9月は出かける用も多かったのに移動中に意外と本が読めなかった。
今回、装幀が懐かしいというのは、毎度のSF、ミステリ、福武文庫などのほかに、磯崎新編著『建築のパフォーマンス』、植島啓司『分裂病者のダンスパーティ』、栗本慎一郎『鉄の処女』、ジル・ドゥルーズ/フェリックス・ガタリ『カフカ』、レイ・ブラッドベリ『死ぬときはひとりぼっち』など、出ていた当時に立ち読みだけしていたもの。梶龍雄は古書市場で妙に高騰している推理作家だが、たまたま108円で手に入った。
昨夜の台風で庭木が1本倒れ、雨樋もへし折られて落ちた。以前落ちたときに雨漏りを起こした部分なので、早めに直さなければならない。
先月、ブロック塀を直したばかりで、補修工事が続く。
吉田健一『書架記』中公文庫・1982年
《手に馴染み慈しんだ数々の書物への想い――柔軟な感性と硬質な知性が織りなす〈書物〉本来の感触への案内状。読書家のための十四篇》
吉田健一『東京の昔』中公文庫・1976年
《都会に住むにふさわしい人間がいて
人間が住むにふさわしい都会があって
時空を超えて暮らしを思わせる東京の昔
自転車屋さん、留学志望の青年……
おでん屋の酒の匂いも漂う長篇異色作》
磯崎新編著『建築のパフォーマンス―〈つくばセンタービル〉論争』PARCO出版・1985年
《国家が神のごとくに降臨する場所であったとしても居心地が悪くその姿をつかみどころなく押し流すような様式はないか喚起力をマイナスに向けてひたすら発動する仕掛けをつくること》
武満徹『夢の引用』岩波書店・1984年
《映画は夢だ-いま私たちが映画から読みとれることは何か.映画館という夢の濃くたちこめる闇の空間で,6歳の時から観つづけてきた古今東西の映画を縦横に語る作曲家の映画体験は,現在の最も先鋭な文化論でもある.》
植島啓司『分裂病者のダンスパーティ』リブロポート・1985年
《五年前に『男が女になる病気』を書いて以来、この次は「形式化されない知識」を取り扱いたいとは思っていた。そして、それに取り組んだ「境界領域」の人々を同時に評価したいとも思っていたのである。たとえば、G.ベイトソン、J.C.リリー、R.D.レイン、S.フェレンツィ、W.ライヒ、B.ベッテルハイム、N.O.ブラウン、M.レリス等々である。それは本書で一部成就できたと思っている。》(「後記」より)
栗本慎一郎『鉄の処女―血も凍る「現代思想」の総批評』カッパ・サイエンス・1985年
《「鉄の処女」とは、中世ヨーロッパで使われたといわれる刑具あるいは拷問具である。外見ぱ愛くるしい美少女の人形だ。しかしてその実体は、前面が観音開きの扉になっており、扉の裏側には長くて鋭いトゲが無数に植えられている。この「鉄の処女」の中に人間をおしこんで扉をしめるとどうなるか……、想像するだに血も凍ろうというものだ。
この本は、高血圧、心臓病、脳血栓のおそれのある学者、思想家、評論家、単なるバカ、単なるフツーのオバさんが読んではいけない。もし、この禁を破って廃人のようなものになっても、当方はいっさいの責任を負いかねるので、そこのとこヨロシク!》
ジル・ドゥルーズ/フェリックス・ガタリ『カフカ―マイナー文学のために』法政大学出版局・1978年
《世紀の名著『アンチ・オイディプス』と『千のプラトー』の間に刊行された、すさまじい思考の生気が、新訳で蘇る! ただ不条理を内向させるのではなく、あくまで闘うカフカ、書きながら、奇妙な戦いを続けたカフカ、悲劇ではなく喜劇、否定ではなく肯定、超越ではなく内在……。〈マイナー文学〉として、カフカ自身の書いたテクストを〈名作〉の囲いから引きずりだす。〈政治〉の定義を再考し、生々しく蠕動する〈過程〉そのものとして読み直す。》
レイ・ブラッドベリ『死ぬときはひとりぼっち』サンケイ出版・1986年
《ある雨降りの晩、海にむかって走る赤い路面電車の車中には、その街に住む売れない探偵小説作家の「私」が乗っていた。背後の席から酒臭い息とともに、男の呻き声が彼を襲う。「死ぬときはひとりぼっちだ!」その呻き声を聞いた同じ夜、私は、街の運河に浮かぶ動物園のライオンの檻のなかに死体を発見した。次々に住人を襲う謎の死と失踪。そして、男の残していった呻き声との関係は…。時は、1949年。南カリフォルニアのさびれた海辺の街、ヴェニス。崩壊寸前の海上公園と、朽ちかけたアパートに棲む人びとの、暗い過去と現在の狭間を縫うように、主人公の「私」と中年刑事が謎を追っていく。米国の作家に多大な影響を与えただけでなく、あのスピルバーグが「私のパパ」と呼んだブラッドベリが、十年ぶりに書き下したハードボイルド探偵小説。》(「BOOK」データベースより)
眉村卓『産業士官候補生』角川文庫・1978年
《小さな字でびっしりと書き込まれた百ページものカタログを前に男は言った。「諸君、明日テストをするから、それを全部覚えておくように…」
ここにいるのは、社会をコントロールできるエリート育成のために、全国から集められた知能指数百五十を超す若者ばかりであった。気が狂うほどの精神的、肉体的訓練をこなしてゆく彼らには、人間的な幸福は不用なのだろうか…?
人間不在の現代産業文明に鋭くメスを入れる、眉村卓の社会SF集。全九篇収録。》
収録作品=工事中止命令/最後の手段/虹は消えた/助け屋/クイズマン/ガーディアン/スラリコ・スラリリ/午後/産業士官候補生
井上ひさし・佐藤光信・南原幹雄『歌麿の世界』講談社文庫・1976年
《繊細な筆致から醸し出される絵画空間が遠く欧州の両家たちにも影響を与えた青楼画家・歌麿。私たちはその大首絵と艶麗なる春画に美の特質を発見する。が同時に、爛熟した江戸文化のただなかにあって庶民として徹し反権力の位相を貫いた生きざまにも興味を禁じえない。これはその気骨の絵師の魂の評伝画集である。》
筒井康隆『私説博物誌』新潮文庫・1980年
《イボイノシシ、グンカンドリ、シリコニイ、ハンミョウ、グァナコ、ボネリア、モア、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ、ボウリュウ、イソードン、アカウアカリ、ジョウチュウ、カッパ、ヒト……。珍獣、妙鳥、奇魚、怪草、あらゆる種類の生物の知られざる生態を機知縦横に紹介しながら、人間社会に視点を移し入れ、筒井康隆一流の人間批評を試みたユニークなエッセイ。》
レイ・ブラッドベリ『ウは宇宙船のウ』創元推理文庫・1968年
《幻想と叙情のSF詩人レイ・ブラッドベリの不可思議な呪縛の力によって、読者は三次元の世界では見えぬものを見せられ、触れられるものに触れることができる。あるときは、読者を太古の昔に誘いまたあるときは突如として未来の極限にまで運んでいく作者の非凡な腕こそ、まさに驚嘆に値いしよう。本書は特に作者が、熱烈なSFファンの要望に応えて16編の短編を自薦した珠玉の短編集である》
収録作品=「ウ」は宇宙船の略号さ/初期の終わり/霧笛/宇宙船/宇宙船乗組員/太陽の金色のりんご/雷のとどろくような声/長雨/亡命した人々/この地には虎数匹おれり/いちご色の窓/竜/おくりもの/霜と炎/タイム・マシン/駆けまわる夏の足音
レイ・ブラッドベリ『スは宇宙のス』創元推理文庫・1971年
《――ヴェルヌはぼくの父親、ウェルズはぼくの賢明なる伯父さん、ポオは蝙蝠の翼をもった従兄弟、シェレー夫人はぼくの母親だったこともある。バローズやハガード、スティヴンスンの小説をむさぼり読んだ少年の日のぼく―― 幻想と抒情のSF詩人レイ・ブラッドベリが流麗な文体で、読者を幼年時代へ、怪異な夢魔の息づく不可思議な世界へと誘い込む。「ウは宇宙船のウ」についで、SFの巨匠がみずから編纂した珠玉の傑作短編集。》
収録作品=さなぎ/火の柱/ゼロ・アワー/あの男/脱出する男の時間/孤独な散歩者/別れも愉し/透明少年/ぼくの地下室へおいで/遠くて長いピクニック/泣き叫ぶ女の人/微笑/浅黒い顔、金色の目/市街電車/飛行具/イカルス・モンゴルフィエ・ライト
井上ひさし『他人の血』講談社文庫・1982年
《袋を足に鎌首もたげて、勝手に歩き出したイチモツは女の股間にもぐりこむ。驚愕と喜悦にうちふるえる女。オレの背筋を電流がはしる――口、指、へそ、足など肉体の一部が自在に変化して、主人公の秘めた熱い願いをかなえてくれるのだが……。奇想天外な発想と、巧みな語り口で展開するセクシャル・ブラック・ユーモア。文句なく笑わせる傑作十篇》
収録作品=他人の足/他人の指/他人の臍/他人の核/他人の穴/他人の眼/他人の口/他人の目/他人の皮/他人の血
レイモンド・カーヴァー『ぼくが電話をかけている場所』中公文庫・1986年
《村上春樹がレイモンド・カーヴァーのことを教えてくれなかったとしたら、この魅惑と謎に満ちた現代アメリカ作家をきっとずうっと知らずにいたことだろう。短篇しか書かないカーヴァーが、どんなに大きな作家であるかは、わずかな枚数の作品を一つでも読んでみれば、すぐに判然とするに違いない。》
収録作品=ダンスしないか?/出かけるって女たちに言ってくるよ/大聖堂/菓子袋/あなたお医者さま?/ぼくが電話をかけている場所/足もとに流れる深い川/何もかもが彼にくっついていた
ヘンリー・ミラー『暗い春』福武文庫・1986年
《ニューヨークの下町ブルックリンで幼少年時代を過ごし、その後国内各地、アラスカ、さらにはパリを放浪したミラーが、郷愁をこめて綴る幼き日の思い出。機械文明に毒され、第二次世界大戦の翳が忍び寄るアメリカに対する痛烈な批評精神に溢れた名作。》
ヘンリー・ジェイムズ『嘘つき』福武文庫・1989年
《虚言癖のある男の妻に恋した主人公の千々に乱れる心の動きを克明に追った表題作「嘘つき」ほか、「五十男の日記」「モード・イーヴリン」の中篇3作を収録。登場人物の内面に〈視点〉を置くという画期的な手法で20世紀文学の扉を開いた、ヘンリー・ジェイムズの傑作心理小説。》
山田風太郎『くノ一忍法帖』角川文庫・1973年
《1615年――。大坂城落城に際して、真田幸村は5人のくノ一(女忍者)に秘策を与えた。忍法のかぎりをつくして秀頼の子だねを身ごもり、豊臣家の再興をはかれというのだ。――千姫の侍女の中にこの女忍者がいる! 家康は仰天した。可憐な千姫にとりついた豊臣家の亡霊め。禍根はいまのうちにつみ取ってしまわねば……。
千姫と家康、伊賀忍法と信濃忍法の妖しく凄惨な争い。バラエティーに富んだ忍法小説の最高傑作!》
山田風太郎『くノ一紅騎兵』角川文庫・1979年
《謙信亡きあとも諸国に威信を示す猛将上杉景勝は、重臣直江山城守の推挙で一人の小姓を召しかかえた。女と見紛うばかりの美童だが恐るべき剣技の持ち主で、景勝は連日連夜寵愛した。
やがて、風雲急を告げ、上杉家としても大阪方に就くか徳川方に就くかの決断の時を迎えた。その昨、直江山城守が一人のあかん坊を抱いて登城レ「上杉家のおん嫡子でござる」と言上したのである。豪胆な景勝もさすがに仰天した。女を抱かない彼に子供が生まれるはずがない。母親は意外にも、彼が溺愛したあの美童だったのだ……。
“くノ一”ものの傑作を精選した読者必読の忍法帖!》
収録作品=くノ一紅騎兵/忍法聖千姫/倒の忍法帖/くノ一地獄変/捧げつつ試合/忍法幻羅吊り/忍法穴ひとつ
山田風太郎『首』現代教養文庫・1977年
収録作品=みささぎ盗賊/万人坑/蓮華盗賊/山屋敷秘図/首/怪異投込寺/天衣無縫/姫君何処におらすか
佐藤さとる『宇宙からきたかんづめ』講談社文庫・1988年
《スーパーマーケットでふと手にしたパイナップルのかんづめから、不思議な声がひびいてきました。それは、ぼくだけに聞こえるテレパシーのような現象でした。―SF童話の傑作「宇宙からきたかんづめ」ほか、「こおろぎとお客さま」「かえるのアパート」「魔法の町の裏通り」など、神秘の世界に誘うファンタジーの名品を十二編収録。》
収録作品=こおろぎとお客さま/ねずみの町の一年生/かえるのアパート/魔法の町の裏通り/とりかえっこ/ヨットのチューリップ号/えんぴつ太郎の引っ越し/小さな竜巻/宇宙からきたみつばち/たっちゃんと電信柱/魔法のはしご/宇宙からきたかんづめ
佐藤さとる『口笛を吹くネコ』講談社文庫・1981年
《タカシとサトミが、人間のことばを話すとらネコに会い、ネコに変身する「口笛を吹くネコ」、アリを小人にかえる魔法のステッキ、作文を書いてくれる魔法のえんぴつ――ヒロシの作るお話がふしぎで楽しい世界にさそう「ぼくは魔法学校三年生」に、「この先ゆきどまり」「角ン童子」「ぼくのおばけ」など現代の語部佐藤さとるのファンタジー童話七編を収録。》
収録作品=ぼくのおばけ/いじめっ子が二人/この先ゆきどまり/えんぴつ太郎の冒険/角ン童子/口笛を吹くネコ/ぼくは魔法学校三年生
星新一『天国からの道』新潮文庫・2005年
《前人未到のショートショート1001編という偉業を達成した星新一。長い作家生活のなかで単行本に収録していなかった作品を集めた没後の作品集『気まぐれスターダスト』を再編集。デビュー以前の処女作「狐のためいき」など初期作品と、1001編到達後の「担当員」を収録。さらに、文庫未収録のショートショート6編を加える。「まだ読んでいなかった」作品をそろえた、愛読者必携の一冊。》
収録作品=天国からの道/禁断の実験/友情/ある声/悪夢/けがれなき新世界/平穏/つまらぬ現実/原因不明/ぼくらの時代/火星航路/Q星人来る/珍しい客/狐のためいき/担当員/収穫/壺/大宣伝/禁断の命令/疑惑/解放の時代
眉村卓『出たとこまかせON AIR』角川文庫・1979年
《さあさあ皆さん始まりだよ!
ぶっつけ本番、出たとこまかせ!
ワルのり、気まぐれ、苦しまぎれ!
突飛で変てこりんで愉快なお話!
――そばつゆ甘いかしょっぱいか?
――過去は何色? そして未来は?
――金言、格言をウラから見れば?
SF的発想と、ユニークな知識が満載されたこの一冊で、あなたは楽しみながらインテリジェンスを磨くことができる。さあこの「出たとこまかせON AIR」に、ピタリとチャンネルを合わせてみましょう。》
眉村卓『C席の客』角川文庫・1973年
《妙な男が新幹線のC席にすわった。赤い髪をして鼻が高く、まっ黄色のブレザーを着ている。強烈に人目をひく男だ。印刷されてない白紙の本を取りだし、何分かおきにページを繰ってニヤニヤ笑っている。つぎの瞬間、ぼくはドキッとした。その男には、指が4本しかないのだ。乗客たちはまったく無関心、見向きもしない。ぼくは恐怖でしだいに冷や汗が出てきた……。
企業や社会慣習にもみくちゃにされる滑稽であわれな人間像、現代の盲点や落とし穴を鋭くえぐるSFショートショートの傑作集!》
収録作品=特訓/発明チーム/有望な職業/キャンプ/成功者/倉庫係/ヘルメット/使命/災難/ビルの中/C席の客/ディレクター/レジャー・パイロット/知識ロボット/職場/旧友/蘇生/審査委員/新人/美しい世界/来訪者/職住密着/ヒゲ/夜行列車/新広告/ミスター・カレー/自動管制車/降雪/音/理由/みんなの町/報告者/正義の使者/テレビドラマ/意欲/パーティ/監視員/スポーツ/模範社員/帰途/ロボット楽隊/日曜日/支配人/ホテル/住人/土地成金/自衛剤/校庭/拾得物/出勤/似合いの夫婦/青い市民証
赤江瀑『春喪祭』徳間文庫・1985年
《相思相愛の野田涼太郎と初めて結ばれた翌日、なぜか吉村深美は野田の前から姿を消した。そして一年後、牡丹で知られる奈良の長谷寺の門前町・初瀬で、死体となって発見された。琵琶の撥で手首を切り、琵琶の裏甲には万葉集の恋歌三首が書き遺されていた。野田は深美の死因を求めて初瀬に赴くが、そこでみたのは不思議な無明世界であった(「春喪祭」)。耽美派の気鋭、泉鏡花賞受賞の著者が描く妖かしの世界。》
収録作品=夜の藤十郎/春喪祭/宦官の首飾り/文久三年五月の手紙/百幻船/七夜の火
辻真先『死によって幕があがる』カドカワノベルズ・1983年
《百合香は私との愛の最中、毒を飲んで死んでしまった。チクショー、私から恋人を奪った罰で、リュウという男を捜しだして殺してやるわ!――そう、私と百合香はレズビアン。私は売れないCMタレントで、ガキっぱいらしいけど、彼女をいつも愛していたわ。なのに百合香に男ができて妊娠して四ヵ月、赤ちゃんの心音が聞こえるまでになって捨てられたの。可哀相な百合香…、私は復讐の魔女になってやる!! 長編ユーモア・ミステリー。》
夢枕獏『悪夢喰らい』角川文庫・1985年
《憑かれたように走って死を迎える男。満月の夜に繰りひろげられた血塗られた饗宴。内臓をむさぼる美しい女。漆黒の虚空を泳ぐ巨大な竜。濃霧の中から突然広がる屍累々の世界。壜の中に浮かぶ緑色に染まる女の裸体……。
日本土着の残虐と優美を現代に投影する、めくるめく幻想と現実の夢魔。当代きってのエンターティナーが描く、鮮烈なイマージュの全九話。
収録作品=鬼走り/ことろの首/中有洞/のけもの道/骨董屋/四畳半漂流記/八千六百五十三円の女/霧幻彷徨記/深山幻想譚
梶龍雄『連続殺人枯木灘』徳間文庫・1986年
《太平洋戦争末期、陸軍憲兵隊司令部の密命を受けて前線へ向った貨物船が、新開発の武器と研究員を積んだまま、消息を絶った。そして三十年、南紀・枯木灘に面した漁港で、新種のオサムシを採集にきた昆虫マニアが銃弾に斃れるという事件が発生、不審を抱いた友人の宇月与志雄が、凶弾の「ISIO」の文字を手掛りに捜査を始めたところ、相次いで殺人、更には近所の島の乗取りまで起きて……。長篇推理。》
小林久三『日蝕の檻(上)』講談社文庫・1980年
《東洋映画の若手プロデューサー加瀬は、映画「日蝕の森」の製作に情熱を燃やしている。ところがその矢先、彼の眼前で主演女優の横井美奈がビルから墜死し、俄かに前途に暗雲が立ちこめた。しかも何者かが加瀬を監視しているような気配も……。現在の事件からさかのぼり、戦後映画史の暗黒部を描く野心的推理長篇。》
小林久三『日蝕の檻(下)』講談社文庫・1980年
《映画「日蝕の森」の製作は上部からの圧力で中止させられ、加瀬が映画界の複雑な人脈図のはざまで混惑している一方、神谷部長刑事は濃厚な犯罪の匂いをこの映画界の底流に嗅ぎとっていた。戦後混乱期の映画界を支配した人間たちの過去が今あばかれようとしている……。得意の題材に全力を投じた著者の会心作完結。
天野かづき『モブは王子に攻略されました。』角川ルビー文庫・2016年
《「異世界に召喚された聖女が、エッチをした攻略対象者にドラゴンを倒す力を与える」という18禁乙女ゲームを姉の命令でプレイしていた奈津は、突然の落雷で死んでしまう。ところが目が覚めると、ゲームで聖女が召喚された時と同じ様に美形攻略対象者達に囲まれていた。聖女として国を救って欲しいと言われ、自分は男だしあり得ないと否定する奈津だが、攻略対象者達はゲーム通りに奈津を口説いてくる始末。それでもなんとかフラグを折り続けていたある日、ついに王子に襲われた奈津は力を奪われて!?》
若月京子『スイート? スイート! キッチン』セシル文庫・2007年
《すらりとした長身で、端正な美貌をもつ大学生の斉川芳規は、人付き合いが大嫌いで超面倒くさがり。そんな芳規が珍しく興味を持ったのは、隣に引っ越してきた新入生・牧野基季だった。無垢な黒い瞳が子犬のようで、邪気のない笑顔を向けられるとつい言いなりになってしまう。だが、学費と生活費を稼がないといけない基季はある日倒れてしまい、芳規は基季を食事係として雇うことにしたが――!?
大竹伸朗『ネオンと絵具箱』ちくま文庫・2012年
《現代美術作家・大竹伸朗の視点で切り取る日常の雑感と創作への思い。絵画や音楽、展覧会、スクラップブックや夢日記、ロンドン、別海、宇和島での日常、路上と創作、趣味、家族、友人、過去、未来、そして現実と妄想…日々浮かぶトリトメなきテーマの裏にあぶり出る「わからない雑景」。未収録エッセイ28篇、カラー口絵8頁を収録。2003~2011年のエッセイ。》
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