俳句関係の本とか図書館本とかは基本的に除いて、主に個人的な懐旧趣味で読んだ(再読した)本の書影。
小学生くらいの頃の各種切抜きからネット普及後の今に至るまで、やたらに画像を収集する癖があるもので。
石川喬司『魔法つかいの夏』ハヤカワ・SF・シリーズ・1972年
《未来からきた本を万引きした教授の物語『星教授の万引き』時間旅行にまつわる矛盾を描いた『親殺しのパラドックス』タイトル・ストーリイ『魔法つかいの夏』など19篇の傑作SFを収録!》
高木彬光『追われる刑事』角川文庫・1977年
《貿易会社専務大西伸吾が自宅の居間で殺害された。客をもてなしたのか、テーブルには食べかけのオードブルが残されていた。その翌朝、女性の変死体が発見され、身元はすぐに割れた。敏腕な現職刑事岩崎の愛娘佳子であった。死体を解剖した鑑識から、二人の殺害方法に類似点があるとの報告があった。神戸の町で前後して起きた凄惨な殺人事件、娘を喪った岩崎刑事の犯人追跡の執念は凄じく、関係者に綿密な事情聴取が続けられた。だが……。
一人の冤罪者も出すまいと、慎重居士の近松茂道の冷徹な推理が光る。ハードボイルド的筆致の本格長編推理。》
眉村卓『ぼくたちのポケット』角川文庫・1980年
《今、君の服にはいくつポケットがついている? 五つ? 六つ? 七つ?そしてそこに何が入っているのかな? ごくあたりまえの財布、タバコ、万年筆……ちょっと人には言えないラブレターや辞表まて……? そして、君はもう忘れてしまったかも知れないけれど、こんな小物たちも、それぞれに秘かな物語を侍っているのだ。
さあ、ポケットの中のものを取り出して、ちょっとこの本のページをめくってみよう。ほら、小物たちのささやきが聞こえてくるよ……。
眉村卓の軽妙なエッセイ&ショートショート。》
眉村卓『幻影の構成』角川文庫・1977年
《――時は未来のある時代。人々は美しい町“第八都市”で、イミジェックスと呼ばれる銀色の小箱からあらゆる情報を得て平和に暮らしていた。その小箱は人類の万能の家庭教師であり、娯楽施設であり、マスコミ機関であり、人々は絶対的信頼を置いていた。
“――が、これは本当の平和だろうか? どうしようもない人間の頽廃ではないだろうか……?”そう思った一人のアウトサイダーがいた。しかし、それに気付いた時にはもはや、イミジェックスを利用した宇宙人の侵略が始まっていたのだ!
現代の情報化社会に、そして人類の未来に、鋭く刃をつきつける眉村卓衝撃の長編SF!》
福島正実・眉村卓『飢餓列島』角川文庫・1978年
《「聞け、世界の終りはもう近いぞ!」破滅論者の若者が、デパートの上で叫んだ。それを機に充満していたヒステリー症状に火がつき、暴動が日本全国に波及しはじめた。
〈世界的な人口爆発〉〈氷河期の到来〉〈食糧生産力の低下〉そんな中にも生活水準向上への欲求が肥大し、ついに社会のバランスが崩れたのだ。
瀕発するゼネストに暴徒の襲撃、武装コンミューンの誕生に、恐るべき人肉食い…。この苛烈な生存競争の中で、もしあなたなら生き残れるか?
現実に刻々と迫り来る飢餓パニックを、共同執筆で警告する近未来小説の傑作!》
眉村卓『EXPO'87』角川文庫・1978年
《人類文明の祭典“万国博”が三年後に予定され、各社が新製品の出品をめぐり、激烈な競争をしていた。大阪レジャー産業にも“夢を作る装置”に財閥系企業から不当な圧迫が加わった。が、剛腹な専務は、統合プロダクションを使って反撃を開始した…。
しかし謀略合戦は、企業間だけにはとどまらない。男性優位の文明を一気に覆えそうと、万博反対を叫ぶ女性の党の画策。マスコミ操作で自己満足に生きる“ビッグ・タレント”。そして産業コントロールのために育成された能力人間“産業将校”の思惑…。社会は今、巨大な渦となって動きはじめた…。
産業文明を鋭く抉り、人類のあり方を考察する問題の近未来社会SF!》
アーシュラ・K・ル=グイン『天のろくろ』サンリオSF文庫・1979年
《オアが精神医ヘイバー博士の前に現われたのは治療のためだった。現実とは違う夢を見ると、その通りに現実が改変されてしまう。そして、その場にいた者以外の全ての人の記憶をも遡って作り変えてしまう。とオアは話し始めた。途方もない話だったが、博士は研究したい種類の眠りが自由に得られる増幅機を使って、それが本当であることを確認した。次第に博士は、治療はさておいて、この夢の力を世界を改善する武器に利用しようと考えるようになった。オアは博士の暗示によって、人口過剰が現代文明と全地球の生態系を脅かしていることに悩み、疫病によって高く積み上げられ、葬られた死体の山を夢に見た。オアが目覚めると診療室の窓からは塔の群れが夢のように薄れ、痕跡もなく消え失せるのが見えた。それまで人口過剰の地球上には食料も充分にない70億の人々がいたが、汚染癌によって10年前から60億の人々が死滅していたという記憶に作り変えられていったのだが…》
キース・ロバーツ『パヴァーヌ』サンリオSF文庫・1987年
《1588年、英国女王エリザベスI世が凶弾に倒れ、その混乱に乗じてスペイン無敵艦隊が英国本土に侵入、ついにはスペイン国王フェリペⅡ世が英国の統治者の座に収まった。さらにその結果として、宗教改革派は徹底的に鎮圧され、世界はカトリック教会の支配下に置かれるに至った。
そして今、21世紀において、依然として法王がこの世の最高権力者として全世界を統治している。科学技術の研究は規制され、せいぜい蒸気機関や初歩的な通信機を使用するレベルにとどまっている。
しかし、至る所で不平のつぶやきが聞かれ、それが次第に高まっていた……。
ディックの『高い城の男』と並ぶ「改変された世界」テーマの傑作と高く評価されている本書は、驚くべき完成度と圧倒的なリアリティを備えた、SFジャンルの代表作である。》
横溝正史『貸しボート十三号』角川文庫・1976年
《白昼の隅田川にポツンと漂う一艘の貸しボート。そのボートの中を見た人人は一斉に悲鳴を上げた。中には、首を途中まで挽き切られ、血まみれになって横たわる男女の惨死体が!
金田一耕助と等々力警部はただちに現場へ急行した。綿密な聞き込みの結果、事件直前に、金ぶち眼鏡に鼻ひげを蓄えた中年紳士がボートを借りたことが判明。この謎の人物を追って捜査が開始された。だが、事件の進展は意外な方向に……。
表題作ほか二篇を含む横溝正史の本格推理傑作選。》
横溝正史『スペードの女王』角川文庫・1976年
《片瀬の沖で浮かんでいた若い女の変死体。その女の首はなく、内股にはスペードのクイーンをあしらった刺青が!
警察の調べにより、今は亡き名人彫物師彫亀の作で、全く同じ刺青をしたもう一人の女が行方不明であることが判明した。いったい殺されたのはどちらの女なのか? そして彫亀が二人目の女にほどこした細工とは? 複雑にからみ合う謎に金田一耕助が挑戦。
横溝正史がサスペンス豊かに描く、本格推理小説。》
辻章『夢の方位』河出書房新社・1995年(泉鏡花文学賞)
《夢と現実との境界線“日暮し坂”。そこに佇む男の胸に去来する、少年期に出会った人々――。美しくも危うい人生の光景を透明な文体で描き、時空を超えた魂の永遠をうたう渾身の長篇力作!》
梶尾真治『チョコレート・パフェ浄土』ハヤカワ文庫・1988年
《ある日、ふと、口にした子供の残りもののチョコレート・パフェ。その昧は、中年男の心を捉え、恥かしさをかえりみさせず、喫茶店へと走らせる。だが、そのチョコレート・パフェのために、男はとんでもない運命に……チョコレート・パフェの味にとりつかれた男の悲喜劇「チョコレート・パフェ浄土」。 最終戦争の後の瓦礫を寄せ集めた町の中で屹然と聳え立つピラミッド状の“究極企業体”はまさしく人々の生活を支配する、唯一の就職先である。この究極企業体の超・熾烈な就職試験に二人の若者が挑んだ「挑戦! 究極企業体」など全10篇を収録。》
佐藤春夫『美しき町・西班牙犬の家 他六篇』岩波文庫・1992年
《隅田川の中洲に理想の町をつくろうとして挫折する奇妙な男たちの物語「美しき町」、“夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇”「西班牙犬の家」など、選り抜きの8篇を収録。芥川・谷崎と共に大正文学を代表する早熟の天才詩人・作家佐藤春夫の、上質の酒の酔い心地のような、小説を読む楽しさを満喫させる短篇集。》(「BOOK」データベースより)
大野木寛/原作・BONES・出渕裕『ラーゼフォン1』MF文庫・2002年
《高校生・神名綾人は、友人たちと試験会場に向かう途中、侵略軍の航空部隊と防衛軍の戦闘に遭遇してしまう。破壊された街で、綾人は怪しい男たちに拉致されかけるが、謎の美女・紫東遙にその危機を救われる。しかし、遙もまた綾人に銃を突きつけたのだった。綾人は混乱のまま、遙とともに巨大な神殿へとたどり着く。そこには、巨人・ラーゼフォンが待っていた…。人気アニメーションの完全ノベライズ、第1弾。》(「BOOK」データベースより)
大野木寛/原作・BONES・出渕裕『ラーゼフォン2』MF文庫・2002年
《ニライカナイ島で新しい生活を送る綾人。弐神記者によるTERRA独占取材、遙の作戦部転属、エルフィのTERRA移籍と、綾人の周囲は動く。綾人もまた、ラーゼフォンに乗ることに悩みながらも、戦いに慣れてゆく。しかしある日、クリスマスを迎えた南国・ニライカナイに雪が降る。すべてを凍らせるドーレムに立ち向かう綾人だが、敵は小夜子を取り込んでいるため、思うように戦えない。ラーゼフォンの中で、凍りゆく綾人に手をさしのべたのは…。人気アニメーションの完全ノベライズ、第2弾登場。》(「BOOK」データベースより)
大野木寛/原作・BONES・出渕裕『ラーゼフォン3』MF文庫・2002年
《ドーレムと戦っていた綾人は、気がつくと吉祥寺の雑踏にいた。そこには、懐かしい守や浩子の姿が。しかし、なにかが違う。とまどう綾人は自らの欲望を具現化した世界をさまよう…。一方、眠り続けていた久遠がついに覚醒、バーベム財団への移管が決定する。ふたたび現れた玲香、新戦力ヴァーミリオン、人間標本第1号、一色、樹そしてヘレナの過去…物語はいよいよ真相へ近づく。人気アニメーションの完全ノベライズ、第3弾。》(「BOOK」データベースより)
大野木寛/原作・BONES・出渕裕『ラーゼフォン4』MF文庫・2002年
《ニライカナイに居場所をなくした綾人は生まれ育った故郷に戻った。遙とエルフィは綾人を追ってヴァーミリオンで東京に潜入、神名家を監視する。しかし、作られた記憶に苦悩する綾人に平穏な生活は訪れず、自分の体から流れる青い血におびえる浩子に懇願され、あてのない逃避行に旅立つ。だが、潜伏先にドーレムが出現し、浩子を守るため綾人はラーゼフォンで出撃する。そのドーレムと一心同体になったムーリアンの正体は…。人気アニメーションの完全ノベライズ、第4弾。》(「BOOK」データベースより)
大野木寛/原作・BONES・出渕裕『ラーゼフォン5』MF文庫・2003年
《東京ジュピターにも居場所を見出せなかった綾人はともに逃亡した浩子を守れなかったことでさらに絶望するが、「本当に守りたい人」に気がついたとき、あらたな決意を抱きニライカナイへ帰還する。そんな綾人のもとに、浩子の恋人・守が身を寄せ、惨劇の終末が始まった。ラーゼフォンとは何なのか?綾人・久遠の真の姿とは?すべての謎があかされる、小説ラーゼフォン、ついに最終巻。》(「BOOK」データベースより)
田中光二『灼熱の水平線』角川文庫・1981年
《私はいったい誰なのだ。側には射殺された死体があり、私は拳銃を握っている。意識は戻ったが、自分が誰で何故ここにいるのかがどうしても思い出せない。私は人を殺したのか? いいしれぬ恐怖が私を襲った。
一方、日本の国家的諜報機関SMOOUPSが発見したMSA(記憶消去剤Aタイプ)は、今迄の軍事、諜報のあり方を根底からくつがえす画期的なものであった。 MSAを狙い、各国の諜報機関の暗躍が始まった。 MSAは誰の手に?記憶を破壊され、殺人容疑をうけた男は誰か。気鋭田中光二が描く近未来小説の傑作!》
松家仁之『火山のふもとで』新潮社・2012年(読売文学賞)
《「夏の家」では、先生がいちばんの早起きだった。―物語は、1982年、およそ10年ぶりに噴火した浅間山のふもとの山荘で始まる。「ぼく」が入所した村井設計事務所は、夏になると、軽井沢の別荘地に事務所機能を移転するのが慣わしだった。所長は、大戦前のアメリカでフランク・ロイド・ライトに師事し、時代に左右されない質実でうつくしい建物を生みだしてきた寡黙な老建築家。秋に控えた「国立現代図書館」設計コンペに向けて、所員たちの仕事は佳境を迎え、その一方、先生の姪と「ぼく」とのひそやかな恋が、ただいちどの夏に刻まれてゆく―。小説を読むよろこびがひとつひとつのディテールに満ちあふれた、類まれなデビュー長篇。》(「BOOK」データベースより)
矢代梓『年表で読む二十世紀思想史』講談社学術文庫・2006年
《20世紀の思想的出来事をまとめた読む年表1883年マルクスとワグナーから1995年デゥルーズまで約百年の文化的事件や人物の記録。細部に拘る筆者の視点から事物、人物の深い相互関連が浮び上がる。 》
ジョン・P・L・ロバーツ編『グレン・グールド発言集』みすず書房・2008年
《その才気あふれるピアノ演奏のように、著者グールドの言葉もまた、私たちを挑発し魅了してやまない。『著作集』『書簡集』につづいて、グールドの音楽と人物を愛する、すべての人にささげる書物。》(「BOOK」データベースより)
ミシェル・アンリ『受肉―〈肉〉の哲学』法政大学出版局・2007年
《フッサール、ハイデガーの歴史的現象学と神学の彼方に、「受肉」を魂と身体の綜合の上に立つ超越論的真理として捉え直す。ギリシア的思惟に基づく世界や存在の現象学を「生」の現象学に置き換えるアンリ最晩年のキリスト教的転回の書。》(「BOOK」データベースより)
谷崎テトラ『グラウンディング・ミュージック』リトルモア・1999年
《キリマンジャロの麓で完全な円を描く虹を見て以来、僕のなかで「電波」が聞こえ始めた。その「電波」はやがて「アレキサンダーの電波」と名乗った…。電波による啓示を綴る、21世紀の最新約聖書。》(「MARC」データベースより)
吉行淳之介『湿った空乾いた空』新潮文庫・1979年
《可憐でやさしく、それでいて嫉妬深く自己中心的な女性M・Mと、ゼンソクの持病がある作家の「私」が、外国旅行をする。ラスベガスでの大喧嘩からはじまって、パリの空港で別れるまでの、一組の男女の繊細な感情の揺れ動きを吐露した表題作。他に、別居した妻と入籍を迫るM・Mとの間で、自己の“青春の復活”を凝視する「私」の緊張感を表白した『赤い歳月』を併録する。》
ジョン・ファウルズ『コレクター 上・下』白水Uブックス・1984年
《網で捕った蝶を殺し、虫ピンで止めて飾って眺めるのを生き甲斐にしていた孤独な青年が、ある日それを美しい女に試みようと思い立ち娘を誘拐する……一面、警察の調書のように非個性的でありながら、表現力豊かな文体で描かれたサスペンス小説の傑作。わが国でも公開された米映画の原作。》
赤川次郎『いつか誰かが殺される』カドカワノベルズ・1981年
《「大財閥永山家の当主志津は、明日70回目の誕生日を迎えようとしていた。家族達は続々と屋敷につめかけていた。長男悟は飛行機で、克次は東京の社から、末っ子千津子は夫法夫を伴い新幹線で。法夫のあとを愛人、千津子のあとを怨みを待つ殺人犯、殺人犯を追う警部、警部のあとを警部夫人……。家族一堂に会した永山邸で志津を祝う為「今年の賭け」が始まった。いうなれば殺人ゲーム……。遂に喧噪と狂乱、欲望と憎悪の宴の幕があく!
●作者のことば
ミステリーの楽しみも多様化しているのが現代である。
もっぱら誰が殺したか、いかにして殺したかばかりを問題にしているのも能があるまい。
殺されて当然の人間がさっぱり殺されずに、では誰が殺されるのか。
そんな興味で読まれるミステリーがあってもいいのではないか。
その結実が本編である。
略歴=一九四八年福岡生。オール読物推理新人賞、角川小説賞を受賞。推理界の若き旗手として活躍。》
小堺昭三『企業崩壊』カドカワノベルズ・1982年
《発明少年だった服部良太は、長じて妻の真穂子と二人だけでへ小型ラジオの製造会社を創設した。やがて、朝鮮戦争を機に思いがけぬ幸運が舞いこみ、「フェニックス無線工業」会社は一躍、市場を海外にまで拡大し、大手電機メーカーヘと急成長を遂げる。しかし、その成功の絶頂にある時、すでに内部からの崩壊の兆しが見えはじめていた…。
日本の戦後史を背景に、急成長を遂げた企業と経営者の成功と転落の物語を活写した書下し長編小説。
●作者のことば
これは『企業参謀』につづく私の書きおろし企業小説である。
「フェニックス無線工業」はマンモス・メーカーではないが、崩壊現象がはじまったときの企業は、大小を問わずこのようになってゆくものなのだ。
「これはあなたの会社の物語ですよ」とサラリーマン諸君に告げたい。
読んで損はない作品にすることができた、その自信は大いにあるつもりだ。
略歴=一九二八年福岡県生。芥川賞候補、昭和史の作品で活躍。「破天荒一代」「企業参謀」他。》
森村誠一『人間の証明』角川文庫・1977年(角川小説賞)
《高層ホテル最上階に浮かぶ豪華なスカイレストラン。到着したエレベーターの扉が開いた。次々に降りる客に取り残されて、うつろな表情をした一人の若い黒人が突っ立っている。やがて、その男が崩れるように倒れた瞬間、鋭い悲鳴が上がった。男の胸には、深々と刺しこまれた血まみれのナイフが!
事件を担当した所轄署の棟居刑事は、異常な執念で捜査にあたった。彼は幼い頃、衆人環視の中で、無法な米兵たちに父親をなぶり殺しにされた。「米兵は勿論だが見殺しにした群衆が憎い」。彼は、やり場のない怒りを犯人追跡に向けて激しく爆発させていった……。
第三回角川小説賞に輝く感動の推理巨編!》
フレデリック・フォーサイス『ジャッカルの日』角川文庫・1979年
《民主主義国家の元首で、ドゴールほど自国の一党派に生命を脅かされた人物はいない。秘密軍事組織OASは、6回にもわたってドゴール暗殺を企てたのである。
度重なる失敗で窮地に追いこまれたOASは、最後の切札を切り出した。凄腕のイギリス人殺し屋の起用である。
暗号名ジャッカル――ブロンド、長身、引きしまった体躯の待ち主。射撃の腕は超一流。
だがOASの計画はフランス官憲に知られるところとなった。ジャッカルとは誰か? 暗殺決行日は? ジャッカルはどこからフランスに潜入するのか? 正体不明の暗殺者を追うルベル警視の必死の捜査が始まったが――全世界を沸かせた傑作ドキュメント・スリラー。》
花田清輝『俳優修業』講談社文芸文庫・1991年
《東洲斎写楽の役者絵についての精妙な分析にはじまり、“芸”という虚と実の“皮膜”の“遊び”から“役者”という虚にして虚ならず実にして実ならざる追求者に話を展開し、沢村淀五郎の芸談だとする『四徳斎雑記』を補助線として、独自な精神を奔放に飛行させる花田清輝の世界。転形期をしたたかに生きる不撓不屈の諧謔の精神。常に精神の前衛でありつづけた著者の代表的作品。》
マリオ・プラーツ『バロックのイメージ世界―綺想主義研究』みすず書房・2006年
《17世紀バロック時代のヨーロッパで流行した寓意的=象徴的図像を精査し、そこに現れた“綺想”というイメジャリーのシンボリズムにはじめて体系的に取り組んだプラーツの主著。図版75点併録。》(「BOOK」データベースより)
須田郡司『世界石巡礼』日本経済新聞出版社・2011年
《石巡礼は日本から世界へ。2009年4月からの1年間にわたる40カ国の旅で出会った、巨石・巨岩・石遺跡の写真を、石をめぐるストーリーとともに綴る。地球の記憶を探す旅。》
栗本慎一郎『光の都市 闇の都市』青土社・1981年
《都市論への画期的視座
都市生活に展開される錯綜した事象の深層に分け入り、都市の原型的構造を〈光=政治的中心地〉と〈闇=商業的中心地〉の記号的差異の対立として捉え、〈光〉と〈闇〉のダイナミズムの中に近代社会の成立を見る、気鋭の経済人類学者による挑発的論考。》
大庭みな子『啼く鳥の』講談社文芸文庫・1988年(野間文芸賞)
《『三匹の蟹』で「群像新人賞」「芥川賞」両賞を受賞し、戦後日本文学史の中でも異例の衝撃的デビューを果たした大庭みな子の、作家活動二十年の頂点を示す、深い人間理解と鋭い人生凝視の力作『啼く鳥の』。
野間文芸賞受賞。》
モーリス・メルロ=ポンティ『メルロ=ポンティ・コレクション』ちくま学芸文庫・1999年
《メルロ=ポンティの思想の魅力は、言いえないものを言うために傾ける強靱な思想的な営為にある。彼の思考の根幹にあるのは、客体であるとともに主体であり、見る者であるとともに見られるものであるという「身体」の両義性を考え抜こうとする強い意志である。この「身体」という謎によって開ける共同の生と世界の不思議さ。》(「BOOK」データベースより)
江澤健一郎『ジョルジュ・バタイユの《不定形》の美学』水声社・2005年
《とらえがたき「非-知」の夜の闇。今も生々しい挑発であり続けるバタイユの美術論。雑誌『ドキュマン』や「ラスコー」「マネ」「エロスの涙」などのテクストからバタイユの造形芸術論を追い、その今日的な可能性を考察する。》(「MARC」データベースより)
ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』中公文庫・1973年
《「遊び」のおもしろさは独自のもの、人類文化の根幹たる美的形式を支えるもの――遊びのなかで、遊びとして、「文化」は生まれ、発展したことを、文化人類学と歴史学を綜合する雄大な構想で論証し、遊びの退廃の危機に立つ現代文化に冷徹な診断を下す、今世紀最大の文化史家の記念碑的名著》
生島治郎『東京2065』ハヤカワSFシリーズ・1966年
《昭和8年上海に生れる。昭和30年早稲田大学英文科を卒業後早川書房入社。昭和35年都筑道夫氏の跡を継いで、日本版『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の2代編集長となった。同時にこの頃から海外ミステリ、SFの翻訳、ミステリ評論の分野でも活躍を飴めていたが、1964年日本初の本格ハードボイルド小説と賞讃された『傷痕の街』を発表して推理小説界にデヴュウ、作家生活に入った。その後『死者だけが血を流す』『黄土の奔流』と矢継ぎ早に意欲に満ちた長篇推理小説を発表、とくに最後のものは64年度直木賞候補作となった。その間にもSFへの興味は失わず各誌にSFを書いて行動半径の広い多才な新鋭作家としての活動を続けつつある。マージャン、碁を愛する勝負師であり、個人としては一くせも二くせもある毒舌家だが、同時に名にしおう愛妻家でもあるという――やはりSF的性格の持主である。
チンパンジーを冷凍睡眠用の実験に使う話『前世』昭和生れの入間たちが革命を起す『世代革命』100年後の国際警察機構を舞台に、人間そっくりのロボットを操る暗黒街のボスと闘う一人の秘密捜査官の活躍を描いたSFアクション『東京2065』などショート・ショートを含む8篇の中・短篇を収録した傑作集!》
フランシス・ポンジュ『双書・20世紀の詩人21―フランシス・ポンジュ詩集』小沢書店・1996年
《20世紀フランスを代表する特異な詩人フランシス・ポンジュ。貧しい勤労生活の傍ら、ジャン・ポーランと親交を結び、43歳の時上梓された『物の味方』で、カミュやサルトルに真価を認められ詩壇に登場。語と、語の対象である物、それぞれの物質性を回復することによって、現代人の精神の危機を救う、新たなユマニスムの世界。》(「BOOK」データベースより)
マイケル・ペピアット『フランシス・ベイコン』新潮社・2004年
《奔放な同性愛、破滅的なギャンブル癖、ロンドン社交界での強烈なカリスマ…。ベイコンに関する第一人者が、30年間の交際の記録を基に、ピカソと並ぶ20世紀最大の画家の秘められた謎を明かす、決定的評伝。》(「MARC」データベースより)
井上章一『夢と魅惑の全体主義』文春新書・2006年
《ヒトラー、ムソリーニ…独裁者たちは「建築」を通じて民衆へうったえかけ続けた。一方、「日本ファシズム」が生んだ風景はバラックの群れだった。建築が明らかにする全体主義の正体。》(「BOOK」データベースより)
渡辺哲夫『二〇世紀精神病理学史』ちくま学芸文庫・2005年
《〈力としての歴史〉の喪失、それが二〇世紀的狂気である。失敗した学問・精神病理学の様相と運命を描き、人間の最奥を問う衝撃の意欲作。》
小林久三『社命誘拐』角川文庫・1983年
《苛酷な企業戦争のなかで“社命”という言葉ほど重いものはない。社命によって、企業が非情にもサラリーマンの生活を押しつぶそうとしたとき……。
洋酒業界の老舗を誇る東和醸造勤務の西沢は、異例の抜擢を受け、企画室長に昇格。だが、その代償としてか、「社長令嬢を誘拐せよ」という突飛な命令を下された。
あまりに馬鹿げた業務命令に疑念を抱くが、一年前の妻の惨殺事件の謎をにおわされ、西沢は命令に応じた。
誘拐はあっけなく成功、彼は身代金を受けとったが、誘拐の本当のねらいは意外なところにあった……。
鬼才、小林久三が企業のなかで翻弄されるサラリーマンの闘いを描いた異色長編企業ミステリー。》
大岡昇平『幼年』文春文庫・1975年
《著者の幼年期をはぐくんだ大正初年の東京・渋谷界隈の地理、風物、時代の感触を精緻な記憶力と端正な文体で再現した異色の自叙伝。母への追懐、小学校生活、幼な友達との遊び、引っ越し、そしてヰタ・セクスアリスまでを渋谷の町の変遷を背景に回想する。また本書は懐しき大正年間の東京案内でもある。 解説・奥野健男》
ロバート・シルヴァーバーグ『いばらの旅路』ハヤカワSFシリーズ・1972年
《惑星マニプールの調査から帰ったミナー・バリスを迎えたのは、好奇とそして嫌悪のまなざしばかりだった。だが、それも当然のことかもしれない。マニプールに住む異星人に捕えられ、不思議な手術を施された彼の体は、とても人間とは思えぬ奇怪な姿につくり変えられていたのだ。左右に開くまぶた、複雑な構造をもつ関節、触手の生えた指、外側に円形のしわがよった口、こんな姿を一体だれが人間と呼ぶだろうか?だが、ひとりの少女が彼の異様な姿にもかかわらず彼を愛するようになる。彼女の名はロナ・ケルビン、卵子を科学者に提供して百人の子供の母となった17歳の処女である。ふたりは、彼らを引き合わせた大富豪ダンカン・チョークの援助で豪華な宇宙のハネムーンに旅立つ、しかし、彼らの幸福の背後には、巧妙な手口を弄しつつ彼らを苛立たせ、憎みあわせて再び悲劇のただ中にひきずり込もうとする邪悪な影が忍び寄っていた。意外にも、ふたりの恩人であるチョークは人の悲しみや苦悩を、文字通りむさぼり喰う恐るべき吸血鬼だったのだ。そんなこととは露知らぬふたりは、易々とチョークの術中にはまっていくかに見えたのだが……
本書は受賞こそ逸したが、1968年度ヒューゴー、ネビュラ賞候補作となり作者の新生面を切り拓いた傑作長篇!》
アイザック・アシモフ『地球は空地でいっぱい』ハヤカワSFシリーズ・1973年
《もし過去を見ることができたら?歴史学者ポッタリイは若い物理学者にクロノスコピイ=時間観測機の研究を依頼する。しかし、この研究はなぜか厳重に禁止されていた。そして、ついに装置が完成した時、人類は恐るべき災厄に見舞われたのだ!――『死せる過去』ジャンの口をついてでた「なんだおまえは虫か」から始まる知性をもった虫の闖入事件。人間の想像力を逆手にとって思うままに操る虫も、現代っ子の前にはまったく歯が立たない!――『子供だまし』
ついに、人類は住宅難の悩みから永遠に解放された。異次元空間の開発は、ひとつの家族にひとつの地球を実現したのだ。だが、それを思いついたのは、ひとり人類だけではなかった……そして1?――『住宅難』
夢は商品となった。人々ぱ“夢想家”の見る夢を買い求め、幻想の世界に遊ぶ。だが“夢想家”にとっての楽しみとは何だろうか?――『夢を売ります』
*
本書に収録されている作品は、すべて地球を舞台としている.しかし、それはいささかも欠点となっていない.それどころか、驚くほど多様で驚異に満ち、しかも鋭い批評にあふれた、アシモフの地球の数々が展開されているのだ!》
小林秀雄『ゴッホの手紙』角川文庫・1967年
《「僕が一枚の絵を鑑賞していたということは、
あまり確かではない。
むしろ、僕は、ある一つの巨きな眼に見据えられ、動けずにいたように思われる。」
炎の天才画家ゴッホの手紙の数々を
小林秀雄が読み解いた名著。》
由良君美『みみずく古本市』ちくま文庫・2013年
《博覧強記で鋭敏な感性を持つ著者が古本市に並べるのは時を経てさらに評価を高めた逸品ぞろい。新刊書に飽き足らない読者への読書案内。
【解説: 阿部公彦 】 》
松浦寿輝『官能の哲学』ちくま学芸文庫・2009年
《現代における身体とメディアの関係、そこに生起するエロティックな記号を炙りだす。絵画、映画等、縦横に論じる著者の筆が冴える。
【解説: 小野正嗣 】 》
結城昌治『魔性の香り』集英社文庫・1985年
《出版社に勤めていた江坂は、今、フリーのライターである。退職を契機に妻と離婚し、秋子という女と同棲しているのだが、彼女には嫉妬深い夫かおり、結婚できないでいた。ある日、江坂は新聞を見てドキッとした。知った男が殺されたのだ。しかも、重要参考人として秋子の夫が……。大都会に繰りひろげられる男と女のドラマをミステリアスに描く作品巣。
解説・郷原 宏》
ハロルド・ブルーム『アゴーン―《逆構築批評の超克》』晶文社・1986年
《《アゴーン》―知的超換闘争。影響の逆転戦術。テキストを反読(ミスリーディング)し、ヨーロッパ文化の過去と未来の連続性に光をあてなおす。ケネス・バークをして「桁はずれな本だ」と嘆賞せしめた『反読(ミスリーディング)の地図』以来、ブルームの動向はアメリカの批評の動向であった。ブルームのエッセンス10篇を集めた代表的論集。》(「BOOK」データベースより)
眉村卓『虹は消えた』ハヤカワSFシリーズ・1969年
《社会派SFを標榜する著者眉村卓は、的確な視点と鋭い洞察力の上に立って、ユニークな未来社会を構築し、そこにうごめく人間群像を見事に浮彫にしてみせる。深い苦悩と孤独の影を漂わせながらも、彼らは理想と、己が使命に燃えて雄々しく巨大なメカニズムの壁に立ち向かう。そしてはね返され、叩きのめされ、挫折と悲惨の淵に落ちこんでいく――これもまた、紛れもない一つの未来にはちがいないのだ。眉村卓は、そうした複雑な近未来に生きる人々の人間性回復の叫びを謳いつづけ、そこに真の人間社会を見出すのである。
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七色の虹がゆらめく奇妙な球体を利用して、一国の経済の再建を計った男の栄光と挫折を描く『虹は消えた』見果てぬ夢を“実感装置”の幻影に託して、ひたすら過去へとのめり込む男の話『スラリコ・スラリリ』未来の花形職業〈ビッグ・タレント〉の虚栄の座に青春を賭けた一人の若者の物語『よじのぽる』生命延長の理想に燃えて、サイボーク化センター建設に狂奔する男の話『最後の手段』など十五篇を収録した、進境著しい著者の第三短篇集!》
眉村卓『万国博がやってくる』ハヤカワSFシリーズ・1968年
《眉村SFの基質をなしているのは、彼の未来社会に関する鋭い考察だ。科学技術の発達と、矛盾に満ちた社会機構の中で、苦悩し,、絶望し、闘う人々を描いて、彼独自の未来世界を浮彫りにしたそれらの作品群は多くの読者に好感をもって迎えられ、日本SF界に新風をもたらした。現在、筒井康隆、豊田有恒、石原藤夫らとともに、〈SFマガジン〉の常連作家として、シリアスな未来SFをぞくぞく発表している。現在まで最新作『EXPO'87』を含めて長篇3冊、短篇集1冊、本書は『準B級市民』につぐ2冊めの短篇集である。
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未来の万国博のために奔走する人々が、いつのまにか意外な事件に巻きこまれる、本書のタイトル・ストーリイ『万国博がやってくる』不慮の事故で、3・5Gの高重力下の惑星に緊急着陸した探険隊の物語『重力地獄』申し分ない温暖な時候と豊富な資源に恵まれながら、文明が栄えることのない不思議な惑星の話『惑星総長』近未来の経済社会に起り得る、専門職と一般職、機械と人間の問題をとらえた未来サラリーマンものの数々など新作15篇を収録。社会派SFのリード・オフ・マンとしての面目躍如たる作品を集めたのが本書である!》
吉田健一『東京の昔』中央公論社・1974年
《幾千年かの歴史の中で、人間というものはどれだけ進歩し、どれだけ洗練することができたのだろうか。下宿先のおしま婆さん、自転車屋の勘さん、帝大生の古木君、実業家の川本さん。いずれも味のある登場人物を相手に、おでん屋のカウンターや、待合、カフェーで繰り広げられる軽妙洒脱な文明批評。第二次大戦に突入する前の、ほんのわずかなひととき。数寄屋橋が本当に橋で、その下を掘割の水が流れていた頃の、慎ましやかで暮らしやすい東京を舞台に、人間と人間の社会を論じた、吉田健一最晩年の珠玉の一篇。》(「BOOK」データベースより)
筑摩書房 東京の昔 / 吉田 健一 著
アンドレ・ルロワ=グーラン『身ぶりと言葉』ちくま学芸文庫・2012年
《人類の進化の本質とは、突き詰めてみれば何なのか。本書は人間を動物から区別する二つのもの「身ぶり」と「言葉」から、この大きな問いに迫ってゆく。ここで言う「身ぶり」とはたんなるしぐさに留まらない。技術を含む文化的行動様式いっさいを含んでいる。二足歩行によって頭蓋と手足を発達させた人類が、いかにして「知性」を育み、記憶を外部のアーカイブに託していったのか。その後の文明的価値観に大きな変更をもたらした新たな「欠乏と制御」とは。壮大なパースペクティヴのもと、人の進化に理論的かつ実証的に迫った、スリリングな大著。》(「BOOK」データベースより)
中薗英助『無国籍者』講談社文庫・1978年
《公害の町にある鴨先密入国者収容所に大村福夫と名のる男が収容された。彼は記憶を失い、中国語で日本人だと主張するばかりで身許をさぐる手がかりは何もなかった。唯一の所持品は三つの「9」のついた石鹸だけだ。そこへ三人の面会者がやって来る。この正体不明の人物に石鹸の謎を絡ませたスパイ・ミステリの傑作。》
荒俣宏『図像探偵―眼で解く推理博覧会』光文社文庫・1992年
《蒐集した古今東西の書物から100点以上の図像を選びだし、鬼才・荒俣宏の〈眼〉が推理する。奇想天外、空前絶後の図像綺譚。》(「BOOK」データベースより)
小松左京『ゴエモンのニッポン日記』角川文庫・1974年
《あのゴエモンが、また、ニッポンヘやって来た。にわかじこみの奇妙な日本語、コウモリ傘を斜めに背負い、モーニングに下駄ばきのチンケな宇宙人だ。一万年ぶりのニッポン探訪、見るもの聞くものすべて仰天することばかり、ヤブニラミの目が一層ゆがむ。
――ゴエモンがトイレットペーパーに秘かに書きしるした日記を盗み読んで、わかり易く紹介した記録。
現代の盲点をユーモラスに衝いた痛快SF長編小説、『明日泥棒』の姉妹編。》
金井美恵子『猫の一年』文藝春秋・2011年
《男の嘘とイモなスターはお断り、情容赦なく言葉のファンタジスタがピッチの外へ蹴り出します。当代きっての辛口エッセイ。絶品エッセイと共に、金井久美子のカラー挿画二十五点を収録した贅沢な一冊。》(「BOOK」データベースより)
ル・クレジオ『偶然―帆船アザールの冒険』集英社・2002年
《衰運にむかいつつある映画監督モゲルと青春の盛りに近づきつつある少女ナシマ。“帆船アザール=危険な夢”に我が身を賭けた男と少女を描いて、現代フランス最大の作家が、壮麗なる冒険の世界へ読者を誘う。洞窟で伝説となった男を描く予言的な中篇「アンゴリ・マーラ」所収。》(「BOOK」データベースより)
一休宗純『狂雲集』中公クラシックス・2001年
《『狂雲集』は漢詩の形をとった禅語録である。自ら狂雲子を名のり、はぐれ雲のように生きた一休は、新しい時代の幕開きをまえに、混迷と倦怠に覆われた室町の世相を激しく痛罵した。》
豊田有恒『タイム・ケンネル』角川文庫・1974年
《ふてくされて絶食中の犬が咥えてきた変な鳥。それは何万年も前に絶滅したはずの始祖鳥だった。驚いたぼくの眼前に、銀色服の見知らぬ男が……。
犬小屋に仕掛けられた“タイム・ケンネル”でぼくが運行されたのは、何と23世紀! この世界でぼくは映画の製作を手伝った。“英雄の生涯”がテーマだが、特撮した実物の英雄が醜男や、オカチメンコで話にならない。そこで、ぼくが教えてやった奥の手は?
ユーモラスに世相を風刺した傑作SF、ほか7編収録。》
安部公房『(霊媒の話より)題未定―安部公房初期短編集』新潮社・2013年
《2012年、新たに発見された幻の短編「天使」をはじめ、19歳の処女作「(霊媒の話より)題未定」を収録。戦中から戦後にかけて、作家デビューの時期に執筆されながら、生前未発表のまま残された10編と、敗戦で混乱する奉天を舞台にした「鴉沼」を採録。やがて世界に名を馳せる安部文学の生成期の息吹を鮮烈に伝える初期短編集。(「BOOK」データベースより)》
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