2014年
六花書林
『鶫』は武藤雅治(1951 - )の第5歌集。約7年間の556首を収録。ほぼ未発表。
句集『かみうさぎ』と同時刊行。
生卵呑めばつめたく咽喉(のど)をすぎ薄くれないの内臓(はらわた)に落つ
ころしやの異名戒名 前衛は死なず生かさず菱川義夫
雑踏の響動(とよ)みの底にひそむもの大蛞蝓(おほなめくぢ)のいざよふ群れか
消えかかる灯りがほつとあかるめばきつねがほつとふりむいてゐる
改札で待つこと五分 白髪(はくはつ)の男がわれの目の前にくる
「楽勝」とあかるくきみの言ふときの暗いまなこを思ひだすなり
「二階には息子が住んでをりますがその階段は昇れませんの」 「映画『絞殺』九首」から
『存在と時間』をむかし網棚に忘れて以来 逃亡の日々
オキナワはかくれんばうの鬼である敗戦はまだ終はつてゐない
「とりあへず五億もあればいいだらう」何のことかと聞き耳をたつ
そのむかし人間(ひと)を殺して床下に埋めたことなどリアルに悪夢
ヒロシマもチエルノブイリもフクシマも海鼠の眠りになつて忘れる
うらごゑのこゑもをかしき腹話術うまれてこない嬰児(みどりご)のこゑ
母さんがいつかこの世にゐなくなるそのことばかり考へてゐた
たしかいまきみがはひつてきたやうなおぼろおぼろのうたたねのゆめ
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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Tom Waits Waltzing Matilda live 1977
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