先月の全身湿疹以来、微熱や頭痛が去らず、何も読めない日が多かった。
装幀で懐かしかったのは角川文庫の阿佐田哲也、横溝正史、初期の講談社ノベルスの西村京太郎くらい(辰巳四郎が装幀から外れてしまってから物件としては魅力を感じなくなった)。
ヘンリー・ジェイムズ『ヘンリー・ジェイムズ短篇集』岩波文庫・1985年
《ジェイムズ(1843‐1916)ときくと、あの「哲学のような小説」を書いた男かといって尻ごみする向きがあるかも知れない。だが、そういう人に何よりもまず円熟期に成った短篇をいくつか読んでもらいたいと思う。そこにはこの大作家の最良の部分が申し分なく発揮されている。『荒凉のベンチ』『にぎやかな街角』『私的生活』『もうひとり』の4篇を収める。》
収録作品=私的生活/もうひとり/にぎやかな街角/荒涼のベンチ
日原正彦『詩集 163のかけら』ふたば工房・2016年
荒俣宏『性愛人類史観 エロトポリス』集英社文庫・1998年
《ポルノとアートの違いは何か。セックスと文化の関係はいかなるものか。エロスの本質を探究すべく、数々の例をあげて解析する荒俣宏コレクションの白眉。ピンナップ、セックス博物館、ストリップの歴史、春画など、カラー図版も豊富に、美と喜びと欲望に満ちた悦楽の園へ誘う禁断の書。ああ、好奇心が止まらない!》
眉村卓『歳月パラパラ』出版芸術社・2014年
《今年、傘寿を迎える著者のショートエッセイ集。
<目 次>
子(ね) 雄弁は金/禁 煙/昔感嘆・今?/地球の英雄/まあもう少し
丑(うし) 日暮れ/目玉カレー/理系とか文系とか/諦めのアイデア/電車乗り
寅(とら) 優先席/「しまい込み」の結果 /日記帳と手帳/母 校/店閉じ人
卯(う) 呼びりん/S/他人の死/「作品リスト」というノート
辰(たつ) ワタナベー/昼 前/勤め先と自分/ヨータイ話 入社試験と赴任
巳(み) 溜まるもの/十年め/大 声/宇治電ビル時代
午(うま) 階段の高さ/バッグにぶら下げて……/文才の有無/社宅入りと「宇宙塵」の勧誘
未(ひつじ) 父の作り話/子供のせりふ/「燃える傾斜」を書いた頃
申(さる) イケメン/姫路の駅そば/昔大阪入り
酉(とり) 落下恐怖症/喫茶店で書いた日々/書いたカフェ
戌(いぬ) 物語の主人公の気分/半村良さん/福島正実さんのこと
亥(い) 体重・体力/病み上がりの首/「木更津」のことなど/自己客観性社会の憂鬱 》
眉村卓『自殺卵』出版芸術社・2013年
《作家生活50周年を迎えた著者が描く、8つの異世界譚!
「われわれの贈り物で、死んで下さい。人間はもう充分生き過ぎました。」……
年金生活者で独り暮らしの主人公の自宅に、そんな異様な手紙が届けられた。
世界中で、差出人不明の卵型の自殺器と手紙がばらまかれる。
徐々に人口が減り始め、〈死〉が日常になる…終末SFの傑作「自殺卵」
ほか書き下ろし「退院前」、「とりこ」の2作を収録した全8編!》
収録作品=豪邸の住人/アシュラ/月光よ/自殺卵/ペケ投げ/佐藤一郎と時間/退院後/とりこ
眉村卓『たそがれ・あやしげ』出版芸術社・2013年
《なんてことない日常にひそむ、異界へのわき道……。
くたびれた男たちが紛れ込んだ21の奇妙な世界。
全編単行本未収録!
本にするにあたって順序を変え、それぞれに前文「TMいわく」を書き加えた。内容に関連するつもりが、エッセイと言われても仕方がない文章になっている。余計なことを、と顔をしかめる人もいるかも……。
これはいわゆる「すれっからしのSF誌読み」向きの作品集ではない。
また、若さで可能性に挑戦しようという人には、物足りないであろう。
だからといってこうしたものを面白がってくれる人がいなくなったわけではない、と、私は思う。私自身が年寄りになってこういうものにもちゃんと存在理由があると信じるようになったせいもあるが。 ――(まえがきより)》
収録作品=絵のお礼/腹立ち/和佐明の場合/五十崎/多佳子/新旧通訳/中華料理店で/息子からの手紙?/有元氏の話/あんたの一生って……/未練の幻/昔の団地で/十五年後/「それ」/「F駅で」/帰還/電車乗り/同期生/未来アイランド/F教授の話/やり直しの機会
眉村卓『沈みゆく人―私ファンタジー』出版芸術社・2010年
《闘病の妻へ毎日書き続けた『日がわり一話』、その妻が亡くなって8年、その後の話を小説に書き下ろした続編で、『エイやん』や『いいかげんワールド』に続く妻への挽歌でもある。
著者の現在の思いを投入した私小説と、一冊の奇妙な本から始まるファンタジーとが絡み合う、“私ファンタジー”とも言える型破りな小説。
自身にもわからない未来へと続いてゆく物語。 表題作ほか短編3編。》
収録作品=沈みゆく人/板返し/じきに、こけるよ/住んでいた号室
西村京太郎『四国連絡特急殺人事件』講談社ノベルス・1983年
《春三月、四国霊場第七十番の本山寺近くでお遍路姿の老人が殺された。被害者は首都相互銀行会長の徳大寺正之。同行の伊吹君子は会長の甥の南条吾郎が犯人だと証言した。十津川警部と亀井刑事が動き出す。遺産相続に絡む殺人と思われたが、南条には鉄壁のアリバイがあった。だが、それを証言した井崎玲子も殺された……。》
《著者のことば
日本の鉄道の中で、もっとも特徴のあるのは、四国の鉄道である。四国は、全線非電化なので、走っている列車は、全て、気動前車である。従って、ディーゼル王国の名がある。それに沿線の景色の美しさだろう。瀬戸内の穏やかな景色、大歩危、小歩危の渓谷美、荒々しい太平洋、そうした美しさの中を走る列車の中で殺人事件が起きる……。》
中村誠一『サックス吹き男爵の冒険』晶文社・1982年
エドモンド・ハミルトン『恐怖の宇宙帝王』ハヤカワ文庫・1974年
《太陽系政府ビルに突如現れた毛むくじゃらの大猿――人間の服装をした“それ”は、必死で何かをしゃべろうとして、死んだ。「木星……先祖帰リ……宇宙帝王ガ……」この奇怪な事件こそ、現在わが太陽系最大の惑星に蔓延しつつある原因不明の恐るべき疫病の結果であることを見てとった政府主席は、ついに意を決して北極の信号灯台より月面へ合図を送った。キャプテン・フューチャー、応答せよ! 貴下の出動を乞う! 出動を乞う! かくして極悪非道の姿なき魔人〈宇宙帝王〉の正体を暴かんものと、科学の天才にして正義の守護者、若き英雄キャプテン・フューチャーの痛快極まる大宇宙活劇が展開される!》
筒井康隆『モナドの領域』新潮社・2015年
《河川敷で発見された片腕、美貌の警部、不穏なベーカリー、奇矯な行動を繰り返す老教授―平凡な日常が突如かき乱された街に“GOD”は降臨し、すべてを解き明かしていく…。 》(「BOOK」データベースより)
エドモンド・ハミルトン『人工進化の秘密!』ハヤカワ文庫・1978年
《天王星の衛星チタニアで、キャプテン・フューチャーは驚くべき内容の石板の発掘に成功した。その石板には、人類の祖先であるデネブ人たち最高の秘密――人工進化の秘密の隠し場所が刻まれていたのだ! 人工進化――その秘密を手にする者は、自らを超人間に、神にまで改造することが可能となる。この計り知れぬ富に目のくらんだ発掘隊員ノートンは、奸計を用いて〈コメット〉号を強奪、あろうことかジョオン・ランドールまでも拉致して、遙かな銀河の果て人類文明発祥の惑星デネブへと向った! われらが英雄キャプテン・フューチャーの痛快極まる大宇宙活劇。》
エドモンド・ハミルトン『異次元侵攻軍迫る!』ハヤカワ文庫・1981年
《太陽系警察本部から、キャプテン・フューチャーに緊急連絡が入った。奇妙な光を放つ宇宙船がだしぬけに出現、超スピ-ドで太陽に向って突進しつつあるという! 急遽出動した〈コメット〉号のすて身の行動で、かろうじてその宇宙船を救出することに成功した。やがてフューチャーメンー行の前に現われたその乗員は――スヴァードという奇怪な生物をつかって、つぎつぎに星系を征服している謎の人物ゴーマ・ハス、かれらは、はるかアンタレス星系から、ゴーマ・ハスの怖るべき企てを阻止すべく、キャプテン・フューチャーの助けを求めてやってきたのだった……!!》
エドモンド・ハミルトン『ラジウム怪盗団現わる!』ハヤカワ文庫・1982年
《どこからともなく現われては、ラジウムだけを狙う〈ラジウム怪盗団〉。いったいその目的は、そして本拠地はどこにあるのか? 折しも貨物宇宙船〈オリオン〉からの救難信号が、太陽系警察機構本部に入った。“本船は航行不能! 盗賊の移乗にまかすしかない”そして、いったん途切れたあと、電信コードで入ってきた通信は“リーダーは、天王星人のルウ・グウル!”――死んだと思われていた悪の天才科学者だ。しかも,襲われた船には,捜査に着手していたキャプテン・フューチャーが乗り組んでいたのだ。キャプテン・フューチャー・シリーズ掉尾を飾る傑作長篇》
エドモンド・ハミルトン『惑星タラスト救出せよ!』ハヤカワ文庫・1978年
《大至急衛星ダイモスまでこられたし! 老科学者チコ・スリンの連絡を受け、ダイモスに急行したフューチャメン一行は、そこで篤くべき実験をまのあたりにした。アルルス人が残した奇妙な科学機器を改造したチコ・スリンは、20億光年かなたの別の宇宙から異星人を呼びよせることに成功したのだ! 〈冷たきものたち)と呼ばれる怪物どもに苦しめられていた彼らタラスト人は、最後の手段として別の宇宙に救援を求めたのである。奇怪な四次元空間を抜けて、フューチャメン一行は滅亡の危機にある惑星タラストを救うべく、数億光年のかなたへと旅立ったが……。》
柄谷行人『定本 柄谷行人文学論集』岩波書店・2016年
《一九六〇年代末に文学批評家としてデビューした著者の今日にいたるまでの全文学評論から、著者自身が精選改稿した一二篇を収録。冒頭には各作品を解説する序文をあらたに付す。『アレクサンドリア・カルテット』を論じた六七年の修士論文から、漱石『文学論』について語った二〇〇五年の講演まで、著者の文学的営為の全体像が一望のもとに。ダレル、シェークスピア、鴎外、漱石、四迷、安吾、、泰淳、島尾敏雄、中上健次らのテクスト読解を通していくつもの「可能性の中心」が導き出される。思想家柄谷行人の原点を知るための決定版。》(「BOOK」データベースより)
小松左京『地球文明人へのメッセージ』佼成出版社・1981年
《博学な著者が、 地球文明の現状と未来について語った、スケールの大きい傑作エッセイ集。
地学、地球物理学、生態学、動物行動科学、古生物学、電子・情報工学、遺伝子工学、都市工学、経済学、社会学、心理学、歴史学、教育学、民俗学、文化人類学、地理学、宗教学、生命美学etc……etc、とにかくありとあらゆる学問の成果から、地球文明の現状と未来について語った、スケールの大きい傑作エッセイ集。かたいテーマだが、文章が詩的で読みやすく、誰でも気楽に読めるのが魅力。内容は、手紙の書き方から、人類史の見直しまでと多彩。その大半が1970年代に書かれたものとは思えないほど、 現代および将来の地球の姿が的確に描かれている、まさに大著と呼ぶべき作品。》
吉田秀和『主題と変奏』中公文庫・1977年
《音楽批評の第一人者である著者が、シューマン、モーツァルト、フランク、バルトークなどの音楽の本質を、透徹した楽曲分析によりつつ、見事な文体のエッセイに結晶させ、日本における自律した音楽批評を初めて確立した記念すべき処女評論集。》
ネビル・シュート『渚にて』創元SF文庫・1965年
《第三次世界大戦が勃発、世界各地で4700個以上の核爆弾が炸裂した。戦争は短期間に終結したが、北半球は濃密な放射能に覆われ、汚染された諸国は次々と死滅していった。かろうじて生き残ったアメリカの原潜スコーピオン号は、放射能帯を避けてメルボルンに待避してくる。オーストラリアはまだ無事だった。だが放射能は刻々と南下し人類最後の日は迫る。迫真の感動を与える名作!》
ジョルジョ・アガンベン『身体の使用―脱構成的可能態の理論のために』みすず書房・2016年
《“ホモ・サケル”、極点の思考。政治と倫理の新しい次元を可能態の観想が開く。プロジェクト最終巻。》(「BOOK」データベースより)
東海林さだお『パンの耳の丸かじり』文春文庫・2008年
《あの“耳”はやむをえないのか? トーストを食べるときに誰もが直面する「食パンの耳問題」。カップ麺「フタプラプラ問題」。おにぎり「最初の一口おかずなし問題」、クラッカー「5センチ角問題」、餃子スタジアム「入場料300円とられて暗がりで立ち食い問題」……ああ、ショージ君の深遠なる悩みは今日も続くのだ。 解説・岡江久美子》
阿佐田哲也『雀鬼五十番勝負』角川文庫・1980年
《終戦直後は東京もあたり一面焼野原で闇市もまだ完全に形をなしていなかった。その頃から昭和二十年代終りにかけて、巷には化け物みたいな強烈な麻雀打ちがゴロゴロしていた。世の中全体が動乱期で揺れ動いていたせいもあるだろう。博打場には、博打に生命を賭けて闘い続ける男たちの姿があった――。
雀歴三十数年の雀聖阿佐田哲也が、忘れ得ぬ名勝負五十番を活字で再現した、迫力満点の麻雀小説集!》
ジッド『田園交響楽』新潮文庫・1952年
《身よりもなく、まったく無知で動物的だった盲目の少女ジェルトリュードは、牧師に拾われ、その教育の下でしだいに美しく知性的になっていった。しかし待ち望んでいた開眼手術の後、彼女は川に身を投げて死んでしまう。開かれた彼女の眼は何をみたのだろうか。牧師と盲目の少女、牧師の妻と息子との4人の愛情の紛糾、緊張を通して「盲人もし盲人を導かば」の悲劇的命題を提示する。》
デズモンド・モリス『ボディウォッチング』小学館ライブラリー・1992年
《好評の人間観察学『マンウォッチング』に続くD・モリスの身体観察学読本。ヒトの身体を頭髪から足まで20の部位に分け、世界の人々がそれぞれにどんな隠れた意味を付与してきたのかを解説する。》
東野芳明『マルセル・デュシャン』美術出版社・1977年
横溝正史『夜の黒豹』角川文庫・1976年
《現場に着いた金田一耕助は、思わずゾーッとした。断末魔の形相凄じく、ベッドに横たわる女の死体がそこに、そしてその乳房の間には、まるで生きているように無気味な、マジック・インキで描かれた一匹の青蜥蜴が!
いかがわしいホテルで一人の娼婦が殺害された。犯人は、事件の前後に出没した全身黒ずくめの怪紳士か? だが、金田一が乗り出した直後、事件の鍵を握るホテルのベル・ボーイが重傷を負い、意識不明になってしまう……。
本格推理の醍醐味を堪能させる、横溝正史の傑作長編。》
オルハン・パムク『黒い本』藤原書店・2016年
《ノーベル賞作家オルハン・パムクの最高傑作、ついに完訳。
文明の交差路、イスタンブールの街で、突如行方をくらました妻を追うガーリップを、いとこの新聞記者ジェラールのコラムが導く。
ミステリーの形式を踏襲しながら、多彩な語りをコラージュさせて描く、パムク個人のイスタンブール百科事典であり、イスタンブールの『千夜一夜物語』。
○「推理小説という概念を覆す、めくるめく作品」(『インディペンデント』日曜版)
○「暗く幻想的な創作物の壮麗なる飛翔」(『ワシントン・ポスト』パトリック・マグラス)
○「驚異的な小説だ。エーコ、カルヴィーノ、ボルヘス、マルケスの最良の作品に匹敵する」(『オブザーバー』)》
《――イスタンブールの真っ暗な怪しい細径、街灯、文字、見知らぬ外壁、どす黒い目をした身の毛もよだつ表情のアパルトマン、閉められた暗いカーテン、モスクの中庭のなかに迷い込み、この暗黒と死の啓示まみれのあらゆる徘徊により、僕は別人になる――
イスタンブールの弁護士ガーリップは、幼なじみで、伯父の娘で、友人でもあり恋人でもあったリュヤーを最愛の妻とするが、ある冬の日、妻が忽然と姿を消す。同時に、リュヤーの異母兄で人気コラムニストであるジェラールも行方不明となるが、彼の連載コラムはその後も新聞に掲載され続ける。
二人が共にいると直感したガーリップは、妻を捜し求めてイスタンブールの街へ出る。この街にまつわる奇想天外な逸話を綴るジェラールのコラムによって、路地へ、市場へ、地下へ、娼館へ、あるいはナイトクラブへと導かれるなかで、西欧化によって喪われた都市の歴史と個人の記憶が交錯し、やがてガーリップのアイデンティティも溶解していく――。》
末木文美士『日本仏教史―思想史としてのアプローチ』新潮文庫・1996年
《同じ仏教でもインドとも中国とも異なる日本の仏教は、どのような変化を遂げて成立したのだろうか。本書では6世紀中葉に伝来して以来、聖徳太子、最澄、空海、明恵、親鸞、道元、日蓮など数々の俊英、名僧によって解釈・修正が加えられ、時々の政争や時代状況を乗り越えつつ変貌していった日本仏教の本質を精緻に検証。それは我々日本人の思想の核を探る知的興奮に満ちた旅でもある。》
林達夫『文藝復興』中公文庫・1981年
《これらの諸篇を読むことは、若い読者にとってはまさに「体験」というべきものとなるだろう。その体験の中身には、単純な驚きもあるだろう。なぜなら、林氏のこの処女史論集は、その学問的情熱の真摯さ、その叙述の鋭さ、そして手がたさ、全休を統べている感性の洗練と優雅、そしてそれ以上に、啓蒙の情熱の若々しい息吹きによって、すでに半世紀たってしまった今でも、真剣に求めることを知っている読者を驚かせずにはおかないはずだからである。
(大岡信「解説」より)》
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』岩波現代文庫・2016年
《ソ連では第二次世界大戦で百万人をこえる女性が従軍し、看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦った。しかし戦後は世間から白い目で見られ、みずからの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった―。五百人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした、ノーベル文学賞受賞作家のデビュー作で主著!》(「BOOK」データベースより)
水野和夫・榊原英資『資本主義の終焉、その先の世界』詩想社新書・2015年
《「より速く、より遠くに、より合理的に」という近代の行動原理で展開してきた資本主義がいま、限界を迎えている。グローバリゼーションの進展によりフロンティアは消失し、先進各国は低成長時代に入った。もはや資本を投資しても利益を生まない超低金利が長期にわたって続く「利子率革命」が先進国の大半で進行し、各国の中間層は破壊され、国民国家は「資本国家」に変貌するに至っている。はたして、終局を迎えた資本主義の先には、どのような世界が待っているのだろうか。ポストモダンの新潮流を読み解く。》(「BOOK」データベースより)
山田航編著『桜前線開架宣言』左右社・2015年
《石川美南、小島なお、雪舟えま、笹公人、黒瀬珂瀾、笹井宏之、中澤系、加藤千恵、木下龍也、光森裕樹――。若い才能が次々にデビューし、いま盛り上がっている現代短歌の世界。その穂村弘以降の全貌を描き出す待望のアンソロジー! 歌人・山田航が40名を撰び、作品世界とプロフィールの紹介に、アンソロジーも付して徹底解説!
文学なんて自分には縁遠いものだと思っていた。というか今も縁遠いと思う。でも短歌のリズムにはすっかりハマってしまったのだ。山田航》
サミュエル・ベケット『事の次第』白水社・2016年
《“無調音楽”としての小説。句読点のない言葉がリズミカルに匍匐前進してゆく「三楽章」からなる文学。》(「BOOK」データベースより)
寺山修司『戦後詩―ユリシーズの不在』講談社文芸文庫・2013年
《一九六五年発表の本書は、今でこそ珍しくなくなったジャンルの超越をいとも自然に行った先駆的詩論でもある。“戦後七人の詩人”として挙げたのは谷川俊太郎、岩田宏、黒田喜夫、吉岡実に加え、西東三鬼、塚本邦雄、星野哲郎。権威によらない闊達で透徹した批評眼は田村隆一、青島幸男、長谷川龍生、ケストナーら数多の詩と遊び、魅力は尽きない。不世出の表現者の天才性が遺憾なく発揮された、名著。》
村上龍『海の向こうで戦争が始まる』講談社文庫・1980年
《海辺で出会った水着の女は、僕にこう言った。あなたの目に町が映っているわ。その町はゴミに埋もれ、基地をもち、少年たちをたくましく育てる町、そして祭りに沸く町。夏の蜃気楼のような心象風景の裏に貼りつく酷薄の真実を、ゆたかな感性と詩情でとらえた力作。『限りなく透明に近いブルー』に続く作品。》
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