『潤』は茨木和生(1939 - )の第14句集。
著者は「運河」主宰、「晨」「紫薔」同人。
春着着て童女の笑みのおのづから
蒟蒻を植ゑゐる人に生子(きご)貰ふ
なかなかの面蜂酒の雀蜂
火蛾払ひつつ密猟の打合せ
三人の婆に子がゐず雛祭
雨柱走れる山の山桜
浪殺し途切れず積まれ雲の峰
毒流し誘ふ輩もゐずなりし
黒壁の大きな空き家秋の蛇
共謀をするごとく出て毒茸
崖道を這うて来たるは落鰻
二月二十一日の妻は
青空と言葉でいへて春の昼
二月二十四日、孫の恵が妻に「おばあちゃんはじいちゃんをどう思ってるの」と聞くと「だいすき」という。
ダイスキが最後のことば春日差
二月二十六日午後五時十六分 妻昇天
息絶えてゆく春日差傾きて
野に遊ばむ命生き切りたる妻と
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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