不調で何も読めない日が続き、眉村卓を何冊か無理矢理再読して復調。ケイブンシャ文庫の職場もののショートショート集はかなり久々の再読。
『こんにちは、花子さん』『頑張って、太郎さん』の2冊はどちらも前半がショートショート、後半がエッセイという構成。後に復刊された双葉文庫の『こんにちは、花子さん』は両方のショートショート部分だけを1冊にまとめたらしい。
装幀は『疲れた社員たち』が久里洋二、『職場、好きですか?』が沢野ひとし、『こんにちは、花子さん』『頑張って、太郎さん』が柴門ふみ、『乾いた家族』『ゆるやかな家族』が熊田正男。
国枝史郎『血煙天明陣』桃源社・1970年
《江戸天明期、権勢を誇る老中田沼意次の周辺には、常に血煙が立つ。田沼は、鬼才風来山人平賀源内の差配によって、西洋の粋をこらした怪奇華麗な建築物、逃水屋敷に昼夜をわかたぬ酒池肉林の女悦に耽っていたが、意次の専横を憎む貴公子松平冬次郎は、ままごと狂女お浦の田沼入りを機として、天明五人男と称する異様な盗賊団を操り、田沼に挑戦する。しかし明智の与力十二神貝十郎の策謀の前に悩まされた……。
筆の進むところ、修羅に狂い、煩悩に迷う人間像が、阿鼻叫喚の裡に血煙りに化す。――これは異常の大長篇である。》
山田正紀『長靴をはいた犬―神性探偵・佐伯神一郎』講談社ノベルス・1998年
《「犬男が『女を襲え』といったんだ」――婦女暴行殺人で起訴された男は、法廷で主張した。責任能力の有無が争点になるとの大方の予想を裏切り、弁護士が主張したのは、男の無罪だった。裏付けるがごとく、全く同じ手口の第二の犯罪が起きる。「長靴」と「奇妙な犬神伝説」。異質な二つの要素が事件の鍵なのか!?》
眉村卓『出たとこまかせON AIR』角川文庫・1979年
《さあさあ皆さん始まりだよ!
ぶっつけ本番、出たとこまかせ!
ワルのり、気まぐれ、苦しまぎれ!
突飛で変てこりんで愉快なお話!
――そばつゆ甘いかしょっぱいか?
――過去は何色? そして未来は?
――金言、格言をウラから見れば?
SF的発想と、ユニークな知識が満載されたこの一冊で、あなたは楽しみながらインテリジェンスを磨くことができる。さあこの「出たとこまかせON AIR」に、ピタリとチャンネルを合わせてみましょう。》
眉村卓『ショート・ショート ふつうの家族』角川文庫・1984年
《父、母、そして大学生の兄と、中学三年生で受験生の信夫――こんなごくありきたりの家族なのに、周囲で起きるのは変な出来事ばっかり……。
宇宙人からのお礼の話、成績が上がるか、さもなくば死ぬかという薬の話。窓の下が異次元だった話……いったいぜんたい世の中どうなってんの? 何か天変地異の前ぶれか、それとも夢でも見ているの? ひょっとしたら、もう明日という日はないのかも……。
眉村卓が、ふつうの家庭の周囲を舞台にショート・ショートで描く、ちょっぴり危険で魅力的な全67話。》
収録作品=雨の夜/教卓ジャック/すごい薬/電車を待てば/変な役所/酷使のあと/変な箱/おばけ/訓練/柔道/工事/お礼/警官/みぞれ/仕返し/車内/赤い車/母の姿/ぬいぐるみ/瞬間移動/かん詰め/テレビの調整/スケッチ/切符/居眠り/ポスター/空き地/釣りに行こう/見世物/鉛筆/洗濯物/転落/救出(1)/救出(2)/変なこと/日野青年/なめくじ/告白/おもての子供たち/祈り屋/続おもての子供たち/波/盆踊り/火事のあと/台風来/夢のけむり/椅子の山から/無礼な来訪者(1)/無礼な来訪者(2)/無礼な来訪者(3)/隔離(1)/隔離(2)/隔離(3)/隔離(4)/隔離(5)/隔離(6)/隔離(7)/隔離(8)/隔離(9)/隔離(10)/先行テレビ/錠/五里霧中(1)/五里霧中(2)/五里霧中(3)/五里霧中(4)/五里霧中(5)/雨の夜
眉村卓『午後の楽隊』集英社文庫・1984年
《別に、何の変哲もないネクタイである。しかし、それを締めると人生が突然にバラ色に輝き、幸運ばかりがめぐってくるという。はて、それを買ったものかどうか……。平凡なサラリーマンの夢を描く「特権ネクタイ」ほか、未来社会や宇宙人がにぎやかに登場する笑いと不安のSFショート・ショート傑作選。 解説・影山 勲》
収録作品=知りつくした町/透明妻/図々しい客/空港を出ると…/鍵束の中に…/時間銀行/特権ネクタイ/窓の外/湖岸/伝説的社員/深夜のトラック/からくりとスケッチ/マジメ派/風鈴/駐車場/酔ったらいこう!/家庭設備診断員/むこうの機械/TS用ロボット/評価者/だいじな体/よくあること/社員証/四対三/T市民/移動機/何が?/通告/研究発表/海と月/だれも知らない味/かわいい個人用農園/飛び入り社員/泊めて下さい/やりすぎですなァ/本当の食通/特別訓練中/森山さんのパーティ
筒井康隆『東海道戦争』中公文庫・1978年
《東京と大阪の戦争が始まった。自衛隊の戦闘機が飛び、地上部隊は重装備で進撃、市民兵もぞくぞく参加してテレビ中継車がつづく。斬新な発想で現代社会を鋭く風刺する表題作ほかの秀抜な処女作品集。》
収録作品=東海道戦争/いじめないで/しゃっくり/群猫/チューリップ・チューリップ/うるさがた/お紺昇天/やぶれかぶれのオロ氏/堕地獄仏法
神林長平『猶予の月(上)』ハヤカワ文庫・1996年
《第三眼を額に持つカミス人。かれらは人工衛星カミスに住み、事象制御装置により、惑星リンボス上で社会を営むリンボス生物を制御している。カミス中央機構の理論士イシスは、詩人である弟のアシリスに恋していた。けれども、カミスでは姉弟の恋は禁じられている。イシスは事象制御装置を使って、自分たちの恋を正当化できる世界のシミュレーションを開始したが……日本SFの先端を疾駆しつづける神林長平の意欲的大作。》
神林長平『猶予の月(下)』ハヤカワ文庫・1996年
《世界を“時間”“実現事象”“可能事象”の三次元として表現する事象理論の発明者にして犯罪者であるバールが、理論士イシスのリンボス世界(=地球)でのシミュレーションに干渉してきた。北極圏に近い寒村センティシス、ニューデリー、ロンドン、そして日本の各地で、イシスと恋人である弟のアシリス、バールたちは、名前と外見をさまざまに取り替え、自らの目的を達しようとするが……神林SFの最高峰、待望の文庫化。》
飛浩隆『グラン・ヴァカンス―廃園の天使1』ハヤカワ文庫・2006年
《仮想リゾート〈数値海岸〉の一区画〈夏の区界〉。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、取り残されたAIたちが永遠に続く夏を過ごしていた。だが、それは突如として終焉のときを迎える。謎の存在〈蜘蛛〉の大群が、街のすべてを無化しはじめたのだ。わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦が幕を開ける――仮想と現実の闘争を描く〈廃園の天使〉シリーズ第1作。》
飛浩隆『ラギッド・ガール―廃園の天使2』ハヤカワ文庫・2010年
《人間の情報的似姿を官能素空間に送りこむという画期的な技術によって開設された仮想リゾート〈数値海岸〉。その技術的/精神的基盤には、直感像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった――〈数値海岸〉の開発秘話たる表題作、人間の訪問が途絶えた〈大途絶〉の真相を描く書き下ろし「魔述師」など全5篇を収録。『グラン・ヴァカンス』の数多の謎を明らかにし、現実と仮想の新たなる相克を準備する、待望のシリーズ第2章。》
収録作品=夏の硝視体/ラギッド・ガール/クローゼット/魔述師/蜘蛛の王
マラマッド『アシスタント』新潮文庫・1972年
《社会的成功を夢見る孤独な若者フランク・アルパインは、貧しい食料品屋に強盗に押し入るが、罪の意識に駆られてその店にまい戻り、店員として働くようになる。社会の底辺に一生を埋める馬鹿正直なユダヤ人の店主や、美しく向上心に燃えるその娘との接触によって新しい価値観に目覚める青年の精神の遍歴を通して、困窮と貧苦の中においても人間性を失わぬ真の尊厳性を描く。》
斎藤環『心理学化する社会―癒したいのは「トラウマ」か「脳」か』河出文庫・2009年
《トラウマ、癒し、ストレス、プロファイリング……あらゆる社会現象が心理学・精神医学の言葉で説明される「社会の心理学化」。精神科臨床のみならず、大衆文化から事件報道に至るまで、分野を超えて同時多発的に生じたこの潮流の深層に潜む時代精神を鮮やかに分析。来るべき批評と臨床の倫理を追求する。 解説=樫村愛子》
亀山郁夫『熱狂とユーフォリア―スターリン学のための序章』平凡社・2003年
《スターリン時代と21世紀の社会状況の類似を例示しながら、今こそ、文化と政治をめぐる不条理の学として「スターリン学」構築の必要性を宣言する。大佛次郎賞受賞後第一作。》
坂本幸男・岩本裕訳注『法華経(上)』岩波文庫・1962年
《『法華経』は信仰の対象として強く深くあがめられ唱えられてきたが、同時に美しい譬喩や巧みな説話の数々が文学・芸術の世界にも豊かなものをもたらした。本書では漢訳・読み下しにサンスクリット原典の訳を対向させて、これら様々な要望にこたえる。(全3冊)》
坂本幸男・岩本裕訳注『法華経(中)』岩波文庫・1976年
《この巻には漢訳の「化城喩品」から「従地涌出品」(サンスクリット原文の「前世の因縁」から「求法者たちの出現」)までが収められる。悪人デーヴァダッタやサーガラ竜王の娘の悟りを示して、有名な悪人成仏・女人成仏を述べる章もあり、一般の読者をも強くひきつける。》
坂本幸男・岩本裕訳注『法華経(下)』岩波文庫・1976年
《前章とともに最も重要な章とされる「如来寿量品」ではじまる。仏陀伽耶城の近くで成道した釈迦仏は、実は久遠の昔に成仏した本仏に外ならず、仏はすでに久遠の時より衆生教化をなし続けてきたのである。……そして、薬王、妙音、観音等、様々な菩薩が登場する。》
眉村卓『職場、好きですか?』ケイブンシャ文庫・1988年
《結婚しても仕事を続けて活躍する鷹井戸さんは、会社を一日も休まず、気配もみせずに子持ちになった!? (「スーパーレディー」)。異動の内示が降りた美也子は、転属先が書類倉庫の片隅と知って、くやし涙にくれたけど……(「きらわれもの」)など、誰もが思いあたるOL達の悲喜こもごもをユーモアタッチで描く新感覚ショートショート集。》
収録作品=F商事/立派な先輩/先客たち/必死の夏休み/無人の住居/きらわれもの/内海さん/仕返し/青木くん/もくろみ/へろへろべえ/髪型/尾形さん/休日の会合/Q工業/小さな店/上田くん/触媒/入れもの/姫路県/スーパーレディ/欠落秀才/変な文通/RP工作所/新室長/エイト商会
眉村卓『こんにちは、花子さん』ケイブンシャ文庫・1991年
《同期入社の明子と私は、社内で受付の二美人と呼ばれている。だが、正直に言うと明子と組んでいるのはつらい。やりくりとセンスと才気で、お金持ちのおっとりお嬢さんに対抗するのは疲れるのだ。ある日、奇妙な風体の来客が社長を呼べと言う。困惑する私をしりめに明子は……。新人類からお局さままでオフィスで暮らすOL達のショート・ショートストーリー。》
収録作品=秋田さん/第四部/不死身の男/素直な男/同僚/目の輝き/大鬼・小鬼/似た人たち/魔女のとき/Aくん/資料室/関心/Zテスト/乱闘/憎まれ役/満腹感/好青年/精気/椅子/ロボットの店/石光さん/嘘つき/似たもの同士/久保くん
時間流について/流れをつかむ/『かわ』について/とりとめもなく『川』/『河』からの連想/流れる/『お流れ』考/知る・知らない/流派と認識/急転直下/ダム/とうとう海
眉村卓『頑張って、太郎さん』ケイブンシャ文庫・1992年
《知名度の低いPQ文理大学出身の山崎という男が、全員一致で我社に採用された。有能な上に努力家で、我社に欠かせない戦力となった。だが、ある日、PQ文理大学は新設三年の大学でまだ卒業生が出ていないことが判明。山崎は学歴詐称をしたのだろうか……? (「出身校」より)。上司も部下も隠してる24時間ビジネスマンの本音を満載! オフィスショートストーリー第二弾。》
収録作品=精神強化合宿/近くの他人/試練/読書会/画像面接/人材/出身校/F会館/日曜の研修/偏見/石岡さん/独断的な男/新しい万歩計/意外な成り行き/立場/嫌がらせ/疑心暗鬼/食堂
期待のしかた/〈つもり〉のこわさ/頭から出たもの/〈さら〉と消滅/受動と能動/自己変革について/追いつめられて/上の人/多数派/人間のタイプ/原稿の当落/慣れと先入観
眉村卓『疲れた社員たち』ケイブンシャ文庫・1984年
《閑職に追いやられ、出世の望みを捨てたとき、突然テレパシー能力が芽生えた初老の平社員(「知名・五十歳」)。パラレルワールドの混乱で、過去に別の職業に就いていたもうひとりの自分と遭遇した資材課長(「思いがけない出会い」)。日常に倦んだサラリーマンたちが、ふと出遭った異常な世界の物語。幻想世界へいざなう8つのSFサラリーマン小説集。》
収録作品=ふさわしい職業/まぶしい朝陽/従八位ニ叙ス/知名・五十歳/授かりもの/思いがけない出会い/社屋の中/ペンルーム
眉村卓『乾いた家族』ケイブンシャ文庫・1993年
《吾平は定年間近のサラリーマン。専業主婦の千枝と息子・重助と暮している。昼休み、ランチを食べようとしたレストランで、注文したものとは違う料理がきた。拒絶をしめす吾平だが、なぜかウエイトレスは当惑している。そして……。三人家族に次々とおこる奇妙な出来事を、家庭生活の異空間体験ゾーンに描く書下ろしショート・ショート・ストーリー。》
収録作品=重助/吾平/千枝/痒み/多田さん/よく似た男/右端の電話ボックス/夫と息子/あげる/夜の落花/放置自転車/童謡療法/顔(一)/顔(二)/顔(三)/隣席/レインコート/断念/もらった傘/電車の中/辞めた人/七夕竹/秘密大明神/交差点で/若い幽霊/ビール/CM/還るとすれば/小川くん/素敵なカップル/シャーシャーシャー/大歩行/未来滞在者/Sの指南書/万年青年/妄想/お供/電球と蛍光灯/覚めても夢/夜の支線/動物園で/描きたい/斬られたこと/ほとけ心/反撃/見舞いの花/大伴/冬日和/待合室の本/Kの賀状
眉村卓『ゆるやかな家族』ケイブンシャ文庫・1993年
《吾平は定年間近のサラリーマン。専業主婦の千枝と息子・重助と暮らしている。会社で冷房が急にとまった。暑くなってきたと思ったら、目の前の女子社員の髪がキラキラと虹色にひかりだした。「わたし、困るわ」と言って席を立った彼女は……。ごく普通の三人家族が次々と遭遇する日常の中の異空間を乾いた視線で描く書下ろしショート・ショート・ストーリー。》
収録作品=秒音/早食い/食べる男/忘れていないか/レールの上/棒の重さ/目撃の後/見物(一)/見物(二)/見物(三)/もと犬/髪の色/踊り場の男/行き/帰り/自尊心/井場さん/五十倍(A)/五十倍(B)/自転車の青年/泥縄魂/想像/Hさん/Mの日記/キララの一/距離/キララの二/二泊三日/壁/親の会/立体視の本/キララの三/倉庫の中/人工の園/ミニばら/偽の記憶/車、回ってる/キララの四/寒い日
横溝正史『塙侯爵一家』角川文庫・1978年
《霧深いロンドンの街の片隅で秘密裡に進められたある計画。それは、莫大な資産家塙侯爵の息子で欧州留学中の安道を、思い通りに操れる偽者とすり替える畔沢大佐の陰謀だった。
日本へ戻った偽安道は見事にその役柄をこなし、ライバルの晴道を押えて侯爵の信頼を勝ち取った。だが、その頃から偽安道に変化が生じた。大佐の命令に従わず、勝手な行動をとり始めたのだ。そして、あの忌まわしい老侯爵殺害事件が起きた……。
息づまるサスペンスでたたみかける横溝正史の異色長編、ほか一篇を収録。》
収録作品=塙侯爵一家/孔雀夫人
柴田翔『鳥の影』新潮文庫・1974年
《平穏な日常生活にふとよぎる狂気の影……。大企業の課長代理、テレビ・ディレクター、大学教師など、失われた青春の癒しがたい傷を抱きつつ、現代の第一線で活動する知識人たちが、あることをきっかけとして突如、情念の押えがたい噴出に襲われる。狂気の世界へとつき進んでいく彼等のありさまを通して、捉えどころのない現代の生に、鮮明な光をあてようとする意欲的連作小説集。》
収録作品=鳥の影/彼方の声/食堂の話/鏡の中
佐野洋『人面の猿』集英社文庫・1978年
《猿が人間の子供を身籠ることは、生物学的にはありうることだろうか? ある地方都市のボスを殺人者として告発した高校生の遺作小説が発端となって起ったトルコ嬢の怪死。同じ頃におこるチンパンジーの不思議な妊娠騒動。脈絡のない二つの事件を奇想天外な推理でつなぐ佐野洋のSF趣向たっぶりの快作。 解説・石川喬司》
坂上弘『初めの愛』講談社・1984年(芸術選奨新人賞)
《男は危機的な状況にある。愛人と暮しながら、妻子のほうにも週に一度帰る、そんな状態が会社の取引先社員の失踪によって、明るみに出かねない。自分にも他人にも誠実であろうとする彼が、ふと立ち返るのは、おのれの愛の初源の場……。35歳、中間管理職の、真摯な宙ぶらりんの生。芸術選奨新人賞受賞の野心的長編。》
梶山季之『甘い樹液』徳間文庫・1988年
《アメリカの清涼飲料水会社の東京支社長須賀川碌助は、ライバル会社の不当な販売作戦を封じるため、財界の便利屋春野団蔵に救いを求めた。春野は名うての産業スパイ津村公に調査を依頼する。津村はライバル会社の副支配人権田正典の意外な過去を知る――。己れの罪に怯える人間の苦悩と非情を暴く表題作他、企業謀略の陰にうごめく男女の愛欲図をあますところなく描きつくす産業スパイ小説連作。》
赤川次郎『幽霊列車』文春文庫・1981年(オール読物推理小説新人賞)
《山間の温泉町へ向う列車から八人の乗客が蒸発してしまった。前代未聞の難事件に取り組んだ中年警部は、行く先々で推理マニアの女子大生に出っくわす。捜査の邪魔だとカッカしていたオニ警部殿はいつの間にかこの美女にカッカ。二人のコンビが出会った10の殺人、5つの事件――著者デビューの連作推理〈幽霊シリーズ〉第一弾》
収録作品=幽霊列車/裏切られた誘拐/凍りついた太陽/ところにより、雨/善人村の村祭
松本清張『霧の会議(上)』文春文庫・1990年
《霧のロンドン――。テムズ川にかかる橋に、イタリア最大の銀行頭取が吊るされた。真夜中の奇怪な出来事を目撃した日本人カップル――フィレンツェに留学中の助教授と、カトリック信者の美しき人妻。たちまち二人は、P2組織のマフィアに追われる身となった。スリリングな恋の逃避行。実在の怪事件を背景に描く大型推理長篇。》
松本清張『霧の会議(下)』文春文庫・1990年
《パリからコート・ダジュールへ。高平和子と木下信夫の恋の逃避行は続く。和子の夫・仁一郎も、和子を追ってニースへ。折からモンテカルロでは、各国の文化人を集めて、ハイテクノロジーの時代に抗する「精神武装世界会議」が開かれる。華やかな国際会議の裏に何が潜むのか? 銀行頭取怪死事件との接点は?》
最近のコメント