『樹の花』は宇野恭子(1958 - )の第1句集。序文:井上弘美。
作者は「椋」「泉」を経て「汀」創刊同人。
はづしゆく古着の釦秋の雨
青梅のこつんと影を叩きけり
空つぽのポケット深き冬銀河
自転車の轍紐めく春の風
あさがほの風吹いてゐる野川かな
梅林に空の白濁はじまりぬ
濃く淹れて二百十日の伊勢茶かな
縄跳の手の昏れのこる一葉忌
ひと息に老いたる夢の夏柳
踝に流れくる葉や夏の果
細断の紙のふくらみ秋時雨
石垣になだるる樹影春深き
裏門に坂のはじまる薄暑かな
追ひついて枯野の列に加はりぬ
冬帽子辻曲がるたび母老いぬ
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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