『谺せよ』は多田薫(1951 - 2018)の遺句集。序文:筑紫磐井。
著者は「花鳥」所属、「六分儀」(旧「ばあこうど」)代表。
うそ寒や朝刊の音したやうな
蜻蛉の眼にある太古光りをり
妻風に飛ばされさうな秋の崖
予算書に木の葉髪落ち重なりぬ
霜柱踏みつつ子等とすれ違ふ
そこここに影絵をつくるうかれ猫
青空は机のうしろ春の部屋
車の燈だけ動きゐる春の宿
春雨や山深く来て朝が来て
ぶらんこに立つてこぐ子のひざのばね
春月や母に抱かれてゐるやうな
山蟻に担がれ踊る羽虫かな
汗の手に伝票一枚ついてくる
深海の魚のごとく雷の街
あぢさゐにつつまれふたりきりの旅
※本書は編者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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