『ひとり』は瀬戸内寂聴(1922 - )の第1句集。
作者は作家・僧侶。本書で星野立子賞。
小さき破戒ゆるされてゐる柚子湯かな
柚子湯して逝きたるひとのみなやさし
寂庵の男雛は黒き袍を召し
氷柱燦爛(さんらん)訪ふ人もなき草の庵
二河白道(にがびやくどう)駈け抜け往けば彼岸なり
子を捨てしわれに母の日喪のごとく
秋時雨烏帽子に似たる墓幽か
ひと言に傷つけられしからすうり
仮の世の修羅書きすすむ霜夜かな
雪清浄奥嵯峨の山眠りけり
小春なり廓は黄泉の町にして
雛の間に集ひし人のみな逝ける
独りとはかくもすがしき雪こんこん
骨片を盗みし夢やもがり笛
御山(おんやま)のひとりに深き花の闇
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。