『汽水』は益岡茱萸(1957 - )の第1句集。栞:星野高士・檀太郎・中島信也。
作者は「玉藻」同人。主にラジオ・テレビCMの企画演出を手掛けるフリーのコピーライター・ディレクター・プロデューサー。
阿と吽の間(あはひ)を抜けし春埃
渾身の苦味も優し蕗の薹
渓谷の底を知らせる蛍かな
五月雨るるいつもの街や戸籍抜く
天球を自在に回し鳥渡る
雪だるま子どもは知らぬ夜の顔
おでん煮る空間にあるまろきもの
芹の根の香りは土か青空か
金環の端より初夏の始まりぬ
奈良までは夏服ふたつ傘ひとつ
白魚の汽水を恋うて囚はる
囀にある金の色銀の色
籐椅子に寝て空つぽの世界なり
江戸切子かちりと合はせ初鰹
須弥壇に無花果ひとつ影を足す
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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