『枯野』は泉沢浩志(1924 - )の第5句集。
著者は戦中に弾圧された新興俳句誌「蠍座」を経て無所属。
気散じの老いの奇声や春霰
枯葎曳けば天心空咳す
宛名なきハガキ混じれる牡丹雪
穴一つ半掘りにして春隣
蛇穴やふと地下駅に降りかけし
見返さる五人囃子のはじつこに
浮世絵の目で見返さる花吹雪
花吹雪大き身震ひして了る
亀鳴くや猫ゐずまひを正したる
残像を枝に吊して鳥帰る
八月十五日まだうごきをりきさまの死
敗戦忌へんな漢(をとこ)がすこし哭く
血が垂るるのみの昭和や心太
木下闇道標のごと爺佇てり
予科練の短剣ほどの秋刀魚かな
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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