さて『新撰21』からのサンプル紹介だが、2回目がいきなりアクが強くなる。
佐藤文香はもう次代のエースの一人として衆目の一致するところ。早大俳句研を経て「里」「ハイクマシーン」に参加。 第2回芝不器男俳句新人賞の対馬康子奨励賞、去年出た処女句集『海草標本』で宗左近俳句大賞を受賞。意外なくらい端正で格のある句集だったが、俳句甲子園で最優秀賞を得た《夕立の一粒源氏物語》を切り捨てるという思い切りのよさが師の池田澄子を驚かせ話題となった。俳句愛に燃え、ウェブ等を通じてのパフォーマンスにも積極的。
穀象(こくぞう)を櫃(ひつ)ごと捨ててしまひしよ 佐藤文香
青に触れ紫に触れ日記買ふ
くちなはは父の記憶を避けて進む
少女みな紺の水着を絞りけり
知らない町の吹雪のなかは知っている
5人目となる谷雄介は磐井さんが、ひ弱な若い人が多いなか、谷雄介は人類死滅後もゴキブリと一緒に仲良く生きのこると褒め、バイタリティを買われた。
夏井いつき、櫂未知子、北大路翼に師事。トーキョーハイクライターズ所属で、朗読活動も盛んらしい。週刊俳句賞応募句中の《開戦や身近な猿の後頭部》等が印象的。
春風や古墳と言ひ張つて聞かぬ 谷雄介
大プールに母の幾人入ることか
夏芝居先づ暗闇を面白がる
先生の背後にきのこぐも綺麗
春は脚をひらいてナウル共和国
6人目、外山一機はこれまでほとんど林桂発行の「鬣」でしか活動してこなかったのか、突然現われたという印象。審美性と批評性に富み、ナイーヴな若手が多い中、83年生まれとは思えぬ人工的美意識で現実と切れたシミュラクルな世界を構築する。
週刊俳句に先ごろ寄せた新作10句では、俳壇周知の過去の名句群を、音韻は全てそのまま、単語だけ他の語に置き換えて全然別の多行俳句に仕立て直すという超絶技巧をやってのけたが、今回の百句は阿部完市、西川徹郎といった先行者の影が見えている(見せている)「前衛想望俳句」。《うつし世に天覧席のありにけり》とこの世を睥睨するその悪意、果たしてどこまで現在に対して有効性を持つかが見所。
川はきつねがばけたすがたで秋雨くる 外山一機
よもつひらさかそこは三杯酢がいるの
雨具屋に小人無数に静かなり
祖父二人僕の唇濡れてくる
おとうとの龍へんとうせんつうと云うてかへる
「へんとうせんつう」は扁桃腺痛のことらしい。
【参考ブログ リンク】
海馬 みなとの詩歌ブログ
『新撰21』鑑賞: 佐藤文香
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/762/
『新撰21』鑑賞: 谷雄介
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/763/
『新撰21』鑑賞: 外山一機
http://umiuma.blog.shinobi.jp/Entry/764/
ogihara.com 谷雄介
http://ogihara.cocolog-nifty.com/biscuit/2009/12/20091212-92bc.html
GO!LEAFS!GO!ぶろーぐ
佐藤文香
http://dzv00444.dtiblog.com/blog-entry-2466.html
谷雄介
http://dzv00444.dtiblog.com/blog-entry-2467.html
外山一機
http://dzv00444.dtiblog.com/blog-entry-2471.html
週間俳句
谷 雄介の一句 含羞と屈託の果てに ……さいばら天気
http://weekly-haiku.blogspot.com/2009/12/21.html
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