12月も不調続きで1冊も読めない日の方が多く、積読が減らず。
角川文庫の高木彬光作品(装幀日暮修一)が3冊手に入って、これはわりとすぐ読めた。名探偵が出てくるタイプの本格ミステリが好きなのだが(新本格はものによる)古い装幀のものはなかなか出てこない。
水上勉『越前記』中公文庫・1978年
《下剋上の怒濤は、京洛を模してその華麓を誇った朝倉三代の居館を一気に壊滅させた。国人と地侍、僧と農民が血で血を洗う争乱の世を描く「越前一乗谷」のほか「越前戦国紀行」「義貞記」を収める。》
ヤン・ファーブル『わたしは血』書肆山田・2007年
《私には小さな足と翼がある。静脈の中を走り、動脈の中を飛び回る。
不可思議な声 ヤン・ファーブル
私は外に出る。自分を解き放ち、自分を空っぽにする。
血は生のしるしであり、死のしるしである。血なしに、あるいは、血を流さずに人の生きる日は一日もない。私は自分の無力を、微かな傷跡を残すだけの蝶の力を愛する。》
エドモン・ジャベス『小冊子を腕に抱く異邦人』書肆山田・1997年
《異邦人とは何か――言葉にのみ自己の出自を認めるジャベス。人間の内奥の根源的〈異邦人〉を問う。祖国を追放され、〈顔を毟り取られた〉異邦人=詩人ジャベスが、砂漠の砂粒に似た詩語を紡ぐ。言葉の僅かな偏光作用と遥か遠方への跳躍を介して、自己を問う。》
丹羽文雄『悔いなき煩悩』集英社文庫・1977年
《裏ぎられ、傷つき、不実な男をうらみながらも、また新しい男に心魅かれ、すべてを捧げる女心の哀しさ。美貌のセールスマン駒子は、仕事の世界で成功しながら、愛にやぶれ充されぬ心を新しい男に注ぎこむ。女の人生と煩悩を描いて“女の性”を円熟の筆でうきぼりにする、現代風俗絵巻。 解説・八木 毅》
手塚治虫『ガラスの地球を救え―二十一世紀の君たちへ』知恵の森文庫・1996年
《「なんとしてでも、地球を死の惑星にはしたくない。未来に向かって、地球上のすべての生物との共存をめざし、むしろこれからが、人類のほんとうの“あけぼの”なのかもしれないとも思うのです」(本文より)
幼少の思い出から、自らのマンガ、そして未来の子供たちへの想いまで。1989年、他界した天才マンガ家・手塚治虫、最後のメッセージ。 》
川又千秋『虚空の総統兵団』中公文庫・1990年
《硫黄島沖の海上自衛隊軽空母〈ひりゅう〉を発進し、訓練空域へと向かう国産VTOL戦闘機ミツビシVF-1。雲中で突然機体に異常を感知した仁科三尉は、急遽上昇し雲の上に出た。ところが、彼の頭上には青い海面が! しかもあわてて機を反転させた仁科の背後に、尾翼の鉤十字も鮮やかな二機のメッサーシュミット戦闘機が迫る。海自最新鋭機が迷い込んだ“異界”の謎》
アンドレ・ブルトン『超現実主義とは何か』思潮社・1975年
《自動記述という画期的な方法で、未開の領域聖なる禁域に垂銛した超現実主義の鍵を解明
芸術にたずさわる者は勿論のこと、ひろくわれわれすべての人間により正確に、より深く、より豊かに、生きるための指針を与えてくれる点で、マルクスの画期的小篇『ホイエルバッハにかんするテーゼ』『共産党宣言』に匹敵するばかりでなく、ある点では遙かにより画期的なより重大な意義をになう。》
森川嘉一郎『趣都の誕生―萌える都市アキハバラ』幻冬舎・2003年
《いつの間にか街全体が巨大な「個室」になっているのを知っていますか?
東京のいま、についてのこの新しい解釈学的視点が、これまでの景観論、計画論、共同体論のすべてを無効にしてしまうだろう――磯崎新》
松井剛編/一橋大学商学部松井ゼミ15期生著『ジャパニーズハロウィンの謎 若者はなぜ渋谷だけで馬鹿騒ぎするのか?』星海社新書・2019年
《消費者行動論で解き明かす日本のハロウィン
2018年10月28日未明、ハロウィンでにぎわう東京・渋谷のセンター街で軽トラックが横転させられ4名の逮捕者が出た。酔っぱらいの喧騒や路上のごみ問題など、負のイメージで取り沙汰される渋谷ハロウィン。一方で、20年以上の歴史を誇り地域に根付いたカワサキ ハロウィンや、クールジャパンのひとつともいえるコスプレ文化と結びついた池袋ハロウィン、毎年ツイッターのトレンドを独占する地味ハロウィンといったイベントは、文化的にも経済的にもおおいに注目に値する。本書は、いつの間にか日本の年中行事となったハロウィンの現在・過去・未来を、現地レポートや関係者インタビューを通して読み解いていく。》
水上勉『良寛』中公文庫・1986年(毎日芸術賞)
《寺僧の堕落を痛罵し、妻や弟子ももたず、法も説かず、破庵に独り乞食の生涯を果てた大愚良寛。その人間味豊かな真の宗教家の実像を凄まじい気魄で描き尽くした水上文学のエッセンス。毎日芸術賞受賞作。》
石川淳『夷齋筆談』冨山房百科文庫・1978年
《数々の佳作をあらわし、和漢洋の学芸に造詣深い夷齋学人石川淳の、稀に見る珠玉のエッセイ集。「面貌について」から「仕事について」に至る九篇を収める。融通無礎にして品格高い自在な精神の運動が、散文表現の妙をつくす。(解題・安部公房)》
島田一男『銀座特信局』徳間文庫・1985年
《何百年も続く京都の老舗の化粧品メーカー『加茂紅』の娘・森下京子が雪深い越後大湯で死体となって発見された。京子は京都の有力者の娘三人と湯沢にあるホテルで待ち合わせをしていた。遺書があったことから京都の各新聞社は、小さく自殺と報道したが、新京都日報だけが他殺説を打ち出して、お馴染みの事件記者たちが犯人捜査に乗り出す。そして、事件現場で今度は男の凍死体が発見された。長篇推理。》
高木彬光『花の賭』角川文庫・1977年
《身の危険を感じ、いつも拳銃を持ち歩いていた男に一瞬の隙! やくざの組長がホテルの浴槽内で全裸のまま刺殺されていた。全身に彫られた刺青が、すでにくすんでいた。浴槽内での殺害という状態から推測して、明らかに油断をしていたらしい。加害者は女か? だが、正妻のほか三人の愛人にもアリバイはあった……。功妙に衣がえしたやくざ社会の陰湿な連続殺人事件のミステリー。人間愛豊かな検事霧島三郎の鋭い追及の手が伸びる。表題作ほか、横領罪で仮出獄した男の思いがけない誤算「六年目の決算」など、傑作推理三篇収録。》
収録作品=六年目の決算/拳銃魔/氷の炎/花の賭
高木彬光『破戒裁判』角川文庫・1974年
《殺人・死体遺棄容疑で法廷に立たされた男は、大声で叫んだ。
「裁判長! 私は無実です。天地神明に誓って断言いたします。」
だが、検事側と弁護側の激しい応酬のうちに被告の有罪は決定的なものになるかにみえた。
その時、突然、被告の口から意外な事実が……。正義に燃える弁護士百谷泉―郎のあざやかな推理の冴え!
高木彬光の法廷推理小説の決定版。》
高木彬光『誘拐』角川文庫・1973年
《――ただ勝つ。誘拐に成功する。そして、莫大な金を手に入れる。それしかおれには必要がない……。
あらゆる犯罪の中で、最も残忍で冷酷非情な無抵抗な子供の誘拐・殺人。
だが、この犯罪には、失敗せざるを得ない“決定的瞬間”がある。犯人が身代金を受け取るために、必ず姿を現わさなけれぱならないからだ。完全犯罪は不可能だろうか?
少壮弁護士、百谷泉一郎は、憎むべき犯人に思い切った奇手を打った!
息づまるサスペンスと鮮やかなドンデン返し、〈誘拐〉もの推理小説の最高傑作!》
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