恒例の冬季鬱で何も読めなくなってきた。
ブックオフでジェイン・ヨーレン他のファンタジーがまとまって出てきたのを装幀が懐かしいので買い込み、やはりファンタジーは個人的には合わないなと再確認しつつ消化中。
一之瀬六樹『男子高校生のハレルヤ!』は何年か前の「まんがらんど」閉店セールのときに1巻だけ手に入れて、最近読んだら面白かったので4巻まで読んだ。話は一段落ついているのだが5巻の予告が出たまま7年間音沙汰なしとなってしまっていた。
井口時男『大洪水の後で―現代文学30年』、松林尚志『詩集 初時雨』、高橋睦郎『深きより―二十七の聲』、中島進『評論集 考察Ⅰ』、森本孝徳『暮しの降霊』、小津夜景『漢詩の手帳 いつかたこぶねになる日』は著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
小津夜景『漢詩の手帳 いつかたこぶねになる日』については刊行記念オンラインイベント「本の作り手と読む読書会 ~漢詩の〈型〉を旅する夜~」が12月5日に開催される。昨日チケットを取ったがまだ空きがある模様。
井口時男『大洪水の後で―現代文学30年』深夜叢書社・2019年
《状況という磁場から
俺に食ひけがあるならば、
まづ石くれか土くれか ――ランボオ
存在論的な飢えと形而上学的な夢を彫塑した、現代の〈深夜版〉的証言(齋藤愼爾)。
ポスト・モダンの浮力に抗して、ぶれず、媚びず、群れず――貫く批評精神。》
クリスタ・ヴォルフ『引き裂かれた空』集英社文庫・1977年
《なにが恋の歓びを苦悩と絶望に変えていったのか? 国のなかを国境線が走り、厚い壁に引き裂かれた国ドイツ――。自由を求め、西ベルリンヘ去った愛しい人を追慕するリータ。社会主義体制の中に生きる女性の心を鮮やかに浮き彫りにし、未来への希望を与え東ドイツ最高の「国民文学賞」に輝いた空前のベストセラー。》
小林信彦『唐獅子源氏物語』新潮文庫・1986年
《何という帝の御代でございましたでしょうか、日本各地に数多の親分衆が割拠している中に、ひときわ時めいている方がおられました――平安の昔から、日本人の心に共感を刻みこんできた『源氏物語』。 80年代の極道のイメージを求めて、軽薄に流行を追いつづけてきた〈わしらが大親分〉須磨義輝が光源氏に、またグルメ・ブームに過激に感情移入した! ギャグがギャグを呼ぶ連作。》
収録作品=唐獅子選手争奪/唐獅子渋味闘争/唐獅子異人対策/唐獅子電撃隊員/唐獅子源氏物語/唐獅子紐育俗物/唐獅子料理革命
小林信彦『紳士同盟ふたたび』新潮文庫・1986年
《あのコン・ゲーム集団〈紳士同盟〉が帰ってきた! 暴力や殺人で金を奪おうとするのは、もう古い。今の世の中、頭脳こそ、腕力や凶器以上の武器なのだ。被害者に被害にあっていると思わせない機智と品格を備えた犯罪、それがコン・ゲームだ。今度の目標は二億三千万円、東京・NYを股にかけ、大胆かつ緻密なトリックをしかけるが……。スマートでユーモラスなコン・ゲーム小説。》
小林信彦『世界の喜劇人』新潮文庫・1983年
《チャップリン、キートン、ロイド、マルクス兄弟、アボット=コステロ、ダニー・ケイ、マーティン=ルイス、ボブ・ホープ、ウディ・アレン……。有名無名のコメディアンたちの目を疑うような恐るべきギャグ、笑い死ぬほどのナンセンスの数々。著者自らが体験した笑いの感覚に基づいて、コメディアンたちの姿を生き生きと再現する刺激的な二十世紀の喜劇映画史。写真版多数収録。》
ル・クレジオ『戦争』新潮社・1972年
《言語の奔放な飛翔と放射で、文明の深淵と沈黙を抉る、鋭くユニークな告発の文学!
戦争が始まった。戦争は、頭の裏側に口を開き、囁きかける。数々の犯罪と罵りとの戦争、眼差の狂熱、脳髄の炸裂。戦争はそこにいる。夜の夢の中にいる。戦争は悪だ! “詩とSF”との緊密な結合によって提示された、現代社会の壊滅の姿!》
松林尚志『詩集 初時雨』砂子屋書房・2020年
《著者最新詩集。
詩誌『方舟』を代表する詩人にして詩論家でもあった松林尚志氏は、平成の始まりと同時に俳句に舵を切り、俳誌『木魂』を主宰して精緻な古典文学論を展開してきた。文壇碁会の名手としても知られる。本書はその稀代の文人がふたたび詩の原点をめざす新しい船出といっていいだろう。(郷原宏・本書「帯文」より)》
高橋睦郎『深きより―二十七の聲』思潮社・2020年
《伝統という冥界下り
千年 千數百年 久しく忘れられてゐた私の名を呼ぶのは
幾層にも振り重なつた時間の堆積の底 隙閒なく きしきしと
泥の詰まつた鼓膜を打つて 私の眠りを覺ますのは 誰?
(「深きより」)
現代の詩人にとって冥界とはひたすら伝統のことではないか――。稗田阿礼、額田王から、蕪村、河竹黙阿弥まで、古代から近世にいたる先人の霊をして、その詩心を語らしめる。日本語詩歌との長い歳月を結実させた、空前絶後の試み。「現代詩手帖」好評連載を集成。〈三島由紀夫〉との交信・対話を付す。装幀=原研哉+梶原恵》
森本孝徳『暮しの降霊』思潮社・2020年
《Poltergeists of Our Life
きみは咲う。親はいま骨離れが悪いと。指が戦ぐのはそのせいでなく、ぼくも囮の信条に背いて意味もなく笑うことがある。
(「豚の首」)
文反故による貼雑ぜ自伝。骨のない幽霊。角材で閂をして眠る姉妹。でこっぱちの毛虫――。人から遠く離れた場所で、人との共棲をもはや無用とした言葉同士は、どうして人の想い出を騙りえるだろうか。『零余子回報』から5年を懸けて設えられた、現代詩の巣穴。装幀=水戸部功》
荒巻義雄『超弦回廊 アトランティス大戦1』C・NOVELS・2003年
《ナイル河畔に偉容を誇る巨大四角錐体(ピラミッド)――歴代王朝の悲願がついに完成した。夜明けの光が差し込んだ瞬間、巨石構造物が鳴動。青年王クフの眼前で〈折り畳まれた時空〉への門が開いた! クフの魂鴫は遥か6000年の時を遡り、伝説の帝国アトランティスヘと転生。戦士クフの名を受け、帝国辺境の小国の王女ネフリティースに仕える身となった。だがこのとき、世界には不穏な戦火の兆しが……。動乱の超古代帝国に降臨した若き戦士の闘いが始まる!!
渾身の新シリーズ、堂々開幕!》
荒巻義雄『超弦回廊 アトランティス大戦2』C・NOVELS・2003年
《アトランティス帝国の首都が異形の空中戦艦に襲撃された。東方の大国タマラハムが領土割譲を迫り、霊力駆動要塞寺院〈ヴィマーナ〉による武力示威を行ったのだ。さらに陸上兵力も侵攻を開始。帝国東端の砦市ノアは敵の重包囲に晒されていた。絶望的な篭城戦を続けるノア司令官ゲラノス皇子を救うため、王女ネフリティースは時空転生人クフラティオンを伴い出撃。タマラハムの誇る〈人面獅子〉戦車の猛攻をかいくぐり、ノア城内へと潜入するが……風雲急を告げる超古代大戦の帰趨は!?》
荒巻義雄『超弦回廊 アトランティス大戦3』C・NOVELS・2003年
《王女ネフリティースの助力を得て砦市ノアを守り抜いたアトランティス帝国皇子ゲラノスは、自ら軍団を率いて反攻に転じた。だが、攻勢衰えぬ呪術帝国タマラハムは、ゲラノス本営を呪詛砂嵐で包み、機獣兵団による夜襲攻撃に出た。幻術に操られ死をも恐れぬ狂戦士たち! この窮地を救うべく、ネフリティースは、魔力を持つという伝説の巨人族の援けを求め、砂漠へと向かうが……。果たしてタマラハム皇帝の野望を砕けるのか!? 超古代帝国、激突!!》
北大路魯山人『春夏秋冬 料理王国』中公文庫・2010年
《料理は芸術である。味だけではなく美の追及にこだわった魯山人の料理哲学は、素材へのこだわり、食器の審美眼から家庭料理の見直しや残肴への慈しみまで幅広く、美味道楽七十年に裏付けされた珠玉の言葉は永劫に響く。諸侯の美食談義批判や痛快な世界食べ歩きをも収録。魯山人が自ら手掛けた唯一の論考を初文庫化。 〈解説〉黒岩比佐子》
寺田寅彦『柿の種』岩波文庫・1996年
《日常の中の不思議を研究した物理学者で随筆の名手としても知られる寺田寅彦の短文集。「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」という願いのこめられた、味わいの深い一七六篇。(解説=池内 了)》
内田百閒『阿呆の鳥飼』中公文庫・2016年
《「小鳥に夢中になっている間の面白さは、小鳥を飼った事のない者には迚も解りません」(表題作)。鴬の鳴き方が悪いと気に病み、衝動買いした訓狐のために眠れない夜を過ごす。漱石山房に文鳥を連れて行く……『ノラや』の著者が小動物たちとの暮らしを綴る掌篇集。〈解説〉角田光代》
嵩夜あや『彼女とカノジョの事情―憧れの乙女は男の子!?』美少女文庫・2016年
《「紘子さんって、男の子だったの!」憧れの美少女の正体は――女装少年!引っこみ思案な美夜と元気いっぱいなエルは真実を知ってなお、恋心は消えなくて……勇気をくれたアナタがやっぱり好き! 露出デート、ご奉仕競争、前も後ろも二人で処女を捧ぐ初夜3P。彼女×カノジョの学園恋愛ハーレム!》
緒莉『恋騎士Purely☆Kiss―エルシアの誓い』ぷちぱら文庫・2012年
《騎士育成の専門校に入学した要。試験的な騎士団であるエスクワイアへの配属が決まったのだが、そこは自分以外は全員女の子…という環境だった。少女たちと一つ屋根の下で生活することになった要は、ハプニングがありつつも、親睦を深めていく。そんなある日、エルシアと初めての巡回に出た際に不審者を発見、捕縛した。そのことが、後の大事件につながっていて…。》
アーサー・C・クラーク『地球光』ハヤカワ文庫・1978年
《人類が宇宙へ進出して以来多くの年月が流れ、夢と冒険の時代はすでに過ぎ去っていた。かつて地球を飛び立った人類の子孫である惑星連合と地球政府は、重金属の輸出問題をめぐって対立し、いまや一触即発の危機にあった! しかもこの時、月基地から重要な科学情報のすべてが惑星連合へと流されるという事態が発生した。地球政府は、この人類同士の惑星間戦争を阻止すべく、秘密情報部員サドラーをスパイの潜む月基地の天文台へと単身潜入させたが……該博な科学知識を用いて緻密に描かれた月世界を舞台に、宇宙開発史における迫真のサスペンス・ドラマがここに展開する!》
一之瀬六樹『男子高校生のハレルヤ!2』GA文庫・2013年
《「真理くん! マカロンをどうぞっ」
「痺れ薬入りは刺激的すぎだろ!?」
愛の波動に覚醒めた桜の熱烈アタックから逃げる僕こと山田真理(15)♂はなぜか今も女子校に通学中!
ところが謎の怪文書が僕や桜や佑紀、同じ秘密をもつ三人を脅かす。『私の前では誰も秘密は持てない』
そんな言葉とともに現れた手紙の主――中等部の後輩・蕾花ちゃん。 どんな嘘をも見抜けるという彼女には、僕らの性別だってお見通し!?
でもその無口な横顔にこそ、僕たち以上のヒミツが隠されていて――。
孤独な悩みを抱えた後輩を救うべく、 女の子より美少女で男の子よりもかっこいい、男子(バカ)三匹が大活躍!
ノンストップ女子校潜入第2弾♪ 》
一之瀬六樹『男子高校生のハレルヤ!3』GA文庫・2013年
《ワケも分からずやってきたのはコバルトブルーの海が広がる無人島!?
そこは有栖川先輩のプログラムと古代の秘宝が合わさって実現した、世界唯一の実体化ゲーム空間だった。「報酬は十億円だぜ。少ねぇか?」
つまりクリアすれば男女共学も夢じゃない!? それに、ここでなら僕だって勇者になれるかも!!
だけどピンチは思わぬところに。「さぁ、泳ぐわよ!脱ぎましょ?」
北見さんの前で水着になるの!?
さらに僕だけに呼びかける謎の声。――我と同化せよ。神の力をやろう。ってそういうのは祐紀にやってよ!!
島の伝説と古き『管理人』の願いが導く、僕たちの特別なステージ。ハイテンションにゲームスタート!!》
一之瀬六樹『男子高校生のハレルヤ!4』GA文庫・2013年
《雨宮ソラ先輩、突然の帰国――!? 「私ね、真理の体液が欲しいの!」
一緒にお風呂&お泊りコースは当たり前!? 過激なアプローチを連発する先輩に、僕の理性は爆発寸前!
一方、女学院では正体不明の変質者〝変態男子〟の噂でもちきりだし、ようやく実現しそうだった男女共学化にも暗雲が垂れこみはじめて……。
先輩の帰国と学院の変質者。それらが一つに繋がる時、共学化を中止に追いこむ陰謀が顔を出す。だが、「諦めません。男女共学化は、わたし一人でも実現させてみせます」
桜の涙が、封印されし決闘「超・文化的バトルマッチ」を解き放つ!!
白きツメエリをめぐる男子のバカ騒ぎ、決着なるか!? な第4弾!!》
山下洋輔『猫返し神社』徳間文庫・2017年
《あるときは絶世の美女に見え、思わず愛撫すれば逃げ、逃げてはまた流し目で艶然と誘いをかける。とかくままならぬ猫たち! 行方不明の放浪猫を探しあぐね、近くの神社にお参りしたら、翌日戻ってきた! それが評判となり、ついに「猫返し神社」として猫好きのあいだに名を馳せたのが、立川の阿豆佐味天(あずさみてん)神社。そのいきさつをはじめ、ジャズ界の巨匠が翻弄される面白すぎる猫エピソードを写真満載でお届けします。》
ジェイン・ヨーレン『夢織り女』ハヤカワ文庫・1985年
《「1ペニーだよ、お客さん。夢をひとつ織って、ほんの1ペニー」老いた盲目の夢織り女が、通りがかる人々に呼びかける。老若男女、貧富の差を問わず誰であれ1ペニー払えば、夢織り女は夢を紡いでくれる。だが、いったいこの老婆はどんな夢を語るというのか……客の心の奥に潜む不可思議なものに応じて織られる夢の数々を描く表題作の短篇集他、伝統的な妖精物語や民話の形式を蘇らせて、素朴な語り口で人間の原初的な心の世界を綴る『月のリボン』と『百番目の鳩』の両短篇集も併せて収録。20世紀のアンデルセンと謳われるヨーレンの妖精物語》
ジェイン・ヨーレン『水晶の涙』ハヤカワ文庫・1983年
《人魚のメルーシナは海面高くとびあがると、一回転し、再び海中深く姿を消しました。けれど、彼女は落下の途中で少女に見られてしまったのです。これは最悪の失敗。なぜなら、人間にはけっして姿を見られてはならないというのが人魚の掟、これを破る者には恐ろしい古魔術の刑が待ち受けているのです。今や彼女も掟破りの罰を受けねばならぬ身――人間の姿に変えられ、平安と至福に満ちた人魚の世界から追放されねばならないのです! 可憐な乙女に変身させられた人魚と孤独な少女との心暖まる交流を、抒情派ファンタジイの旗手が流麗に綴る。》
ジェイン・ヨーレン『三つの魔法』ハヤカワ文庫・1985年
《息を飲むまもなく、シアンナは大波にさらわれて冲へ運ばれた。誰もが彼女の溺死を信じて疑わなかっか。ところがシアンナは、溺れるどころか海の魔女に助けられ、おまけに魔法まで教えてもらえる幸運にあずかっていた。実は、この魔女、シアンナの上着にある三つのボタンに魔法の力があることに気づいていたのだ。魔法の講義と称し、ホタンを我がものにしようと画策する海の魔女。そんな奸計が功を奏し、海の魔女はシアンナから魔法のボタンをひとつ手に入れるのだが……。現代のアンデルセンと謳われるヨーレンがリリカルに語る傑作長篇!》
ノースロップ・フライ『シェイクスピア喜劇とロマンスの発展』三修社・1987年
《従来の批評、つまり模倣論的批評態度をとる批評家にとって、シェイクスピアの晩年の劇はまったく不可解であった。非現実的設定、架空の人物や怪物の登場、主人公の不合理な変心、これらは、文学作品を人生の模倣とみる彼らにはことごとく失敗の証拠と見えた。かくして、ロマンスや晩年の喜劇は「シェイクスピアの想像力の枯渇」といった否定的視点から考察されるのが常であった。ところが、フライはこれとは正反対に、ロマンスや喜劇こそシェィクスピアのたどりついた芸術的境地であると主張する。》(「訳者あとがき」より)
カート・ヴォネガット『スラップスティック』ハヤカワ文庫・1983年
《ある日突然どういうわけか地球の重力が強くなり、そこへまた緑死病なる奇病まで現われ出でて世界は無秩序、大混乱! アメリカ合衆国もいまや群雄割拠の観を呈し、ミシガン国王やオクラホマ公爵が勝手放題にいばり返っている始末。そしてジャングルと化したマンハッタンのエンパイア・ステート・ビルの廃墟では、史上最後にして最も長身の合衆国大統領が手記を書きつづっている――愚かしくもけなげな人間からが演ずるドタバタ喜劇、スラップスティックの顚末を……。現代アメリカで最も人気の高い作家カート・ヴォネガットが、鮮やかに描き出す涙と笑いに満ちた傑作長篇。》
鶴見良行『東南アジアを知る―私の方法』岩波新書・1995年
《バナナやエビを通じて、アジアと日本の関係を考える―。この画期的な方法を著者はどのようにして生み出したのか。ベトナム戦争から始まったアジアとの三〇年以上に及ぶつきあいの軌跡をたどりつつ、「歩く・みる・きく」を実践しながら東南アジア各地を旅し学んだ日々を語る。急逝した著者の遺稿に描かれた、ダイナミックな東南アジア入門。》
夏樹静子他『名古屋ミステリー傑作選』河出文庫・1986年
《古代の伝承が息づく熱田神宮、大城下町の威勢を伝える金の鯱の名古屋城、郷愁を誘う明治村、活気溢れる中京工業地帯……日本列島の東西の接点として、歴史の波に洗われながら発展する大都会の、古くて新しい錯綜した人間関係の網の目から落ちこぼれる奇妙な犯罪の数々――戸板康二・辻真先・中薗英助・山村正夫・赤瀬川隼・藤原審爾・夏樹静子が贈る、魅力のミステリー紀行シリーズ第9弾!》
収録作品=戸板康二「明治村の時計」/辻真先「名古屋城が燃えた日」/中薗英助「ウラン鉱の魔女」/山村正夫「オフェリアは誰も殺さない」/赤瀬川隼「明治村幻影」/藤原審爾「地平線はぎらぎらっ」/夏樹静子「閨閥」
さかき漣『エクサスケールの少女』徳間書店・2016年
《人工知能が人間を超える“シンギュラリティ“(技術的特異点)、その前段階としてこの10年以内に起こる「エクサスケールの衝撃」は、スパコンで医療・宇宙工学などに革命を起こし、人間生活を大きく変える。深い孤独を抱えるスパコン研究者・青磁の前に現れた万葉集を愛する謎の美女・千歳。二人は古からの運命に導かれ、京都から東京、そして神話の里・出雲へ。シンギュラリティを迎えたとき、人類の向かう先はユートピアか? それとも……。》
小津夜景『漢詩の手帳 いつかたこぶねになる日』素粒社・2020年
《池澤夏樹さん推薦!!!
「この人、何者?
極上のエッセーで、文体が弾み、とんでもなく博識で、どうやらフランス暮らし。俳句を作る人らしい。一回ごとに漢詩の引用があるが、その漢詩はいつも角を曲がったところに立っている。しなやかな和訳と読解が続く。
世の中は驚きに満ちている、と改めて思った。」
(本書帯文より)
フランス在住の俳人・小津夜景さんがつづる、漢詩のある日々の暮らしーー
杜甫や李賀、白居易といった古典はもちろんのこと、新井白石のそばの詩や夏目漱石の菜の花の詩、幸徳秋水の獄中詩といった日本の漢詩人たちの作品も多めに入っていて、中国近代の詩人である王国維や徐志摩も出てきます。
巻末には本書に登場する漢詩人の略歴付。》
井上光晴『虚構のクレーン』新潮文庫・1969年
《革命とは何か、愛とは何か。太平洋戦争末期から敗戦直後の混乱期を、九州佐世保地区の炭鉱で死を目前にしながら、朝鮮人青少年とともに過した若者の生き方と情念を執拗に追究した本格的な青春小説。日本人と朝鮮人とを「同胞」として結びつける天皇制という巨大な虚構、そしてそのもとでの戦争が著者に残した傷痕を徹底的に検証し、批判と反省をこめて重厚に描いた力作長編である。》
遠藤周作『よく学び、よく遊び』集英社文庫・1987年
《森羅万象、とりわけ人間に対して人一倍好奇心の強い狐狸庵・遠藤周作氏。昭和26年から54年まで、文学の話から闘病生活、新婚旅行の話、学生時代のこと、ダンスや芝居の話など……折りにふれて書き綴ったエッセイ集。知られざるエピソードがたくさん入って、作家の素顔が見える。 解説・藤田昌司》
渡辺淳一『阿寒に果つ』角川文庫・1982年
《雪の阿寒湖近くで自殺を遂げた“天才少女画家”時任純子。
妖精のような17歳のヒロインが、六人の登場人物たち――作者の分身である若い作家・画家・記者・カメラマン・純子の姉蘭子と演じる、六面体の水晶の冷たい燦きと輪舞の華麗さをもった愛と死のドラマ……。
これは、北国の短い夏にも似た青春の光と影を、清冽なリリシズムをもって描いた、作者自身の過ぎ去った青春への鎮魂の歌でもある。》
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