をつたえるエッセイ三十四篇》
城山三郎『百戦百勝―働き一両・考え五両』角川文庫・1979年
《一攫千金を夢みて、〈株〉の世界で大成功者となった者は少ない。まして、勝ち続けることは至難なことだ。
春山豆二は貧農のせがれだが、生まれついての利発さと相撲取りまがいの体格、大きな福耳から得た耳学問から、徐々に財をなしていった。米屋のしがない丁稚をしていたころ、倉庫に寝泊まりしていた。毎晩、大群のネズミの出現に辟易していたが、交番でネズミー匹二銭で買い上げてくれることを知った豆二は、せっせと捕獲、わずかながらも貯金をぶやしていった。
株世界に原則をとり入れ、あらゆる新情報から百戦百勝。“相場の神様”といわれた人物をモデルにした痛快小説。》
城山三郎『鼠―鈴木商店焼打ち事件』文春文庫・1975年
《大正七年、一介の商店から三井・三菱と並ぶ大商社に成長した鈴木商店は、米の買占めを噂され折から起った米騒動の群集の焼打ちにあった。第一次大戦による好況から戦後の不況へ、そして昭和初頭の恐慌に至る激動の時代に諸悪の根源と指弾された同店の盛衰とその大番頭・金子直吉の劇的な生涯を描く異色作。 解説・小松伸六》
山田風太郎『地の果ての獄(上)』文春文庫・1983年
《明治半ば、薩摩出身の有馬四郎助が看守として赴任した北海道月形の樺戸集治監は、12年以上の受判者ばかりを集めた、まさに悪党どもが年貢を納めるにふさわしい地の果ての牢獄であった。正義感あふれる青年看守がそこで遭遇した奇怪な事件の数々を描きつつ、薩長閥政府の功罪を抉り、北海道開拓史の一齣を見事に切り開く圧巻。》
山田風太郎『地の果ての獄(下)』文春文庫・1983年
《時の政府高官はもとより、若き日の幸田露伴、山本五十六の実兄・高野襄、与力上りのクリスチャンで監獄教誨師の原胤昭、元からす組の細谷十太夫、独休庵(ドク・ホリデイ)と称する酔っぱらい医者、加えて秩父困民党、加波山事件や静岡事件、佐賀の乱の残党たちがクロスする意外性こそ著者の明治物の大きな魅力。 解説・西義之》
内田百閒『居候匆々』旺文社文庫・1984年
《「新聞小説は私にとって初めての経験である。……毎日書いていく内に、作中の人物が勝手にあばれ出して、作者の云ふ事を聴かなくなったら困ると、今から心配してゐる。どうにも手におへなくなれば登場人物を鏖殺にして、結末をつける外はなからうと考へてゐる」
〈作者の言葉〉より
百鬼園先生唯一の新聞小説ついに百聞文庫に登場。傑作鼎談“三盃座談”を併載。》
井上ひさし『日本亭主図鑑』新潮文庫・1978年
《亭主図鑑といいながら、女性のことしか書いてないのは、詐術か奇略か謎々か……? 機知縦横の井上ひさしが、男が一生連れ添わねばならぬ女という不気味な同志へ贈る痛快痛恨のメッセージ。女性の生態について怒り心頭に発し、ありとあらゆる口舌筆法を使って、亭主の置かれている悲劇的状況を明らかにする。大笑いして読むか、神妙に自己反省するかは、読み手のあなた次第!》
瀬戸内寂聴『いのち華やぐ』講談社文庫・1989年
《今切実な時代の問題、老、病、死について考える魂のエッセイ。生きるとは何かに答は出ないが、過去を思いわずらわず、未来を取り越し苦労せず、現在を全力で生きる命の貴さと、幾歳になっても愛にめぐりあい、愛をまきちらしながら、愛に始まり愛に終る人間の営みの理想を、清らかな活気で説き語る名著。》
瀬戸内晴美『蘭を焼く』講談社文庫・1974年
《たしかな愛の誓いもなく、ただ儚さの上に立つ中年の男女の結びつきを豊饒華麗な筆致で描きつくし、現代人の孤独の深淵をのぞかせ、新しい戦慄の感動をよぶ表題作。他に「公園にて」「予兆」「ブイヨンの煮えるまで」「うちうみ」「樹の幻」など、純文学作品七編を収録。》
収録作品=蘭を焼く/公園にて/予兆/ブイヨンの煮えるまで/うちうみ/樹の幻/さざなみ/墓の見える道
ケネス・クラーク『絵画の見かた』白水社・1977年
《美の享受者クラークが西洋絵画史上の名作16点を選び、その作品の与えてくれる感覚的な喜びやその作品を生み出した画家の精神、さらには歴史的な意義などを縦横に説き明かす。著者一流の啓蒙的情熱に支えられた解説が博学な学殖と見事に一つに統一され、絵画芸術への最も信頼できる手引書。》
赤城弘『再起―自由民権・加波山事件志士原利八』コールサック社・2022年
《赤城弘氏は今まで過小評価されてきた原利八に注目し、旧士族や名主・肝煎出身ではなく、豊かではない農民出身者で妻子もありながら加波山事件に関わり、最後まで再起することの志を捨てなかった粘り強い人物像を史料から読み取っていく。そして会津・喜多方から出立し蜂起が失敗に終わり、再起を図るべく栃木、会津、喜多方、米沢、新潟、富山、金沢、逮捕された福井などの自由民権活動家たちを訪ねて、加波山事件の真相を伝えていく姿を記そうと志した。 (鈴木比佐雄・解説より)》
ホーソーン『緋文字』新潮文庫・1957年
《戒律のきびしい清教徒の町ボストンの牢獄前広場でさらし台に立たされている女があった。私生児を生み、嬰児とともに公衆の面前に恥辱の身をさらされたうえ、“姦淫”を象徴する緋色のAの字を一生衣服に付けることを言いわたされる……。自己の愛情のみに真実を見、きびしい迫害と孤独の生活に耐えるヘスタの姿を描いて、人間性の問題を象徴的に浮び上がらせた心理小説。》
田山花袋『田舎教師』角川文庫・1955年
《日露戦争時代の南関東を背景に、有為の才を抱きながら一田舎教師として若くして死んだ青年の生涯を克明に描きあげたもの。前作「蒲団」を凌ぐ秀作で、花袋はこの構想を抱いて五年、実地踏査と丹念なノートの集積により、近代文学の一金字塔であるこの作を成した。東武線羽生駅付近にモデルの墓がある。》
井上靖『楊貴妃伝』講談社文庫・1972年
《玄宗皇帝の寵愛を受け、後宮の最上位を占めた後、皇帝の妃となった楊貴妃の運命的な短い生涯を、唐代の史実の中に掘り起こしながら、女の愛の不思議さと、権力者の非情な心のからみあう人間ドラマを、絵巻物のように浮かび上らせ、壮大な叙事詩として構築した名編。》
岡田啓介/岡田貞寛編『岡田啓介回顧録』中公文庫・1987年
《同じ昭和にこんな時代があった――。二・二六事件で奇蹟的に生き残り、重臣の一人として東条内閣の退陣に尽力した元首相が、忌憚なく語る昭和政治秘史。》
草野原々『最後にして最初のアイドル』ハヤカワ文庫・2018年(星雲賞、センス・オブ・ジェンダー賞)
《“バイバイ、地球――ここでアイドル活動できて楽しかったよ。”SFコンテスト史上初の特別賞&「神狩り」以来42年ぶりにデビュー作で星雲賞を受賞し、SF史に伝説を刻んだ実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSFの表題作をはじめ、ガチャが得意なフレンズたちが宇宙創世の真理へ驀進する「エヴォリューションがーるず」、異能の声優たちが銀河を大暴れする書き下ろし声優スペースオペラ「暗黒声優」の3篇を収録する、驚天動地の草野原々1st作品集!》
SFマガジン編集部編『ゼロ年代SF傑作選』ハヤカワ文庫・2010年
《2002年のJコレクション創刊に続き、2003年のハヤカワ文庫JA内レーベル「次世代型作家のリアル・フィクション」によって、日本SFはゼロ年代の“初夏”を迎えた。秋山瑞人のSFマガジン読者賞受賞作「おれはミサイル」、冲方丁の《マルドゥック》シリーズ外伝、日本SF大賞候補作『あなたのための物語』で注目の長谷敏司による傑作短篇ほか、SFマガジン掲載のリアル・フィクションを中心に精選した、全8篇を収録》
収録作品=マルドゥック・スクランブル“104”(冲方丁)/アンジー・クレーマーにさよならを(新城カズマ)/エキストラ・ラウンド(桜坂洋)/デイドリーム、鳥のように(元長柾木)/Atmosphere(西島大介)/アリスの心臓 海猫沢めろん)/地には豊穣(長谷敏司)/おれはミサイル(秋山瑞人)
吉川英治『神変麝香猫(一)』吉川英治文庫・1975年
《「鳴門秘帖」や「剣難女難」の面白さを満喫された読者のかたに、次は何を読めば――と問われたら躊躇なく「神変麝香猫」をお奨めする。歴史の史実の一片をつまみとって一息吹きこむと、五彩あざやかに紙吹雪が舞う奇術の如く絢爛たる伝奇の舞台は、読者を魅了せずにはおかない。天草の乱後、戦勝気分にわきたつ江戸で、一創三百石――と自慢の刀傷を披露する陣佐左衛門に蠱惑の瞳をむける湯女のお林――。開巻、早くも波瀾を呼ぶ。》
吉川英治『神変麝香猫(二)』吉川英治文庫・1975年
《大正三年、「講談倶楽部」に「江の島物語」が当選した作者は、作家生活を送るにはまだ若かった。さらに十年の雌伏を経て、「キング」の「剣難女難」でスタートをきる。当時、「講談倶楽部」は大衆小説の檜舞台であった。作者が本誌に初の連載として、秘材を傾けたことは充分想像される。――本国追放となった高山右近の末姫の将軍憎悪。幕府転覆を企む梟雄正雪。これを防ごうとする智恵伊豆と小天治が三ツ巴。作者、初期の代表作である。》
山岸健『風景とはなにか―都市・人間・日常的世界』NHKブックス・1993年
《人は風景に身を寄せて生きる。風景は自然の風土の中に、そして人工的構築物としての都市と共に、歴史の重みの中で、凝縮された時間と空間の道標として人びとに記憶される。人びとの住まう場所としての都市、とくにヨーロッパ諸都市の風景を旅するなかで、“風景”と“人間”の係わりを文化社会学の視点からしなやかに描き出す、味読すべき好著。》
鈴木博之『日本の〈地霊〉』講談社現代新書・1999年
《東京、大阪、神戸、広島―都市の伝説を掘り起こし、日本近代を捉え直す新しい試み。
国会議事堂は“伊藤博文の墓”だった!?
国会議事堂のピラミッド屋根──国会議事堂の屋根のかたちは、どう考えても不思議である。ふつうあのような左右対称でクラシックな建物は、中心にドームを戴く。アメリカの国会議事堂がそうであるし、ロンドンのナショナル・ギャラリー、ローマのサン・ピエトロ大聖堂など、そうした例は枚挙にいとまがない。……しかるにわが国会議事堂の屋根は、段々になったというか、階段状のピラミッドというか、じつにユニークな形態である。もともとわが国には、公共建築は左右対称に建物の構成をまとめ、その中央に塔を上げるという伝統がある。明治以来の官庁の建築、官立学校の本館(たとえば東大の安田講堂)などを思い浮かべれば、それは即座に納得されるだろう。……もっとも、左右対称式の建築は大正時代にはいると段々古くさくなってくる。大正には対称は流行らない。……しかしなぜ、遅れてきた左右対称式が国会議事堂の意匠を支配しているのか。──本書より》
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