相変わらず何も読めない冬眠状態が続く。冊数がそれなりにあるように見えるのは、体調のいい日にまとめて4,5冊読んでしまうからである。
今回、装幀として懐かしいのは角川文庫の高木彬光、横溝正史あたりか。森村誠一の角川文庫作品2点は山下秀男の装画による旧版で入手してしまったが、後に高木彬光のと同じ日暮修一の装画に改装された。私の年代だとそちらの方が馴染みがある。背表紙も青紫から群青寄りにやや変わっている。
五木寛之『男が女をみつめる時』集英社文庫・1982年
《“私はエッセイが好きだ。(略)ここに集められた雑文集は、これまでに一冊の本になったそれらの文章の中から任意に選び出されたものである。”日常へ過去へ…著者の原体験を素材にユーモアとペーソスを織りませ綴る女性論・青春論。単行本未収録作品も合めたエッセイの異色アンソロジー。 対談解説・山本容朗》
塩見允枝子『フルクサスとは何か?―日常とアートを結びつけた人々』フィルムアート社・2005年
《ジョージ・マチューナスが創設した、アートと日常の壁を越え「流れる」(=フルクサス)ことを目指す自由を表現したグループ、フルクサス。伝説的ムーヴメントを生きた作家の証言から、その歴史や精神、現在までの変遷を辿る。》(「MARC」データベースより)
黒井千次『一日 夢の柵』講談社・2006年(野間文芸賞)
《日常の内奥にひそむ光と闇。―人々が暮らしてゆく、生々しい奇妙な現実。生きることの本質と豊穣。著者六十代半ばから七十代半ばにかけて書かれた短篇群、野間文芸賞受賞の十二の人生の断片。「夢の柵」「影の家」「眼」「浅いつきあい」「電車の中で」「隣家」「丸の内」「記録」「一日」「危うい日」「久介の歳」「要蔵の夜」収録。》(「BOOK」データベースより)
講談社文芸文庫版
半村良『夢中人』祥伝社文庫・1999年
《私は想像力で飯を食う小説家。夢中自殺に飛行夢と、見る夢もさまざまだ。ある夜、夢中犯罪を取り締まる夢中署の夢刑事に出会った。夢の中でも拳銃を使えば不法所持のルートを洗い、現実逃避の不法夢中滞留者には強制覚醒処置をとる、というのだ。やがて甥の会社で起きた毒入り缶コーヒー殺人事件を、夢の中から捜査することになるのだが……。》
夢枕獏『悪夢展覧会』徳間文庫・1988年
《説明できるおかしさよりも、説明できないおかしさの方が、いつまでもおかしい。おもしろい話を思いつくと、それをどうしても他人に話してみたくなるという癖がぼくにはある――と、著者は語る。
おおいに驚いたあんまさまの話。カトマンズの床屋に行った男の話。オッチン化粧品のセールスマンの話。互いに相手の体に潜りっこするアベックの話……等、現代の千一夜物語ともいうべき摩訶不思議館。》
岡本好古『悲将ロンメル』徳間文庫・1981年
《1942年6月、第2次大戦の北アフリカ戦線。そこは“砂漠に戦車”というかつて考えられなかった発想で独英の戦車隊が灼熱の砂の上で対峙していた。
ドイツ軍の指揮をとる将軍ロンメルは、不敗の神話を背負う国民的英雄であったが、若き犠牲者を悼む心の持主でもあった。
ソ連戦線を重視する統合本部に苦言を呈し、やがてヒットラーからもうとんじられる将軍の壮烈な半生を描く長篇出世作。》
佐伯啓思『経済学の犯罪―稀少性の経済から過剰性の経済へ』講談社現代新書・2012年
《私たちが、誤った「思想」を信じ続ける限り、危機からは脱出できない。日本を代表する知性が、経済学の源流、貨幣の誕生まで遡り、危機の本質に迫る知的興奮の書。》(「BOOK」データベースより)
アーシュラ・K・ル=グウィン『いまファンタジーにできること』河出書房新社・2011年(ローカス賞)
《ジャングル・ブック、ピーターラビット、ドリトル先生、指輪物語、ゲド戦記から、ハリー・ポッターまで。ファンタジーや児童文学の名作・話題作を読み解きながらその本質に迫る、巨匠の最新評論集。2010年ローカス賞受賞。》(「BOOK」データベースより)
水野和夫・大澤真幸『資本主義という謎―「成長なき時代」をどう生きるか』NHK出版新書・2013年
《なぜ西洋で誕生したのか?なぜ支配的なシステムになりえたのか?―経済事象のみならず、私たちの生き方をも規定している資本主義。その本質について、一六世紀からの歴史をふまえ、宗教・国家・個人との関係にいたるまで徹底討論。はたして「成長」がなくとも幸福で活力のある社会を構築することはできるのか。世界経済の潮流を見据え、未来を展望するスリリングな討論。》(「BOOK」データベースより)
東浩紀『文学環境論集 東浩紀コレクションL』講談社・2007年
《批評界のトップランナー、東浩紀が二つの世紀を横断し構築した文芸評論の新しい視座。文学の可能性を大胆に切り拓く論文集と、時代と真摯に対峙し格闘する時評集との二冊組、900ページに迫る渾身の大著。》(「BOOK」データベースより)
※図書館本函欠
生松敬三『ハイデルベルク―ある大学都市の精神史』講談社学術文庫・1992年
《多くの詩歌に謳われ、19世紀にはドイツ・ロマン派文学の中心地となり、またベルリンと並び抗して世界の学問をリードしたドイツの大学都市ハイデルベルク。本書は、この美しい歴史の町ハイデルベルクを舞台に活躍した学者や詩人等に光を当て、彼等の知的交流の軌跡をたどりながら、ハイデルベルク大学を中心としたドイツの学術の栄光と、ドイツ精神史の相貌をみごとに浮彫りにした画期的な名著。》
五木寛之『地図のない旅』角川文庫・1972年
《私はこれまで、「風に吹かれて」「ゴキブリの歌」と、二冊の雑文集を出してきた。
この「地図のない旅」は、前の二冊にくらべて、いささか雑然たる感じがあり、それだけ私の本音がその間からきこえるような気がするのだが、どうであろうか。
この三冊は、私の三十代の締切りのようなもので、私はこれらの文章を、ロシア風に、私の「フェイエトン」(雑録)と呼んでみたい。この中で、私はこれまでほとんど書いたことのなかった、自分の母親や、父親についてふれている。小説の中でその辺について書けるようになるには、まだ、かなり時間がかかりそうだ。(「あとがき」より)》
野坂昭如『文壇』文春文庫・2005年(泉鏡花文学賞)
《三島由紀夫、吉行淳之介……。キラ星のごとき流行作家や名物編集者たちが夜な夜な酒に浸り、文学論を戦わせる。 ときは1960年代、銀座や新宿の薄暗がりの文壇酒場に現われた新人流行作家・野坂昭如が、おそるべき記憶力で男たち女たちの生態を再現。自虐と自負と韜晦をこきまぜ、己を語る。泉鏡花文学賞受賞作。 解説・阿部達二》
舟橋聖一『悉皆屋康吉』講談社文芸文庫・2008年
《呉服についての便利屋であり、染色の仲介業者でもある「悉皆屋」の康吉は、職人としての良心に徹することで、自らを芸術家と恃むようになる。大衆の消費生活が拡大する大正モダニズム期には、華美で軽佻な嗜好を嫌い、二・二六事件の近づく昭和前期には、時代の黒い影を誰よりも逸早く捉える男でもあった。著者が戦時下に書き継ぎ、芸術的良心を守った昭和文学史上の金字塔と評される名作。》
横光利一『家族会議』新潮文庫・1949年
《大阪北浜、東京兜町の生き馬の目を抜く世界で生きる青年、重住高之。妖艶、清爽、純情、明知の四人の女たちが彼を取り巻き、謀略と愛欲が華麗に交錯するとき――。主人公の揺れ勤く心理を巧みに描き、誰もが心の奥底に抱いている深い開を見事に捉えた、横光文学の金字塔。》
J・G・バラード『千年紀の民』東京創元社・2011年
《ヒースロー空港で発生した爆破テロ。精神分析医デーヴィッド・マーカムはテレビ越しに、事件に巻き込まれて負傷した先妻ローラの姿を目撃する。急ぎ病院に駆けつけたが、すでに彼女の命は失われていた。その「無意味な死」に衝撃を受けて以降、ローラ殺害犯を捜し出すためデーヴィッドはさまざまな革命運動に潜入を試みるが…。新たな千年紀を求め“革命”に熱狂する中産階級。世紀のSF作家バラードの到達点。》(「BOOK」データベースより)
森村誠一『通勤快速殺人事件』角川文庫・1975年
《満員の通勤電車がターミナル駅に到着し、先を争う乗客たちが奔流のように出口から吐き出された。その時、流れに取り残されてうずくまった一人の男。苦痛に顔を歪ませた彼の胸からは鮮血がしたたり落ちた!
衆人環視の中で行われた大胆な殺人。警察は、面識のある人間の計画的犯行と見てただちに捜査を開始、被害者と同じ会社の経理係長に有力な動機を発見したが、その男の供述から、事件は意外な方向へ……。
著者会心の表題作ほか4編を収録。》
収録作品=通勤快速殺人事件/魔性ホテル/団地殺人事件/愛社精神殺人事件/醜い高峰
横溝正史『三つ首塔』角川文庫・1972年
《華やかな還暦祝いの席が一転して、陰惨な三重殺人現場に変わった! 殺されたのは、アクロバット・ダンサー。謎の男。そして探偵。宮本音禰に課せられた、謎の男との結婚を条件とした遺産相続が巻きおこす事件の裏には、愛慾と同性愛におぼれる男女の姿があった。本格推理とメロドラマの融合を試みた傑作小説。》
高木彬光『死美人劇場』角川文庫・1977年
《台風の余波で突風が吹きまくっていた日、場末のストリップ小屋で踊り子の腐乱死体が発見された。すでに、かすかな屍臭を発し、無数の蠅が乱舞していた。偶然にも、死体の第一発見者は神津恭介だった。そばには、この小屋・美人劇場のプログラムに不吉な死の文字が付け加えられていた。
連続殺人事件に秘められた、男女の激しい愛憎、もつれた人間関係の謎を追及する名探偵・神津恭介の推理は鮮やか! 表題作ほか傑作本格推理7篇収録。》
収録作品=血ぬられた薔薇/原子病患者/恐しき馬鹿/魔笛/盲目の奇蹟/目撃者/冥府の死者/死美人劇場
田中光二『失われたものの伝説』角川文庫・1980年
《17世紀末、盗賊キャプテン・キッドが隠した時価400億円の財宝が眠るといわれる、南西の孤島喜宝島――。静かだった島も、いまや急激な変化が訪れていた。九州巨大企業のハヤマ観光が、莫大な資本を投下して、一大レジャーランドを建設していた。一方、一匹狼を自認する室戸雄ら五人は、雇い主日高律らと共に、縄文時代の遺骨、遺物の探索の為、海路喜宝島へ向かったが……。
謎を秘めた伝説の島喜宝島を舞台に、俊英田中光二が放つロマン溢れる長編冒険小説。》
小林芳樹編訳『ラカン 患者との対話―症例ジェラール、エディプスを超えて』人文書院・2014年
《1976年2月、精神科医ジャック・ラカンはパリのサンタンヌ病院において、患者ジェラールと対話する。本書はその貴重な記録の、初めての邦訳である。ラカンによる具体的な臨床の手つきが伝わるとともに、自閉症との鑑別が重要な現代の軽症化精神病(普通精神病)に対するラカン派精神分析の原点が示される、生々しいドキュメント。十全な解説を施し、ラカン思想への入門としても最適。》(「BOOK」データベースより)
林光『現代作曲家探訪記―楽譜からのぞく世界』ヤマハミュージックメディア・2013年
《2012年1月に亡くなった日本を代表する作曲家、林光さんによる現代作曲家考察。楽譜を通じ、時に忘れられ、時に歪められてきた作曲家の真意や、音楽と時代との関わりなどを読み解く。》(「BOOK」データベースより)
今福龍太『書物変身譚』新潮社・2014年
《きのうは琥珀だったあすは蝶になる…。私たちの掌で、精神の内奥で、ゆたかに変身しつづける本の自徐伝。》(「BOOK」データベースより)
大岡昇平『常識的文学論』講談社文芸文庫・2010年
《大衆文化の隆盛とともに、文学の世界においても、大衆小説や中間小説が文壇の主流へと登場しつつあった1960年代初頭。こうした流れを純文学にとってかわるものとして擁護する批評家の言も含め、歴史小説や推理小説の実体を根底的に批判したポレミックな文学論。〈『蒼き狼』論争〉となった井上靖への批判、深沢七郎の『風流夢譚』批判、松本清張批判など、スリリングな文芸時評16篇。》
グレッグ・イーガン『プランク・ダイヴ』ハヤカワ文庫・2011年(ローカス賞)
《地球から遙か遠宇宙のブラックホール“チャンドラセカール”では、ある驚異的なプロジェクトが遂行されようとしていた。果たして人類は時空の構造を知り得るのか?―ローカス賞受賞の表題作、別の数学体系をもつ並行世界との最終戦争を描く「暗黒整数」、ファースト・コンタクトSFの最高峰「ワンの絨毬」ほか、本邦初訳作品を含む全7篇を収録。現代SF界最高の作家の最先端作品を精選した日本オリジナル短篇集第4弾。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=クリスタルの夜/エキストラ/暗黒整数/グローリー/ワンの絨毯/プランク・ダイヴ/伝播
森村誠一『精神分析殺人事件』角川文庫・1977年
《「また宿題をやってこなかったのね!」若い女教師中原みどりの怒りが爆発した。彼女は、クラスの中でいつも一人だけ反抗的なその少年の頬を激しく打った。だが、少年はたじろぐどころか、逆に燃えるような挑戦的まなざしで彼女を見返した。
数日後、埼玉県K市郊外の桑畑で中原の死体が発見された。腹部に受けた二箇所の創傷が致命傷である。捜査線上に例の少年が浮かびあがり、彼の部屋の縁の下から、血のついた小刀が発見された。さらに少年の、ミドリ色の昆虫に限って切りきざむ奇癖が明るみに出たのである……。
犯罪者の深層心理を鋭く抉る異色の短編集。表題作ほか四篇を収録。》
収録作品=精神分析殺人事件/催眠術殺人事件/精神分裂殺人事件/麻薬分析殺人事件/児童心理殺人事件
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Dexter Gordon Denmark 1967
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