閑中俳句日記(別館) -関悦史-
日々つれづれの中、目にした句集などについて取り上げていきます。
2013年6 月28日 (金)
「秋草」2013年7月号
「秋草」(編集発行、山口昭男)2013年7月号から。
体操の最後の呼吸すみれ咲く 山口昭男
踊場に蕗の暗さのおよびをり
光より影うつくしき五月かな 立川由美子
トンネルの口の虚しきさくらかな 木田満喜子
海峡を渡る車も夏霞 田口好男
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YMO - CUE
「100年俳句計画」2013年7月号
「100年俳句計画」
2013年7月号から。
通常の結社誌や同人誌ではなく、いつき組による商業誌ということになるらしい(7月号は税込定価600円)。B5版、
48ページ。
この前の6月号から阪西敦子、加根兼光、私の3人で雑詠投句欄の選を受け持っている。
他に投稿欄は杉山久子選の「へたうま仙女」、きむらけんじ選の「自由律俳句計画」、マイマイ出題「詰め俳句計画
」等があり。
投句要綱はこちら
。
以下、「百年百花」(大人コン選考委員4名による4ヶ月間競詠)から。
背のあきしサマードレスの前が海 蜂谷一人
鉱脈は走る蟻の尻光る 都築まとむ
金魚掬うどの子も親に背を向けて 十亀わら
雲海へ牛の尿(いばり)は高きより 鈴木牛後
以下、「放歌高吟」から。
首夏の夜を臭う食肉市場なり 夏井いつき
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HERBIE HANCOCK & THE ROCK IT BAND FEAT:GRANDMIXER D.ST. 1984 LIVE!
2013年6 月26日 (水)
「鷹」2013年7月号
「鷹」(発行、小川軽舟)2013年7月号から。
竹岡一郎が連載中の「俳句時評」は、第1回星野立子賞と第4回田中裕明賞ダブル受賞の津川絵理子句集『はじまりの
樹』について。《懐かしく穏やかで静謐だ、と、まとめてしまうには勿体ない何かがある》。
小川軽舟句集『呼鈴』の特集があって、大石悦子・小川軽舟の対談を掲載。
旅先に妻と落ち合ふ穂麦かな 小川軽舟
朴若葉鉄橋響く旅にあり
うぐひすや洗車の後の水たまり 細谷ふみを
時の日や万屋に買ふ乾電池 山本良明
やや老いて写真館出づ罌粟の花 奥坂まや
遺されし意味おもへとや月日貝 蓬田節子
菓子箱に家族の写真桐の花 永島靖子
剥製のにほふ一間や滝の音 髙柳克弘
石蓴
掻く戦艦大和沈みし日 鳥海壮六
絶叫マシーンまた動き出す暮春かな 岸 孝信
反原発デモ風船が逃げてゆく 安藤辰彦
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David Van Tieghem - "Ear to the Ground"
2013年6 月24日 (月)
「ぶるうまりん」26号
「ぶるうまりん」(編集発行、須藤徹)26号から。
ぶらっくほーるの真ん中にある花明り 須藤 徹
三味線草の合奏淋し風の基地
〈フランシス・ベーコン展五句〉から
叫ぶ教皇重低音の蠅生る
教皇の脳天に散る陽炎よ
東京国立近代美術館
で開かれていた
「フランシス・ベーコン展」
(今は
豊田市美術館
に巡回中)をご覧になったらしくて、それについての須藤さんのエッセイも載っている(これ私も見てたので、近いうちにやはりその句が雑誌に出る予定)。
須藤氏のベーコン展のとは別に「美術と俳句のアマルガム」なる特集が組まれていて、会員諸氏が美術作品をモチーフに句とエッセイを書いている。
なお画像は誌面に載っているのと同じ作品をネットで拾ってきたもの(左上=ハンマースホイ、右上=ゴッホ、左下=伊藤若冲、右下=マレーヴィチ)。
春昼の背後をみせて彳ちつくす 土江香子(ハンマースホイ)
半身は星月夜うねる糸杉 山田京子(ゴッホ)
花ぐもり天衣を纏うフェニックス 三堀登美子(伊藤若冲)
レーニン廟立方体(アルヒテクトン)の冬埋まる 松本光雄(マレーヴィチ)
以下、特集以外の句から。
たくさんの矢印春にむかつてゐる 二上貴夫
浅蜊あつさり高山に来て死ねり 藤尾 州
もなりざへ帰す1/2白菜のほほえみ 及川木栄子
俳諧はブリコラージュ雁瘡癒ゆ 松本光雄
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Ryuichi Sakamoto And Radical TV - TV WAR 1985 - 03 "Robot"
2013年6 月21日 (金)
「白茅」2013年夏号(創刊号)
中田剛を代表とする俳誌「白茅(はくぼう)」が創刊された。副代表坂内文應、編集長羽野里美。
季刊誌で、創刊号は70頁。
安井浩司と長谷川櫂がそれぞれ祝句1句と近詠抄5句を寄せ、招待作家作品に黛執、ながさく清江、さらに特別作品に秋篠光広、藺草慶子、岩田由美、酒巻英一郎、鴇田智哉、中岡毅雄、永末恵子、南うみをが並ぶ。
連載陣が代表・中田剛の「妄想反芻」、青木亮人「俳句と、まわりの景色」、大倉宏「絵のなかの自然」、白尾嘉規「〈波瀾/波蘭〉の国のジャズはどう響くか?」、林浩平「アート・スパイラル・ノート」、坂内文應「瓢鯰日記」、に上原誠一郎の随想という豪華さで、俳誌というよりは出版社のPR誌にも似た雰囲気。
それと「皁莢(さいかち)集」という会員作品欄(10句ずつ)と、「刈安(かりやす)集」という坂内文應選句欄(5句ずつ)。
罌粟かざし合う
遮那業
の少年ら 安井浩司(「近詠抄」から)
白といふ一字たふとし大旦 長谷川櫂(「近詠抄」から)
殻割ると埃あげたり落花生 中田 剛
補筆せん菫の色のインクもて 坂内文應
以下、招待作家作品(15句)から。
貨車一輌おぼろの中に置き去らる 黛 執
鳥交る甕のまはりのいつも濡れ ながさく清江
以下、特別作品(7句)から。
ひるがほに表札がすり減ってゆく 鴇田智哉
あをぞらのまだつめたくて桜餅 中岡毅雄
原子炉を麓に熊の眠れるか 南うみを
西日本の俳誌各誌に出ずっぱりの印象のある青木亮人の連載「俳句と、まわりの景色」第1回は、写真と俳句の類似と相違についてのエッセイ。
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Beethoven Piano Sonata No 31 A♭ major Op 110 Rudolf Serkin
2013年6 月20日 (木)
「藍」2013年6月号
「藍」(編集発行・花谷清)2013年6月号から。
創刊40周年記念号で、伊丹三樹彦、茨木和生、宇多喜代子、室生幸太郎、和田悟朗らが祝辞を特別寄稿。
金曜の環状全線目借時 花谷 清
いつよりか消えたる野井戸土筆摘む 花谷和子
第34回藍賞受賞作品(各20句)から。
川鳴って絵馬も鳴りおり梅の宮 船曳日出郎
うららかやト音記号は左端 徳見淳子
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YMO - Behind the Mask / La Femme Chinoise (Technodon Live)
2013年6 月17日 (月)
「里」2013年6月号
「里」(仲寒蝉編集、島田牙城発行)2013年6月号から。
2月号から
佐藤文香選句欄「ハイクラブ」
というのが始まっていて、「里」会員でなくても投句できることから、私もこの3回ほどつきあっている(投句要領は
こちら
)。
今回は
《生中継されてダイオウグソクムシほぼ動かん》
等、苦し紛れの自由律が5句採られて次席(来月分の投句はできなかった。なぜか今月むやみに句の締切が重なり)。
若い選者を育てるための千本ノックみたいな意味合いの企画でもあるので、なるべく変な句を出したいものである。
小林苑をの連載「空蝉の部屋……飯島晴子を読む」は最終回。
胡瓜切るちくわに芯を通すべく 星野早苗
天道虫鑑真までを歩きをり 男波弘志
警官に階級多し朝桜 ひらのこぼ
以下、佐藤文香選句欄「ハイクラブ」から。
春の夜の赤子の上で回るやつ 上田信治
土器の出る小学校を卒業す 喪字男。
脱いだシャツ脱がしたズボン夏布団 石原ユキオ
行く春の南無コンビニへ急ぐなり 高山れおな
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Wang Chung - Everybody Have Fun Tonight
2013年6 月11日 (火)
「澤」2013年6月号
「澤」(発行、小澤實/編集、榮猿丸)2013年6月号から。
「澤俳句鑑賞」欄を半年ほど私が担当させていただいていたが、この号で連載終了。
両眼をみひらいてをり鵙の贄 小澤 實
もみぢいちまい霜ふちどるをひろひけり
かほよ花生けんと朝を鋏おと 高橋睦郎
雛工房頭(かしら)なき雛並びをり 石橋志野
伊勢海老の荷に凍りたるペットボトル 安西泰子
蝌蚪ひとつ離れゆくなり蝌蚪の紐 赤羽康弘
ランボーを撃ちし銃声街朧 余村光世
蜃気楼崩れ光や食堂車 押野 裕
きやりーぱみゆぱみゆと唱へてみる遅日 野崎海芋
春宵やお好み焼きは押し焼くな 相子智恵
師とハイタッチジャンプする子や卒業す 岩岡加江子
トラックのゆつくりと轢く落花かな 田中 槐
セシウムも芥菜もあり河川敷 齋藤缶二
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Genesis - Land Of Confusion
「陸」2013年6月号
「陸」(発行、中村和弘)2013年6月号から。
長滝を雲に架けたる熊野かな 中村和弘
瓦礫といふ言葉の中の彼岸かな 町山直由
巨船発ちゆきし空間二月尽 淺沼眞規子
いくつもの電極つけて春眠す 淺見玲子
教会の窓は縦長雪降れり 大石雄鬼
蜆汁縄文びとも殻のこす 今田 述
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Morphine - Early To Bed
「東大俳句」第1号(2013年3月)
「東大俳句」第1号(2013年3月)から。
東京大学学生俳句会から発刊されたばかりの、若手中心の冊子。発行=村越敦、編集=今泉礼奈、イラスト・デザイ
ン=野口ま綾。
創刊号の参加者は、有馬明人、日原傳、岸本尚毅、明隅礼子、生駒大祐(※)、上田信治(※)、大野道夫、栗林浩
、佐藤文香、澤田和弥、しなだしん、野口る理、山口優夢、今泉礼奈(※)、越智友亮、小野あらた、千倉由穂、野口
ま綾、平井岳人、福田若之、堀田季何、村越敦(※)、森篤史。
※印のついた4名は句+短文とは別にエッセイも寄稿。
必ずしも東大卒業者・在学者に限られるわけではないらしい。
算額の円の赤白去年今年 有馬明人
蠟梅の甘く冷たく昔めく 岸本尚毅
星探すとき紅梅を見上げたり 明隅礼子
梅林に水なかりける暮光かな 生駒大祐
石鹸玉作る機械と眼鏡の人 上田信治
藁干され好きな人ゐる心地かな 佐藤文香
入学やどの先輩もうさん臭い 澤田和弥
咲くものを見上げ見下ろし入学す 野口る理
ご飯おかはりテレビとは死を映さざる 山口優夢
永き日の家長のような顔をする 越智友亮
壺焼の一滴垂るる炎かな 小野あらた
平泳ぎ昨日の分も放電す 野口ま綾
学校がたくさんの窓だから蝶 福田若之
草摘みぬ舌を引抜く非情もて 堀田季何
iPhoneが世界のぜんぶつくしんぼ 村越 敦
卒業写真みな眩しげに笑ひけり 森 篤史
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