5月は前半は一人ハヤカワ文庫まつりといった感じで(トールサイズになる前の)ハヤカワ文庫積読本を続けて読んでいたのだが、後半またペースダウン。自分の出版記念会などもあって気忙しかったためか。橘上『うみのはなし』、利岡正人『詩集 危うい夢』(再読)は寄贈を受けたもの。記して感謝します。
カバー絵として懐かしいのはクリスティー『バートラム・ホテルにて』(真鍋博)、モラヴィア『深層生活』(ヴィエーリ・ヴァニェッティ)、山田正紀『神狩り』(武部本一郎、福田隆義)等。
アシモフ『鋼鉄都市』、バグリイ『ゴールデン・キール』、フォレット『針の眼』などを手がけている野中昇の装幀も好きだったのだが、最近こういう写実的なカバー絵はあまり見なくなった。
久我有加『恋は甘いかソースの味か』ディアプラス文庫・2007年
《上司のパワハラが原因で人の視線が気になり始め、勤め先を休職していた亘。だが大のたこ焼好きの亘は、その日勇気を出して評判のたこ焼屋に足を運んだ。そこで再会したのがかつて通勤電車のなで知り合い、たこ焼談義を交わしていた徳田。彼は脱サラし、たこ焼屋の店主となっていたのだ。徳田の視線にはなぜか緊張を覚えない。亘はリハビリを兼ね、彼の店を手伝うことになるが……? ソース風味、ナニワの恋の物語!!》
大槻はぢめ『やめてよ❤神父サマ!?』ガッシュ文庫・2008年
《引っ越した先は、両隣が教会(with優しい神父さん)と寺院(with女装癖のお坊さん)という特殊な環境…!? 新しい学校では、早熟な同級生たちにまだ童貞なのかとからかわれてしまう。そんな俺・八神総太は、神父さんにドキドキしながら性欲について相談をしてみた。気に病むことはないと言いつつ、いきなりキスをしてくる神父さん! 『感じられる』カラダかどうか試してくれるというの…!! かと思ったら、お坊さんまで俺にちょっかいかけてくるんですケド! こんなヘンテコ環境で、俺の遅れた性は開発されちゃうの…!?》
柊平ハルモ『伯爵さまと恋のレッスン』B‐PRINCE文庫・2015年
《ジュエリーデザインを学ぶためロンドンに留学中の悠真。しかし、ある事件で国外退去の危機に陥ってしまう。その時、悠真に手を差し伸べたのは、オーステル伯爵ギルフォードだった。英国でも有数の美術品コレクターであり、また華やかで艶めいた噂に事欠かない彼は、パトロンとして悠真を受け入れたいと言い出す。かくして豪奢なマナーハウスへ身を寄せ創作活動に打ち込むことになった悠真は、ある夜伯爵の部屋へ呼び出され…❤》
川琴ゆい華『恋は賢者の愚行』白泉社花丸文庫・2012年
《父親の会社が倒産し、家財没収。一家離散の末ホームレスとなってしまった水嶋知明は、元・親の臑齧り系だめだめニート。変態に襲われかけていたところを、歯科技工士の東雲十和に助けられた。十和は誠実で優しく、お人よしだった。歯オタクではあるが、それはまあ『味』といえなくもない。「いっそ十和が俺を飼ってくれたらいいのになー」ついこぼすと、真面目な十和がまさかの承諾!歯磨き、耳掻き、爪のケア…果ては×××までも!?溺愛にも程がある、主従逆転愛玩ライフ♡》
月東湊『押しかけ花嫁の新婚日記』プリズム文庫・2012年
《黎月華を守るためならなんでもします! 日向は着物量販店に買収されかかっていた花友禅の老舗工房・黎月華の玄関先で、大見得をきった。ずっと憧れていた、跡取り息子・総の力になりたかったのだ。そんな日向に、総は男らしい双眸をすがめて紙袋を渡し、それに着替えてホテルのロビーに来いと言う。中身はなんと女物の振袖一式! あげく、日向は売り言葉に買い言葉から黎月華に嫁入りすることになって…!?》
川西政明『大岡昇平―文学の軌跡』河出書房新社・2016年
《中原中也、小林秀雄らとの文学修業で鍛えられ、従軍、女性関係で磨かれた作家が、それらを糧にしていかに粘り強い散文精神を発揮し、戦後文学の極北的存在となったかを書き下ろす遺稿。》
ロバート・A・ハインライン『メトセラの子ら』ハヤカワ文庫・1976年
《死――人間がけっして逃れることのできぬ定め。ところが、その定めをまぬかれた人々がいた。運命が彼らから死をとりあげ、不死の遺伝子を与えたのだ。だが、そうした“長命族”の存在がひとたび普通人に知れわたるや、全世界はねたみと憎悪のるつぼと化した。普通人との対立を回避するため、“長命族”はついに大宇宙への恒星間飛行へと旅立った! 巨匠ハインラインのライフワーク〈未来史〉シリーズの劈頭をなす問題作》
アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』ハヤカワ文庫・1979年
《突然、警視総監に呼びだされたニューヨーク・シティの刑事ベイリは、宇宙人惨殺という前代未聞の事件の担当にされた。しかも、指定されたパートナーは、ロボットのR・ダニールだった。ベイリはさっそく真相究明にのりだすが、巨大な鋼鉄都市と化したニューヨークには、かつての地球移民の子孫であり現在の支配者である宇宙人たちへの反感、人間から職を奪ったロボットヘの憎悪が渦まいていたのだ……傑作SFミステリ!》
ブライアン・W・オールディス『地球の長い午後』ハヤカワ文庫・1977年(ヒューゴー賞)
《大地をおおいつくす巨木の世界は、永遠に太陽に片面を向けてめぐる、植物の王国と化した地球の姿だった! わがもの顔に跳梁する食肉植物ハネンボウ、トビエイ、ヒカゲワナ。人類はかつての威勢を失い、支配者たる植物のかげでほそぼそと生きのびる存在になりはてていた。人類にとって救済は虚空に張り渡された蜘蛛の巣を、植物蜘蛛に運ばれて月へ昇ること。だが滅びの運命に反逆した異端児がいた……ヒューゴー賞受賞の傑作》
オラフ・ステープルドン『シリウス』ハヤカワ文庫・1976年
《天才生理学者トレローンの高等勤物の脳に間する研究は、ついに恐るべき創造を――神にしてなしうる業績をあげた。シリウスと名づけられたその犬は、人間に匹敵する知能を有し、しかも同じような情緒と感受性を持ちあわせていた。だが皮肉なことにこの業績によって、彼の娘は悲劇の淵に突き落とされてしまう! 現代SFの創成期にあってもっとも重要な作家と評されるステープルドンが、愛と知性の問題をするどく問うた名作。》
デズモンド・バグリイ『ゴールデン・キール』ハヤカワ文庫・1976年
《第二次大戦後まもない頃、ケープタウンの造船所で働くハローランのもとに思わぬ情報がもたらされた。四トンもの金塊や多額の紙幣、宝石類がイタリアの山中に眠っているというのだ。戦時中、パルチザンが略奪し、密かに隠したナチスの財宝だった。一攫千金を夢見たハローランは当のパルチザンの生き残り二人と共に、自ら設計したヨットでイタリアヘ向かう――奇抜な金塊輸送手段を胸に秘めて。だが、行手に待つのは、彼らの目的をいち早く察知したハイエナのような男達、そして嵐の地中海だった! 臨場感溢れる筆致で描く傑作冒険アクション!》
ケン・フォレット『針の眼』ハヤカワ文庫・1983年(アメリカ探偵作家クラブ賞)
《連合軍を嘲弄するかのごとく、英国内で活動を続けるドイツ屈指のスパイ〈針〉。彼がかつてない重大機密を入手したのは1944年の春だった。フランス進攻を狙う連合軍のカレー海岸攻撃準備は偽装であり、陰ではノルマンディ上陸が企図されていたのだ。〈針〉はこの情報を手ずからヒトラーに届けることを決意、彼の動向を探知した英国軍情報部の追撃をかわしつつ祖国へ向かう。が、途中たどり着いた北海の孤島に待つのは、危険な愛と思わぬ運命の変転だった! 鬼才がアクションとロマンスを満載して贈るアメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞受賞作!》
アガサ・クリスティー『バートラム・ホテルにて』ハヤカワ文庫・1976年
《ロンドンのバートラム・ホテルに行きたいわ。姪から気分転換の旅行を勧められたミス・マープルはこう答えた。そこは古き良きエドワード王朝の面影を今なお残す格調高いホテル。ここ数年ロンドンを荒し回っている強盗団の脅威とも無縁であるかのごとく、優雅な雰囲気を醸しだしていた。だが、徐々に露見するホテル内の錯綜した人間関係。果たして巻き起こった驚愕すべき犯罪とは? 流麗な筆致で描きあげた香り高い本格篇》
アルベルト・モラヴィア『深層生活』ハヤカワ文庫・1983年
《彼女の名前はテシデーリア。売春婦の子として生れ、大金持の養母に育てられたが、色香ただよう18才のとき極左テロリストになった。醜い肥満児からスラリとした美少女に変身した彼女に、性倒錯者の養母が色目を使いはじめたのが発端だった。そしてある日ジャンヌ・ダルクばりに“お告げ”を聞いた彼女は、養母との歪んだ生活にケリをつけるため、お告げに従って革命に処女を捧げることにしたのだった……ブルジョワ家庭の少女がテロリストに変貌する過程をその心理の内側と性生活から描き、現代社会の終末を暗示する。発禁処分を受けた話題の書》
イアン・ワトスン『スロー・バード』ハヤカワ文庫・1990年
《垂直につづく岩壁世界の住人の暮らしぶりは? 地球上のあらゆる距離が増大してしまったら? 21世紀の銀座の社交クラブを舞台にした悲しきラブロマンスはいかがでしょう? 夢の中にお菓子のCMが出てきたら、どうしますか? 誕生日に両親から“世界”をプレゼントされた女の子のお話は? 空中から出現しては消える〈バード〉が跳梁する世界でスケート大会を観戦しませんか? もちろん、とびきり不思議な時間旅行もおまかせください! 英国SF界に燦然と輝く鬼才ワトスンが、あなたを驚異の旅にご案内する日本版オリジナル傑作集登場!》
収録作品=銀座の恋の物語/我が魂は金魚鉢の中を泳ぎ/絶壁に暮らす人々/大西洋横断大遠泳/超低速時間移行機/知識のミルク/バビロンの記憶/寒冷の女王/世界の広さ/ぽんと開けよう、カロピー!/アイダホがダイヴしたとき/二〇八〇年世界SF大会レポート/ジョーンの世界/スロー・バード
矢野徹『悪夢の戦場』ハヤカワ文庫・1982年
《私は、以後この身に降りかかる異常な出来事も知らず、平和な日本で翻訳稼業にいそしんでいた。そして、運命のごとく突如現われた次元嵐は、私を異次元の世界へと転移させてしまう。着いた先は、日本語が通じ、現実の大国とは、異なるもうひとつのアメリカ――異星人の侵略によって、政府の中枢を破壊され、警察や軍までも骨技きにされた恐るべき世界だった。転移後出会った勇敢なる美少女マリリンと共に逃亡を続けていた私は、やがて、自由を愛する人々を指揮して、反撃開始! SFの奔放さ、冒険小説のスピードを見事に盛りこんだ傑作長篇。》
山田正紀『神狩り』ハヤカワ文庫・1976年
《情報工学の天才、島津圭助は花崗岩石室に刻まれた謎の“古代文字”を調査中に落盤事故にあう。古代文字の解明に没頭した圭助は、それが人間には理解不能な構造を持つことをつきとめた。この言語を操るもの――それは神なのか。では、その意志とは?やがて、人間の営為を覆う神の悪意に気づいた圭助は、人類の未来をかけた壮大な戦いの渦にまきこまれてゆくのだった。》(「BOOK」データベースより)
岬兄悟『夢幻漂流者』徳間文庫パステルシリーズ・1990年
《姿は見えない。でも誰かが僕の部屋にいる。足音、むいた覚えのないリンゴ、シャワーを浴びた跡。眠りから目覚めるほんの僅かな間だけ、少女が見える。僕は彼女に恋をした――。表題作『夢幻漂流者』をはじめ、美女に変身できるよう肉体をレンタルしてくれる、まさに夢のブティック。でもその代価は――? (『夢ブティック』)等、夢に憑かれてしまった人々を描いた傑作五篇。時には残酷、時にはせつなくも優しい夢幻世界への旅を、どうぞ。》
収録作品=夢ブティック/夢クリスタル/夢幻漂流者/夢ダイアリー/夢メビウス
川又千秋『天の川綺譚』フタバノベルス・1990年
《戦争が終った四年目の夏――。原因不明の発熱と頭痛に悩まされている丈太郎は、彼の最後となるかも知れない一五歳の夏を母の故郷の家の土蔵で送っていた。
彼は数年前、彼の容態を心配した両親に高名な手相見の所へ連れて行かれ、「生命線が十五歳で途切れている」と宣告されていたのだ。それは疑いようもない彼の運命と思われた。ある日のこと、土蔵の窓から外を見ていた丈太郎はひとりの少女を見かける。その瞬間、彼は彼女こそ自分が求めていた夢であることを直感する。しかし、突然そこにあり得べからざる光景が現われた。少女は成熟し、そばに男がい、辺りの風景は一変している……。そして彼は手相見が先の言葉に続けて言った奇妙な運命を辿るのだった。〈幻窓の夏〉》
収録作品=幻窓の夏/壁の中/あの時の女/リボンの星/白い夜/ナイト・ランディング/天の川綺譚
三浦哲郎『燈火』幻戯書房・2016年
《文体の鬼、最後の連作短篇集
解説:佐伯一麦 みずみずしい日本語散文の極致。初書籍化。移りゆく現代の生活を研ぎ澄まされた文体で描く。》
森元斎『アナキズム入門』ちくま新書・2017年
《国家なんて要らない。資本主義も、社会主義や共産主義だって要らない。いまある社会を、ひたすら自由に生きよう―そうしたアナキズムの思考は誰が考え、発展させてきたのか。生みの親プルードンに始まり、奇人バクーニン、聖人クロポトキンといった思想家、そして歩く人ルクリュ、暴れん坊マフノといった活動家の姿を、生き生きとしたアナーキーな文体で、しかし確かな知性で描き出す。気鋭の思想史研究者が、流動する瞬間の思考と、自由と協働の思想をとらえる異色の入門書。》
荒巻義雄『骸骨半島 花嫁 他―定本荒巻義雄メタSF全集 別巻』彩流社・2015年
《北海道新聞文学賞に輝いた詩集『骸骨半島』は、荒巻義雄の
詩的才能が一気に開花した作品。
「SF 作家が詩を書いたのでなく、詩人がSF を書いた!」と
独得の言い回しの知られざる荒巻ワールド!
特典として「メタSF 俳句」、それに幻の短編「花嫁」「赤い世界」
「スネーク」「パンフ−ヤクザ」「工具惑星」「土星の環の上で」
「カリフィアの少年」「測量士」も特別収録!
解説は、SF 作家のルイス・シャイナー氏、そして、
北海道大学名誉教授(ロシア文学者) 工藤正廣氏!》
畑正憲『われら動物みな兄弟』角川文庫・1972年(日本エッセイスト・クラブ賞)
《カエル、ウサギ、ネズミ等の珍奇な性、動物好きな研究仲間との交遊、四季の海と動物、八丈日記等、ムツゴロウの名で知られる著者の数多くの動物とのつきあいを通して、その生態を鋭く観察し、われら生きるものの愛と生命を暖かい目で描いた名エッセイ集。日本エッセイスト・クラブ賞受賞作品。》
開高健『見た・揺れた・笑われた』角川文庫・1974年
《焼跡の街を空腹を抱えて徘徊しながら、青春の惨苦と荒涼にひしがれ、人生の醜悪の果てを見たい熱望にかられた日々。廃墟の青いミミズにも似た主人公の“修業時代”を描く佳作「見た」。
近郊農村の小屋での年上の女詩人との同棲生活。19歳の父となった体験を語って奇妙に感動的な「笑われた」。
破天荒で余裕綽々。饒舌体と称されながら、知性がきらめき詩が横溢する独得のスタイルの、私小説パロディ。現代文学の金字塔「夏の闇」に至る著者の出発と模索を示した短篇シリーズ。》
収録作品=見た/笑われた/太った/揺れた/出会った
辻邦生『城・夜』河出書房・1969年
《とくに『献身』をのぞく他の作品は、直接に作者が滞在したアルジェリア戦争下のフランスの雰囲気を背後にもっているだけに、なつかしい作品であるともいえる。
「あとがき」より》
収録作品=城/献身/洪水の終り/夜
橘上『うみのはなし』私家版・2016年
《さよなら
先生、さよなら
ニセモノでも、たった一人の先生でした
『さよならニセ中野先生』より
ひろこちゃん
ひろこちゃん
ひろこちゃんはきれいだな
ばくはつしてもきっときれいだよ
だからべつにばくししてくれてもいいよ
ひろこちゃん
ばくししてもたえずひろこちゃんだよ
ばくはつしたひろこちゃんのばくはつを
ぼくはきれいだとおもうから
あんしんして
ばくはつしてくれひろこちゃん
『ひろこちゃん』より
橘上の第三詩集。カニエ・ナハ編集/装幀。平易な口語を基調に数行の短詩から長編詩まで幅広く収録された全17篇の新詩集。》
利岡正人『詩集 危うい夢』ふらんす堂・2016年
《◆最新詩集
◆「夢の見方」より
生い茂った草木と
降下物の夢を見ている
この地表に新たな層を重ねようと
だが長い時を経ても
堆肥にはなれない
光の屑に埋もれ
手つかずのぼくは総毛立っている》
斎藤環『承認をめぐる病』ちくま文庫・2016年
《「他者の許しがなければ、自分を愛することすら難しい」という「承認依存」が広まっている。だからといって、そんな風潮をただ批判してもはじまらない。カルチャー、事件、新型うつなど、現代世相の背景に通底する承認依存をまずは見つめること。そして問題の“解決後”を想像してみること。「承認をめぐる病」の処方箋を精神科医が模索する。
解説 土井隆義》
夏堀正元『銀座化粧館―小説・資生堂』徳間文庫・1985年
《明治の初め、日本初の西洋薬舗「資生堂薬局」が銀座に誕生した。その後、次第に化粧品販売も手がけ、“高級であること”“時代に先駆けること”を信条とした創始者の精神は脈々と受け継がれ、時代の大波にもまれながら今日の華麗な化粧品王国を築きあげた。資生堂の歴史は、激動した近代日本の歴史でもある
銀座百年の盛衰を舞台に化粧品メーカーの成長を描く斬新な経済小説。》
辻真先『なつかしの殺人の日々』カドカワノベルズ・1983年
《CHKのテレビ名物番組『黒のエチュード』製作中、準主役級の女優が死んだ。睡眠薬を大量に飲んだ彼女が、スタジオの天井にしつらえた照明用通路から落ちて、床場に置かれた大型ライトに激突したのだった。偶然の事故か、自殺か他殺か、すっきりしない事件だ。女グセが極めて悪いチーフディレクター鬼堂修一郎と、格好つけたがり屋の藤島芸能部長とのいやらしい対立の中で、番組製作は続行されたが、その後、異様なトラブルが頻発! テレビ生放送時代の怪事件、ユーモア・ミステリーの決定版!》
《●作者のことば
あなた、テレビおもしろいですか?
不幸にもぼくが生まれてはじめてテレビを見たのは、
スタジオの中=制作スタッフの一員としてでしたから、
おもしろがる暇もありません。ただただ追いまくられておりました。だからせめて、小説のタネくらいになってもらわなきゃ、
割りが合わないよ。》
収録作品=なつかしの殺人の日々/はるかなり盗人の日々
中江兆民/桑原武夫・島田虔次訳校註『三酔人経綸問答』岩波文庫・1985年
《一度酔えば、即ち政治を論じ哲学を論じて止まるところを知らぬ南海先生のもとに、ある日洋学紳士、豪傑君という二人の客が訪れた。次第に酔を発した三人は、談論風発、大いに天下の趨勢を論じる。日本における民主主義の可能性を追求した本書は、民権運動の現実に鍛え抜かれた強靭な思想の所産であり、兆民第一の傑作である。現代語訳と詳細な注を付す。》
おまけ。
ハヤカワ文庫版で再読したものの角川文庫版。
装画はハヤカワが武部本一郎で、角川が福田隆義。
山田正紀『神狩り』角川文庫・1977年
《道路工事現場で発見された弥生時代の石室の壁には《古代文字》らしい謎の紋様が刻まれていた。情報工学の若き天才、島津は、その解明に乗りだしたが、次第に驚くべきことが、明らかにされた。それは、人類には理解できない言語構成――この不可思議な言語をあやつるのは、人類をはるかに超えた存在“神”ではないのか! その時――突然、島津の心に現われた男が、すさまじいオーラを発散させながら叫んだ。〈全て忘れろ〉もし、これが神だとしたら、神に挑戦することになるのか? 神は人類に対して悪意に満ちているのだろうか。
――島津は巨大な闘いにまきこまれていった……。
SF界の新星が壮大なテーマで新たなSFの境地を拓いた傑作長編。》
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