『囀のまなか』は矢野リンド(1958 - )の句集。第7回百年俳句賞の最優秀作品として冊子化されたもの。
噂より小さき猪降ろし来る
スペインの神父のために煮るセロリ
啓蟄のパジャマのままの日曜日
火曜日の女ばかりの花見かな
菜種梅雨切り絵の蝶に囲まれて
地下にある水の王国夏木立
空の膜たやすく溶けてさみだるる
海が意志持つ手始めの海月かな
遠雷や卵の殻の中にゐて
蜻蛉生るたちまち空は立体へ
二人ほど園児も生りて烏瓜
秋風に眠れば魚になりゆくよ
青空のそこだけ静か昼の月
その底にキリストの像秋の海
村にある鍬製作所秋の雨
※本書は版元より寄贈を受けました。記して感謝します。
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