『彷徨』は中原道夫(1938 - )の海外詠のみの第13句集(ただし既刊句集からの抄出が主なので、以下に抄出したなかで句集未収録だったのは最後の3句のみ)。
著者は「銀化」主宰。
股引と新嘉坡(シンガポール)で別れけり
二月二十八日 アテネ、朝市(ライキ)探訪
蛇穴を出て私淑せしソクラテス
擬態盡すことをいつより蛾の眠り
雲杉坪
嶺々斑雪酸素買ふとは思はざり
王朝や頸・噴水を切り揃へ
ティオティワカン遺跡
太陽(ひ)の贄となるべく高きへと登る
グラウンド・ゼロ
魂いづこ塔再建の跡地・夏
アンディ・ウォーホル
スープ罐ずらりどれ乞ふ夏の卓
トドラ峽谷
砂ぼこり加へ絨毯鬻ぐかな
ありがたう(シュクラーン)葉付の蜜柑掌に乘せて
急ぐ春でもなからう通してくだされ(スンマ・ヘンナ)
ベルベル語で「通してください」はスンマ・ヘンナ、まるで關西辯
とぐろ巻く血の腸詰(ブーダン・ノワール)聖夜待つ
躄(ゐざ)る者畸形の者も焚火(ひ)へと寄る
腰巻布(ドーテイ)より癤(ねぶと)の足とあかぎれと
マニカルニカー・ガート
ガンガーへ燒かるる人へ初日の出
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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