不眠症が悪化して睡眠ズタズタ、肩凝りでゼイゼイ言うだけの一ヶ月だった。
積読本の消化も捗らず。
瀬戸夏子『白手紙紀行』は著者より寄贈頂きました。記して感謝します。
内田百閒『鶴』旺文社文庫・1981年
《『鶴』の百閒は動物や機械の喋る言葉に通じたようである。という意味はあのギクシャクと硬張る官服の鎧を脱いでも、死の不安に不意を討たれる憂いはないようにと、こちらから化けて出る新戦術を割出したということである。これは昭和の文芸における類例を見ぬ新機軸であった。
本書解説、種村季弘「動物・機械・幼年」より》
藤原新也『インド行脚』旺文社文庫・1982年
《人間の河/森と死についての対話/生を完成する場/花の日記/「神」または「0」への道程/河が流れを失う/「奇形礼拝」への心象風景/熱い荒地の上の小僧/河床/薄明にみる“大陸漂移”の航跡》
江藤光紀『カンディンスキー/コンポジションとしての絵画―宗教的主題の解読』コスモスライブラリー・1998年
《抽象絵画の創始者の一人として知られるヴァシリー・カンディンスキー。しかし、その抽象化の過程では多くの対象的要素が生まれ、フォルムと色彩の渦の中に消えていった。そこにはどんな意味がこめられていたのか──数多くの研究者がこの謎に取り組んできたが、依然として多くの謎が残されたままだ。本書は抽象絵画誕生前夜の一九一一年から一二年の宗教的作品群を詳細に検討し、カンディンスキーの隠された図像学を明快に読み解く。図版多数。》
司馬遼太郎『豊臣家の人々』中公文庫・1973年
《殺生関白と仇名された秀次、太閤様以上とささやかれた北ノ政所、非運の星の下に憤死した淀殿母子など、秀吉をめぐる多彩な人間像と人間の哀しさを、権力と策謀の渦中に描き、研ぎ澄まされた史眼と躍動する筆で生き生きと現代によみがえらせる、司馬文学の魅力を満喫させる八百枚の長篇。》
森本哲郎『中国幻想行』角川選書・1983年
《李白、杜甫、白楽天など――中国の詩文は平安の王朝人の時代から今日へいたるまで、わが国の文学・文化全般に深い影響を与えつづけてきた。そうであれば、かの国にかかわりながら、本書はむしろ、日本の文学、日本人の意識の探索をこころみたものであるというべきだろう。日本および西方的なものの解明に思いをひそめてきた著者が、長年の蓄積と方法を中国二〇〇〇年の時空へさしむけて放つ、古典と現地探訪のための最良のガイドブック。》
清水一行『副社長』集英社文庫・1983年
《副社長宮武宏次の投身自殺は、倒産寸前のエアコン・メーカー日本空調に大きな衝撃をもたらした。驚異的な急成長を遂げ、前年東証一部入りを果したばかりで、同社はなぜ、経営危機に陥ったのか!? 実兄である片田社長の背信と責任回避、経営不振企業を喰いものにする悪辣な金融業者……。大型倒産の背後に蠢めく人間の限りない欲望や愛憎の絡み合いをサスペンスタッチで描く企業小説の傑作。 解説・宗肖之介》
清水一行『汚名』集英社文庫・1986年
《準大手の建設会社第四営業部課長代理・種村英生は35歳。社歴12年、妻と娘の3人暮らしだが、ある日、土本第三営業部の阿部君子に誘われ、不倫の関係におちた。一方、種村は50億円と150億円という巨額のビル建設計画の情報を得て、課長の座をかけて走り出した。しかし、そのとき……!? 解説・武蔵野次郎》
内田樹・釈徹宗・茂木健一郎・高島幸次・植島啓司『日本人にとって聖地とは何か』東京書籍・2019年
《多年、聖地巡礼を実践してきた内田樹と釈徹宗が、3名の碩学と争った聖地論争。
脳科学、歴史学、宗教人類学の視点から「日本人と聖地」の関係性を探る!》
C・G・ユング『自我と無意識の関係』人文書院・2017年
《内面のドラマともいうべき、無意識的な心の変遷過程をたどる。ユング思想の全体を浮かびあがらせる絶好の入門書。》
水上勉『わが山河巡礼』中公文庫・1982年
《過ぎゆく時をみつめながら、みずから〈今日のかたりべ〉となって、日本の片隅の歴史と、陰翳豊かな山河と、そこに生きる人びとへの愛を語る。「長府のひと」「与謝の細道」「丹波周山」「信濃の善光寺」「下北風間浦」他、新日本紀行六篇》
清水一行『冷血集団』集英社文庫・1985年
《経営の危機に瀕していた中堅メーカー・タカシマエ業の若き二代目高島正章社長は、会社喰いの“整理屋集団”のリーダーであるとも知らず、経営コンサルタントと称する志賀乙彦に援助を求めた……。だが度重なる志賀の不審な行動を疑問に思い、義父の白川浩一と対策を講ずるが……。企業小説の第一人者が渾身の力で描く戦慄の経済犯罪小説! 解説・権田萬治》
アンリ・トロワイヤ『女帝エカテリーナ(上)』中公文庫・1985年
《十八世紀ロシアの広大な世界を舞台に、権力と愛慾と闘争に生きた華麗で偉大な女帝エカテリーナ。ドイツの小領主のもとに生れ、ロシアの皇帝に嫁したエカテリーナは、幾多の試煉と闘争の果てに権力の座に到達する。波瀾万丈の劇的生涯を活写する話題作。》
アンリ・トロワイヤ『女帝エカテリーナ(下)』中公文庫・1985年
《クーデターによって、夫の皇帝を追放した女帝エカテリーナは、学校を開き、美術館を建て啓蒙専制君主として広大なロシアに君臨する。列強の帝王だちと覇を競い、ポーランドを分割、クリミア半島に進出して領土を拡げる。啓蒙と権力と愛慾に生きた女帝の華麗で偉大な劇的生涯を描く大作。》
岡田温司編『ジョルジョ・モランディの手紙』みすず書房・2011年
《〈わたしたちが実際に見ているもの以上に、もっと抽象的でもっと非現実的なものは何もない、とわたしは信じています。(…)コップはコップ、木は木であるということしか、わたしたちは知ることができないのです〉——この信仰めいたヴィジョンの確かさを試すかのように、《静物》と題された、何の変哲もない壜、缶、器を配した絵を、くり返し描きつづけた画家ジョルジョ・モランディ。
第I部では、生涯、生まれ故郷の町ボロ—ニャのアトリエに引きこもり仕事をつづけた画家が遺した、貴重な手紙の数々を集成。限られた友人知人と交わされた言葉からは、画家の素直な心情がうかがい知れる。同時代の美術批評への関心、古今の絵にたいする好み、顔料への配慮、自作の印刷にむけるこだわり…寡黙だった画家の人と芸術の裏側を語る、細部に満ちた手がかりとなっている。
第II部では、同時代人によるモランディ評はじめ、今日のモランディ論の礎となっている重要な論文、短文ながら興味深い「自伝」、稀少なインタヴュー、ヴェネツィア・ビエンナーレとの隠れた関係に迫る論考など、謎めいた画家モランディに多方向から接近する。》
舟越美夏『人はなぜ人を殺したのか―ポル・ポト派、語る』毎日新聞社・2013年
《理想に燃えたインテリたちが、残忍な虐殺者と糾弾されるようになった過程に何があったのか。平等な社会の独立国を建設する夢が狂気に変わり、制御不能になったのはなぜなのか。気鋭ジャーナリストが人間への根源の問いを抱えて、ポル・ポト派主要幹部に対峙した。人類史の悪夢をあばく類例のない証言。》(「BOOK」データベースより)
伊藤正直『戦後文学のみた〈高度成長〉』吉川弘文館・2020年
《高度成長期の小説は同時代をどう捉えていたか。伊藤整らの作品を経済の観点から読み解き、現代の鏡としての高度成長に迫る初の試み。》
森村誠一『新・人間の証明(上)』角川文庫・1985年
《来日中の中国人女性通訳楊君里は、深夜タクシーの中で突然苦しみだし、麹町署に運ばれて死亡した。不審死に捜査を進める棟居刑事は、遺品の小説集を手懸りに、戦時中満州に、第七三一部隊という細菌兵器研究部隊が存在したことをつきとめるが……。日本軍の暗部を担う秘密部隊をめぐる謎の連続殺人事件。中国女性が辿った数奇な運命。日本人のすべてが背負った戦争の債務を返すべく刑事の執拗な捜査は続く。
「人間の証明」から構想6年。あの棟居刑事が日本人の贖罪をかけて、捜査に挑んだ! 国際長編推理。》
森村誠一『新・人間の証明(下)』角川文庫・1985年
《棟居刑事の捜査によって、中国人女性楊の悲哀に満ちた生涯が浮びあがった。戦時中、日本軍に捕えられた楊は、第七三一部隊のマルタ(人体実験材料)にされた。獄中で生んだ我が子との生き別れ。生体解剖された実の弟。闇から闇に葬られた婚約者の死。まだ見ぬ我が子を求め来日した楊の死を契機に現代史に埋もれた空白の部隊「石井細菌戦部隊」の怖るべき全貌が明らかになった!
戦慄すべき戦争犯罪と現代との接点に展開される国際的規模の長編推理。》
ジャン・コクトー『山師トマ』角川文庫・1955年
《「死んだ真似をしなけりゃ殺られてしまうぞ」と自らの戦死すら虚構化してしまうトマは、無邪気にふるまいだれにも疑われることがない。モダニストを代表するコクトーが描く現代の神話。》
開高健『日本人の遊び場』集英社文庫・1984年
《働きバチの日本人は遊び上手か? それとも遊び下手か? 高度経済成長期の昭和三十年代後半、ようやく“日本人の遊び場”が生まれた。ボウリング場、ナイター映画、釣堀、ヘルスセンターetc。これら遊び場を、行動する作家開高健が探訪した異色のルポルタージュ。これはいわば裏から見た日本観察記でもある。 解説・永山義高》
開高健『破れた繭―耳の物語*』新潮文庫・1989年
《古今東西、あるゆる方法で自伝は書かれた。しかし、《音》によって生涯が語られたことは、まだない。――少年の耳に残る草の呼吸、虫の羽音。落下してくる焼夷弾の無気味な唸り。焼跡に流れるジャズのメロディ。恐怖とともに聞いた「できたらしい」という女のひと言……。昭和5年に大阪に生れてから大学を卒業するまでの青春を、《音》の記憶によって再現する。日本文学大賞受賞。》
開高健『夜と陽炎―耳の物語**』新潮文庫・1989年
《耳の奥に刻まれた《音》の記憶をもとに半生を再構築する。《音》は茫漠たる過去を鮮かに照らし出す。――ヴェトナムの戦場で体験した迫撃砲の轟音。家庭をかえりみない夫に対して妻と娘が浴びせかける罵声。アマゾンで聞いたベートーヴェン……。昭和29年にサントリーに入社し、芥川賞を得て作家となり現在に至るまでを、一人称「私」ぬきの文体で綴る野心作。日本文学大賞受賞。》
C・G・ユング『個性化とマンダラ』みすず書房・2016年
《一見、円の中に花のようなものが描かれているだけの絵が、ユングの手にかかると、深い意味が付与され、生き生きと立ち現われてくる。
「個性化とマンダラ」は、ユング心理学の中でも最高の秘儀とも言うべきものである。ここにわけても重要な5論文を収め、一書となす。》
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