「らん」no.55(2011年秋)から。
特集は「らん」同人の句集「嵯峨根鈴子句集『ファウルボール』を読む」で片山由美子、高野射手男、もてきまり他が執筆。
句集『ファウルボール』については以前このブログでも取り上げた。
以下、出題されたテーマによる競詠欄「らん詠」から。
今回のテーマは「波」。
始祖鳥を起してしまう波の花 藤田守啓
波という女は或る日鳳仙花 鳴戸奈菜
波音を葉ずれと思う竜宮は 皆川 燈
以下、「十七句集」欄から。
冬瓜を抱くと赤子を抱くかたち 楠見恵子
青蔦の縁どる窓の楽器店 下田静子
以下、「同人作品七句」欄から。
バージンオイルで蛍をかるく炒めなさい 金子 彩
だんまりの母こはかりし曼珠沙華 嵯峨根鈴子
もげたての首で文楽木槿かな 中村光三郎
島ひとつ消えてしまいぬ秋の暮 鳴戸奈菜
白骨はなお偏頭痛いわし雲 藤田守啓
夫喪服剥せばもとの蟾蜍(ひきがえる) もてきまり
スロヴェニア生れのジジェクは顔厚く 伊東聖子
なお、「らん」同人の中村光三郎氏は近々初の句集を上梓される予定だが、その序文を私が書かせていただいている。お目にかかったことは一度もないのだが、鳴戸奈菜氏のご紹介により。
刊行されたら改めてご紹介するつもりだが、雑誌で数句ずつ見るだけではその世界が窺知しにくいタイプの作者なので、句集で初めてその真面目を知るということになる人が同人諸氏にも少なくないのではないか。
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