『スーパーアメフラシ』は山下一路(1937 - )の40年ぶりの第2歌集。解説:山田航。
作者は「かばん」会員。
あやまちのすべてを鳥のせいにして皆殺しにする飼育係は
キッチンに紅ずわい蟹バラされて半島のように身をひろげたり
押入れにかくれているの 母さんはごそごそさせてやがてカナブン
送るより送られる側でよかったとドライアイスではははぽちゃぽちゃ
万作の黄色にふかくいだかれて孤立死の家は猫の陽だまり
終わりだと気付きはじめてガタガタと身を震わせている脱水機
豊島区のスカイツリーが見える特養 垂乳根の母とっても元気
小躍りしたことのない父さんが小躍りのかたちいろいろしている
肝臓はカツオノエボシゆらゆらと歌舞伎町まで管(くだ)を引き摺る
蕗の薹それぞれ罅を入れながら春の頭蓋は花を咲かせて
膨らんだおしりから汁をえんがわに引き摺っているキイロスズメバチ
二駅目で座れたのに目のまえにおばさんが立つ。死ねとばかりに
屋上から見下ろすとちっぽけなひとびとがここを指さしている
たんぽぽのぽぽひとつひとつに分散しぽぽそれぞれが春の軍隊
車掌さん都電を止めて五寸釘なげつけてくるボクをめがけて
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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