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『木星は遠すぎる』は森さかえ(1949 - )の第3句集。
著者は「天籟通信」「連衆」「ロマネコンティ」同人。
美しく脚を上げれば鳥帰る
日向には死者の如きが囀りぬ
飛花落花目と目が合へばそらしけり
生前のあなたとゐれば涼しさよ
たましひのところどころに夏の雲
滅びると三べんいへば心太
うつすらと蛸の記憶にふれてみる
色つきの夢やそろそろ蛇の出て
夕顔にこの世の顔もまざりけり
あぢさゐの足音だけがのこりけり
木星は遠くて冬がきてしまふ
月光のとどかぬ部屋に眠りをり
秋遍路ときどきまじる鳥人間
ああなんと大きな耳の枯野かな
愛人のメタファーとしてせみくじら
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
『光の靴』は大木雪香(1973 - )の第1句集。序文:渡辺誠一郎。
著者は「海光」編集長、「青垣」「埋み火の会」会員。
薫風やテトラポッドの半乾き
玄関に薔薇活け家庭訪問日
風鈴のやうな音してアイスティ
睡蓮のどれもが空に似合ふ色
足跡のそこだけ深き清水かな
蝉時雨赤信号の長さかな
火の向う側の片恋キャンプの夜
対岸の芒から揺れ始めけり
朝顔の種に整列させて暇
金風や嬰児抱きしまま足湯
遠くより見つけ始める烏瓜
そこだけを狂はせてをり芋嵐
おとなしい子がよく笑ふクリスマス
建て増しに次ぐ建て増しの湯ざめかな
長閑さの範疇で海荒れにけり
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
『ヒヤシンス』は杉原青二(1931 - )の第1句集。序文:中村猛虎、跋文:林誠司。
著者は句会「亞流里」、句会「ブラン」会員。
理科室の光歪めるヒヤシンス
F1のスリップ痕や夏に入る
湯たんぽの水捨つるとき水を見る
レコードに針の吸ひつく春の夜
朧夜やをばたちが嚙む祖母の骨
紙風船父が破つてしまひけり
白玉や舞妓の口のおそろしき
膨れゆく藪蚊の腹を観てをりぬ
飛び込みのありしホームのカンナかな
風光る受胎告知の指の先
寝つかれぬ夜のプールの光かな
喧嘩独楽だれか私を止めてくれ
湖の底は明るし夏蒲団
下駄箱の奥の静謐忘年会
分厚さがうれしき夏の時刻表
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
『麦藁帽』は大崎紀夫(1940 - )の第11句集。
著者は「やぶれ傘」主宰、「棒」同人。
冴ゆる夜の水脈を引きゆくヌートリア
チヴィッタ・ディ・バニョレージョ 二句 より
首振つてラバ立ちあがる春の午後
春の蠅そばにボルヘス『伝奇集』
自転車を止めてバナナを食つてゐる
灼けてゐる磧へ舟の渡し板
提灯に雨降つてゐる盆やぐら
栗の毬ばかりの道をしばらくは
菊を焚くけむりが道に出てきたる
牡丹見る午前一時の窓開けて
釣り宿の魚拓に蠅がとまりゐる
うみうしを棒でつついてゐる炎暑
鶏頭のふたつみつつに触れにけり
棒きれが立つて流れてゆく残暑
ゆく秋の市電のパンタグラフに火
月あかり届くところにゐる海鼠
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
『起き臥し』は浦戸和こ(1937 - )の第1句集。序文:水内慶太。
著者は「月の匣」同人。
ヴェネツィア 二句 より
ゴンドラの螺鈿夏日を囃したる
ブルーモスク
回青の文字うららけき柩あり
黄昏の鎖骨なでゆく山の霧
かまくらに菜の花色の燭零す
家族とふ歪な器冬北斗
ニコライの鐘に適ひし初御空
おのおのの山河ありけり雑煮椀
鬼灯や琉球ガラス泡かかへ
骨切りの音に旅愁や牡丹鱧
縒り甘き糸の七色春の雨
路地裏といふ虫の世に迷ひ込む
橋にゐて遠き橋見る秋の暮
はてのなき自問自答や水母群る
彫り深き龍を楯とし冬の寺
夏の蝶会話に割つて入り来る
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
『赤い金魚』は茅根知子(1957 - )の第2句集。解説:仁平勝。
著者は「絵空」同人。
はるばると来てたんぽぽの時間かな
朧夜の部屋いつぱいに鳥の羽根
月涼しヘアピンカーブ曲がるとき
珈琲に水面のあり今朝の秋
少年のひとりがやがて虫売に
夏服の転校生がやつて来る
眩しさの中に避暑地を置いてくる
長き夜の星が小さくなつてゆく
掃苔や老舗の餡の話など
裏窓を猫が出て行くクリスマス
カナリアを埋めたところにチューリップ
どこからも遠くに見ゆる熱帯魚
新しき水の金魚の息づかひ
凩に透明になる子どもたち
金星のあたりに枯れてゐる欅
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
『片瀬』は菅美緒(1935 - )の第4句集。
著者は「晨」「梓」「航」同人。
榠樝の香立つ旅鞄開けるたび
脊柱管狭窄症手術
昼寝覚病室といふ白き箱
秋の蛇尺八の音のどこよりか
鶏頭や温気(うんき)動かぬきのふけふ
春一番アラビア文字の貨物船
研ぎたての刃先を入るる西瓜かな
雪しまき椀に漆を塗り重ね
手を合はすマリアに乳房秋高し
梅探りゐて元禄の仏たち
春の日や黄金の鯉に白きひれ
昼顔の五つ六つ浮く小笹かな
しんと残暑乾きし物をたたみゐて
突風のあとはさらりと薄の穂
水族館の裏は海原赤とんぼ
煤払ふボードレールも西行も
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
さして忙しかったわけでもなかったはずだが今月もあまり読めずじまい。
角川文庫の西村寿行はジーンズ柄の地の装幀のものが欲しいのだが『安楽死』はたまたまそれ以前の旧装幀版が出てきて買ってしまった。
講談社文庫の司馬遼太郎、『戦雲の夢』の方は幼少時の記憶にある柄だが、『播磨灘物語』全4巻の方はこんなのだったかなという感じ。
連城三紀彦『青き犠牲』文春文庫・1989年
《杉原完三は高名な彫刻家。その完三が、内側からしか開かないドアのついたアトリエで死んでいた。容疑は高校三年生の息子鉄男に。『ギリシャ悲劇集』を愛読する彼は、父を殺し母を犯したオイディプス王の轍を踏んだのか。それにしても、その美貌の母沙衣子の微笑は何を意味するのか。著者会心の長篇推理。 解説・香山二三郎》
安部公房『壁』新潮文庫・1969年(芥川賞・戦後文学賞)
《ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして……。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。》
アントニオ・G・イトゥルベ『アウシュヴィッツの図書係』集英社・2016年
《1944年、アウシュヴィッツ強制収容所に作られた秘密の図書館。本の所持が禁じられているなか、図書係をつとめる十四歳のユダヤ人少女ディタは、命がけで本を隠し持つ。実話に基づいた感涙必至の大作!》
五味康祐『柳生十兵衛八番勝負』徳間文庫・1988年
《父宗矩と共に三代将軍家光に仕えた十兵衛は二十歳で隠密となり、江戸を去った。
数年後、「梟」と名乗る謎の忍者集団を追って甲斐から駿河の山中を探索する十兵衛を待っていたのは、奥村黒法師を首領とする女忍者の集団であった。
黒装束に黒髪をなびかせ、次々に躍りかかる女忍者たち。そして死闘を演ずる十兵衛の前に、絢爛の装いの美女が立ちはだかった(表題作)。他、力作時代小説5篇。》
収録作品=柳生十兵衛八番勝負/好色ひざ枕/夕映え剣士/月の舞/手裏剣お艶/難波一刀斎自殺す
司馬遼太郎『戦雲の夢』講談社文庫・1984年
《土佐二十二万石の大領を率いる長曾我部盛親は、関ケ原の戦いに敗れ、一介の牢人の身に落ちた。恥多い謫居の中で、戦陣への野望を秘かに育くみ、再起を賭けて、遺臣たちと共に大阪夏ノ陣に立ち上ったが……。大きな器量を持ちながら、乱世の動きにとり残された悲運の武将を、鮮やかに描き出した長編小説。》
皆川博子『薔薇忌』実業之日本社文庫・2014年(柴田錬三郎賞)
《舞台に秘められた男女の謎――妖しく華やかな幻想ミステリー
降りしきる薔薇の花びらに埋もれて死ぬことを夢見た劇団員(「薔薇忌」)、濃密な淫夢に日常を侵される歌舞伎小道具屋の娘(「紅地獄」)、スター歌手の再起に賭ける芸能プロデューサー(「化鳥」)……舞台芸能に生きる男女が織りなす世界を、幻想的な筆致で描いた珠玉の短編集。著者の独創性を世に知らしめた柴田錬三郎賞受賞作。新たに書き下ろした「あとがき」を収録。 解説/千街晶之》
収録作品=薔薇忌/禱鬼/紅地獄/桔梗合戦/化粧坂/化鳥/翡翠忌
中勘助『銀の匙』岩波文庫・1999年
《なかなか開かなかった茶箪笥の抽匣(ひきだし)からみつけた銀の匙。伯母さんの無限の愛情に包まれて過ごした少年時代の思い出を、中勘助(1885-1965)が自伝風に綴ったこの作品には、子ども自身の感情世界が素直に描き出されている。(解説=和辻哲郎)改版。》
小松左京『明烏 落語小説傑作集』集英社文庫・2009年
《大学生になった甥の堅さを心配した叔父が、昔なじみの女将に……。初心な若旦那が騙されて吉原へという落語を現代の艶笑譚に昇華した『明烏』。「天神山」と「立ち切れ」を芸能の本質に迫る人情譚に仕立てた『天神山縁糸苧環』。他、「三十石夢の通路」「反魂香」など有名落語を、奥深い芸道と色恋の艶を加えて、粋で鮮やかな世界に完成させた珠玉の作品集。全四編。》
収録作品=明烏/天神山縁糸苧環/乗合船夢幻通路/反魂鏡/対談 桂米朝・小松左京
西村寿行『安楽死』角川文庫・1975年
《ある日突然、警視庁にかかってきた謎の電話。それは、石廊崎で起きた女性ダイバーの溺死は事故ではなく、殺人事件であると告げた。
この情報を基に、捜査本部は大病院の看護婦であった彼女の死の調査を開始。まもなく病院内部にうごめく不気味な殺意と欲望の渦をつきとめた。だがその時、特命を受けた警視庁異色敏腕刑事、鳴海には、捜査妨害の強大な圧力がふりかかって……。
人間の生死の問題と、男のロマンを、ダイナミックに描く、著者会心の長編推理。》
松本清張『私説・日本合戦譚』文春文庫・1977年
《悲惨をともなうが、しかし、戦争ほど面白いドラマはない。指揮官の駆引き、決断。将兵の立場と心理。それに加えて、運不運のハプニング。この本は、日本の国内戦争から「長篠合戦」「姉川の戦」「山崎の戦」「川中島の戦」「厳島の戦」「九州征伐」「島原の役」「関ヶ原の戦」「西南戦争」の9合戦を選んでそのドラマを解明した読物である。》
親鸞/金子大栄校訂『教行信証』岩波文庫・1957年
《親鸞(1173‐1262)は煩悩に苦しみつづけた末、ついに人生の大悟に徹した。この書は、彼が自己の体験を生かして仏法を説き、それへの入門を明らかにしたもので、真宗の根本聖典である。本文は誰でも親しめるかなまじり文であるが、各巻の始めに梗概をおき、また専門用語に説明を付すなど、読みやすさに意をもちいた。 》
猿谷要『ニューヨーク―世界の都市の物語』文春文庫・1999年
《ミュージカル、映画、音楽、交通渋滞、超高層ビル、犯罪…都市のもつダイナミックでエキサイティングな要素をすべて包含する街ニューヨーク。最初のヨーロッパ人が到達して約470年。以来、移民を受入れ、独立宣言を経て「世界の中心」となるまで、初めて日本語で書かれたNYの歴史パノラマ。憧れのビッグアップル自由自在!》
アーシュラ・K・ル=グイン『天のろくろ』サンリオSF文庫・1979年
《オアが精神医ヘイバー博士の前に現われたのは治療のためだった。現実とは違う夢を見ると、その通りに現実が改変されてしまう。そして、その場にいた者以外の全ての人の記憶をも遡って作り変えてしまう。とオアは話し始めた。途方もない話だったが、博士は研究したい種類の眠りが自由に得られる増幅機を使って、それが本当であることを確認した。次第に博士は、治療はさておいて、この夢の力を世界を改善する武器に利用しようと考えるようになった。オアは博士の暗示によって、人口過剰が現代文明と全地球の生態系を脅かしていることに悩み、疫病によって高く積み上げられ、葬られた死体の山を夢に見た。オアが目覚めると診療室の窓からは塔の群れが夢のように薄れ、痕跡もなく消え失せるのが見えた。それまで人口過剰の地球上には食料も充分にない70億の人々がいたが、汚染癌によって10年前から60億の人々が死滅していたという記憶に作り変えられていったのだが…》
スタニスワフ・レム『天の声』サンリオSF文庫・1982年
《偶然、ある星からメッセージが届く。ニュートリノによって送られたこの信号には、明らかにある規則性が認められた。さっそく、これを解読するため天の声計画が進められることになった。それにしても、はるかなる宇宙からの天の声には、どんな意味があるのか? 発信者は? どこから発せられたのか?
その信号のわずかの部分からコロイド状の蛙の卵と蠅の王がつくれる情報は得たものの、宇宙進化論、数学、情報工学、物理学とあらゆる先端科学を駆使しても杳として不明のまま、事実は判明するどころか、憶測と憶測の重った森に迷うばかりであった。まるで中世の錬全術師たちの活躍さながらに、名声を狙うペテン師たちと疑心暗鬼に狂う政治家たちの猿芝居のような答えのない不気味なミステリーはつづくが、主人公の数学者ホガースが言うように、地球外からのメッセージは解読しうるという認蔵上の普遍主義という神話は頑として崩れる気配さえない。》
眉村卓『カルタゴの運命』新人物往来社・1998年
《歴史SFの金字塔! ぼく。松田裕。三十一歳。フリーター。アルバイト誌の変な求人広告に惹かれて応募したぼくは、好奇心にかられて、その人間文化研究所なるところへ出掛けて行った。合格したぼくに、その研究所の川崎一郎と堀ナツエの二人が告げたのは、これからある“ゲーム”に参加するのであり、正規メンバーの自分たちのほかに、チーム員として手助けしてくれる人間を求めていたのだ、ということであった。補助員となったぼくが時間航行して仕事をするのは、紀元前のポエニ戦争当時のカルタゴだという。そして最終的には、紀元前197年のカルタゴの勇将ハンニバル暗殺を阻止する、という計画だった。ぼくともう一人の補助員飯島隆男は、ドイン・ドマングッテ(川崎一郎)とエンノン・シャピスナー(堀ナツエ)とともに、第一次ポエニ戦争開戦三年めの紀元前261年のカルタゴに飛んだ…。カルタゴと勇将ハンニバルの生涯を雄大なスケールで描く話題作! SFの新たな地平を拓く著者会心の力作巨篇。》
中嶋彰/KEK(高エネルギー加速器研究機構)協力『現代素粒子物語』ブルーバックス・2012年
《物質に質量を与えるという「ヒッグス粒子」宇宙全体に広がる謎の「暗黒物質」――CERNの超大型加速器LHCを舞台に“世紀の捕り物劇”が開幕した。果たして理論が予言する粒子は見つかるのか? 素粒子物理学の最前線をやさしく語る。素粒子理論と超大型加速器が紡ぎだす「予言」と「発見」の物語。》
久我有加『君と狸と幸せごはん』角川ルビー文庫・2020年
《定食屋を営んでいた亡き祖父の影響で料理好きな大学生・結希の許に、ある日突然、人の言葉を話す狸が現れる。神獣だというその狸は「ある人」のために祖父から受け継いだ「だし巻」を作って欲しいと懇願する。しぶしぶ狸に付いて高級ホテルへ向かうと、そこで待っていたのは有名ピアニストの円城泉水。とある事情でピアノが弾けなくなった彼に復活するきっかけを与えるため、思い出の祖父の味を食べさせてほしいという。なりゆきで彼の食事係を担うことになった結希だが……!?》
上原善広『日本の路地を旅する』文春文庫・2012年(大宅壮一ノンフィクション賞)
《中上健次はそこを「路地」と呼んだ。「路地」とは被差別部落のことである。自らの出身地である大阪・更池を出発点に、日本の「路地」を訪ね歩くその旅は、いつしか、少女に対して恥ずべき犯罪を犯して沖縄に流れていった実兄との幼き日の切ない思い出を確認する旅に。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。》
ジャンナ ・レヴィン『重力波は歌う―アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』ハヤカワ文庫・2017年
《物体が運動したときに生じる時空のゆがみが光速で波のように伝わる現象「重力波」。100年前にアインシュタインが存在を予言しながら、これまで観測されていなかったこの波動を、米国の研究チームがついにとらえた。ノーベル物理学賞を受賞した歴史的偉業の裏には、どんなドラマがあったのか? 天文学の新地平を切り拓く挑戦の全貌を関係者への直接取材をもとに描き出す、出色のサイエンス・ドキュメンタリー。解説/川村静児》
司馬遼太郎『播磨灘物語(一)』講談社文庫・1978年
《黒田官兵衛、この戦国末期が生んだ商人的思考の持主。それは既に彼の家系に根づく。官兵衛二十二歳、播州御着城にて一番家老。洗礼名シメオン。のち、如水。本巻は入念に官兵衛の人となりをたどり、播州の小天地で、広大な世界に想いをはせていた一紳士が、愈々織田信長の岐阜へ旅立つあたり迄に関って進む。》
司馬遼太郎『播磨灘物語(二)』講談社文庫・1978年
《天正六年、秀吉は再び播州へ。対毛利の軍議を加古川に練る。説きまわる黒田官兵衛。恰も中国の縦横家に似る遊説家は日本戦国期に彼一人といえる。本巻には、竹中半兵衛、登場。官兵衛とはじめて会う。荒木村重の信長への謀叛は官兵衛を怖れさせる。主家、御着城の小寺氏が村重になびくのではないか、と。》
司馬遼太郎『播磨灘物語(三)』講談社文庫・1978年
《黒田官兵衛は主家からの難題――荒木村重を翻心させられれば織田信長に従う――を抱き、伊丹を訪ね、囚われる。一方信長は官兵衛が裏切ったと錯覚、子松寿丸を殺せという。竹中半兵衛の真情は松寿を救うが、官兵衛生が牢を出た時は半兵衛、既に病死。牢を出てからの官兵衛は身も心も変る……。》
司馬遼太郎『播磨灘物語(四)』講談社文庫・1978年
《信長の死。官兵衛は恵瓊との講和を急ぐ。いよいよ「中国大返し」。秀吉の成功は益軒によれば官兵衛の作戦を採用した故。のち、官兵衛は豊臣政権の新官僚石田三成らに失望する。世から隠れたい――と秀吉に言う。更に五年後、入道して、如水。子、長政。秀次に自評して、臣ハソレ中才ノミ、と。》
竹内均『アトランティスの発見』徳間文庫・1991年
《約一万年前、突然地震と津波に襲われて海底に没してしまったといわれるアトランティス。高度な古代文明を築いたアトランティスの消失は“失われた文明”の一つとして依然、謎に包まれている。地球物理学者、竹内均は従来の歴史学、考古学的アプローチとは別の立場から、“失われた文明”があった位置を推測する。その地はクレタ島およびサントリン島を含むエーゲ海地域であった! 実証的かつ果敢な論考。》
投稿情報: 08:43 カテゴリー: このひと月くらいに読んだ本の書影 | 個別ページ | コメント (0)
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